硫酸ナトリウムのソースを表示

{{Infobox_無機化合物
|画像=[[Image:Sodium sulfate.jpg|200px|無水硫酸ナトリウムの結晶]]
|IUPAC名=硫酸ナトリウム
|別名=芒硝<ref name="kagakuyougo1980">{{Citation | ref = none | title = 化学用語辞典 | editor = 化学用語辞典編集委員会 | publisher = 技報堂出版 | year = 1980 | id = 全国書誌番号 80030511}}</ref>、グラウバー塩<ref name="ishiwata1990">{{Citation | ref = none | title = 基本外来語辞典 | editor = [[石綿敏雄]] | publisher = 東京堂出版 | year = 1990 | isbn = 4-490-10272-0}}</ref>
|組成式={{chem|Na|2|SO|4}}
|式量=142.04<ref name="jisk89872006">[[JIS]] K 8987: 2006</ref>
|形状=無色結晶
|結晶構造=[[斜方晶]]
|CAS登録番号=[7757-82-6]（無水物）<br />[7727-73-3]（10水和物）
|密度=2.7
|相=固体
|水への溶解度=4.76 g/100 mL (0 ℃)<br />42.7
|温度=100
|融点=884
|融点注=
|沸点=
|沸点注=
|出典={{ICSC-small|0952}}
}}

'''硫酸ナトリウム'''（りゅうさんナトリウム、sodium sulfate）とは、[[化学式]] {{chem|Na|2|SO|4}} で表される、[[硫酸]]と[[ナトリウム]]との[[塩 (化学)|塩]]である。なお、硫酸ナトリウム10水和物は'''芒硝'''（ぼうしょう）などとも呼ばれ、[[生薬]]の1種として扱われる事もある。また、これが主要な成分として溶解している温泉を、かつて日本では硫酸塩泉の1種の[[芒硝泉]]と呼んでいた。

== 性質 ==
[[Image:SolubilityVsTemperature.png|left|250px|thumbnail|水への[[溶解度]]と、水温との関係。紺色（Na2SO4）が硫酸ナトリウムの溶解度である。32.38 ℃を境に折れ曲がっている。]]

常圧における無水硫酸ナトリウムの融点は884 ℃であり、常温においては無色で、比重2.698の固体として存在する。無水硫酸ナトリウムは[[水]]に可溶で<ref name="jisk89872006" />、水溶液は中性を示す<ref name="jisk89872006" />。

硫酸ナトリウムの[[飽和水溶液]]から常温で結晶化すると、'''硫酸ナトリウム10水和物'''が得られる。[[乾燥#科学|乾燥]]の操作を行わなければ、この状態で存在することが多い。10水和物は'''芒硝'''（ぼうしょう）<ref name="kagakuyougo1980" />、'''グラウバー塩'''<ref name="ishiwata1990" />、'''{{仮リンク|ミラビライト|en|Mirabilite|ru|Глауберова соль}}'''<ref name="yoshida2009">{{Cite journal|和書|journal=セメント・コンクリート論文集|year=2009|volume=63|page=378|last=吉田|first=夏樹|issue=1|publisher=[[セメント協会]]|language=ja|DOI=10.14250/cement.63.378|ISSN=2187-3313|last2=松浪|first2=良夫|last3=永山|first3=勝|last4=坂井|first4=悦郎}}</ref>と呼ばれ、10水和物の比重は1.464で、常温常圧では無色の固体として存在し、水に可溶である。[[転移温度]]の 32.38 ℃で水和水が[[結晶水]]になる。水和物を乾燥した空気中に放置すると[[風解]]するが<ref>[[JIS]] K 8986: 1994</ref>、無水物を湿った空気中に放置すると水和物となる<ref name="jisk89872006" />。

硫酸ナトリウムは、水への[[溶解度]]の温度依存性が特徴的で、10水和物と無水物とで、その挙動が異なる。10水和物 (Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>•10H<sub>2</sub>O) は水温の上昇に伴って溶解度が増加する。しかし、無水物 (Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>) の溶解度は水温の上昇に伴って、逆に溶解度が減少する場合がある。実際、硫酸ナトリウムの溶解度は32.38 ℃までは上がり続けるのに対し、さらに高温にすると少しずつ低下してゆく。これは低温域では10水和物が析出するのに対し、高温域では無水物が析出するからである。

