矢印のソースを表示

{{otheruses||Unicodeのブロック|矢印 (Unicodeのブロック)}}
{{redirect|矢じるし|解散した[[お笑い]]コンビ|矢じるし (お笑いコンビ)}}
{{特殊文字}}
'''矢印'''（やじるし、英語:arrow、アロー）とは主に[[方向]]を指し示すのに使われる[[記号]]。代表的なものに'''←'''、'''↑'''、'''→'''、'''↓'''があり、それぞれ[[左]]、[[上]]、[[右]]、[[下]]を表す。

[[画像:Signal LED.jpg|thumb|[[日本]]の[[交通信号機|信号機]]で使われている[[緑色]]左上の矢印。[[車両]]が左前方向に進めることを示す。]]

矢印という名前は読んで字のごとく、[[矢]]を表している。これは矢の、一度特定の方向に放たれたら地面に落ちるまで真っ直ぐに進む性質を想起させるため、世界中で一般的に使われている。

== 矢印の種類 ==
=== 方向 ===
矢印は普通特定の一方向を表すが、ある方向とその反対の方向の両方を表す双方向の矢印も存在する。これは具体的な方向を示す場合よりは対象物・[[概念]]どうしの関係性を示す場合によく使われる。また、[[数学]]などでは図で、「ここからここまでの距離」という意味で使われる事もある。双方向の矢印には、1本の矢印で示すもの（{{JIS2004フォント|↔}}{{Unicode|↕}}）や、2本の矢印がセットになったもの（{{MacJapanese|⇄⇆⇅}}{{MacJapanese|⇵}}）がある。

矢印は二次元で方向を表現しているため、左右や上下を示す場合は分かりやすい{{Sfn|村越愛策|2002|p=44}}。一方で前後を表す場合は工夫が必要なことがあり、例えば道路標識では前方を示す場合はそのまま上向きにしているが、後方を示す場合は矢印を逆U字に曲げた表記が用いられる{{Sfn|村越愛策|2002|p=44}}。

=== 書き方 ===
矢印は、シャフト（[[矢#箆（の）|箆]]）となる[[線分]]の終点にアローヘッド（鏃、[[矢尻]]）を付けた形である。

アローヘッドは、「[[∧]]」形あるいは「[[三角 (記号)|▲]]」が一般的だが、[[二等辺三角形]]、[[凹四角形]]、Λ形の半分だけ、逆ハート型なども使われる。三角形の場合、黒（▲）と白抜き（△）がある。白抜きの場合、シャフトがアローヘッドを突き抜ける場合と、突き抜けずに[[底辺]]から伸びる場合がある。

シャフトには、通常のもの（→）のほか、ダブルトラック（⇒）、トリプルトラック（<span class="Unicode">&#8667;</span>）、白抜き（{{JIS2004フォント|&#8680;}}）、点線（<span class="Unicode">&#8674;</span>）などがある。シャフトの始点に小さな黒丸、短い横棒などのテールをつけることがある。矢印の前後間を表す目的などでシャフトを曲げて表記することも多い。

一方[[指示マーク]]（{{MacJapanese|☜☝☞☟}}）や、アローヘッドのみ（[[三角 (記号)|▲]]、Λなど）を矢印の意味で使用することがある。

多くの場合は矢印の形状によって意味が変わることはないが、[[ソフトウェア工学]]の[[統一モデリング言語|UML]]のような形状によって意味の異なる例も存在する。同じ意味を示す矢印でも、国や地域によってフォルムが変わることもある{{Sfn|村越愛策|2002|p=44}}。

== 用途 ==
=== 進行方向や目的物の方向の指示 ===
道路標識では矢印そのものが意味をなしている（進行できる方向やカーブの形状など）{{Sfn|村越愛策|2002|p=45}}。一方で、施設や設備などの対象物への方向を案内したい場合は矢印と一緒に対象物（記号など）を併記することで案内することもある{{Sfn|村越愛策|2002|p=45}}。

