求核剤のソースを表示
←
求核剤
ナビゲーションに移動
検索に移動
あなたには「このページの編集」を行う権限がありません。理由は以下の通りです:
この操作は、次のグループに属する利用者のみが実行できます:
登録利用者
。
このページのソースの閲覧やコピーができます。
'''求核剤'''(きゅうかくざい、nucleophile)とは、電子密度が低い[[原子]](主に[[炭素]])へ反応し、多くの場合[[結合法則|結合]]を作る[[化学種]]のことである。広義では、[[求電子剤]]と反応する化学種を求核剤と見なす。求核剤が関与する反応はその反応様式により[[求核置換反応]]あるいは[[求核付加反応]]などと呼称される。求核剤は、反応機構を図示する際に英語名の頭文字をとり、しばしば'''Nu'''と略記される。 == 概要 == 求核的反応においては、一方の分子から他方の分子に電子が流れて反応が起こる。このとき、[[電子配置|電子対]]を受け入れる化学種を求電子剤、供与するものを求核剤という<ref name="Warren1">{{Cite|和書|author=J・クレイデン|author2=N・グリーブス|author3=S・ウォーレン|translator=[[野依良治]]ほか|title=ウォーレン有機化学(上)|edition=第2|date=2015|pages=107 - 111|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0871-4}}</ref>。よって、求核剤は少なくとも一対の[[孤立電子対]]を持ち、この授受に着目すると、求核剤は[[ルイス塩基]]として、求電子剤は[[ルイス酸]]と見なすことができ<ref name="Vollhardt1">{{Cite|和書|author=K・P・C・ボルハルト|coauthor=N・E・ショアー|translator=[[村橋俊一]]ほか|title=ボルハルト・ショアー現代有機化学(上)|edition=第6|date=2011|pages=78 - 79|publisher=[[化学同人]]|isbn=978-4-7598-1472-9}}</ref>、これらの反応はルイス酸・塩基の結合反応とみなせる<ref name="daigakuin1">{{Cite|和書|editor=[[野依良治]]ほか|title=大学院講義有機化学 (1)分子構造と反応・有機金属化学|edition=第2|date=2019|pages=132 - 134|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0820-2}}</ref>。 <!--有機電子反応論的には、ルイス塩基がより弱い共役酸となる、酸塩基平衡の考え方で説明されるが、すべて場合においての求核反応の選択性を説明しきれない。--> よって、求核剤として反応性の高い化学種のほとんどは[[孤立電子対]]を持ち、また[[アニオン]]であることも多い。例として、各種[[カルバニオン]]、[[アミン]]またはその共役塩基(アミド)、[[アルコール]]またはその共役塩基(アルコキシド)、[[ハロゲン化物|ハロゲン化物イオン]]などが挙げられる<ref name="Warren1" />。 また、求核剤の反応性は、[[溶媒効果]]、[[誘起効果|置換基効果]]、あるいは[[立体効果]]([[立体障害]])などの影響を受けることがある<ref name="Volhardt2" />。溶媒効果は求核種の反応性に影響を与える。隣接基効果や立体効果は、反応速度や、生成物の選択性に影響する。求核的反応の反応性を評価、予測する経験則として、[[HSAB則]]、[[ハメット則]]が知られる。[[有機電子論]]の項目も参照されたい。 == 反応性 == 求核剤の相対的な強さを'''求核性'''(きゅうかくせい、nucleophilicity)という。求核性は[[反応速度論|速度論]]的な現象を指し、[[酸性]]・[[塩基性]]に適用される[[熱力学]]的な指標とは異なっている<ref name="Volhardt2">{{Cite|和書|author=K・P・C・ボルハルト|coauthor=N・E・ショアー|translator=[[村橋俊一]]ほか|title=ボルハルト・ショアー現代有機化学(上)|edition=第6|date=2011|pages=284 - 293|publisher=[[化学同人]]|isbn=978-4-7598-1472-9}}</ref>。以下に、求核剤の分類とその求核性を示した。 === 求核剤と求電子剤の種類 === ==== 分子間相互作用の種類 ==== 求核剤と求電子剤の反応は、二分子の[[電磁相互作用|静電相互作用]]と求核剤の[[HOMO/LUMO|HOMO]]・求電子剤の[[HOMO/LUMO|LUMO]]の[[フロンティア軌道理論|軌道相互作用]]との二つの因子によって制御される。[[イオン (化学)|イオン]]間あるいは[[極性分子|極性]]のある分子では、[[電磁相互作用|静電相互作用]]が影響力を持つ。また、HOMO - LUMO間のエネルギー準位差が小さく(求核剤のHOMO準位が高く、求電子剤のLUMO準位が低く)、電子の安定化が大きい分子間では、軌道相互作用の役割が大きくなる<ref name="daigakuin2">{{Cite|和書|editor=[[野依良治]]ほか|title=大学院講義有機化学 (1)分子構造と反応・有機金属化学|edition=第2|date=2019|pages=40 - 43|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0820-2}}</ref>。ただし、静電相互作用支配の反応でもHOMO - LUMO間の電子移動を考慮する必要がある<ref name="Warren3" />。 