海運のソースを表示

{{複数の問題
|出典の明記=2012年1月
|国際化=2020年2月|領域=日本
}}
[[File:Shipping routes red black.png|thumb|right|300px|世界の船舶で行われた輸送を赤い線で描画したもの。結果として[[航路]]が濃い赤の線で浮かび上がっている。]]
[[File:Jawaharlal_Nehru_Trust_Port.jpg|thumb|right|220px|[[インド]]の[[ナビムンバイ]]にある[[ジャワハルラール・ネルー]]信託港でのコンテナ船の荷役作業。[[ガントリークレーン]]を使ってコンテナ船からコンテナが積卸しされる。]]
[[File:CMA CGM Balzac.jpg|thumb|right|220px|コンテナ船「CMA CGM Balzac」が[[ベルギー]]のゼーブルッヘ（Zeebrugge）の港のコンテナバースに停泊している。]]
'''海運'''（かいうん、{{lang-en|marine transport}}）は、[[水運]]のうち、[[海面|海上]]を利用した[[貨物輸送]]や[[旅客輸送]]である。

海運は他の運輸手段に比べて以下のような特徴を持つ。 
; 低コスト
: 重量・距離当りのコスト{{Efn|運輸業界では、物流効率や物流量を計る尺度として「[[輸送量の単位|輸送トンキロ]]」を使用する。輸送トンキロは、1[[トン]]の貨物を1キロメートル運ぶ場合の[[人件費]]、[[燃料]]費、[[減価償却]]費など、その輸送量を表現するために使用される。まれに「輸送キロトン」とも云う。}}が他の運輸手段に比べて格段に低く、大量・長距離の輸送に適する。航空機や鉄道では運べないような重量物や嵩のある貨物もあまり制限を受けずに輸送できる。
; 低速度
: [[航空機]]、[[鉄道]]、[[自動車]]に比べ速度は低く、他の運送に比べて日数がかかる。ただし[[消費財]][[貿易]]でも[[インターモーダル輸送|コンテナ輸送]]の拡大により[[荷役]]時間が短縮され、効率性は向上している。
; 航路の制約
:いくつかの[[海峡]]などの重要な[[チョークポイント|戦略ポイント]]を通過することが多いため、[[シーレーン]]が[[国家安全保障|安全保障]]や[[地政学]]上、[[ボトルネック]]となっている。
; 旅客輸送
:[[乗り物酔い|船酔い]]の問題がある。
:

上記のような特徴がある。[[船#船の長所と短所|船の長所と短所]]も参照可。

== 歴史 ==
{{Main|船#歴史}}
海運は古来、大量・長距離物流の要であり、[[地中海]]、[[北海]]、[[インド洋]]などで活発な海運が行われた。

[[航海術|航海技術]]や[[造船]]技術の発達により大陸間航行などが行われるようになると、その存在は一段と重みを増した。

[[第二次世界大戦]]以前は豪華な[[客船]]が数多く建造され、大陸間交通などの長距離の旅客輸送の主役であったが、[[航空機]]の発達と共に旅客航路は衰退し、21世紀現在は、近海や海峡など短距離交通路としての連絡船・[[フェリー]]、および船旅そのものを楽しむ[[クルーズ客船]]などに限られている。しかし貨物輸送としては現代でも、国際間[[貿易]]の[[物流]]の主軸であり、大型[[コンテナ船]]や巨大タンカーに代表される船によって世界中の港が結ばれている。



== 国際海運 ==
=== 貨物コンテナ ===
{{Main|コンテナ船}}
国際物流の内、雑貨や[[食品]]類の多くが[[ISO 668]]規格の[[海上コンテナ|貨物コンテナ]]に入れられ、[[コンテナ船]]で輸送されている。

=== 石油タンカーなど ===
{{Main|タンカー}}
[[原油]]や[[液化天然ガス|LNG]]、[[液化石油ガス|LPG]]、液体状の石油製品などは[[タンカー|石油タンカー]]によって輸送されている。

