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[[時系列|時系列分析]]における'''移動平均モデル'''({{lang-en-short|moving average model}}、'''MAモデル''')は現在・過去のホワイトノイズ線形和に定数を加えて単変量の現在値を表現するモデルである<ref>"MA(q)過程は現在とq期間の過去のホワイトノイズの線形和に定数を加えたものである." 沖本. (2010). ''経済・ファイナンスデータの計量時系列分析''. 朝倉書店.</ref>。'''移動平均過程'''({{lang-en-short|moving average process}})とも呼ばれる。 移動平均モデルは[[自己回帰移動平均モデル]] (ARMA) および[[自己回帰和分移動平均モデル]] (ARIMA) の特別なケースにあたる。また[[移動平均]]の一般化にあたる。 == 定義 == <math> q</math> 次の移動平均モデル <math> \text{MA(q)}</math> は以下のように定義される。 : <math> y_t = \mu + \sum_{k=0}^q \theta_k \varepsilon_{t-k} = \mu + \varepsilon_t + \theta_1 \varepsilon_{t-1} + \cdots + \theta_q \varepsilon_{t-q} \,</math> ここで <math> \mu</math> は定数、<math> \theta_k</math> はパラメータ (<math> \theta_0 = 1</math>)、<math> \varepsilon_t</math> は時刻 <math> t</math> における[[ホワイトノイズ]]である。すなわち各時刻でホワイトノイズがサンプリングされ、時刻 <math> t</math> における出力は <math> t</math> から <math> t-q</math> までのホワイトノイズ重み付き和に定数を足しこんでモデル化される。 この式は[[後退オペレーター]](英語版) ''B'' を用いることで以下のような同値である表現で書き表すことが出来る。 : <math>X_t = \mu + (1 + \theta_1 B + \cdots + \theta_q B^q)\varepsilon_t.</math> したがって、移動平均モデルは、現在および過去の(観測された)ホワイトノイズの誤差項またはランダムなショックに対して、現在の値を線形回帰するものである。各ポイントでのランダムショックは相互に独立しており、同じ分布(通常は、平均を0とし一定のスケールを持つ正規分布)から来ていると仮定する。 == 解釈 == === FIRフィルタ === 出力 <math> y_t</math> から定数 <math> \mu</math> を引いた値を <math> y'_t</math> とし、ホワイトノイズ列を入力系列 <math> x_t</math>、係数を <math> b_k</math> にリネームすると次の式になる。 <math> y'_t = \sum_{k=0}^q b_k x_{t-k}</math> これは[[有限インパルス応答|FIRフィルタ]]である。すなわち <math> \text{MA(q)}</math> は「ホワイトノイズ列を入力として <math> q</math> 次のフィードフォワードからなる線形システム」と解釈される。 === 一般化移動平均 === 係数 <math> \theta_k</math> の和が1であれば <math> \text{MA(q)}</math> はホワイトノイズの[[移動平均#%E5%8A%A0%E9%87%8D%E7%A7%BB%E5%8B%95%E5%B9%B3%E5%9D%87|加重移動平均]]に定数項を足したものとみなせる。これが「移動平均」モデルという名称の由来である。ただし移動平均モデルには係数に制約がないため[[移動平均]]でなく、むしろ移動平均の一般化といえる。 == 性質 == === 影響範囲 === 移動平均モデルはFIRであるため、時刻 <math> t</math> のホワイトノイズは有限の期間のみ (<math> t</math> ~ <math> t+q</math>) に影響を与える。これは[[無限インパルス応答|IIR]]である[[自己回帰モデル]]と対照的である。 === 入出力関係 === ランダムショックの役割はMAモデルと[[自己回帰モデル|ARモデル]]で異なる。 MAモデルではランダムショックは時系列の将来の値に直接伝播される。たとえば、 <math>\varepsilon _{t-1}</math>は<math> X_t</math>の方程式の右辺に直接現れる。 ARモデルでは<math>\varepsilon _{t-1}</math>は<math> X_t</math>の方程式の右辺には現れないが<math> X_{t-1}</math>の方程式の右辺に現れ、<math> X_{t-1}</math>は<math> X_t</math>の方程式の右辺に現れるため、<math>\varepsilon_{t-1}</math>は<math> X_t</math>に間接的な効果のみを与える 。 == パラメーターの計算 == MAモデルの係数の推定は、ラグ付きの誤差項が観測できないためARモデルの場合よりも複雑である。そのため線形最小二乗法の代わりに、繰り返し計算による非線形カーブフィッティングが必要となる。 MA(q)プロセスの自己相関関数(ACF)は、ラグq + 1以上で0となる。したがって、サンプルの自己相関関数を調べ、それを超えるすべてのラグでゼロと有意に異なるようになるラグを確認することで、推定に適した最大ラグを決定する。 ACFと偏自己相関関数(PACF)から、MAモデルがより適切なモデルの選択であると示唆される場合もあり、ARとMAの両方の項を同じモデルで使用するよう示唆されることもある。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 関連項目 == * [[自己回帰移動平均モデル]] * [[自己回帰モデル]] * [[有限インパルス応答]] * [[無限インパルス応答]] == 参考文献 == * {{Cite book|last=Enders|first=Walter|chapter=Stationary Time-Series Models|title=Applied Econometric Time Series|location=New York|publisher=Wiley|edition=Second|year=2004|isbn=0-471-45173-8|pages=48–107}} == 外部リンク == * [http://www.itl.nist.gov/div898/handbook/pmc/section4/pmc444.htm Common Approaches to Univariate Time Series] {{DEFAULTSORT:いとうへいきんもてる}} [[Category:時系列分析]]
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