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数学、とくに[[環論]]において、'''フロベニウス環''' (Frobenius ring) のクラスとその一般化は、[[フロベニウス多元環]]についてなされた研究の拡張である。おそらく最も重要な一般化は'''準フロベニウス環''' (quasi-Frobenius ring, QF ring) のそれであろう。これはさらに右'''擬フロベニウス環''' (pseudo-Frobenius ring, PF ring) と右'''有限擬フロベニウス環''' (finitely pseudo-Frobenius ring, FPF ring) に一般化される。準フロベニウス環の他の種々の一般化には '''QF-1''', '''QF-2''', '''QF-3''' 環がある。 これらのタイプの環は[[ゲオルク・フロベニウス]]によって考察された多元環の子孫と見ることができる。準フロベニウス環のパイオニアたちを部分的に挙げれば、{{仮リンク|リチャード・ブラウアー|en|Richard Brauer|label=R. ブラウアー}}、[[森田紀一]]、[[中山正]]、{{仮リンク|Cecil J. Nesbitt|en|Cecil J. Nesbitt|label=C. J. Nesbitt}}, {{仮リンク|Robert M. Thrall|en|Robert M. Thrall|label=R. M. Thrall}}。 ==定義== 説明のためにはまず準フロベニウス環を定義するのが易しいだろう。各タイプの環の以下の特徴づけにおいて、環の多くの性質が明らかにされる。 環 ''R'' が'''準フロベニウス''' (quasi-Frobenius) であるとは、''R'' が以下の同値な条件のうちの1つを満たすことをいう: * ''R'' は片側[[ネーター環|ネーター的]]かつ片側[[移入加群#自己移入環|自己移入的]]である。 * ''R'' は片側[[アルティン環|アルティン的]]かつ片側自己移入的。 * [[射影加群|射影的な]]すべての右(あるいはすべての左)''R'' 加群は[[移入加群|移入的]]でもある。 * 移入的なすべての右(あるいはすべての左)''R'' 加群は射影的でもある。 '''フロベニウス環''' (Frobenius ring) ''R'' とは以下の同値な条件のうちの1つを満たす環のことである。''J'' = J(''R'') を ''R'' の[[ジャコブソン根基]]とする。 * ''R'' は準フロベニウスかつ右 ''R'' 加群として[[半単純成分]] (socle) <math>\mathrm{soc}(R_R)\cong R/J</math> * ''R'' は準フロベニウスかつ左 ''R'' 加群として <math>\mathrm{soc}(_R R)\cong R/J</math> * 右 ''R'' 加群として <math>\mathrm{soc}(R_R)\cong R/J</math> でありかつ左 ''R'' 加群として <math>\mathrm{soc}(_R R)\cong R/J</math> 可換環 ''R'' に対して、以下は同値である: * ''R'' はフロベニウス * ''R'' は準フロベニウス * ''R'' は唯一の[[極小イデアル]]を持つ[[局所環|局所]]アルティン環の有限個の直和である。(そのような環は「0次元[[ゴレンシュタイン環|ゴレンスタイン局所環]]」の例である。) 環 ''R'' が'''右擬フロベニウス''' (right pseudo-Frobenius) とは、以下の同値な条件の1つを満たすことである: * すべての[[忠実加群|忠実]]右 ''R'' 加群は右 ''R'' 加群の圏の{{仮リンク|生成素 (圏論)|en|generator (category theory)|label=生成素}}である。 * ''R'' は右自己移入的かつ Mod-''R'' の{{仮リンク|Injective cogenerator|en|Injective cogenerator|label=余生成加群}}である。 * ''R'' は右自己移入的かつ右 ''R'' 加群として[[有限生成加群|有限余生成]]である。 * ''R'' は右自己移入的かつ右 [[カシュ環]]である。 * ''R'' は右自己移入的、[[半局所環|半局所]]、かつ半単純成分 soc(''R''<sub>''R''</sub>) は ''R'' の[[本質部分加群]]である。 * ''R'' は Mod-''R'' の余生成加群かつ左 カシュ環である。 環 ''R'' が'''右有限擬フロベニウス''' (right finitely pseudo-Frobenius) とは、すべての[[有限生成加群|有限生成]]忠実右 ''R'' 加群が Mod-''R'' の生成加群であることをいう。 ==Thrall の QF-1,2,3 の一般化== 大きな影響を与えた論文 {{harv|Thrall|1948}} で R. M. Thrall は(有限次元)QF 代数の3つの特定の性質に焦点を当て個別に研究した。追加の仮定をしてこれらの定義は QF 環を一般化するために使うこともできる。これらの一般化を開拓した少しの他の数学者には [[森田紀一]]と太刀川弘幸が含まれる。 {{harv|Anderson|Fuller|1992}} に従って、''R'' を左または右アルティン環とする: *''R'' が QF-1 であるとは、すべての忠実左加群と忠実右加群が{{仮リンク|平衡加群|en|balanced module}}であることをいう。 *''R'' が QF-2 であるとは、各直既約射影右加群と各直既約射影左加群が唯一の極小部分加群を持つことをいう。(すなわちそれらの半単純成分は単純である。) *''R'' が QF-3 であるとは、[[移入包絡]] E(''R''<sub>''R''</sub>) および E(<sub>''R''</sub>''R'') がともに射影加群であることをいう。 番号は階層を表しているわけではない。より緩い条件のもとで、環のこれら3つのクラスは互いを含まない。しかしながら、''R'' が左または右アルティンという仮定の下では、QF-2 環は QF-3 である。QF-1 かつ QF-3 だが QF-2 でない例すらある。 ==例== *すべてのフロベニウス ''k'' 多元環はフロベニウス環である。 *すべての[[半単純環]]は明らかに準フロベニウスである。すべての加群が射影かつ移入だからである。しかしさらに、半単純環はすべてフロベニウスである。これは定義によって容易に確かめられる。半単純環に対して <math>\mathrm{soc}(R_R)=\mathrm{soc}(_R R)=R</math> であり ''J'' = rad(''R'') = 0 だからである。 * [[商環]] <math>\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}</math> は任意の自然数 ''n'' > 1 に対して準フロベニウスである。 *可換アルティン{{仮リンク|serial module|en|serial module|label=列環}} はすべてフロベニウスであり、実はさらに、すべての商環 ''R''/''I'' もフロベニウスであるという性質を持つ。可換アルティン環の中で、列環はちょうど、(非零な)商がすべてフロベニウスであるような環であることが判明する。 *多くのエキゾチックな PF および FPF 環が {{harv|Faith|1984}} の例として見つけられる。 ==Notes== QF, PF, FPF の定義は圏論的な性質であることが容易にわかり、したがって[[森田同値]]によって保存されるのであるが、フロベニウス環であることは保存''されない''。 片側ネーター環に対して左または右 PF の条件はともに QF と一致するが、FPF 環はなお異なる。 体 ''k'' 上の有限次元代数 ''R'' がフロベニウス ''k''-代数であることと ''R'' がフロベニウス環であることは同値である。 QF 環は加群のすべてを[[自由加群|自由]] ''R'' 加群に埋め込めるという性質を持つ。これは次のようにしてわかる。加群 ''M'' は[[移入包絡]]その ''E''(''M'') に埋め込まれ、''E''(''M'') は今射影的でもある。射影加群として ''E''(''M'') は自由加群 ''F'' の直和成分であるから ''E''(''M'') は包含写像によって ''F'' に埋め込まれる。この2つの写像を合成して ''M'' は ''F'' に埋め込まれる。 ==教科書== *{{Citation | last1=Anderson | first1=Frank Wylie | last2=Fuller | first2=Kent R | title=Rings and Categories of Modules | url=https://books.google.co.jp/books?id=PswhrD_wUIkC&redir_esc=y&hl=ja | publisher=[[Springer-Verlag]] | location=Berlin, New York | isbn=978-0-387-97845-1 | year=1992}} *{{Citation | last1=Faith| first1=Carl| last2=Page| first2=Stanley | title=FPF Ring Theory: Faithful modules and generators of Mod-R| publisher=Cambridge University Press | series=London Mathematical Society Lecture Note Series No. 88 | isbn=0-521-27738-8 |mr=0754181 | year=1984}} *{{Citation | last1=Lam | first1=Tsit-Yuen | title=Lectures on modules and rings | publisher=[[Springer-Verlag]] | location=Berlin, New York | series=Graduate Texts in Mathematics No. 189 | isbn=978-0-387-98428-5 |mr=1653294 | year=1999}} *{{Citation | last1=Nicholson | first1=W. K. | last2=Yousif | first2=M. F. | title=Quasi-Frobenius rings | publisher=Cambridge University Press | isbn=0-521-81593-2 | year=2003}} ==References== For QF-1, QF-2, QF-3 rings: *{{citation |author=Morita, Kiiti |title=On algebras for which every faithful representation is its own second commutator |journal=Math. Z. |volume=69 |year=1958 |pages=429–434 |issn=0025-5874 |doi=10.1007/bf01187420 }} *{{citation |author=Ringel, Claus Michael |author2=Tachikawa, Hiroyuki |title=QF-3 rings |journal=J. Reine Angew. Math. |volume=272 |year=1974 |pages=49–72 |issn=0075-4102 }} *{{citation |author=Thrall, R. M. |title=Some generalization of quasi-Frobenius algebras |journal=Trans. Amer. Math. Soc. |volume=64 |year=1948 |pages=173–183 |issn=0002-9947 |doi=10.1090/s0002-9947-1948-0026048-0 }} ==関連項目== *[[準フロベニウスリー代数]] {{DEFAULTSORT:しゆんふろへにうすかん}} [[Category:加群論]] [[Category:環論]] [[Category:フェルディナント・ゲオルク・フロベニウス]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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