滑石のソースを表示

{{Otheruses||[[長崎県]][[長崎市]]の地名|滑石 (長崎市)|[[熊本県]][[玉名市]]の地名|滑石村}}
'''滑石'''（かっせき、{{Lang-en-short|talc}}、'''タルク'''またはtalcum）は、[[珪酸塩鉱物]]の一種で[[フィロケイ酸塩鉱物]]に分類される鉱物。あるいはこの鉱物を主成分とする[[岩石]]の名称。世界的にはタルク（talc）のほか、ステアタイト（凍石）、ソープストーン（石鹸石）、フレンチチョーク、ラバとも呼ばれることもある<ref name="kitahara">{{Cite web|和書|author=北原愃夫|url=http://jser.gr.jp/kaiin/JSER_BOOK/1994/15-611.pdf |title=日本の滑石の現状と問題点|publisher=エネルギー・資源学会 |format= |date= |accessdate=2023-10-27}}</ref>。

== 滑石（鉱物） ==
{{Infobox 鉱物
| 鉱物名 = 滑石
| 画像 = [[画像:Talc.jpg|250px|none|滑石]]
| 分類 = [[ケイ酸塩鉱物]]
| 色 = {{Flatlist|class=hlist-comma|1=
* 白色
* 淡緑色
}}
| 組成 = Mg<sub>3</sub>Si<sub>4</sub>O<sub>10</sub>（OH）<sub>2</sub>
| 硬度 = '''1'''（基準）
| 比重 = 2.7
| 晶系 = {{Flatlist|1=
* [[単斜晶系]]
* [[三斜晶系]]
}}
| 光沢 = 真珠光沢
| 条痕 = 白色
| 劈開 = 一方向に完全
| 蛍光 = 
| 断口 = 
}}
'''滑石'''<!--（かっせき、talc、'''タルク'''）-->は、[[水酸化マグネシウム]]と[[ケイ酸]]塩からなる[[鉱物]]で、[[粘土鉱物]]の一種である。

[[化学式#組成式|組成式]]は<chem>Mg3Si4O10(OH)2</chem>である。[[蛇紋石]]（<chem>Mg3Si2O5(OH)4</chem>）が熱水変質、あるいは[[苦灰石]]（<chem>CaMg(CO3)2</chem>）が接触変成してできる。
: <chem>{2Mg3Si2O5(OH)4}+3CO2->{Mg3Si4O10(OH)2}+{3MgCO3}+3H2O</chem>
: <chem>{3CaMg(CO3)2}+{4SiO2}+H2O->{Mg3Si4O10(OH)2}+{3CaCO3}+3CO2</chem>

=== 性質 ===
白色鉱物の一種で、粉末は滑沢性をもつ<ref name="kitahara" />。滑石は[[モース硬度]]1の基準となる標準物質で、[[ろう石]]よりも軟らかく粉砕しやすい<ref name="kitahara" /><ref name="tenkoku">{{Cite web|和書|author=須藤定久|url=https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/08_06_06.pdf |title=篆刻用印材（ろう石・滑石など）の話|publisher=地質調査総合センター |format= |date= |accessdate=2023-10-27}}</ref>。

=== 用途 ===
[[File:Talc Magatama SannaiMaruyama IIMG 8978.jpg|thumb|250px|滑石の柔らかさを利用した勾玉作り体験（三内丸山遺跡）]]
製紙用の填料、プラスチック用あるいはゴム用の充填剤、陶磁器原料、化粧品用の顔料、医薬品（錠剤）用潤沢剤、農薬用担体、塗料用の顔料や増量剤に用いられる<ref name="kitahara" /><ref name="tenkoku" />。
* 食品添加剤としては、既存添加剤、製造用剤に分類される<ref>[https://www.nihs.go.jp/hse/food-info/food_add/index.html 食品添加物ADI関連情報データベース]</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20150522132730/http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/0/8aa11687a2aaf0c4492570650018d5ba?OpenDocument 厚生労働省行政情報 添加物使用基準リスト 2]</ref>。[[欧州連合]]（EU）内の[[食品添加物]]分類番号である[[E番号]]では「553b」が割り当てられている<ref>[http://www.food.gov.uk/safereating/chemsafe/additivesbranch/enumberlist#h_7 Current EU approved additives and their E Numbers]、[[英国食品基準庁]]、26 November 2010</ref>。
* ベビーパウダーの主原料である<ref name="tenkoku" />。ベビーパウダーをタルカムパウダーと呼ぶ事があるのは、滑石の英語名talcumに由来する。
* 印材としても用いられ、印材用には中国の[[山東省]][[平度県]]産のものなどが販売されている<ref name="tenkoku" />。
* ろう石と同じく石筆として工事用のマーキングなどにも用いられる（石筆にはタルク成分を不純物として含むものもある）<ref name="mhlw">{{Cite web|和書|url=https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/roudousya2/dl/32.pdf |title=34 タルク等石綿含有物を使用する作業|publisher=厚生労働省 |format= |date= |accessdate=2023-10-27}}</ref>。日本では明治時代に学校教育が始まると石板（[[粘板岩]]の板）とともに石筆（ろう石や滑石を鉛筆状に削ったもの）が広く使われるようになり、特に東日本では「石筆」として滑石が[[駄菓子屋]]などでも販売された<ref name="tenkoku" />。
* 社会科や図画工作などで[[勾玉]]づくりの教材にも利用されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20211221151315/http://wwwc.osaka-c.ed.jp/kate/rika/kyozai/rika_handbook.pdf |title=小学校理科ハンドブック |publisher=大阪府教育センター |accessdate=2021-03-09}}</ref>。
* 利尿作用、消炎作用があるとされ、[[中国]]では硬滑石の名で用いられる。一方、[[猪苓湯]]（ちょれいとう）、[[防風通聖散]]（ぼうふうつうしょうさん）などの[[漢方薬]]に配合されるのは、[[ハロイサイト]]、[[カオリナイト|カオリン]]などからなる軟滑石である。第十六改正[[日本薬局方]]には「カッセキ」の項に「本品は鉱物学上の滑石とは異なる」と記載されている。
* 悪性[[胸水]]患者に対する[[胸膜癒着術]]に用いられる。日本における製品名は「ユニタルク」（製造販売：[[ノーベルファーマ]]）。

