流域のソースを表示

[[File:Harta 3D pentru Bazinul Raului Curpanu si Cotii, afluenti ai Oltului.jpg|thumb|400px|赤色の線で囲まれた範囲がそれぞれの河川の流域にあたる。]]

'''流域'''（りゅういき、{{lang-en|watershed, drainage basin|links=no}}）は、特定の[[河川]]へ流出する[[降水]]の降下範囲のことである{{Sfn|浅沼・田中・辻村|2019|p=31}}。[[水文学]]において、基礎的な単位[[地域]]となる{{Sfn|田中|2009|p=11}}。

== 概説 ==
{{出典の明記|section=1|date=2020年12月}}
複数の流域が接する境界を[[分水界]]と呼ぶが、分水界に降った水は[[地形]]の状況に沿っていずれかの流域に入り、やがては流れとなって名のある[[川]]に[[収斂]]される。

最終的に川として[[海]]や[[内海]]に注ぐことになる（なお、[[乾燥帯|乾燥地帯]]では[[蒸発]]するなど、例外はある）が、この[[淡水]]の地表における[[循環]]が収斂の範囲とする領域が「流域」であると言ってもよい。

[[川]]や[[湖沼]]などの水が直接に影響している周辺地域のみを「流域」と呼ぶこともあるが、基本的には分水界の内側は全てその流域に属するものとされる。

流域の形状は[[円形]]や[[オーバル|楕円形]]、長細いものがあり、長い川ほど広くなる。[[流域面積]]の算出は[[洪水]]の際の出水場所・量を予測するための重要な要素となっている。

川上では河川の分水界に囲まれた地域が明確であるが、川下では[[洪水|氾濫]]などによって時代とともに流路が変わるため、隣接する流域と重複するなど曖昧である。

[[流域面積]]については
*[[世界一]]は約705万[[平方キロメートル|km&sup2;]]の[[アマゾン川]]。
*[[日本一]]は約1万6840km&sup2;の[[利根川]]。

==ギャラリー==
[[File:Ocean drainage.png|center|687x687px]]
<center>世界の主要な海洋の流域。灰色の地域は[[内陸湖]]の流域（[[内陸流域]]）であり、海洋の流域（[[外洋流域]]）ではない。</center>

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File:Tone river map.gif|[[利根川]]流域（茶線の範囲）。[[江戸時代]]の[[利根川東遷事業]]で[[江戸川]]となった旧河口の流域も分岐している。
File:Yellowrivermap.jpg|[[黄河]]流域。黄砂の堆積により下流は[[天井川]]となり、黄河流域は流路の周辺に限定される。
File:Mekong River watershed.png|[[メコン川]]流域。[[長江]]と[[サルウィン川]]に挟まれて並走する上流域の[[チベット高原]]は深い谷になり、流域はきわめて狭い。
File:Ganges-Brahmaputra-Meghna basins.jpg|[[ガンジス川]]流域。[[ヒマラヤ山脈]]を迂回する[[ブラマプトラ川]]と合わせて、ヒマラヤ山脈全体を流域とする。
File:Lena watershed.png|[[レナ川]]流域。[[バイカル湖]]とは分水嶺で隔たれ、バイカル湖は隣の[[エニセイ川]]流域に属する。
File:Tarimrivermap.png|[[タリム川]]流域。河口のない[[内陸河川]]で、[[タリム盆地]]・[[タクラマカン砂漠]]全土を流域とする。
File:Rheinsystem small internat.jpg|[[ライン川]]流域。東西から[[ローヌ川]]と[[ドナウ川]]が食い込み、上流域はくびれている。
File:Nile watershed topo.png|[[ナイル川]]流域。アフリカ大地溝帯全体を流域とし、流域面積世界5位を保持している。
File:Niger river map.PNG|[[ニジェール川]]流域。沿岸部の方が高原となっているため、[[サヘル]]方面に迂回して[[ギニア湾]]に達する。
File:Mississippirivermapnew.jpg|[[ミシシッピ川]]流域。[[ロッキー山脈]]と[[アパラチア山脈]]に挟まれた中央平原のほとんどを流域とする。
File:Amazonrivermap.svg|[[アマゾン川]]流域。[[セルバ]]のほとんどを占め、[[オーストラリア大陸]]に匹敵する世界最大の流域面積を誇る。
|河口付近の夜景
</gallery>