=== 石炭・鉄鉱石・木材・穀物など ===
{{Main|ばら積み貨物船}}
石炭・鉄鉱石・木材・穀物などは[[ばら積み貨物船]]で輸送されている。

=== 自動車 ===
{{Main|自動車運搬船}}
自動車は主に自動車専用船（Pure Car Carrier、略称：'''PCC'''、Pure Car and Track Carrier、略称：'''PCTC'''）で輸送されている。 
例えば、2007年に日本国内で生産された四輪自動車の総数1,160万台の内の56.5 %の654万台<ref group="注釈"><math>\frac{6,549,940}{11,596,327}\approx 0.5648</math> 自動車工業会調べ</ref>が海外へ輸出され、そのほとんどが自動車専用船によって運ばれた。最大の自動車専用船は乗用車換算で6,500台を運べる<ref>池田良穂監修　『船のすべてがわかる本』　ナツメ社　2009年2月9日発行 ISBN 9784816346408</ref>。

== 事業の形態 ==
{{see also|en:Shipping line}}

[[欧州]]において、[[大航海時代]]には海運に関連するビジネスが発達した。その頃の海運は商業者当人が[[船|船舶]]を所有し、遠方の商品を売買するという形態であった。このため、船舶が[[遭難]]したり[[海賊]]に襲われたりするなど、商業者が持つリスクは著しく高まるため、商業上のリスク分散の方策として[[株式会社]]が発達した。また、沈没など[[海難事故]]のリスクを分散するため貨物や船舶に対する[[保険]]（[[海上保険]]）も発達した。<ref group="注釈">雑学 - 現在でも日本の[[損害保険]]会社に「海上」の名を冠しているものがあるのは、ここから損害保険が発達したからである。</ref>

現代における海運会社は物流会社であり、運搬する商品の売買は本質的な目的ではない。また、リスク分散を進めるため、船舶を借り受けている場合が多く船舶資産の運用会社としての側面が強い。船舶は、各地にいる[[船主]]と呼ばれる個人事業者が所有しており、海運会社に貸与している。船主は世界中に存在する。<ref group="注釈">日本に偏りすぎた雑学：日本の場合、[[愛媛県]][[今治市]]の船主達は「エヒメセンシュ」として世界的に有名である。</ref>

また、大手海運会社は陸上・航空を含め、荷物の出発地から到着地までの[[インターモーダル輸送|一貫輸送]]を手がける（一般に総合物流と呼ばれる）ようになっている。<ref group="注釈">日本だけの話題：日本郵船が[[日本貨物航空]]を傘下に収めたほか[[ヤマトホールディングス]]と提携したり、[[商船三井]]が[[近鉄エクスプレス]]と提携したことは、この流れに沿ったものである。</ref>

== 日本 ==
日本においては[[商法]]に規定される[[運送営業]]として規制される。

{{Quotation|
第五百六十九条　この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
: 一　運送人　陸上運送、海上運送又は航空運送の引受けをすることを業とする者をいう。
: 三　海上運送　第六百八十四条に規定する[[船舶]]（第七百四十七条に規定する非航海船を含む。）による物品又は旅客の運送をいう。

第六百八十四条　この編（第七百四十七条を除く。）において「船舶」とは、商行為をする目的で航海の用に供する船舶（端舟その他ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する舟を除く。）をいう。
| [[商法]] }}

=== 海運会社 ===
;定義
旧来から世界経済の変化にともない、多くの海運会社が合併し、また経営力のない海運会社の消滅が繰り返されてきた。また、企業やその名称は存続させるものの、その経営権は海運業界以外の別のグループや、他業種の会社が持っているといったように、企業ごとに様々な形態がある。

現在、様々な海運会社があり、その経営形態はまさに千差万別であるが、定義の一例は以下のとおり。
# 会社としての主務が海運業であり、登記上の会社の名称が海運会社として世間一般に知られる名称である場合、その名称を指す（それを第1位海運会社名称とする）。
# 会社としての主務が海運業であり、登記上の会社の名称とは違い、海運会社として世間一般に知られる名称が別にある場合、その世間一般に知られる名称を指す（それを第1位海運会社名称とする）。
# 経営グループもしくは他業種の会社がその海運会社を運営していても（登記上の会社の名称が旧来の海運会社の名称とはなんら関連のないものになってしまっても）、海運会社として世間一般に知られる名称を有している場合、その名称を指す（それを第1位海運会社名称とする）。
# 上記1,2の定義にあてはまるが、違う海運会社に経営権を所有されている場合、その経営権を所有している海運会社の名称を第1位海運会社名称とし、経営権を所有されている海運会社の名称を第2位海運会社名称とする。

