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[[確率論]]や[[統計学]]において、'''独立同分布に従う'''(どくりつどうぶんぷにしたがう、{{lang-en-short|be independent and identically distributed; '''IID''', '''i.i.d.''', '''iid'''}})とは、2つ以上の[[確率変数]]がそれぞれ全く同じ[[確率分布]]に従っていて、かつ互いに[[独立 (確率論)|独立]]している状態のことを指す。「独立同分布({{lang-en-short|independent and identical distribution}})」という名称の確率分布があるわけではない。 たとえば、1つの[[母集団]]から <math>n</math> 個の[[標本 (統計学)|標本]]を[[復元抽出]]した場合、それら <math>n</math> 個の確率変数は、すべて独立同分布に従っている。 IIDという注記は[[統計]]において特に一般的であり、[[推計統計学]]の目的のために、しばしば[[標本 (統計学)|標本]]中の観測値が効果的にIIDであると仮定される。観測値がIIDであるという前提(または要件)により、多くの統計的方法の基礎となる[[数学]]が単純化される傾向がある({{仮リンク|数理統計学|en|mathematical statistics|redirect=1}}および{{仮リンク|統計理論|en|statistical theory}}を参照)。しかし、[[統計モデル]]の実際の応用においては、この仮定が現実的である場合とそうでない場合がある。与えられた[[データ]]の集合上でこの仮定がどれほど現実的であるかをテストするために、{{仮リンク|コレログラム|en|Correlogram}}を書いたり{{仮リンク|ターニングポイントテスト|en|Turning point test}}をすることで、[[自己相関]]を計算することができる<ref>{{cite book | title = Performance Evaluation Of Computer And Communication Systems | first = Jean-Yves | last = Le Boudec | isbn = 978-2-940222-40-7 | year=2010 | publisher =[[EPFL Press]]| url = http://infoscience.epfl.ch/record/146812/files/perfPublisherVersion.pdf |pages=46-47}}</ref>。{{仮リンク|交換可能な確率変数|en|exchangeable random variables}}の一般化はしばしば十分であり、より容易に満たされる。 この仮定は、「[[有限]]の[[分散 (確率論)|分散]]を有するIIDな変数の和(または平均)の確率分布は、[[正規分布]]に近づく」という[[中心極限定理]]の古典的な形式において、非常に重要である。 IIDは確率変数の列を参照することに注意が必要である。独立同分布とは、列内の要素が、その要素の前の確率変数とは独立していることを意味する。このように、IIDの列は[[マルコフ連鎖|マルコフ過程]]とは異なる。マルコフ過程では、''n'' 番目の確率変数の確率分布は、列内の前の確率変数の関数である(1次マルコフ過程の場合)。IIDの列は、[[標本空間]]または[[イベント空間]]の全ての要素の確率が同じでなければならないということを意味しない<ref>{{cite book|last=Cover|first=Thomas|title=Elements Of Information Theory|year=2006|publisher=Wiley-Interscience|isbn=978-0-471-24195-9|pages=57–58}}</ref>。例えば、[[いかさま]][[サイコロ]]を繰返し投げた場合、結果が偏っているにもかかわらず、IIDである列が生成される。 ==定義== 確率変数を <math>\mathbb{I} \subseteq \mathbb{R}</math> の値を取ると定義する。 <math>P[x \geq X]=P[x \geq Y], \, \forall x \in \mathbb{I}</math> [[同値|の時かつその時に限り]]、2つの確率変数 <math>X</math> と <math>Y</math> は '''同一分布に従う'''(identically distributed)という。 <math>P[x \geq Y]=P[x \geq Y | x \geq X] \land P[x \geq X]=P[x \geq X | x \geq Y] \, \forall x \in \mathbb{I}</math> の時かつその時に限り、2つの確率変数 <math>X</math> と <math>Y</math> は'''独立'''(independent)であるという。[[独立 (確率論)#確率変数の独立]]も参照。 ==例== ===モデリングでの使用=== 以下に挙げるは、IID確率変数の例または適用例である。 *公正または不正な[[ルーレット]]の出目の列はIIDである。例えば、ルーレットのボールが20回連続して「赤」に入ったとしても、次にルーレットを回した時に「黒」に入る確率は、高くも低くもなっていない([[ギャンブラーの誤謬]]を参照)。 *公正または不正な[[サイコロ]]の出目の列はIIDである。 *[[公正なコイン|公正]]または不正な[[コイントス]]の結果の列はIIDである。 *[[信号処理]]と[[画像処理]]では、IIDへの変換という概念は、ID(同一分布)部分とI(独立)部分の2つの仕様を意味する。 **ID: 信号レベルは時間軸上で平衡しなければならない。 **I: 信号スペクトルは平坦化されなければならない。すなわち、フィルタリング([[逆畳み込み]]など)によって[[ホワイトノイズ|白色]]信号(全ての周波数が等しく存在するもの)に変換されなければならない。 ===推論での使用=== *最も簡単な統計検定の1つである[[Z検定|''z''検定]]は 、確率変数の[[平均]]に関する[[帰無仮説|仮説]]を検定するために使用される。''z''検定を使用するとき、[[中心極限定理]]の条件を満たすために、全ての観測値がIIDであると仮定する(IIDであることが要求される)。 ==一般化== 確率変数がIIDであるという仮定の下で証明された多くの結果は、より弱い分布仮定の下でも真であることが示されている。 ===交換可能な確率変数=== {{Main|en:Exchangeable random variables}} IID変数の主な特性を共有する最も一般的な概念は、[[ブルーノ・デ・フィネッティ]]によって導入された{{仮リンク|交換可能な確率変数|en|exchangeable random variables}}である。交換可能性とは、変数が独立していない可能性はあるが、将来のものは過去のものと同じように振る舞う(正式には、有限な列の値はそれらの値の順列と同じである)ことを意味する。[[同時分布]]は[[対称群]]の下で不変である。 これは有益な一般化を提供する。例えば、[[無作為抽出|置換を伴わない標本化]]は独立ではなく、交換可能である。これは、[[ベイズ統計学]]で広く使用されている。 ===レヴィ過程=== {{Main|独立増分過程#レヴィ過程}} [[確率解析]]では、IID変数は{{仮リンク|離散時間と連続時間|en|Discrete time and continuous time|label=離散時間}}[[独立増分過程#レヴィ過程|レヴィ過程]]と見なされる。各変数は、ある時刻から別の時刻の間にどれだけ変化するかを示す。例えば、[[ベルヌーイ試行]]の列は、[[ベルヌーイ過程]]と解釈される。これを一般化して、連続時間レヴィ過程を含めることができ、多くのレヴィ過程はIID変数の限界として見ることができる。例えば、[[ウィーナー過程]]はベルヌーイ過程の限界である。 ==ホワイトノイズ== [[ホワイトノイズ]]は、IIDの単純な例である。 ==関連項目== *[[デ・フィネッティの定理]] *[[自然の斉一性]]([[標本 (統計学)|「標本]]中の観測値が効果的にIIDであると仮定される」と関連) == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} {{確率論}} {{DEFAULTSORT:とくりつとうふんふ}} [[Category:確率論]] [[Category:統計学]] [[Category:数学に関する記事]]
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