熱雑音のソースを表示

'''熱雑音'''（ねつざつおん、{{lang-en-short|thermal noise}}）は、抵抗体内の[[自由電子]]の不規則な[[熱]]振動（[[ブラウン運動]]<ref>{{cite book
 | title = 計測のためのアナログ回路設計
 | author = 遠坂俊昭
 | publisher = CQ出版社
 | year = 1997
 | isbn = 978-4-7898-3284-7
 | page = 15
}}</ref>）によって生じる[[雑音]]のことをいう。[[1927年]]にこの現象を発見した二人の[[ベル研究所]]の研究者[[ジョン・バートランド・ジョンソン]]及び[[ハリー・ナイキスト]]の名前から'''ジョンソン・ノイズ'''または'''ジョンソン-ナイキスト・ノイズ'''とも呼ばれる。

[[抵抗体]]内で発生する雑音の[[電圧]]''V''<sub>n</sub> [V]<ref>{{cite book
 | title = 基礎電気電子計測
 | author = 菅野 允
 | publisher = コロナ社
 | year = 1986
 | isbn = 4-339-00418-9
 | page = 123
}}</ref>、[[電流]]''I''<sub>n</sub> [A]は次式で与えられる。

:<math>V_\mathrm{n} = \sqrt{4k_\mathrm{B}TR \Delta f}</math>
:<math>I_\mathrm{n} = \sqrt{4k_\mathrm{B}T \Delta f\over R}</math>

ここで''k'' <sub>B</sub> は[[ボルツマン定数]][JK{{sup-|1}}]、''T'' は[[導体]]の[[温度]]<nowiki>[</nowiki>[[ケルビン|K]]]、&Delta;''f'' は[[帯域幅]][Hz]、''R'' は[[抵抗値]][&Omega;]である。

従ってノイズの大きさ''P''<sub>n</sub> [W]は次式で与えられる。
:<math>P_\mathrm{n} = V_\mathrm{n}I_\mathrm{n} = 4k_{\rm B}T \Delta f</math>

また、雑音元([[信号 (電気工学)|信号]]元)から回路に入力される雑音[[電力]]を入力雑音電力と言い、[[電気通信]]分野での[[増幅器]]雑音計算には専らこちらが使用される。入力雑音電力''N'' <sub>i</sub> [W]は次式で与えられる。
:<math>N_\mathrm{i} = k_\mathrm{B}T \Delta f</math>
入力雑音電力がこの数式で与えられるのは、雑音元を、起電力が上記の<math>V_{\rm n}</math>、内部抵抗が<math>R</math>の電源と考え、負荷につないだときに負荷で消費される電力として計算するからである。入力された電力を、反射することなく負荷で完全に消費するには、負荷のインピーダンスが<math>R</math>である必要があり、その結果として上記の入力雑音電力<math>N_\mathrm{i}</math>が導出される。

ノイズの大きさは[[温度]]で決まる。[[室温]]（300[K]）のノイズ（入力雑音電力）の大きさ''P'' を[[デシベル]]単位([[dBm]])で表すと
:<math>P = -174 + 10 \log(\Delta f)</math>
である。

熱雑音が問題になるような領域は極めて小さい信号を扱う場合で、そのような場合は、増幅器を極低温まで冷却して極限まで雑音性能を高めることなどがされる。

熱雑音が有効活用される例として、[[コンピュータ]]の[[ハードウェア乱数生成器|乱数発生器]]に熱雑音を用いる物がある。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{reflist}}

== 関連項目 ==
* [[雑音温度]]
* [[揺動散逸定理]]
* [[ショット雑音]]
* [[ピンクノイズ]]
* [[ブラウン運動]]
* [[ハリー・ナイキスト]]
* [[ジョン・バートランド・ジョンソン]]

{{DEFAULTSORT:ねつさつおん}}
[[category:電磁気学]]
[[category:統計力学]]
[[category:熱]]
[[category:乱数]]
[[category:ノイズ]]
[[Category:ハリー・ナイキスト]]