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{{変調方式}} {{多重化}} '''直交位相振幅変調'''(ちょっこういそうしんぷくへんちょう、{{lang-en-short|quadrature amplitude modulation}} : '''QAM''')は、互いに独立な2つの[[搬送波]](すなわち同相(in-phase)搬送波及び[[直交位相]](quadrature)搬送波)の[[振幅]]を変更・調整することによってデータを伝達する[[変調方式]]である。 これらの2つの搬送波(通常は[[シヌソイド]])は、90°により互いに[[直交位相]]関係にある。 *表題は直角位相振幅変調となっているが、[[総務省]]をはじめとして、'''直交振幅変調'''(ちょっこうしんぷくへんちょう)と呼ばれる。 <!--(なおquadratureの訳語として[[直交位相]]の代わりに,[[直交位相]]もしくは[[直交]]と呼ばれる。)--> ==概要== ほかの変調方式同様、QAM変調も、データ信号に応じて搬送波信号または搬送波(通常、シヌソイド)の何らかの局面を変更する事によって、データを伝達する。 QAM変調の場合、データ信号を表すために、[[直角位相]]関係にある2つの搬送波の振幅が変わる。 <!-- 互いに位相のずれが90度で直交している--> QAM変調は、[[振幅偏移変調]](ASK)と[[位相偏移変調]](PSK)の組み合わせである{{仮リンク|振幅位相偏移変調|en|Amplitude and phase-shift keying}}(APSK)の一つである。 ==アナログQAM== [[Image:PAL_colour_bar_signal_measured_vector_edit.svg|200px|right|thumb|アナログQAM: ベクトルアナライザースクリーンで測定したPAL色バー信号。]] QAM変調で2つの信号を伝送した時の、送信信号は以下のようになる。 :<math>\ s(t) = I (t) \cos (2 \pi f_0 t) + Q (t) \sin (2 \pi f_0 t)</math>, <math>I(t)</math>と<math>Q(t)</math>は変調信号で、<math>f_0</math>は変調周波数を意味する。 受信機では、これら2つの変調した信号は[[プロダクト検波|コヒーレント復調器]]を使うことによって復調できる。 受信した<math>I(t)</math>と<math>Q(t)</math>の判断を生成するために、[[三角関数|余弦]]および[[三角関数|正弦]]信号の両方を別々にそれぞれかける。 搬送信号の直交性のために、変調信号を独立して検出することが可能である。 理想的な場合、<math>I(t)</math>は送信信号に[[三角関数|余弦]]信号を掛けることにより復調される: :<math> \begin{align} r_i(t) = & s(t) \cos (2 \pi f_0 t) \\ = & I(t) \cos (2 \pi f_0 t)\cos (2 \pi f_0 t) + Q(t) \sin (2 \pi f_0 t)\cos (2 \pi f_0 t) \end{align} </math> 標準的な[[三角恒等式]]を使用して、以下のように書き直せる: :<math> \begin{align} r_i(t) = & \frac{1}{2} I(t) \left[1 + \cos (4 \pi f_0 t)\right] + \frac{1}{2} Q(t) \sin (4 \pi f_0 t) \\ = & \frac{1}{2} I(t) + \frac{1}{2} [I(t) \cos (4 \pi f_0 t) + Q(t) \sin (4 \pi f_0 t)] \end{align} </math> [[ローパスフィルタ]]<math>r_i(t)</math>は高い[[周波数]]成分(<math>4\pi f_0 t</math>を含む)を取り除き、<math>I(t)</math>成分だけ残すことができる。 このフィルターに通された信号は<math>Q(t)</math>の影響を受けない、これは同相成分は[[直角位相]]成分の独立性を受け取ることができる事を示す。 同様に、<math>Q(t)</math>を取り出すために、正弦波を掛け合わせてローパスフィルタを使う。 ここで、受信機において受信信号の位相がわかっている事に、注意しなければならない。 もし復調した信号の位相が少しでもずれていれば、変調信号どうしが妨害源になる。 受信機における搬送波の[[同期]]のこの問題は、QAMシステムにおいてはどうかして扱わなければならない。 コヒーレント復調器は正確に受信信号と同期している必要がある、そうでなければ変調信号は独立して受信することができない。 たとえば、アナログ・テレビジョン方式は、参照のための各水平同期パルスの後に送信する色搬送波を伝達する。 アナログQAMは[[NTSC]]と[[PAL]]テレビジョン方式で使われており、IおよびQ信号は[[彩度]]([[色]])情報の構成要素を伝達する。 C-QAM({{lang-en|compatible QAM}})は[[AMステレオ放送|AMステレオラジオ]]に使われており、ステレオ差信号を搬送している。 ===QAMのフーリエ解析=== [[周波数領域]]において、QAMはDSB-SC変調と似たような[[スペクトル]]パターンを持っている。 [[フーリエ変換]]を用いて、以下のことがわかる。 :<math> S(f) = \frac{1}{2}\left[ M_I(f - f_0) + M_I(f + f_0) \right] + \frac{1}{2j}\left[ M_Q(f - f_0) + M_Q(f + f_0) \right] </math> ''S''(''f''), ''M''<sub>''I''</sub>(''f'') そして ''M''<sub>''Q''</sub>(''f'') は、それぞれ''s''(''t''), ''I''(''t'') そして ''Q''(''t'')のフーリエ変換を意味する。 ==量子化されたQAM== 多くのデジタル変調方式と同様に、[[信号空間ダイヤグラム]](コンスタレーション)は役に立つ。QAM変調の場合、通常信号点は等しい垂直と水平の間隔で正方形の[[格子]]に配置される、しかしその他の構成も可能である(例えば {{lang|en|Cross-QAM}})。 デジタル[[電気通信]]において、データは通常[[バイナリ]]であるので、[[格子]]の点の数は通常2の累乗である(2,4,8,16...)。QAM変調は通常四角形である(但し、後述の128QAMはnon-square QAM、すなわち正方形ではない)。最も一般的な形は、16QAM、64QAM、128QAMそして256QAMである。 高次モードに移行することで、1シンボルあたりのビットを多く伝送することができる。しかしながら、信号点の平均電力が同じの場合(公平に比較するため)、信号点はより接近することになり、[[雑音]]およびその他の妨害により弱くなり、結果として[[符号誤り率]]が高くなる。そのため信号点の平均電力が同じであれば、高次QAMは低次QAMに比べて低い信頼性で多くのデータを伝送することができる。別の言い方をすると、高次のQAMは信号点が多く確保でき伝送速度向上に資するものの、信号点距離は短くなる。これは干渉が生じやすくなり符号誤り率が高まることになる。 8[[位相偏移変調|PSK]]が提供するより、16PSK以上の高いデータ信号速度が必要なときには、QAMは信号点をより均一に割り当てるためにI-Q平面上で近傍の点との距離をより確保できるので、QAMに移行するのが一般的である。 複雑にしている要因は、信号点が全て同じ振幅というわけではなくなるということである。これにより復調器は位相のみならず、位相と振幅を正しく検出しなければならなくなる。 64QAMと256QAMが、デジタルケーブルテレビやケーブル[[モデム]]アプリケーションでしばしば使われる。[[アメリカ合衆国|米国]]では、[http://www.scte.org/documents/pdf/ANSISCTE072000DVS031.pdf ANSI/SCTE 07 2000]においてSCTEによって標準化され、64QAMと256QAMがデジタルケーブルの指定された変調方式である。 [[移動体通信]]において、[[Long_Term_Evolution#LTE-Advanced|LTE-Advanced]]では256QAMが商用化されている。次世代の[[第5世代移動通信システム|5G]]では、下り方向(ダウンリンク)で1024QAMの実装が検討されている<ref>[https://www.soumu.go.jp/main_content/000525132.pdf <新世代モバイル通信システム委員会 技術検討作業班(第4回)資料> 5Gに向けた取組状況等について] 総務省(KDDI株式会社説明資料) 2017年12月22日</ref>。 [[イギリス|英国]]では、16QAMと64QAMが、[[地上デジタルテレビジョン放送]]に使われている。({{lang|en|Freeview}} 及び {{lang|en|Top Up TV}})。 更に情報の高度化に対応するため、地上波における[[4K 8Kテレビ放送]]の試みとして、1024QAMならびに4096QAMでの伝送が[[NHK放送技術研究所]]などで開発・公開実験がされているほか、近年開局した4K・8K衛星放送の再送信等によりチャンネル数が逼迫しているケーブルテレビへの採用も検討されている。更に有線での用途では、アメリカ合衆国とカナダではケーブルテレビ用途では(オプション扱いではあるが)16384QAMも規格化され、これらの国の[[ADSL]]回線には32768QAMを用いる物もある。 === 理想的な構造 === ====送信機==== 以下の図はQAM[[送信機]]の理想的な構造を示しており、<math>f_0</math>は搬送波周波数、<math>H_t</math>は送信機のフィルタの[[周波数特性]]である: [[Image:QAM transmitter.svg|center|380px]] 最初に、送信するビットは2つに分けられる、このプロセスで送信する2つの独立した信号を生み出す。それぞれ別々に、[[振幅偏移変調]](ASK)変調で、符号化する。 一方のチャネルが[[正弦波|余弦波]]で乗法するのに対し([[同相]]成分)、他方のチャネルは[[正弦波]]で乗法する([[直角位相]]成分)。このようにして、それぞれの信号の間は90度の[[位相]]が保たれる。 