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[[抽象代数学]]、とくに[[加群論]]において、加群の'''稠密部分加群'''(ちゅうみつぶぶんかぐん、{{lang-en-short|dense submodule}})は[[本質部分加群]]の概念の精密化<!--refinement-->である。''N'' が ''M'' の稠密部分加群であれば、"''N'' ⊆ ''M'' は'''有理拡大''' (rational extension) である"ということもできる。稠密部分加群は非可換環論における商環と関係がある。ここで現れるたいていの結果は最初 {{harv|Johnson|1951}}, {{harv|Utumi|1956}} と {{harv|Findlay|Lambek|1958}} において証明された。 この用語は[[位相空間論]]における[[稠密部分集合]]の概念とは異なることを注意すべきである。稠密部分加群を定義するのに位相は全く必要ないし、稠密部分加群は位相加群において位相的に稠密かもしれないしそうでないかもしれない。 == 定義 == この記事は {{harv|Storrer|1972}} と {{harv|Lam|1999|p=272}} に現れる [[:en:Exposition (literary technique)|exposition]] を修正する。''R'' を環とし ''M'' を右 ''R'' 加群とし ''N'' をその部分加群とする。''M'' の元 ''y'' of ''M'' に対し、 :<math>y^{-1}N=\{r\in R \mid yr\in N \} \,</math> と定義する。表現 ''y''<sup>−1</sup> は形式的なものに過ぎないことに注意する。加群の元 ''y'' が[[可逆]]であると言うことは意味がないからだ。しかしこの表記は ''y''⋅(''y''<sup>−1</sup>''N'') ⊆ ''N'' であることを示唆する助けになる。集合 ''y'' <sup>−1</sup>''N'' はつねに ''R'' の右[[イデアル]]である。 ''M'' の部分加群 ''N'' が'''稠密部分加群''' (dense submodule) であるとは、''M'' のすべての元 ''x'' ≠ 0 と ''y'' に対して ''R'' のある元 ''r'' が存在して ''xr'' ≠ {0} かつ ''yr'' が ''N'' の元となることである。言い換えると、導入した表記を用いて、集合 :<math>x(y^{-1}N)\neq\{0\} \,</math> ということである。このとき、関係は :<math>N\subseteq_d M\,</math> と表記される。 別の同値な定義は本質的に[[ホモロジー代数|ホモロジカル]]である。''N'' が ''M'' において稠密であることと :<math>\mathrm{Hom}_R (M/N,E(M))=\{0\}\,</math> ただし ''E''(''M'') は ''M'' の[[移入包絡]]、は同値である。 == 性質 == * ''N'' が ''M'' の本質部分加群であることと ''M'' のすべての元 ''y'' ≠ 0 に対して集合 ''y''⋅(''y'' <sup>−1</sup>''N'') ≠ {0} であることが同値であることを示すことができる。すると明らかにすべての稠密部分加群は本質部部加群である。 * ''M'' が[[非特異加群]] (nonsingular module) であれば、''N'' が ''M'' において稠密であることと本質であることは同値である。 * 環が右[[非特異環]] (right nonsingular ring) であることとその本質右イデアルがすべて稠密右イデアルであることは同値である。 * ''N'' と ''N' '' が ''M'' の稠密部分加群であれば、''N'' ∩ ''N' '' もそうである。 * ''N'' が稠密で ''N'' ⊆ ''K'' ⊆ ''M'' であれば ''K'' もまた稠密である。 * ''B'' が ''R'' の稠密右イデアルであれば、''R'' の任意の ''y'' に対して ''y''<sup>−1</sup>''B'' もそうである。 == 例 == * ''x'' が ''R'' の[[中心 (代数学)|中心]]の非零因子であれば、''xR'' は ''R'' の稠密右イデアルである。 * ''I'' が ''R'' の両側イデアルであれば、''I'' が右イデアルとして稠密であることと ''I'' の''左''[[零化イデアル]]が 0 であること、すなわち <math>\ell\cdot \mathrm{Ann}(I)=\{0\}\,</math> は同値である。とくに、可換環において、稠密イデアルはちょうど[[忠実加群]]であるイデアルのことである。 == 応用 == === 加群の有理包 === すべての右 ''R'' 加群 ''M'' はその[[移入包絡]] (injective hull) である極大本質拡大 ''E''(''M'') をもつ。極大稠密拡大を用いた類似の構成の結果が、''E''(''M'') の部分加群である '''rational hull''' ''Ẽ''(''M'') である。