=== 歴史 ===
{{節スタブ}}
* [[1869年]]（明治2年） - 民間の船舶保有を解禁。
* [[1870年]]（明治3年） - 商船規則を発布。以後、[[鴻池組]]や[[三菱商会]]などが商船を取得。
* [[1885年]]（明治18年） - 三菱商会と[[共同運輸会社]]の過当競争に政府が介入して[[日本郵船]]が設立<ref name=RK>{{Cite journal|和書|author=吉田準三 |date=1993 |title=わが国明治期の会社制度の展開過程・(続編) |journal=流通經濟大學論集 |volume=27 |issue=4 |pages=1-16 |naid=120006218952}}</ref>。
* [[1945年]]（昭和20年）[[5月1日]] - 第二次世界大戦の戦局悪化に伴い、民間会社による貨物船などの運営が廃止され、海運総監部による国家船舶の運営が決定<ref>「船舶の運営は大本営に一元化」『朝日新聞』1945年（昭和20年）5月2日（昭和ニュース編纂委員会『昭和ニュース事典第8巻 昭和17年/昭和20年』p29 毎日コミュニケーションズ刊 1994年）</ref>。
* [[1962年]]（昭和37年）[[4月23日]] - [[労働組合|海員組合]]が週48時間労働を要求して大規模[[ストライキ]]を実施。49港で822隻が停船。同年[[5月10日]]に妥結<ref>{{Cite book |和書 |author=世相風俗観察会 |title=現代世相風俗史年表：1945-2008|publisher=河出書房新社 |year=2009-03 |page=110 |isbn=9784309225043}}</ref>。
====海運再建2法と3社体制====
日本の海運会社は、[[1963年]]に成立した海運再建2法（「海運業の再建整備に関する臨時措置法」および「外航船舶建造融資利子補給および損失補償法および日本開発銀行に関する外航船舵建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律」）<ref>https://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa39/ind060103/001.html</ref>により海運集約が行われたほか、近年さらに大手海運会社同士の合併が行われ、[[2024年]]現在の大手海運会社は[[日本郵船]]、[[商船三井]]、[[川崎汽船]]の3社体制となっている。

また、外航航路とは別に内航海運として沿海航路が発達し、独自の進化を遂げている。製鉄会社主体の一般在来型[[貨物船]]オペレーター、石油会社主体の内航[[タンカー]]オペレーター、旅客輸送も行う長距離フェリー船社、島嶼間輸送における独占的なオペレーター、製紙会社主体の[[RO-RO船]]オペレーター等多様である。また、利用運送事業の方面も発達し零細企業でも頭角を現す企業がある。

[[プラザ合意]]による円高で、それまでドル建で資産を決済していた海運各社は大打撃を受け、[[バブル景気]]に反して厳しい経営状態が続いていたが、[[2000年代]]には[[中華人民共和国|中国]]国内の好景気によって住宅建設や工業設備への需要が急成長し、中国政府の[[資源]]政策や建設と機械装置用の鉄鋼需要の拡大の影響から、[[鉄鉱石]]・[[石炭]]といった重量資源の輸送需要が拡大した。また、同時に中国製低価格消費財の貿易量も増大したため、その原材料と製品の輸送需要も加わって、国際的な貨物輸送が行なえる船舶への需要が世界的に急拡大した。これにより世界的に船賃（[[輸送量の単位|トンキロ]]）が高騰するとともに、貨物船不足が発生しはじめた。海運各社は新造船発注を増大させ、新造船の価格である船価も高騰して造船各社は活況となった。海運業や造船業で需給が逼迫し、こういった「船バブル」から海運会社の業績は回復してきている。

2008年9月の米国発の世界的金融危機により、船舶が運ぶ製品・資源・エネルギーのうち、特に市況の影響を受けやすい製品の荷動きが減少し、製品を運ぶ[[コンテナ船]]や[[自動車運搬船|自動車船]]の需要が急落、自動車船や航空輸送等にも資本を投入していた日本郵船や、収益のほぼ半分をコンテナ部門が占めていた川崎汽船などは収益が急落した<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200907280006a.nwc|title=視界不良、海運に大波　郵船・川汽が通期赤字|author=フジサンケイビジネスアイ|date=2009-07-28 |accessdate=2009-08-04 |archive-url=https://web.archive.org/web/20090729083816/http://www.business-i.jp:80/news/sou-page/news/200907280006a.nwc |archive-date=2009-07-29 |url-status=dead |url-status-date=2024-09-23}}</ref>。2009年8月現在、資源(鉄鉱石・石炭等)、エネルギー(石油・天然ガス)輸送部門で需要の底打ちが見られ、中長期的には今後も世界の人口は増加し、それに伴い荷動きも増加すると見込まれるため、21世紀の現在もなお、海運は成長産業であるといえる。

