空和のソースを表示

{{出典の明記| date = 2023年5月}}
{{Distinguish|ゼロ和|天和}}

[[数学]]における'''空和'''（くうわ、{{lang-en-short|empty sum}}）または'''零項和''' (nullary sum) は、（被加数の）項数が零であるような[[総和|和]]を言う。規約として、「数からなる任意の空和は（和をとる際のいかなる条件が空に退化したものであっても）{{math|0}} に等しい」と取り決める。例えば、
:<math>\sum_{1\le n\le 0} n =0,\quad \sum_{1\le i<j\le 1} 2^i 3^j =0</math>
である。

[[数列]] {{math|''a''<sub>1</sub>, ''a''<sub>2</sub>, ''a''<sub>3</sub>, …}} に対して、最初の {{mvar|m}}-項の和を

:<math>s_m = \sum_{i=1}^m a_i = a_1 + \dotsb + a_m </math>

と書く。このとき

:<math>s_m = a_m + s_{m-1}</math>

が全ての {{math|''m'' {{=}} 1, 2, …}} に対し成り立つものとするには、{{math|''s''{{sub|1}} {{=}} ''a''{{sub|1}}}} および {{math|''s''{{sub|0}} {{=}} 0}} という規約を設ける必要がある。これはつまり、ただひとつの項からなる "和" {{math|''s''{{sub|1}}}} の値はその項の値であり、項を持たない "和" {{math|''s''{{sub|0}}}} の値は {{math|0}} と考えるのである。このようなひとつだけあるいは 0 個の項の "和" を許すことで、多くの数学的な公式において考慮すべき場合の数を減らすことができる。また、そのような "和" は[[数学的帰納法]]やアルゴリズムの起点として自然に現れる。これらの理由のため、「空和の値は {{math|0}} であるものと約束する」ことは数学やコンピュータプログラミングにおいて標準的な慣習である。（同様の理由で、[[空積]]は乗法単位元である {{math|1}} に等しいと約束する。）

項が数以外のもの（例えば[[ベクトル]]、[[行列]]、[[多項式]]など）の場合に定義された和に対して、一般には項が何らかの[[アーベル群]]や加法的に書かれる可換[[モノイド]]に値を取る場合に、空和の値はその群の[[加法単位元|零元]]に等しいものと扱われる。

== 空和を定義することの妥当性 ==
空和の概念は、数 [[0|{{math|0}}]] や[[空集合]]が有用なのと同じ理由で有用である。全く面白くない概念を表しているように見えるが、その存在によって多くの主題のはるかに短い数学的表示が可能になるのである。

; 例 (空線型和)
: 例えば、[[線型代数学]]において[[ベクトル空間]] {{mvar|V}} の[[基底 (線型代数学)|基底]]とは、{{mvar|V}} の[[線型独立]]な元からなる[[部分集合]] {{math|'''B'''}} であって、{{mvar|V}} の任意の元が {{math|'''B'''}} の元の[[線型結合]]として表されるものを言うのであった。ここで空和の規約を用いれば、零次元ベクトル空間 {{math|''V'' {{=}} {{mset|0}}}} は基底を持つ、すなわち空集合がその基底であるということができる。

==関連項目==
* [[空積]]
* [[空虚な真]] 

{{Algebra-stub}}

{{DEFAULTSORT:くうわ}}
[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:算術]]
[[Category:0]]