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湯川相互作用
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'''湯川相互作用'''(ゆかわそうごさよう、{{lang-en|Yukawa interaction}})とは、[[素粒子物理学]]において、1つの[[ボソン]]と2つの[[フェルミオン]]が関わる[[相互作用]]のことである。 4つのフェルミオンが関わる[[フェルミ相互作用]]を修正して[[湯川秀樹]]により導入された。 湯川相互作用は、[[核子]]([[フェルミ粒子]])の間に働く[[パイ中間子]](擬スカラー)により媒介される[[核力]]の記述に用いることが出来る。また、[[標準模型]]において[[クォーク]]や[[電子]](これらは質量ゼロの粒子として導入する)と[[ヒッグス粒子|ヒッグス場]]の間の相互作用の記述にも用いられる。[[自発的対称性の破れ]]でヒッグス場が[[真空期待値]]を持つことにより、クォークや電子は真空期待値に比例した質量を獲得する。 == ラグランジアン == 湯川相互作用をするボソンφと[[ディラック場]]ψはラグランジアン中で {{Indent| <math>\mathcal{L}_\mathrm{yukawa}(\phi,\psi) =-g\bar{\psi}\Gamma\psi \phi</math> }} と書かれる。この形の項は'''湯川相互作用項'''と呼ばれる。 g は湯川相互作用の大きさを表す[[結合定数 (物理学)|結合定数]]で、'''湯川結合定数'''と呼ばれる。 <math>\Gamma</math> は[[ガンマ行列]]で、変換性により適当に挿入される。 {{Indent| <math>\Gamma = \begin{cases} 1 & (\text{scalar}) \\ i\gamma_5 & (\text{pseudoscalar}) \\ \end{cases}</math> }} 系の全ラグランジアンは {{Indent| <math>\mathcal{L}(\phi,\partial\phi,\psi,\partial\psi) =\mathcal{L}_\phi(\phi,\partial\phi) +\mathcal{L}_\psi(\psi,\partial\psi) +\mathcal{L}_\mathrm{yukawa}(\phi,\psi)</math> }} となる。 ボソンを実スカラー場とするとラグランジアンは以下のように書かれる。 {{Indent| <math>\mathcal{L}_\phi(\phi,\partial\phi) =\frac{1}{2}\partial^\mu\phi \partial_\mu\phi -\frac{1}{2}m_\phi^2\phi^2 -V(\phi)</math> }} ここで、<math>m_\phi</math> はスカラー場の質量で、<math>V(\phi)</math> はスカラー場の自己相互作用項である。 4次元時空で[[くりこみ]]可能性を課すと自己相互作用項は <math>V(\phi)=\lambda\phi^4</math> となる(λは相互作用の強さ)。 ディラック場のラグランジアンは以下のように書かれる。 {{Indent| <math>\mathcal{L}_\psi(\psi,\partial\psi) =i\bar{\psi}\gamma^\mu\partial_\mu\psi-m_\psi\bar{\psi}\psi </math> }} <math>m_\psi</math> はディラック場の質量である。 これらを全てまとめると以下のようになる。 {{Indent| <math>\mathcal{L}(\phi,\partial\phi,\psi,\partial\psi) =\frac{1}{2}\partial^\mu\phi \partial_\mu\phi -\frac{1}{2}m_\phi^2\phi^2 -V(\phi) +i\bar{\psi}\gamma^\mu\partial_\mu\psi -m_\psi\bar{\psi}\psi -g\bar{\psi}\psi \phi</math> }} スカラー場 φ についての運動方程式を計算すると {{Indent| <math>\partial^\mu\partial_\mu\phi +m_\phi^2\phi = -\frac{dV}{d\phi}-g\bar{\psi}\psi</math> }} となる。低エネルギーで質量項に比べて運動項と自己相互作用項が無視できるとすると、 {{Indent| <math>\phi =-\frac{g}{m_\phi^2}\bar{\psi}\psi</math> }} となり、これを使ってスカラー場を消去すると {{Indent| <math>\mathcal{L}(\psi,\partial\psi) =i\bar{\psi}\gamma^\mu\partial_\mu\psi -m_\psi\bar{\psi}\psi +\frac{g^2}{2m_\phi^2}(\bar{\psi}\psi)^2</math> }} となる。フェルミ相互作用が再現され、その結合定数は湯川結合定数とスカラー場の質量により計算される。 <!-- == くりこみ可能性 == 湯川相互作用は4次元時空で[[くりこみ]]可能な相互作用である。 --> == 古典的ポテンシャル == 2つのフェルミオンが、質量 <math>m_\phi</math> のスカラー場を通じて相互作用すると、2つのフェルミオンの間には、以下のような湯川ポテンシャル {{Indent| <math>V(r) = -\frac{g^2}{4\pi} \frac{1}{r} e^{-m_\phi r}</math> }} が生じる。これは[[クーロンの法則|クーロン力]]と符号、指数関数部分の他は似た形となっている。マイナスの符号により、全ての粒子の間に湯川相互作用は引力となる。これは、スカラー場がスピン 0 であること、偶数スピンの粒子によって媒介される力は常に引力となることで説明される。また、指数関数部分の存在により、相互作用の到達距離が有限となり、遠く離れた粒子同士はほとんど相互作用しなくなる。 == 自発的対称性の破れ == スカラー場のポテンシャル <math>V(\phi)</math> が <math>\phi=\phi_0(\neq 0)</math> で最小値 を持つとする。例えば、<math>V(\phi)=\mu^2\phi^2 + \lambda\phi^4</math> というポテンシャルで、<math>\mu^2<0</math>, <math>\lambda>0</math> のとき、このようなことが起こる。このとき、ラグランジアンの対称性は[[自発的対称性の破れ|自発的に破れる]]。このときのゼロでない値 <math>\phi_0</math> を <math>\phi</math> の[[真空期待値]]と呼ぶ。[[標準模型]]では、この真空期待値がフェルミオンの質量に反映される。質量項を示すために、作用を <math>\tilde \phi = \phi-\phi_0</math> を用いて書き換える。すると、湯川相互作用項には、 :<math>g\phi_0 \bar\psi\psi</math> という項が含まれる。 ''g'' と <math>\phi_0</math> は定数であるため、この項は質量項と見なすことができ、フェルミオンは質量 <math>g\phi_0</math> を持つ。これが標準模型において、自発的対称性の破れを通じてフェルミオンが質量を獲得する機構である。<math>\tilde \phi</math> は[[ヒッグス粒子|ヒッグス場]]として知られる。 == 参考文献 == * Claude Itzykson and Jean-Bernard Zuber, ''Quantum Field Theory'', (1980) McGraw-Hill Book Co. New York {{ISBN2| 0-07-032071-3}} * James D. Bjorken and Sidney D. Drell, ''Relativistic Quantum Mechanics'' (1964) McGraw-Hill Book Co. New York ISBN 0-07-232002-8 * {{Cite book| |author=M. E. Peskin and D. V. Schroeder |title=An Introduction to Quantum Field Theory |year=1995 |publisher=Westview Press |isbn=0-201-50397-2 }} == 関連項目 == * [[標準模型]] {{Physics-stub|ゆかわそうこさよう}} {{DEFAULTSORT:ゆかわそうこさよう}} [[Category:場の量子論]] [[Category:素粒子物理学]] [[Category:力 (自然科学)]] [[Category:インタラクション]] [[Category:湯川秀樹]] [[Category:物理学のエポニム]]
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