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{{出典の明記|date=2022年1月}} {{一般相対性理論}} '''等価原理'''(とうかげんり、{{Lang-en|equivalence principle}})は、[[物理学]]における概念の一つで、[[重力]]を論じる[[一般相対性理論]]の構築[[原理]]として用いられる他に、異なる[[座標系]]での[[物理量]][[測定]]の一致性についての議論でも登場する。 使用する状況によって、次の三つの意味がある。 # 「[[物理法則]]は[[宇宙]]のどこでも同じでなければならない」という[[コペルニクス]]的なアイデアを指す。 # 「[[自由落下]]する[[物体]]の[[軌跡 (数学)|軌跡]]は、物体の種類によらず一定である」という原理(以下に紹介する「弱い等価原理」)を直接指す。 # 「局所的に[[観測]]される重力は、非慣性系にいる観測者の疑似的な力と同じである」あるいは「無限小の領域では、運動の[[加速度]]と[[重力加速度]]は区別できない」という、[[アルベルト・アインシュタイン]]が一般相対性理論を構築するときに発見した原理を指す。 研究対象としては、以下に述べる'''弱い等価原理''' ({{Lang|en|WEP}})・'''アインシュタインの等価原理''' ({{Lang|en|EEP}})・'''強い等価原理''' ({{Lang|en|SEP}}) の三つの表現に大別される。これらの等価原理が成立していることの確認は、現在でも[[実験]]の対象である。これらの原理が破れていることを積極的に示す実験結果は、現在まで報告されていない。また一方で、なぜこの原理が成立するのかについて積極的に説明する有効な理論もいまだ確立されていない。 == 弱い等価原理 == '''弱い等価原理''' ({{Lang|en|Weak equivalence principle, WEP}}) は、'''自由落下の一般性''' ({{Lang|en|the universality of free fall}}) としても知られている。 <blockquote> [[自由落下]]する物体の軌道は、初期の位置と速度にのみ依存し、物体の種類によらない。<!-- <br />The trajectory of a falling test body depends only on its initial position and velocity, and is independent of its composition. --> </blockquote> または、 <blockquote> 与えられた重力場において、時空のある一点で発生する[[加速度]]は、物体の種類によらず一定である。<!-- <br> All bodies at the same spacetime point in a given gravitational field will undergo the same acceleration. --> </blockquote> この原理が成り立つとするならば、重力のみを受けて運動する物体の軌跡はどの物体でも同じ、ということになる。ただし、ここでの物体は、それ自身が[[潮汐力]]を受けない程度に小さなものであることを仮定している。潮汐力が作用すると重力場自身の作用が変わるからである。 === 弱い等価原理の検証実験 === [[エトヴェシュ・ロラーンド]]による [[1908年]]の実験が有名である。同じ質量の二つの[[おもり]]を[[天秤ばかり|天秤]]にかけ、重力加速度と地球の回転による加速度の違いで生じる天秤のねじれを利用して等価原理を検証しようというもので、その結果は、10{{sup-|9}} の精度であった。 現在でも[[米国]][[ワシントン大学 (ワシントン州)|ワシントン大学]]([[ワシントン州]])を中心として、[[1987年]]から Eöt-Wash 実験が続けられている。およそ、10{{sup-|12}} の精度で等価原理が確かめられている。 == アインシュタインの等価原理 == '''アインシュタインの等価原理''' ({{Lang|en|Einstein's equivalence principle, EEP}}) [[ニュートン力学]]では、「自由落下する観測者は、重力と慣性力が釣り合うので重力の作用がない」と説明されるが、弱い等価原理が成り立つならば、「自由落下する観測者は[[慣性系]]である」と考えることが可能である(より厳密には[[局所慣性系]]である、という)。 アインシュタインは、弱い等価原理を拡張して、慣性系で成立するすべての物理法則(重力や力学の法則を除いた、すべての物理法則)は等価である、という表現を行った。すなわち、 <blockquote> 慣性系にある実験室での、重力に起因しない実験結果は、実験室の速度や位置に依存しない。<!-- <br /> The outcome of any local non-gravitational experiment in a laboratory moving in an inertial frame of reference is independent of the velocity of the laboratory, or its location in spacetime. --> </blockquote> という原理をおいた。ここでの実験室のサイズも、また実験結果も、潮汐力を受けない程度に小さいことが必要である。 === アインシュタインの等価原理の検証 === 検証の手段としては、[[量の次元|次元]]をもたない[[物理定数]]の定数性の確認がある。[[オクロの天然原子炉|オクロ]]における[[微細構造定数]]の定数性の確認 (1976 - ) では、10{{sup-|7}} の精度、[[クェーサー]]による電子・陽電子質量比の測定 (2002 - ) では、10{{sup-|11}} の精度で、定数性が確認されている。 === 重力の理論に対する帰結 === アインシュタインの等価原理から、重力の理論に対する制限として次の二つが導かれる。 * 時空の計量テンソル ''g''<sub>μν</sub> は、対称テンソルでなければならない。 * 自由落下する物体の運動は、[[測地線]]として表現されなければならない。 == 強い等価原理 == '''強い等価原理''' ({{Lang|en|Strong equivalence principle, SEP}}) アインシュタインの等価原理は重力の作用を除いた表現であったが、これを重力を含めても成り立つ、とする表現である。 <blockquote> 小さな物体の重力場中での運動は、初期位置と初速度にのみ依存し、物体の種類によらない。<!-- <br> The gravitational motion of a small test body depends only on its initial position in spacetime and velocity, and not on its constitution. --> </blockquote> または、 <blockquote> 慣性系にある実験室での実験結果は、重力に起因するものであっても起因しないものであっても、実験室の速度や位置に依存しない。<!-- <br> The outcome of any local experiment, whether gravitational or not, in a laboratory moving in an inertial frame of reference is independent of the velocity of the laboratory, or its location in spacetime. --> </blockquote> === 強い等価原理の検証実験 === 検証の手段としては、[[重力定数]] ''G'' の宇宙全体における一定性、または基本粒子の質量の等価性がある。太陽系内での観測や宇宙初期の元素合成の研究では、重力定数の変化は現在値よりも 10 % 以内であることが確かめられている。 === 重力の理論に対する帰結 === 強い等価原理から、重力の理論に対する制限として次のことが導かれる。 * 重力の理論は、時空の計量テンソル ''g''<sub>μν</sub> だけで書かれていなければならない。 == 重力質量と慣性質量 == [[重力質量]]は物体に作用する重力 {{Indent| <math>\boldsymbol{F}_\mathrm{g} = m_\mathrm{g} \boldsymbol{g}</math> }} において、重力加速度 ''g'' の比例係数 ''m''<sub>g</sub> である。 [[慣性質量]]は[[ニュートンの運動方程式]] {{Indent| <math>m_\mathrm{i} \boldsymbol{a} = \boldsymbol{F}</math> }} において物体に作用する[[力 (物理学)|力]] ''F'' と物体の[[加速度]] ''a'' の比例係数 ''m''<sub>i</sub> である。 重力のみが作用し、他の力が作用しない物体の運動方程式は {{Indent| <math>m_\mathrm{i} \boldsymbol{a} = \boldsymbol{F}_g = m_\mathrm{g} \boldsymbol{g}</math> }} {{Indent| <math>\boldsymbol{a} = \frac{m_\mathrm{g}}{m_\mathrm{i}} \boldsymbol{g}</math> }} である。 従って「自由落下する物体の軌跡が物体によらない」と言う原理から重力質量と慣性質量の比 ''m''<sub>g</sub>/''m''<sub>i</sub> は物体によらない。この比を絶対レート=1に選べば重力質量と慣性質量が同じになる。 * 参考:ケプラーの法則を、運動方程式と万有引力の法則の組み合わせとして定式化する過程で「弱い等価原理」が必要となる。ニュートンの研究において、弱い等価原理が成り立つことは、振り子を振らせたときの周期の測定と、天体の運行の観測データが根拠となっている。 == 関連項目 == * [[エトヴェシュの実験]] == 外部リンク == * {{PDFlink|[http://www-utap.phys.s.u-tokyo.ac.jp/obscosm/resume/Rinkou2005/shirata_gravity.pdf Test of the Foundations of Gravitational Theory (Clifford M. Will の文献紹介/日本語)]}} * [https://www.preprints.org/manuscript/202103.0230/v1 Worldlines in the Einstein's Elevator 世界線/軌跡 (M. Rouaud, 2021)] {{相対性理論}} {{アルベルト・アインシュタイン}} {{Physics-stub}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:とうかけんり}} [[Category:力学]] [[Category:一般相対性理論]] [[Category:自然科学の法則]] [[Category:時空]] [[Category:物理学の哲学]] [[Category:天文学の哲学]] [[Category:重力]]
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