=== 国内における海上輸送シェア ===
{{Seealso|日本の交通#現在}}

国内間輸送において、海上貨物輸送は[[トンキロ]]換算で42%のシェアを持ち、これは自動車輸送（52.9%）に次ぐ<ref name=share_f>{{Cite report|和書|publisher=国土交通省 |title=外国輸送機関別輸送量の推移（貨物　輸送トンキロ）|date=2012 |url=https://www.mlit.go.jp/statistics/details/tetsudo_list.html }}</ref>。平均輸送距離は497 kmであった（2005年度）。これは58.7 %（33.5億トンキロ）を占めた自動車の68 kmの7.3倍、4 %（2.3億トンキロ）の鉄道の435 kmの約1.1倍であった。

:{| class="wikitable"
|+ colspan="6" style="text-align:center;background:#ffffff;" | '''2005年度 日本国内貨物輸送'''<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mlit.go.jp/maritime/statsreport/stats.html|title=26.輸送機関別貨物輸送量の推移|format=PDF|author=国土交通省海事局|date=2007-08-15 |accessdate=2009-04-16 }}</ref>
|-
| style="text-align:center;background:#ffffff;" |  
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''内航船'''
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''自動車'''
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''鉄道'''
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''航空機'''
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''合計'''
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | '''輸送トンキロ'''<br><small>（100万トン・km）</small>
|align="right"| 211,576<br><small>(37.09 %)</small>
|align="right"| 334,979<br><small>(58.72 %)</small>
|align="right"| 22,813<br><small>(4.00 %)</small>
|align="right"| 1,075<br><small>(0.19 %)</small>
|align="right"| 570,443<br><small>(100 %)</small>
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | '''平均輸送距離'''<br><small>（km）</small>
|align="right"| 497
|align="right"| 68
|align="right"| 435
|align="right"| 996
|align="right"| ---
|-
|}

=== 旅客輸送 ===
{{Main|航路|旅客輸送}}
:{| class="wikitable"
|+ colspan="6" style="text-align:center;background:#ffffff;" | '''2005年度 日本国内旅客輸送'''<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mlit.go.jp/maritime/statsreport/stats.html|title=18.旅客輸送実績|format=PDF|author=国土交通省海事局|date=2007-08-15 |accessdate=2009-04-16 }}</ref>
|-
| style="text-align:center;background:#ffffff;" |  
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''一般旅客定期<br>航路事業'''
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''特定旅客定期<br>航路事業'''
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;" | '''旅客不定期<br>航路事業'''
| style="text-align:center;background:#c0f0f0;width:6em" | '''合計'''
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | '''輸送人数'''<br><small>（100万人）</small>
|align="right"| 94.0<br><small>(91.1 %)</small>
|align="right"| 0.2<br><small>(0.2 %)</small>
|align="right"| 9.0<br><small>(8.7 %)</small>
|align="right"| 103.2<br><small>(100 %)</small>
|-
| style="text-align:center;background:#d0f0f0;" | '''輸送人キロ'''<br><small>（100万人・km）</small>
|align="right"| 3,870
|align="right"| 1
|align="right"| 154
|align="right"| 4,025
|-
|}

== 課題 ==
[[1970年代]]から、空荷船の積載の[[バラスト水]]の生態系への悪影響が指摘されている。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注釈"}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
{{Wiktionary}}
* [[航路]]
* [[海運会社の一覧]]
* [[船#船舶の分類・種類]] - 船舶の分類はこちらを参照。
* [[海上コンテナ]]
* [[海上保険]]
* [[海事教育機関]]
* [[便宜置籍船]]
* [[海洋国家]]
* [[アジア域内協議協定]]
* [[海上運送法]]

== 外部リンク ==
* [https://www.mlit.go.jp/maritime/statsreport/stats.html 国土交通省海事局 「海事関連統計」]
{{商船の種類}}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:かいうん}}
[[Category:海運業|*]]