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[[場の量子論]]において'''真空状態'''(しんくうじょうたい)とは、ある特別な[[基底状態]]の[[状態ベクトル]]を意味する。 == 自由場 == [[自由場]]の量子論では、真空は「粒子の総[[個数演算子]]の[[固有値]]0の[[固有状態]]」として、あるいは「いかなる[[消滅演算子]]を作用させても常に0になるような状態ベクトル」として定義される。 :<math>\hat{a}|0\rangle=0</math> これを特に'''自由真空'''という。自由真空はまた自由場のハミルトニアンの最低エネルギー固有状態としても特徴づけられる。 == 相互作用がある場合 == 相互作用が入ると、相対論的な場の量子論では自由真空はその意義を失う。なぜなら自由真空は相互作用ハミルトニアンの固有状態ではないので、粒子の仮想的な生成消滅すなわち[[真空偏極]]が起こり、もはや定常状態ではあり得ないからである。実際、自由真空を基礎とした[[フォック空間]]では、状態ベクトルを記述できない。これを'''Haag–Kastlerの定理'''という。 [[相互作用表示]]では、この困難を[[断熱仮説]]によって形成的に回避している。 [[ハイゼンベルク表示]]では、自由場と相互作用を分離しないので、真空偏極の問題は存在しない。しかし、個数演算子や消滅演算子が定義できないので、真空<math>|0\rangle</math>を次の性質をもつ状態ベクトルとして抽象的に定義する。 * 全ハミルトニアンの最低エネルギー固有状態である。 * [[並進]]および[[ローレンツ変換]]に対し不変である。 * [[規格化]]可能である。 この<math>|0\rangle</math>を特に'''真の真空'''と呼ぶことがある。真の真空は、一般的に一意的かどうか不明なので、次の2つの立場がある。 * 一意性を要請する立場 * 積極的に一意的でないとして縮退した真空を考える立場 漸近的完全性を仮定する場合には、漸近状態の真空でもって真の真空を定義できる。 なお系の実効ポテンシャルの基底状態のことを真空と呼ぶ人もいるが、これは必ずしも既に述べた場の量子論的な真空とは同義では無い。 == 参考文献 == * 『物理学辞典』 培風館、1984年 {{DEFAULTSORT:しんくうしようたい}} [[Category:場の量子論]] [[Category:時空]]
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