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[[File:Orthogonal Decomposition qtl1.svg|300px|thumb|反射的双線型形式が部分空間 ''U'' 上で非退化ならば直和分解が成り立つ<ref>{{google books|CcM8_iiGPxAC|Bilinear Algebra: An Introduction to the Algebraic Theory of Quadratic Forms|page=54}}</ref>。]] [[数学]]の[[線型代数学]]および[[関数解析学]]の分野において、[[部分線型空間]]の'''直交補空間'''(ちょっこうほくうかん、{{Lang-en-short|orthogonal complement, perpendicular complement}}; '''perp''')とは、その部分空間内のすべてのベクトルと[[直交]]するようなベクトル全体の成す集合を言い、直交補空間はそれ自身部分線型空間を成す。 == 一般の双線型形式に関する場合 == [[可換体|体]] {{mvar|F}} 上のベクトル空間 {{mvar|V}} が[[双線型形式]] {{mvar|B}} を持つとする。{{math|1=''B''(''u'',''v'') = 0}} が成り立つとき、{{mvar|B}} に関して {{mvar|u}} は {{mvar|v}} に左直交(left-orthogonal)および {{mvar|v}} は {{mvar|u}} に右直交(right-orthogonal)であると定義する。{{mvar|V}} の部分集合 {{mvar|W}} に対して、その左直交補空間(left orthogonal complement){{math|''W''{{msup|⊥}}}} を、 : <math>W^\bot=\{x \in V : B( x, y ) = 0\ ({}^{\forall} y \in W)\}</math> で定義する。同様に、右直交補空間(right orthogonal complement)も定義される。 [[反射的双線型形式]](すなわち {{mvar|V}} において任意の {{mvar|u, v}} に対して {{math|1=''B''(''u'',''v'') = 0 ⇒ ''B''(''v'',''u'') = 0}} が成り立つような双線型形式 {{mvar|B}})に対しては左右の直交補空間は一致する。{{mvar|B}} が[[対称双線型形式]]や[[歪対称双線型形式]]の場合はこれにあたる。 {{seealso|二次空間}} この定義は[[可換環]]上の[[自由加群]]において定義される双線型形式に対するものへ拡張することができる。また({{仮リンク|共役元 (体論)|label=共役|en|conjugate element (field theory)}}を持つ可換環上の任意の自由加群上で定義される意味での)[[半双線型形式]]に対しても拡張される{{sfn|Adkins|Weintraub|1992|p=359}}。 === 性質 === * 直交補空間は、{{mvar|V}} の部分空間である; * {{math|''X'' ⊆ ''Y''}} ならば {{math|''X''{{msup|⊥}} ⊇ ''Y''{{msup|⊥}}}} が成立する; * {{mvar|V}} の(あるいは {{mvar|B}} の)[[二次空間の根基|根基]] {{math|''V''{{msup|⊥}}}} は、任意の直交補空間の部分空間である; * {{math|''W''{{msup|⊥⊥}} ⊇ ''W''}} が成立する; * {{mvar|B}} が[[退化形式|非退化]]かつ {{mvar|V}} が有限次元ならば、{{math|1=dim ''W'' + dim ''W''{{msup|⊥}} = dim ''V''}} が成立する。 == 例 == [[特殊相対性理論]]において、直交補空間は[[世界線]]のある点における同時超平面を決定するために用いられる。[[ミンコフスキー空間]]で用いられる双線型形式 {{mvar|η}} は、事象の{{仮リンク|擬ユークリッド空間|en|pseudo-Euclidean space}}を決定する。[[光円錐]]上の原点とすべての事象は、自己直交である。双線型形式のもとで[[時間]]事象と[[空間]]事象がゼロと評価されるとき、それらは{{仮リンク|双曲直交性|label=双曲直交|en|Hyperbolic orthogonality}}である。この用語は、擬ユークリッド空間における二つの共役双曲線の使用に由来する。すなわち、それらの双曲線の{{仮リンク|共役直径|en|conjugate diameters}}は、双曲直交である。 == 内積空間の場合 == この節では、[[内積空間]]における直交補空間{{sfn|Adkins|Weintraub|1992|p=272}}を考える。このとき直交補空間は実際に[[補空間]]となる。 === 性質 === 距離位相において、直交補空間は常に閉集合である。有限次元空間においては、このことは単にベクトル空間のすべての部分空間が閉集合である事実の特別な例である。無限次元[[ヒルベルト空間]]においては、いくつかの部分空間は閉集合でないが、直交補空間はすべて閉集合である。そのような空間においては、{{mvar|W}} の直交補空間の直交補空間は、{{mvar|W}} の[[閉包 (位相空間論)|閉包]]に等しい。すなわち、 : {{math|1=(''W''{{msup|⊥}}){{msup|⊥}} = ''{{overline|W}}''}} が成立する。いくつかの常に成立するような便利な性質として、次が挙げられる。{{mvar|H}} をヒルベルト空間とし、{{mvar|X}} と {{mvar|Y}} をその線型部分空間とする。