送信信号は以下の式で表せる: :<math> s(t) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} \left[ v_c [n] \cdot h_t (t - n T_s) \cos (2 \pi f_0 t) - v_s [n] \cdot h_t (t - n T_s) \sin (2 \pi f_0 t) \right],</math> ここで<math>v_c[n]</math> と <math>v_s[n]</math>の電圧 は、それぞれ第n番目のシンボルに応じて余弦波と正弦波に適用される。 ==== 受信機 ==== 受信機は、単純に[[送信機]]と逆のプロセスを行う。理想的な構造は、下記の図に示しており、<math>H_r</math>は受信機のフィルタの周波数特性である: [[Image:QAM receiver.svg|center|500px]] 余弦波または正弦波を乗法し、[[低域通過フィルタ]]を通すことによって、[[同相]]成分と[[直角位相]]成分を抽出する構成が可能となる。その後ろにASK復調器があり、そして2つの信号が合成される。 実際には、送信機と受信機の間に未知の位相遅れがあり、受信機のローカルオシレータ(すなわち上数式の正弦および余弦関数)による''[[同期]]''によって補償されなければならない。 モバイル分野では同様に、送信機と受信機の相対的な速さと比例した[[ドップラー効果|ドップラー・シフト]]の存在の可能性があるため、[[オフセット]]が相対度数でしばしばある。 伝送路によって変形させられる位相と周波数の変形は、位相の参照を必要とする正弦波と余弦波を構成する要素で調整することによって、きちんと補償されなければならず、[[位相同期回路]](PLL)を使って典型的に達成される。 == 量子化されたQAMパフォーマンス == 誤り率を測定するにあたり、以下のように定義する: *<math>M</math> = シンボルの数 *<math>E_b</math> = 1[[ビット]]あたりの電力 *<math>E_s</math> = 1シンボルあたりの電力 = <math>kE_b</math>(1シンボルあたりが''k'' ビット) *<math>N_0</math> = ノイズ[[電力スペクトル密度]]( [[ワット|W]] / [[ヘルツ|Hz]] ) *<math>P_b</math> = ビット誤り[[確率|率]](BER: Bit Error Rate) *<math>P_{bc}</math> = 1搬送波あたりのビット誤り率 *<math>P_s</math> = シンボル誤り率(SER: Symbol Error Rate) *<math>P_{sc}</math> = 1搬送波あたりのシンボル誤り率 *<math>Q(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{x}^{\infty}e^{-t^{2}/2}dt,\ x\geq{}0 </math>. <math>Q(x)</math>は以下の[[誤差関数|相補誤差関数]]に関連する: <math>Q(x) = \frac{1}{2}\operatorname{erfc}\left(\frac{x}{\sqrt{2}}\right)</math>, 誤り率は、{{仮リンク|加法的白色ガウス雑音|en|Additive white Gaussian noise}} が引用される。 ===Rectangular QAM=== [[Image:16QAM Gray Coded.svg|200px|right|thumb|16QAMの[[信号空間ダイヤグラム]].]] シンボル誤り率は以下の式で定義される :<math>P_{sc} = 2\left(1 - \frac{1}{\sqrt M}\right)Q\left(\sqrt{\frac{3}{M-1}\frac{E_s}{N_0}}\right)</math>, ここで<math>\,P_s</math>は、 :<math>\,P_s = 1 - \left(1 - P_{sc}\right)^2</math>. ビット誤り率は以下の式で定義される :<math>P_{bc} = \frac{4}{k}\left(1 - \frac{1}{\sqrt M}\right)Q\left(\sqrt{\frac{3k}{M-1}\frac{E_b}{N_0}}\right)</math>, ここで<math>\,P_b</math>は、 :<math>\,P_b = 1 - \left(1 - P_{bc}\right)^2</math>. == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 関連項目 == *[[変調方式]] - [[信号空間ダイヤグラム]] *[[日本の地上デジタルテレビ放送]] - [[ISDB]] *[[位相偏移変調#四位相偏移変調_(QPSK)|QPSK]] == 外部リンク == *[http://www.t.u-tokyo.ac.jp/pdf/2015/20150217_saito.pdf 超小型衛星「ほどよし4号」が50 kg級衛星として世界最高速となる毎秒348メガビットの高速ダウンリンク通信に成功] 2015年2月18日 東京大学 {{Tech-stub}} {{DEFAULTSORT:ちよこうしんふくへんちよう}} [[Category:変調方式]]
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