[[羅針盤]]での[[N極]]の示す方向から、矢印の先を[[北]]の方向として示す用途もある。

<gallery>
ファイル:SIGN go straight, Ogikubo 202406.jpg|写真の標識は矢印の向きで進行できる方向を指し示している
ファイル:Aomori station facility guide sign.jpg|矢印と記号・文字を併記することで対象物の方向を指し示した案内板
</gallery>

=== 数学 ===
* [[空間ベクトル|ベクトル]]
** 図表で使う。矢印の長さと向きで、ベクトルの大きさと向きを表す。
** [[変数 (数学)|変数]]記号の上に→を付けてベクトル変数であることを示す。ただし、矢印の代わりに[[太字|ボールド]]を使うことが多い。例: <math>\vec a</math>
** →を上に付けた[[行ベクトル]]と↓を右に付けた列ベクトルを区別することもある。例: <math>\vec a, a_\downarrow</math>。
** 点を表す2つの記号の上に書き、その2点間のベクトルを表す。例: <math>\overrightarrow{bc}</math>。
* 上に付けた{{JIS2004フォント|&harr;}}は[[テンソル]]（あまり一般的ではない）
* →は[[極限]]
* ↑は[[クヌースの矢印表記]]、→は[[コンウェイのチェーン表記]]。
*[[論理演算]]で、⇒・→は[[論理包含演算|論理包含]]（ならば）、⇔・{{JIS2004フォント|&harr;}}は[[同値]] (IFF)、↓・{{Unicode|&#10843;}}は[[否定論理和]] (NOR)、↑・{{Unicode|&#10842;}}は[[否定論理積]] (NAND)
* ⇔は[[合同]]
* {{Unicode|&#10501;・&#10503;}}は[[写像]]、{{Unicode|&#10518;}}はbijective写像（[[全単射]] (bijection) とは別）

===コンピュータ===
* [[マウスカーソル]]など、[[ポインティングデバイス]]の[[カーソル|ポインタ]]。矢印の先端が[[位置]]を表す。典型的には左上向き白抜き矢印（{{Unicode|&#11009;}}）。
* 抽象[[アルゴリズム]]やいくつかの[[プログラミング言語]]で←は[[変数 (プログラミング)|代入]]。[[C言語]]の=、[[Pascal]]の:=に当たる。
* いくつかのプログラミング言語で↑は[[冪乗]]
* [[Z言語]]では、→はtotal function、{{JIS2004フォント|&harr;}}はrelationなど、多くの矢印が使われる。
* [[APL]]では、←はベクトル（[[配列]]）の代入、↓はベクトルの第1要素のドロップなど、多くの矢印が使われる。
* [[コンピュータ]]用[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]のキートップや[[印刷]]物での入力指示で、↑↓→←は[[カーソルキー]]、{{JIS2004フォント|&#8679;}}は[[シフトキー|シフト]]、<span class="Unicode">&#8682;・&#8684;</span>は[[CapsLockキー|Caps]]、{{Unicode|&#8683;}}は[[レベル2ロック]]、{{Unicode|&#8685;}}は[[NumLockキー|Num]]、{{Unicode|&#8686;}}は[[レベル3セレクト]]、{{Unicode|&#8687;}}は[[レベル3ロック]]、{{Unicode|&#8688;}}は[[グループロック]]、{{Unicode|&#8632;・&#8689;}}は[[Homeキー|Home]]、{{Unicode|&#8690;}}は[[Endキー|End]]、{{Unicode|&#8691;}}は[[スクロール]]、<span class="Unicode">&#8629;・{{JIS2004フォント|&#9166;}}</span>（[[リターン記号]]）は[[リターンキー]]。{{仮リンク|ISO/IEC 9995-7|en|ISO/IEC 9995-7}}で定義されているものもある。
* <span class="Unicode">&#8609;</span>は[[改ページ]]、<span class="Unicode">&#8628;</span>は[[改行]]、<span class="Unicode">&#8629;</span>は改行または[[キャリッジ・リターン|復帰]]
* <span class="Unicode">&#8670;</span>は次[[ページ]]、<span class="Unicode">&#8671;</span>は前ページ
* <span class="Unicode">&#8676;</span>は左[[タブキー|タブ]]、<span class="Unicode">&#8677;</span>は右タブ（ふつうのタブ）