== 閉鎖水域の流域 ==
閉鎖水域（[[湖沼]]・[[湾]]・[[内海]]）に流れ込む河川を一まとめに「'''〇〇流域'''（'''流域圏'''）」と呼ぶ場合もある<ref name="放大環境工学">[[放送大学]]『環境工学』より。{{要ページ番号|date=2020年10月}}</ref>。[[水質汚染]]の指標作りに用いられている（例：[[東京湾]]流域［[[江戸川]]、[[多摩川]]、[[相模川]]］など）<ref name="放大環境工学" />。

== 流域における水循環 ==
{{See also|水収支#流域における水収支}}
流域における[[水循環]]の問題は、[[水文学]]（水循環を扱う[[自然地理学]]の一分野）の重大な関心事である{{Sfn|田中|2009|p=12}}。水文学では、流域水文学 ({{lang-en|watershed hydrology}}) という一つの学問領域が存在する{{Sfn|田中|2009|pp=11-12}}。流域水文学は[[水資源]]確保や[[災害]]予測などの面から[[社会]]のニーズも高い{{Sfn|田中|2009|p=12}}。ただし、[[気候]]・[[地形]]・[[植生]]・[[土壌]]・[[土地利用]]・水利用といった自然の作用から人間活動まで幅広く考慮する必要があるので、[[メカニズム]]の解明に向けた研究が本格化してきたのは、[[1970年代]]以降と比較的最近のことである。研究が可能になった背景には[[同位体]]分析の発展が挙げられる{{Sfn|田中|2009|pp=11-12}}。

流域は[[3次元]]構造を有し、[[降水]]による水の流入と[[蒸発散]]・河川流による水の流出、そして、[[地下水]]や[[土壌水]]としての貯留の3つの水の動きが考えられる{{Sfn|田中|2009|p=11}}。この関係を水収支式で記述すると次のようになる{{Sfn|浅沼・田中・辻村|2019|p=31}}。
:<math>P-E_t-R=\frac{dS}{dt}</math>
ここで Pは[[降水量]]、<math>E_t</math> は蒸発散量、Rは流出量、<math>\frac{dS}{dt}</math>は貯留量変化を表す{{Sfn|浅沼・田中・辻村|2019|p=31}}。また、流域は時間成分 tを有するため、[[4次元]]で検討する必要がある{{Sfn|田中|2009|p=11}}。また、通常は[[単位]]に水柱高 ({{lang|eng|water height}})、すなわち、降水量等の値を[[流域面積]]で割ったものを使用する{{Sfn|田中|2009|pp=11-12}}。

検討する[[水収支]]の期間 tを1年とした場合、貯留量変化<math>\frac{dS}{dt}</math>は一般に 0と考えてよい{{Sfn|浅沼・田中・辻村|2019|p=31}}。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
*{{Cite book|和書|author=浅沼順・田中正・辻村真貴|year=2019|chapter=水循環システムとは何か|pages=30-36|editor=松岡憲知・田中博・杉田倫明・八反地剛・松井圭介<!--既存独立記事とは別人-->・呉羽正昭・加藤弘亮（編）|title=改訂版 地球環境学|series=地球学シリーズ|publisher=古今書院|isbn=978-4-7722-5319-2|ref={{SfnRef|浅沼・田中・辻村|2019}}}}
*{{Cite book|和書|author=田中正|year=2009|chapter=水文科学とは|pages=1-20|editor=杉田倫明・田中正（編著）|title=水文科学|publisher=共立出版|isbn=978-4-320-04704-4|ref={{SfnRef|田中|2009}}}}

== 関連項目 ==
* [[水系]] ：流域内に流れる川や湖などの、つながった線としての系統性。

== 外部リンク ==
* {{Kotobank}}

{{河川関連}}
{{Geo-term-stub}}
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:りゆういき}}
[[Category:河川]]
[[Category:水文学]]