加群が真の有理拡大をもたず ''Ẽ''(''M'') = ''M'' であるとき、加群を '''rationally complete''' という。''R'' が右非特異であれば、もちろん ''Ẽ''(''M'') = ''E''(''M'') である。 rational hull は直ちに移入包絡の部分加群と同一視される。''S'' = End<sub>''R''</sub>(''E''(''M'')) を移入包絡の[[自己準同型環]]とする。すると移入包絡の元 ''x'' が rational hull に入ることと ''x'' が ''M'' 上 0 である ''S'' のすべての写像によって 0 に送られることが同値である。記号で書けば、 :<math>\tilde{E}(M)=\{x\in E(M) \mid \forall f\in S, f(M)=0 \implies f(x)=0\}\,</math> 一般に、''M'' 上 0 だが ''M'' の元でないある ''x'' で 0 でないような ''S'' の写像が存在するかもしれず、そのような ''x'' は rational hull には入らない。 === 極大右商環 === 極大右商環 (maximal right ring of quotients) は ''R'' の稠密右イデアルと関連して2つの方法で記述することができる。 * 1つの方法は、''Ẽ''(''R'') はある自己準同型環と同型な加群であることが証明され、その環構造からこの同型によって ''Ẽ''(''R'') に環構造、極大右商環の構造が入る {{harv|Lam|1999|p=366}}。 * 2つ目の方法は、極大右商環は ''R'' の稠密右イデアルから ''R'' の中への準同型の[[同値類]]の集合と同一視される。同値関係は、2つの関数が同値であることを ''R'' のある稠密右イデアルで一致することによって定める {{harv|Lam|1999|p=370}}。 == 参考文献 == <!--- See http://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Footnotes on how to create references using <ref></ref> tags which will then appear here automatically --> {{Reflist}} *{{citation |author1=Findlay, G. D. |author2=Lambek, J. |title=A generalized ring of quotients. I, II |journal=[[Canadian Mathematical Bulletin]] |volume=1 |year=1958 |pages=77–85, 155–167 |issn=0008-4395 |mr=0094370 (20 #888)}} *{{citation |author=Johnson, R. E. |title=The extended centralizer of a ring over a module |journal=Proc. Amer. Math. Soc. |volume=2 |year=1951 |pages=891–895 |issn=0002-9939 |mr=0045695 (13,618c) |doi=10.1090/s0002-9939-1951-0045695-9}} *{{Citation | last1=Lam | first1=Tsit-Yuen | title=Lectures on modules and rings | publisher=[[Springer-Verlag]] | location=Berlin, New York | series=Graduate Texts in Mathematics No. 189 | isbn=978-0-387-98428-5 | mr=1653294 | year=1999}} *{{citation |author=Storrer, Hans H. |title=On Goldman's primary decomposition |journal=Lecutres on rings and modules (Tulane Univ. Ring and Operator Theory) |volume= I |publisher=Springer |place=Berlin |year=1972 |pages=617–661. Lecture Notes in Math., Vol. 246 |mr=0360717 (50 #13164) |doi=10.1007/bfb0059571}} *{{citation |author=Utumi, Yuzo |title=On quotient rings |journal=Osaka Math. J. |volume=8 |year=1956 |pages=1–18 |mr=0078966 (18,7c)}} <!--- Categories ---> {{DEFAULTSORT:ちゆうみつふふんかくん}} [[Category:抽象代数学]] [[Category:加群論]] [[Category:環論]] [[Category:数学に関する記事]]
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