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{{出典の明記|date=2023-09-04}} '''浸透圧'''(しんとうあつ)は、[[物理]][[化学]]の用語である。[[半透膜]]を挟んで液面の高さが同じ、[[溶媒]]のみの純溶媒と[[溶液]]がある時、純溶媒から溶液へ溶媒が浸透するが、溶液側に圧を加えると浸透が阻止される。この圧を溶液の浸透圧という<ref>岩波理化学辞典・同生物学辞典等</ref>。浸透圧は希薄溶液中において、物質の種類に依存しない法則が成立するという[[束一的性質]]の一種である。 == 概要 == 半透膜、すなわち溶媒(小さな[[分子]])だけを透す膜で隔てられた2室に溶媒・溶質が同じで濃度の異なる2つの溶液があると、濃度の低い([[溶質]]分子の密度が相対的に低い)溶液から濃度の高い(溶質分子の密度が相対的に高い)溶液に移動する溶媒分子の数は逆向きのものより多くなる。これは、低濃度溶液中の溶媒分子の方が、高濃度溶液中の溶媒分子よりも、溶媒自身の密度が高く、[[拡散]]の原理に従って、溶媒分子が[高]→[低]へと移動することによっている。結果として、溶媒は溶質濃度の高い溶液の方へ移動し、[[化学平衡|平衡]]状態に達するまで続く。 浸透圧 π [atm] は次の式で表される([[ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ|ファントホッフ]](van't Hoff)の式)。 :<math>\pi = MRT</math> ''M'' は[[モル濃度]] [mol / dm³]、''R'' は[[気体定数]] [atm · dm³ / K · mol]、''T'' は [[温度]] [K] である。モル濃度は容積モル濃度を用いる<ref name=kisobutsrikagaku>磯直道,上松敬禧,真下清,和井内徹 『基礎物理化学』 東京教学社,1997年</ref>。上式は[[理想気体の状態方程式]]と同じ形をしている。また、電解質溶液の浸透圧は非電解質に対しての式がそのままでは適用できないので、{{仮リンク|ファントホッフの因子|en|Van 't Hoff factor}}を導入して補正する。 溶質のモル濃度は溶液中の溶質の粒子のものであるため、電解質の水溶液の浸透圧は式量によるモル濃度ではなく生じたイオンのモル濃度から求める。前記の方法の他、同じ浸透圧をもつ非電離質水溶液のモル濃度で浸透圧を示す{{ill|オスモル濃度|en|Osmotic concentration}}が用いられることもある。溶液は純溶媒に比べ気化しにくく、沸点上昇を示すため、半透膜を介さず純溶媒と溶液を溶媒蒸気で満たした管でつないでも浸透と同様に溶液の液面が上昇する。このため、沸点上昇によって浸透圧を示すこともある。 == 生物における浸透圧 == {{main|{{ill|張度|en|Tonicity}}}} [[File:Osmotic pressure on blood cells diagram.svg|thumb|250px|[[赤血球]]にも影響する浸透圧]] [[生物]]においては、[[細胞膜]]は半透膜である。 細胞内の溶液と比較して、浸透圧が高い溶液を高張液({{lang-en-short|hypertonic}})、低い溶液を低張液({{lang-en-short|hypotonic}})、等しい溶液を等張液({{lang-en-short|isotonic}})という。 [[細胞]]内の溶液と浸透圧が等しい[[食塩水]]を[[生理食塩水]]と呼び、[[ヒト]]の場合は約 0.9w/v% である。また[[生理食塩水]]にカリウムなどを入れ人間の体液に近付けた液を[[リンゲル液]]と呼ぶ。 水道水などで目を洗う際にしみて痛くなるのは、この浸透圧の作用による。[[濃度]]が0の真水や水道水に比べて眼球の細胞内の溶液の浸透圧が高いため、外側の水分子が細胞内へ移動して細胞が膨張し、その時に痛みを伴う。そのため目薬などの[[点眼薬]]は、浸透圧を[[生理食塩水]]に合わせ、目にしみないように作られている。 赤血球を真水に入れると、内部へ浸透した水の圧力により赤血球が破壊される[[溶血]]が起こる。 自然界の生物においては、淡水は細胞内より浸透圧が低く、海水は浸透圧が高いので、それぞれに[[浸透圧調節]]が必要となる。シロザケのように海と河川を往復する水生物にはエラの付け根にある[[塩類細胞]]の増減で行い、河口付近で半月~1か月待機して適応する* [http://homepage2.nifty.com/JAL/IsonagePast21.htm 海と河川湖沼の行き来に必須の塩類細胞の働き]。動物においては[[排出器]]の役割の一つである。 植物細胞には[[細胞壁]]があるため、陸上植物の細胞を高張液に入れた場合には[[原形質分離]]が起こり、真水に入れた場合には一部の細胞を除き膨らむだけで破裂することはない。細胞膜が細胞壁を内部から圧する力を[[膨圧]]と言い、細胞壁の薄い植物体を支えたり、[[気孔]]の開閉、[[オジギソウ]]・[[食虫植物]]の運動の原動力となっている。 極端に[[糖分]]や[[塩分]]が高い食品が腐敗しにくいのも浸透圧によるものである。[[細菌]]が取り付いて繁殖しようとしても、自身の細胞から水分が吸い出され、死滅してしまったり非常に遅い速度でしか繁殖できないためである。 ==ヒトの体液の浸透圧調整== ヒトの[[体液]]の浸透圧調整は、[[腎臓]]による浸透圧調整で行われ、主に腎臓での[[水]]と[[ナトリウムイオン]]の再吸収によって行われる。この再吸収は[[ホルモン]]によって調整されている。浸透圧が[[上昇]]した時、水の再[[吸収]]が行われる。[[血液]]の浸透圧が上昇すると、[[脳下垂体後葉]]が[[バソプレッシン]](抵利尿ホルモン)を[[分泌]]し、[[腎細管]]や[[集合管]]での水の再吸収を促進する。この結果、尿量は減少し、血液中の水分が増加するため、浸透圧は低下する。また、浸透圧が低下した時、[[無機塩類]]の再吸収が行われる。血液中の浸透圧が低下すると、[[副腎皮質]]が[[鉱質コルチコイド]]を分泌し、腎細管での[[ナトリウム|Na]]<sup>+</sup>の再吸収を促進する。この結果、血液中の無機塩類が増加し、浸透圧が上昇する。 == その他 == 浸透圧は溶液のもつ属性であり、語の使用に際して注意する必要がある。例えば「細胞内部の溶液の浸透圧」という用法は妥当だが、「細胞の浸透圧」という記述は意味するところが不明瞭であり誤解を招くおそれがある。「半透膜の両側に濃度の違う溶液があると、浸透圧が発生し…」という表現も誤用である。この場合は、「浸透圧差が生じ、」とすべきである。 == 出典 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 関連項目 == * [[浸透圧調節]] * [[半透膜]] * [[全透膜]] * [[溶液]] * [[凝固点]] * [[温泉]] - 浸透圧で温泉を分類。 == 外部リンク == * {{Archive.today|url=http://homepage2.nifty.com/JAL/IsonagePast21.htm |title=海と河川湖沼の行き来に必須の塩類細胞の働き|date=20130427090541}} * {{Cite web|和書|author=神無久|date=2013-04-16|url=http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1717122.html|title=浸透圧の原理|work=サイエンスあれこれ 科学と暮らし|accessdate=2013-04-16}} * {{Kotobank}} {{Sci-stub}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:しんとうあつ}} [[Category:物理化学]] [[Category:溶液化学]] [[Category:液体]] [[Category:圧力]] [[Category:拡散]]
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