==== UML ====
* [[統一モデリング言語|UML]]では図の種類や形状で意味が異なる。
** [[クラス図]]と[[パッケージ図]]では、実線のシャフトと「△」で示される矢印は汎化を表す。破線のシャフトと「△」で示す矢印は実現を表す。実線のシャフトと「∧」で示す矢印は関連を表す。破線のシャフトと「∧」で示す矢印は依存を表す。
** [[アクティビティ図]]では、実線のシャフトと「∧」で示す矢印はコントロールフローを表す。破線のシャフトと「∧」で示す矢印はオブジェクトフローを表す。
** [[ステートマシン図]]([[:en:UML state machine]])では、実線のシャフトと「∧」で示す矢印は状態の遷移を表す。
** [[シーケンス図]]と{{仮リンク|コミュニケーション図|en|Communication diagram}}では、実線のシャフトと「▲」で示す矢印は同期メッセージ、実線のシャフトと「∧」で示す矢印は非同期メッセージを表す。破線のシャフトと「∧」で示す矢印は応答メッセージを表す。

=== 言語学、文学、作品 ===
* 若者などを中心に[[約物]]として[[長音符]]（ー）の代わりに用いることがある。例: 「超」を「ちょ→」。{{JIS2004フォント|&#10548;}}で浮かれた口調、{{JIS2004フォント|&#10549;}}で沈んだ口調を表すこともあり、これらは長音符を使わない場面でも使われる。
* [[国際音声記号|IPA]]では、↑は[[呼気]]（[[wikt:呼気]]）、↓は[[吸気]]、{{Unicode|&nbsp;&#845;}}（文字の下の{{JIS2004フォント|&harr;}}）はlabial spreading、{{Unicode|&nbsp;&#846;}}（文字の下の↑）はwhisled articulation
* 話し手と聞き手の関係を矢印を用いて表すことがある。（A→Bは、Aが話し手でBが聞き手）
* 一部の画像・映像作品においては、矢印が男性器を暗喩することがある。

=== 理化学 ===
* [[化学反応式]]で→は[[不可逆反応]]。{{JIS2004フォント|&harr;}}は[[可逆反応]]。
* [[化学反応式]]で↑は[[気体]]発生、↓は[[析出]]物質。（例） Zn+2HCl→H<sub>2</sub>↑+ZnCl<sub>2</sub>↓
* [[回路図]]で<span class="Unicode">↗</span>は可変（可変[[抵抗器|抵抗]]、可変[[コンデンサ]]など）
*<span class="Unicode">↯</span>は[[電気分解]]
*国際[[天気図]]記号で{{ARIB外字フォント|&#9889;}}は[[雷光]]、{{Unicode|&#9736;}}は[[雷鳴]]、{{JIS2004フォント|&harr;}}は[[細氷]]

=== その他 ===
* [[時刻表]]で<span class="Unicode">&#8642;</span>は[[列車]]の進む向き
* [[占星術]]で<span class="Unicode">&#9808;</span>は[[人馬宮]]（[[いて座]]）、[[雄記号|♂]]は[[火星]]
* {{絵文字フォント|&#9842;}}・{{絵文字フォント|&#9850;}}などの[[ユニバーサルリサイクルシンボル|リサイクルマーク]]は、3つの循環する矢印で構成されている。

== 矢印の代用 ==
[[ASCII]]に矢印は含まれていないため、ASCII環境ではアローヘッドを模した^（[[サーカムフレックス]]） [[v]]（ブイ） &lt; &gt;（[[不等号]]）で代用されることがある。横向き矢印は&lt;- -&gt;で表されることもある。

いくつかの[[マークアップ言語]]では、^と_（[[アンダースコア]]）で上付き・下付き文字を表す。これは、ASCIIの初期のバージョンには↑と↓が含まれていて、現在のASCIIでそのコードポイントが^と_になっていることに由来する。