このとき、 * {{math|1=''X''{{msup|⊥}} = {{overline|''X''}}{{msup|⊥}}}}; * {{math|''Y'' ⊆ ''X''}} ならば {{math|''X''{{msup|⊥}} ⊆ ''Y''{{msup|⊥}}}} が成立する; * {{math|1=''X'' ∩ ''X''{{msup|⊥}} = {{mset|0}}}}; * {{math|''X'' ⊆ (''X''{{msup|⊥}}){{msup|⊥}}}}; * {{mvar|X}} が {{mvar|H}} の閉線型部分空間ならば、{{math|1=(''X''{{msup|⊥}}){{msup|⊥}} = ''X''}} が成立する; * {{mvar|X}} が {{mvar|H}} の閉線型部分空間ならば、{{math|1=''H'' = ''X'' ⊕ ''X''{{msup|⊥}}}}(内部[[直和]])。 が成立する。 直交補空間は[[零化域]]へ一般化され、内積空間の部分空間上の{{仮リンク|ガロア対応|en|Galois connection}}を、対応する{{仮リンク|閉包作用素|en|closure operator}}とともに与える。 === 有限次元 === 次元 {{mvar|n}} の有限次元内積空間に対して、{{mvar|k}}-次元部分空間の直交補空間は、{{math|(''n'' − ''k'')}}-次元部分空間であり、二重直交補空間は、もとの部分空間と等しい。すなわち、 : {{math|1=(''W''{{msup|⊥}}){{msup|⊥}} = ''W''}} が成立する。{{mvar|A}} が {{math|''m'' × ''n''}} 行列で、{{math|Row ''A''}}、{{math|Col ''A''}}および{{math|Null ''A''}} がそれぞれ[[行空間]]、[[列空間]]および[[零空間]]を表すとき、 : {{math|1=(Row ''A''){{msup|⊥}} = Null ''A''}} : {{math|1=(Col ''A''){{msup|⊥}} = Null {{msup|''t''}}''A''}} が成立する。 == バナッハ空間の場合 == 一般の[[バナッハ空間]]においても直交補空間と呼べる概念を自然に考えることができる。{{math|''V''{{msup|∗}}}} を {{mvar|V}} の[[双対空間]]とするとき、この場合の {{mvar|W}} の直交補空間は、上と同様に零化域 : <math>W^\bot = \{x\in V^* : \forall y\in W, x(y) = 0\}</math> として定義される {{math|''V''{{msup|∗}}}} の部分空間を言う。これは常に {{math|''V''{{msup|∗}}}} の閉部分空間である。二重補性質についても述べることができ、いまの場合 {{math|''W''{{msup|⊥⊥}}}} は {{math|''V''{{msup|∗∗}}}}({{mvar|V}} とは一致しない)の部分空間ということになるが、[[回帰的空間]]の場合には {{mvar|V}} と {{math|''V''{{msup|∗∗}}}} の間の[[自然変換|自然]][[同型写像|同型]] {{mvar|i}} が存在して、 :<math>i\overline{W} = W^{\bot\bot} </math> が成立する。これはむしろ[[ハーン-バナッハの定理]]の自然な帰結である。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist|2}} == 参考文献 == * {{citation | last1=Adkins | first1=William A. | last2=Weintraub | first2=Steven H. | title=Algebra: An Approach via Module Theory | series=[[Graduate Texts in Mathematics]] | volume=136 | publisher=[[Springer-Verlag]] | year=1992 | isbn=3-540-97839-9 | zbl=0768.00003 }} * {{Citation | last1=Halmos | first1=Paul R. | author1-link=:en:Paul R. Halmos | title=Finite-dimensional vector spaces | series=Undergraduate Texts in Mathematics | publisher=[[Springer-Verlag]] | location=Berlin, New York | isbn=978-0-387-90093-3 | year=1974 | zbl=0288.15002 }} * {{citation | first1=J. | last1=Milnor | author1-link=ジョン・ウィラード・ミルナー| first2=D. | last2=Husemoller | title=Symmetric Bilinear Forms | series=[[:en:Ergebnisse der Mathematik und ihrer Grenzgebiete|Ergebnisse der Mathematik und ihrer Grenzgebiete]] | volume=73 | publisher=[[Springer-Verlag]] | year=1973 | isbn=3-540-06009-X | zbl=0292.10016 }} == 関連項目 == * [[法線ベクトル]] * [[可補束]] == 外部リンク == *[http://khanexercises.appspot.com/video?v=QOTjdgmNqlg Instructional video describing orthogonal complements (Khan Academy)] {{Linear algebra}} {{DEFAULTSORT:ちよつこうほくうかん}} [[Category:線型代数学]] [[Category:関数解析学]] [[Category:数学に関する記事]]
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