=== 安全性 ===
滑石（タルク）自体は[[アスベスト]]（石綿）とは異なるものだが、産地によってはこれらの有害な物質が含まれている場合があることが知られている<ref name="kitahara" /><ref name="mhlw" />。品質により含有量は大きく変わるが、不純物としてアスベストを含有することで[[中皮腫]]を誘発することがある<ref>[https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/s1116-12e.html 石綿による疾病の認定基準の運用上の留意点について 2「石綿ばく露作業」について] 厚生労働省労働基準局（2003年9月19日）2020年11月2日閲覧</ref>。

== 滑石（岩石） ==
'''滑石'''<!--（かっせき）-->は、[[輝石]]、[[角閃石]]、[[カンラン石]]といった[[マグネシウム]]の[[ケイ酸塩]]を主成分とする鉱物から成る岩石が[[熱水変成]]して生じる[[変成岩]]であり、前述の鉱物を主成分とし、他の鉱物と混ざった状態で産出することが多い。<!--熱水変成の過程で[[金]]を含むようになったものもあり、ろう石鉱山が埋蔵量の大半をろう石として出荷した後に、それが多量の金を含む高品位の金鉱石であることが判明した例もある。--><!--これは坂越大泊鉱山のことと思いますが、件の鉱山で金を含んでいたのはろう石中の石英脈だったそうです-->

== 産出地 ==
=== 国外 ===
世界最大の滑石の産出国は[[中国]]である。2013年には220万トンを産出し、これは2位の[[インド]]（66万3千トン）の3倍以上にあたる。ほかに[[ブラジル]]や[[アメリカ合衆国]]が主要な産出国である<ref>{{citation|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5610800/|title=Occupational Exposure to Talc Increases the Risk of Lung Cancer: A Meta-Analysis of Occupational Cohort Studies|first=Che-Jui |last=Chang |first2=Yu-Kang |last2=Tu |first3=Pau-Chung |last3=Chen |first4=Hsiao-Yu last4=Yang|journal=Canadian Respiratory Journal|year=2017|doi=10.1155/2017/1270608}}</ref>。

{{仮リンク|グローバル・ウィットネス|en|Global Witness}}のレポートによれば、[[アフガニスタン]]の[[ナンガルハール州]]から産出される滑石は[[ISIL]]の資金源にあてられている[[紛争鉱物]]である<ref>{{cite news|url=https://www.reuters.com/article/world/baby-powder-helping-fund-islamic-state-in-afghanistan-report-idUSKCN1IN26E/|title=Baby powder helping fund Islamic State in Afghanistan - report|date=2018-05-23|work=[[ロイター|Reuters]]}}</ref>。

=== 国内 ===
[[北海道]][[松前]]、[[茨城県]][[日立市]] など<ref>{{Cite web|和書|title=アスベスト混入タルク問題・ベビーパウダー問題の原点1987年そして1975年|url=https://joshrc.net/archives/2453|date=2020-05-24|accessdate=2021-07-19|publisher=全国労働安全衛生センター連絡会議}}</ref>

== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* [[黒田吉益]]・[[諏訪兼位]]『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』[[共立出版]]、1983年、{{ISBN2|4-320-04578-5}}。
* [[松原聰]]『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物 [[学研ホールディングス|学習研究社]]、2003年、{{ISBN2|4-05-402013-5}}。
* [[国立天文台]] 編『[[理科年表]] 平成19年』[[丸善]]、2006年、{{ISBN2|4-621-07763-5}}。

== 関連項目 ==
* [[鉱物]] - [[ケイ酸塩鉱物]]
* [[鉱物の一覧]] - [[鉱物の一覧#ケイ酸塩鉱物|ケイ酸塩鉱物]] - フィロケイ酸塩鉱物
* [[ろう石]]
* [[四条天皇]] - 滑石を使ったいたずらが原因で死亡した
* [[滑石製石鍋]]
* [[ケイ酸マグネシウム]]

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Talc}}
* [https://www.mindat.org/min-3875.html Talc]（mindat.org）
* [https://www.webmineral.com/data/Talc.shtml Talc Mineral Data]（webmineral.com）

{{モース硬度}}
{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:かつせき}}
[[Category:マグネシウム鉱物]]
[[Category:フィロケイ酸塩鉱物]]
[[Category:体質顔料]]
[[Category:発光鉱物]]