[[C言語]]では、-&gt;はアロー演算子と呼ばれ、[[ポインタ (プログラミング)|ポインタ]]が指す[[構造体]]のメンバを表す。また、&lt;&lt;と&gt;&gt;は[[ビットシフト]]を表す。[[C++]]では&lt;&lt;と&gt;&gt;は[[ストリーム (プログラミング)|ストリーム]]入出力も表す。

== 矢印の文字コード一覧 ==
日本語の文字コードを定めた[[JIS X 0213]]に規定されている矢印類の記号と、対応するコードおよび名称を示す。（デフォルトではJIS X 0213コード順）
{{Commons|Arrows}}
{| class="sortable wikitable" style="text-align:center;"
!記号!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!名称
{{CharCode|8594|2192|1-2-10|右向矢印<br /> RIGHTWARDS ARROW|rarr}}
{{CharCode|8592|2190|1-2-11|左向矢印<br /> LEFTWARDS ARROW|larr}}
{{CharCode|8593|2191|1-2-12|上向矢印<br /> UPWARDS ARROW|uarr}}
{{CharCode|8595|2193|1-2-13|下向矢印<br /> DOWNWARDS ARROW|darr}}
{{CharCode|8658|21D2|1-2-45|ならば(合意)<br /> RIGHTWARDS DOUBLE ARROW|rArr}}
{{CharCode|8660|21D4|1-2-46|同値<br /> LEFT RIGHT DOUBLE ARROW|hArr}}
{{CharCode|8596|2194|1-2-81|同等<br /> LEFT RIGHT ARROW|harr|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8599|2197|1-3-5|右上向矢印<br /> NORTH EAST ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8600|2198|1-3-6|右下向矢印<br /> SOUTH EAST ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8598|2196|1-3-7|左上向矢印<br /> NORTH WEST ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8601|2199|1-3-8|左下向矢印<br /> SOUTH WEST ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8644|21C4|1-3-9|右矢印左矢印<br /> RIGHTWARDS ARROW OVER LEFTWARDS ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8680|21E8|1-3-10|右向白矢印<br /> RIGHTWARDS THICK ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8678|21E6|1-3-11|左向白矢印<br /> LEFTWARDS THICK ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8679|21E7|1-3-12|上向白矢印<br /> UPWARDS THICK ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|8681|21E9|1-3-13|下向白矢印<br /> DOWNWARDS THICK ARROW|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|10548|2934|1-3-14|曲がり矢印上がる<br />ARROW POINTING RIGHTWARDS THEN CURVING UPWARDS<ref name="Supplemental Arrows-B">{{Cite web |url=https://www.unicode.org/charts/PDF/U2900.pdf |title=Supplemental Arrows-B |accessdate=2017-06-03 |year=2016 |format=PDF |work=The [[Unicode]] Standard, Version 9.0 |publisher=Unicode, Inc. （[[ユニコードコンソーシアム]]） |language=英語}}</ref>|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|10549|2935|1-3-15|曲がり矢印下がる<br />ARROW POINTING RIGHTWARDS THEN CURVING DOWNWARDS<ref name="Supplemental Arrows-B" />|font=JIS2004フォント}}
{{CharCode|9166|23CE|1-7-94|[[リターン記号]]|font=JIS2004フォント}}
|}

== 歴史 ==
矢印は[[人類]]が[[狩猟]]で[[弓矢]]を開発したのと同時に生まれたと考えられる{{Sfn|村越愛策|2002|p=44}}。[[旧石器時代]]の[[洞窟]]には[[動物]]などの絵とともに矢印と思われるものが数多く残っていた{{Sfn|村越愛策|2002|p=44}}。

== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|ref=harv|author=村越愛策|title=世界のサインとマーク|edition=初版|date=2002-04-30|year=2002|publisher=世界文化社|ISBN=4-418-02404-2}}

{{DEFAULTSORT:やしるし}}
[[Category:記号]]
[[Category:約物]]
[[Category:方向]]
[[Category:論理記号]]
[[Category:ピクトグラム]]