この二者の反応のうち、どちらの影響がより強いかは求核剤・求電子剤の種類によって決まる<ref name="Warren2">{{Cite|和書|author=J・クレイデン|author2=N・グリーブス|author3=S・ウォーレン|translator=[[野依良治]]ほか|title=ウォーレン有機化学(上)|edition=第2|date=2015|pages=519 - 521|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0871-4}}</ref>。 ==== HSAB則による分類 ==== [[ファイル:Hardsoftbases.png|thumb|right|ルイス塩基のハード性・ソフト性。]] [[原子半径]]が小さく電子密度の高い、静電相互作用支配で反応する求核剤を'''硬い(ハード)求核剤'''、原子半径が大きく電子の束縛が小さい、軌道相互作用支配で反応する求核剤を'''軟らかい(ソフト)求核剤'''という<ref name="Warren3" />。前者は通常[[電荷|負電荷]]を持ち、後者は必ずしも負電荷を持つとは限らない<ref name="frontier1" />。HSAB則より、相互作用は硬い同士、軟らかい同士で起こりやすい<ref name="daigakuin1" />。 === 各反応における求核性 === [[カルボニル基]]や[[リン酸基]]は電子不足になっており、LUMOが高くなる。よって、これらは[[電荷|正電荷]]や極性のある硬い求電子剤にあたる<ref name="frontier2">{{Cite|和書|author=I・フレミング|translator=[[福井謙一]]ほか|title=フロンティア軌道理論入門 有機化学への応用|date=1978|pages=54 - 55|publisher=[[講談社]]|isbn=4-06-139250-6}}</ref>。これらは硬い求核剤と速く反応し<ref name="frontier1">{{Cite|和書|author=I・フレミング|translator=[[福井謙一]]ほか|title=フロンティア軌道理論入門 有機化学への応用|date=1978|pages=40 - 47|publisher=[[講談社]]|isbn=4-06-139250-6}}</ref>、このとき、反応は電荷による[[クーロンの法則|クーロン力]]に強く影響されて軌道相互作用の影響が小さくなる<ref name="Warren3">{{Cite|和書|author=J・クレイデン|author2=N・グリーブス|author3=S・ウォーレン|translator=[[野依良治]]ほか|title=ウォーレン有機化学(上)|edition=第2|date=2015|pages=360 - 362|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0871-4}}</ref>。この場合、非常に硬い求電子剤であるプロトンとの求核的反応における[[化学平衡|平衡]]の程度である、求核剤の共役酸の[[酸解離定数|pKa]]が求核性のよい指標となる<ref name="frontier1" /><ref group="注釈">共役酸の[[酸解離定数|pKa]]が高いほど求核剤にプロトンが付加しやすく、よい求核剤とみなせる。</ref><ref group="注釈">ただし、カルボニル基との反応は軌道相互作用にも支配される。</ref>。 反対に、[[脱離基]]を持つ飽和炭素などはカルボニル基などに対して極性が小さく、軟らかい求電子剤として働く<ref name="Warren3" /><ref name="frontier2" /><ref group="注釈">ただし、この場合は静電相互作用と軌道相互作用どちらも小さく、Hudsonが提示した規則から軟らかい求電子剤とみなせる。</ref>。したがって、[[SN2反応|S<sub>N</sub>2反応]]における求核性はHOMOのエネルギー準位にも着目する必要がある。比較実験によれば、S<sub>N</sub>2反応での[[メタノール]]中の求核性は[[周期表]]の左に行くほど高くなるといった塩基性との相関がありつつも、高周期元素であるほど求核性が高くなるなど塩基性と反する結果がみられる<ref name="Volhardt2" />。これはHOMOのエネルギーの高さと関係しており、高周期のほうが[[孤立電子対]]の軌道のエネルギーが高いことに由来するとされる<ref name="Warren3" />。 ただし、[[ハロゲン化物|ハロゲン化物イオン]]においては、非プロトン性[[溶媒]]中でのS<sub>N</sub>2反応の求核性が塩基性と等しく低周期ほど強くなっており、プロトン性溶媒中で求核性が逆転するのは高周期ほど[[溶媒和]]を受けにくいことも一因であるとされる<ref name="Volhardt2" />。 なお、[[SN1反応|S<sub>N</sub>1反応]]では[[律速]]が脱離であるため反応速度に求核剤が関与せず、生成物の種類と生成比にのみ影響を与える<ref name="Volhardt3">{{Cite|和書|author=K・P・C・ボルハルト|coauthor=N・E・ショアー|translator=[[村橋俊一]]ほか|title=ボルハルト・ショアー現代有機化学(上)|edition=第6|date=2011|pages=318 - 319|publisher=[[化学同人]]|isbn=978-4-7598-1472-9}}</ref>。