== 製法 ==
[[塩化ナトリウム]]と[[濃硫酸]]を加熱すると、硫酸ナトリウム無水物が得られる。

: <chem>2{NaCl} + H2SO4 -> Na2SO4 + 2{HCl}</chem>

[[炭酸ナトリウム]]または[[水酸化ナトリウム]]を硫酸で中和した溶液からは、硫酸ナトリウム10水和物の結晶が得られる。

: <chem>2{NaOH} + H2SO4 -> Na2SO4 + 2{H2O}</chem>

工業的には、水酸化ナトリウムと硫酸を反応させる方法でも製造されるが、他に、硫黄酸化物が含まれる排煙を水酸化ナトリウムを使って[[脱硫]]した場合に発生する、また、[[レーヨン]]製造や[[臭素]]製造などで副生する、純度の低い硫酸ナトリウム水溶液を、沈殿や濾過で、精製・留去して製造する<ref>{{Cite patent | ref = none | | inventor-last = 松永 | inventor-first = 敬浩 | inventor2-last = 若松 | inventor2-first = 宏之 | issue-date = 2002-04-10 | title = 硫酸ナトリウムの製造方法 | country-code = JP | description = A | patent-number = 2002104820}}</ref>。

硫酸ナトリウム（無水物相当）の2004年度日本国内生産量は 130,107 トン、工業消費量は 8765 トンであった<ref>日本国 経済産業省・化学工業統計月報</ref>。

== 用途 ==
無水物は湿度が高いと吸湿するため[[乾燥剤]]として用いる場合がある。他に、ガラスの製造の際に原料の1つとして用いられる事もある。

10水和物は[[下剤|緩下剤]]として用いられたり、防風通聖散や桃核承気湯などの漢方薬の一部に芒硝として配合される<ref>{{Citation | ref = none | title = 基礎からの漢方薬: 医療用漢方製剤・構成生薬解説 | author = 金成俊 | publisher = 薬事日報社 | year = 2009 | edition = 改訂 | isbn = 978-4-8408-1076-0 | page = 115}}</ref>。

さらに、硫酸ナトリウムは[[温泉]]に含有される場合のある物質としても知られ、[[アルカリ金属]]・[[アルカリ土類金属]]の硫酸塩を含む温泉を総じて硫酸泉・[[硫酸塩泉]]と呼ぶ<ref>{{Citation | ref = none | author = 環境省 | publisher = 環境省 | year = 2002 | title = 鉱泉分析法指針 | url = https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/shishin_bunseki.html | chapter = 1. 鉱泉の定義と分類 | chapter-url = https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/shishin_bunseki/01.pdf | accessdate = 2009-10-24}}</ref>。この温泉を真似た家庭用の[[入浴剤]]の成分として、[[炭酸水素ナトリウム]]と共に硫酸ナトリウムが用いられる場合がある<ref>{{Wayback |url= http://www.center.spec.ed.jp/d/h15/h15_da09/h16_ic01_rika5.pdf|title= 平成15年度小中高の系統的指導法開発実践講座（理科） |date=20160304122636}}
</ref>。ところで、日本で流通している硫酸ナトリウムを配合した入浴剤の説明書には「風呂釜を傷める[[硫黄]]分は含まれていない」という記述がしばしば見られる。これは[[硫黄泉]]の成分を模した入浴剤（湯の花・ムトウ[[六一〇ハップ]]等）とは異なり'''単体硫黄を成分に含まない'''という意味であり、硫酸ナトリウム自体は硫黄化合物の1つである。

== 出典 ==
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
* [[硫酸塩]]
* [[ソーダ工業]]
* [[ヨハン・ルドルフ・グラウバー]]

{{ナトリウムのオキソ酸塩}}
{{乾燥}}
{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:りゆうさんなとりうむ}}
[[Category:ナトリウムの化合物]]
[[Category:硫酸塩]]
[[Category:乾燥剤]]