溶融塩電解のソースを表示

'''[[溶融塩]]電解'''（ようゆうえんでんかい、molten salt electrolysis）とは、イオン性の[[固体]]を高温にして[[融解]]させ、これを[[電気分解]]する方法である<ref>{{Cite web|和書|url=http://kids.gakken.co.jp/jiten/7/70013100.html |title=融解塩電解 |publisher=学研キッズネット |accessdate=2012-4-2}}</ref>。'''融解塩電解'''（ゆうかいえんでんかい）とも<ref>[http://www.chemistry.or.jp/news/information/1-2.html 高等学校化学で用いる用語に関する提案（1）への反応]（日本化学会、2018年1月25日更新版）</ref>{{リンク切れ|date=2024-8}}。

[[イオン化傾向]]が大きく[[水溶液]]では析出しない[[アルミニウム]]や[[ナトリウム]]などの[[アルカリ金属|アルカリ金属類]]がこの方法で工業生産される。

== アルミニウム ==
[[File:Hall-heroult-kk-2008-12-31.png|right|thumb|300px|ホール・エルー法の模式図。黒が炭素電極（上が陽極、下が陰極）、赤が溶融氷晶石とアルミナ、灰色が溶融アルミニウム。]]

アルミニウムは世界的に[[ホール・エルー法]]（Hall-Héroult process）により精錬されている<ref name=kobelco>{{Cite web|和書|url=http://www.kobelco.co.jp/alcu/technical/almi/1173955_7876.html |title=アルミ・銅事業 やさしい技術|publisher=神戸製鋼グループ |accessdate=2012-4-2}}</ref>。[[氷晶石]]と[[フッ化ナトリウム]]を電気炉で1,010{{℃}}で融解させ<ref name=kobelco/>、これに原料の[[アルミナ]]を溶解し、黒鉛電極で電気分解を行う。分解されたアルミニウム（液体）は[[陰極]]に溜まり、[[酸素]]は[[陽極]]の黒鉛と反応して[[二酸化炭素]]となり、さらに反応して[[一酸化炭素]]となる。

: <chem>Al2O3 + 3C -> 2Al + 3CO</chem>

このため、基本的に陰極は化学的には消耗しないのに対して
<ref name=jilm.44.406>土橋倫男, 「[https://doi.org/10.2464/jilm.44.406 アルミニウムの製錬と精製]」『軽金属』 軽金属学会, 1994年 44巻 7号 p.406-417, {{doi|10.2464/jilm.44.406}}</ref>、陽極は化学的に消耗するため、陰極と比べて頻回の交換が必要である<ref name=jilm.44.406 />。ただし、陰極も数千日間の長期間の使用に伴って、アルミニウムの流動に伴う磨耗などの物理的な消耗は発生し、いずれ使用不能になる<ref name=jilm.44.406 />。

== ナトリウム ==
ナトリウムの溶融塩電解には、[[カストナー法]]と[[ダウンズ法]]がある。

=== カストナー法 ===
[[File:CastnerProcessDiagram.gif|thumb|150px|left|カストナー法の装置概略図。A：陽極、B：陰極]]

カストナー法は、330{{℃}}で溶融させた[[水酸化ナトリウム]]を特殊な[[るつぼ]]で[[電気分解]]する方法である。分解された金属ナトリウム（液体）は水酸化ナトリウムよりも密度が低いため、るつぼ上部の採取装置 (P)に溜まる仕組みである。
:（陰極） <chem>{2Na+} + 2 {\it{e}}^- -> 2Na</chem>
:（陽極） <chem>2OH^- -> \frac{1}{2}{O2} + {H2O} + 2 {\it{e}}^-</chem>

陽極では高温にもかかわらず[[水]]が発生し反応効率が低下する。水は金属ナトリウムと反応を起こし、水素が生成する。
: <chem>Na + H2O -> \frac{1}{2}{H2} + Na+ + OH-</chem>

生成した水素は採取装置 (P)に溜まり、これも反応効率を低下させる。

カストナー法は現在ほとんど使われず、ダウンズ法が主流となっている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.keirinkan.com/kori/kori_chemistry/kori_chemistry_m1/contents/ch-m1/3-bu/3-2-1.htm |title=第1節 アルカリ金属とその化合物 |publisher=啓林館 |accessdate=2012-4-2}}</ref>。

=== ダウンズ法 ===
[[Image:DownsCellSchematic.svg|thumb|300px|right|ダウンズ法の概略図]]

ダウンズ法は溶融させた塩化ナトリウムをダウンズセル（Downs cell）と呼ばれる特殊な装置で電気分解する方法である<ref>{{Cite| last = JAKES CLOYD DOWNS| title = ELECTROLYTIC PROCESS AND CELL, Patent 1501756| accessdate = 2011-5-28| date = 1924-07-15| url = http://patft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO1&Sect2=HITOFF&d=PALL&p=1&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsrchnum.htm&r=1&f=G&l=50&s1=1501756.PN.&OS=PN/1501756&RS=PN/1501756}}</ref><ref name=kakyoshi.66.11_524>長谷川一希, 「[https://doi.org/10.20665/kakyoshi.66.11_524 苛性ソーダ，金属ナトリウム製造における電解技術]」『化学と教育』 66巻 11号 2018年 p.524-527, {{doi|10.20665/kakyoshi.66.11_524}}</ref>。

:（陽極）<chem>2Cl^- -> {Cl2} + 2{\it{e}}^-</chem>
:（陰極）<chem>{Na+} + {\it{e}}^- -> Na</chem>
:（全体）<chem>{2Na+} + 2Cl- -> 2Na + Cl2</chem>

金属ナトリウムは塩化ナトリウムよりも密度が低いため、[[鉄]]電極（陰極）上の採取部分に浮かび上がってくる仕組みである。

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== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 外部リンク ==
* 渡邊亨, 「[https://doi.org/10.2464/jilm.39.403 アルミニウムの製錬と精製]」『軽金属』 39巻 5号 1989年 p.403-414, {{doi|10.2464/jilm.39.403}}

== 関連項目 ==
* [[三層電解法]]
{{電気分解}}
{{DEFAULTSORT:ようゆうえんてんかい}}
[[Category:電気化学]]
[[Category:化学反応]]
[[Category:電気分解]]