また、立体障害の大きい求核剤は求核性が小さく<ref name="Volhardt2" />、かさ高い[[強塩基]]であると[[脱離反応]]が優先される<ref name="Volhart4">{{Cite|和書|author=K・P・C・ボルハルト|coauthor=N・E・ショアー|translator=[[村橋俊一]]ほか|title=ボルハルト・ショアー現代有機化学(上)|edition=第6|date=2011|pages=334 - 335|publisher=[[化学同人]]|isbn=978-4-7598-1472-9}}</ref>。 == 反応性のパラメータ == 様々な条件を考慮した求核性を表す定量的なパラメータとしては、S<sub>N</sub>2反応の速度を元にしたSwain-Scottによるn値や、[[カルボカチオン]]と求核剤の反応速度の解析による、Mayrのパラメータなどが挙げられる。Mayrのパラメータでは、求核性のパラメータ <math>N</math> と求電子性のパラメータ <math>E</math> を提案しており、[[速度定数]] <math>k</math> に対して :<math>log(k)= s_n (N+E) </math> が成り立つ。ただし、s<sub>N</sub>は求核剤依存のパラメータである。これによって、反応中心が炭素である反応速度の半定量的な推定が可能となる<ref name="daigakuin1" /><ref name="mayr1">{{Cite web |url = https://www.cup.uni-muenchen.de/oc/mayr/DBintro.html |title = Prof. H. Mayr, LMU München |publisher = Herbert Mayr |accessdate = 2021-02-25 }}</ref>。 == 応用 == {{節スタブ|1=有機合成上の応用例}} [[グリニャール試薬]]や[[有機リチウム]]化合物を代表とする各種[[有機金属]]試薬は、多様な基質に対し高い反応性を示すことから、[[有機合成]]法上、炭素-炭素結合を得たいときに用いられる重要な求核剤である<ref name="Warrenmetal">{{Cite|和書|author=J・クレイデン|author2=N・グリーブス|author3=S・ウォーレン|translator=[[野依良治]]ほか|title=ウォーレン有機化学(上)|edition=第2|date=2015|pages=129 - 131|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0871-4}}</ref>。特に[[立体特異的]]な求核置換反応(S<sub>N</sub>2反応)や求核付加反応は選択的立体制御を可能にすることから不斉合成において多用される。 == 脚注 == === 注釈 === {{Reflist|group="注釈"}} === 出典 === {{Reflist|2}} == 参考文献 == *{{Cite|和書|author=J・クレイデン|author2=N・グリーブス|author3=S・ウォーレン|translator=[[野依良治]]ほか|title=ウォーレン有機化学(上)|edition=第2|date=2015|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0871-4}} *{{Cite|和書|author=K・P・C・ボルハルト|coauthor=N・E・ショアー|translator=[[村橋俊一]]ほか|title=ボルハルト・ショアー現代有機化学(上)|edition=第6|date=2011|publisher=[[化学同人]]|isbn=978-4-7598-1472-9}} *{{Cite|和書|editor=[[野依良治]]ほか|title=大学院講義有機化学 (1)分子構造と反応・有機金属化学|edition=第2|date=2019|publisher=[[東京化学同人]]|isbn=978-4-8079-0820-2}} *{{Cite|和書|author=I・フレミング|translator=[[福井謙一]]ほか|title=フロンティア軌道理論入門 有機化学への応用|date=1978|publisher=[[講談社]]|isbn=4-06-139250-6}} == 関連項目 == *[[有機電子論]] *[[ハメット則]] *[[フロンティア軌道理論]] * [[リチウムジイソプロピルアミド]] == 外部リンク== * {{Cite web |url = https://www.cup.uni-muenchen.de/oc/mayr/DBintro.html |title = Prof. H. Mayr, LMU München |publisher = Herbert Mayr |accessdate = 2021-02-25 }} {{DEFAULTSORT:きゆうかくさい}} [[Category:化学反応]] [[Category:有機化学]]
このページで使用されているテンプレート:
テンプレート:Cite
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Cite web
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:Reflist
(
ソースを閲覧
)
テンプレート:節スタブ
(
ソースを閲覧
)
求核剤
に戻る。
ナビゲーション メニュー
個人用ツール
ログイン
名前空間
ページ
議論
日本語
表示
閲覧
ソースを閲覧
履歴表示
その他
検索
案内
メインページ
最近の更新
おまかせ表示
MediaWiki についてのヘルプ
特別ページ
ツール
リンク元
関連ページの更新状況
ページ情報