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'''等価幅'''{{R|jstage|astro-dic_ew}}(とうかはば、{{Lang-en-short|equivalent width}})或いは'''等積幅'''{{R|suzuki}}(とうせきはば)は、[[スペクトル]]における測定量の一つで、スペクトル線の強度を連続スペクトルの強度との比較で表したものである。{{仮リンク|連続スペクトル|en|Continuum spectrum}}に対し、下(吸収線)或いは上(輝線)に変化するスペクトル線の、輪郭の[[面積]]に相当する値で、スペクトル線の輪郭と同じ面積を持つ連続スペクトルの幅と言うことができる{{R|astro-dic_ew}}。 == 定義 == [[ファイル:Definition of equivalent width.jpg|thumb|吸収線の等価幅を示す図。曲線(赤)が吸収線輪郭で、線輪郭と連続[[スペクトル]](破線)が囲む[[面積]]と等しい面積の[[長方形]](斜線部)の幅(青)が等価幅。]] スペクトル線における等価幅は、そのスペクトル線の影響を受けない連続スペクトルと、スペクトル線とで囲む面積と同じ面積を持ち、[[高さ]]が連続スペクトルの強度<math>I_0</math>である[[長方形]]の幅([[底辺]]の[[長さ]])として定義できる{{R|sp08}}。等価幅は、[[波長]]でも[[振動数]]でも定義することができるが、実際に扱う際には波長で測定されることが多い{{Sfn|シリーズ現代の天文学7|2009|p=115}}。 波長<math>\lambda</math>におけるスペクトルの強度を<math>I(\lambda)</math>とすると、スペクトル線の輪郭<math>r(\lambda)</math>は、連続スペクトルの高さ<math>I_0</math>で[[正規化|規格化]]して、 :<math>r(\lambda) = \frac{I_0 - I(\lambda)}{I_0}</math> で表される。この<math>r(\lambda)</math>を、スペクトル線の全成分が収まる波長範囲にわたり、波長で[[積分]]したものが等価幅<math>W_{\lambda}</math>であり、 :<math>W_{\lambda} = \int r(\lambda) d\lambda = \int \left \{ 1 - \frac{I(\lambda)}{I_0} \right \} d\lambda</math> で与えられる{{Sfn|シリーズ現代の天文学15|2007|pp=84-90}}。このため、等価幅は'''積分強度'''とも呼ばれることがある{{Sfn|シリーズ現代の天文学7|2009|p=115}}。 スペクトル線が吸収線の場合、等価幅は吸収線が連続スペクトルから吸収した[[エネルギー]]という[[物理]]的な意味を持っている{{Sfn|シリーズ現代の天文学15|2007|p=88}}。言い方を変えると、吸収線の等価幅は、連続スペクトルから実際の吸収線と同じエネルギーを吸収する、完全に不透明な強度0の仮想的な吸収成分の範囲、とも考えられる{{R|sp08}}。 等価幅は、輝線でも測定されることがあり、輝線においては等価幅<math>W_{\lambda}</math>は[[負の数|負の値]]をとる{{Sfn|シリーズ現代の天文学15|2007|p=89}}{{R|oxford}}。 == 応用 == [[ファイル:Peas Equiv Width ed.jpg|thumb|2階[[電離]][[酸素]]の{{仮リンク|禁制線|en|Forbidden line}}([O III] λ 5007 [[オングストローム|Å]])の等価幅に対する[[銀河]]の分布を示した[[ヒストグラム]]。赤は一般的な銀河、青は''[[紫外線|ultraviolet]]-luminous galaxies''(UVLGs)と呼ばれる銀河、緑は「[[グリーンピース]]」とあだ名される特異な輝線銀河{{R|cardamone09}}{{Refnest|group="注"|「[[グリーンピース]]」という通称は、小さく丸い形状、緑が卓越した色、という[[撮像]]データにおける特徴から付けられたもの。[[銀河]]としての特徴は、低[[質量]]で、[[星形成]]率が高く、[[金属量]]が低く、[[減光|赤化]]が弱い、といったことが挙げられる<ref name="cardamone09">{{Citation |author=Cardamone, Carolin; et al. |date=2009-11 |title=Galaxy Zoo Green Peas: discovery of a class of compact extremely star-forming galaxies |journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society |volume=399 |issue=3 |pages=1191-1205 |doi=10.1111/j.1365-2966.2009.15383.x |bibcode=2009MNRAS.399.1191C }}</ref>。「[[:en:Pea galaxy]]」も参照。}}。]] 等価幅は、スペクトル線の強度を示す重要な指標の一つである。スペクトル線の強度の指標としては、他にスペクトル線中心の強度や[[半値幅]]なども用いられるが、これらは測定する装置の違いによる影響や、発生源の大局的な運動(例えば[[恒星の自転]]など)によるスペクトル線の広がりなどの影響を受けるのに対し、等価幅はそれらにあまり影響されない利点がある{{R|kato99}}{{Sfn|シリーズ現代の天文学15|2007|p=279}}。また、等価幅は連続スペクトル強度で規格化して求めるので、[[流束|フラックス]]補正を必要としない。一方で、連続スペクトル水準を正しく見積もる必要があり、この水準の誤差が大きいと、等価幅の誤差はより大きくなる{{Sfn|シリーズ現代の天文学15|2007|pp=279-280,88-89}}。このような特性から、等価幅はスペクトル線を発生させる[[元素]]の量を求めるような場合の、スペクトル線強度の指標によく用いられる{{R|kato99}}。 具体的な応用先として、特に重宝されたのは[[恒星]]の[[分光学]]で、吸収線の等価幅は、恒星大気の物理量([[有効温度]]、[[表面重力]]、[[微視的乱流]]速度など)や[[化学組成]]の決定において、重要な役割を果たしてきた{{R|kl12}}。強度の低い吸収線においては、等価幅が吸収線の形成に関与する[[原子]]の[[数密度]]に比例すると近似できるので、元素の存在量を求める強力な手法である{{Sfn|シリーズ現代の天文学15|2007|pp=84-85,89}}{{R|kato99}}。[[コンピュータ|計算機]]が進歩し、膨大な[[数値計算]]が実行可能になった時代にあっては、理論的な恒星大気モデルから計算によってスペクトル合成を行い、観測されたスペクトルと直接比較することで化学組成を決める手法が主流で、等価幅の測定から化学組成を決める古典的手法は、研究現場の実際として使われることがまれになったが、大気モデルが確立していないような恒星については、使用され続けている{{Sfn|シリーズ現代の天文学7|2009|p=120}}{{R|kato99}}。また、[[系外銀河]]において吸収線の等価幅は、銀河を構成する[[恒星の種族]]について洞察する手掛かりであり、銀河内で最近あった大規模[[星形成]]や、[[銀河の形成と進化|銀河の進化]]について調べる前段階として重要である{{R|riffel08}}。 その他、[[おうし座T型星]](TTSs)の観測では、古典的TTSsと弱輝線TTSsを分類するのに、[[水素]]の[[バルマー系列|H<sub>α</sub>]]輝線の等価幅が指標とされる{{R|kogure08}}。また、活発な星形成を起こしていたり、[[活動銀河核]]を持つ銀河の候補となる、連続光スペクトルに対し輝線成分が相対的に強い輝線銀河の選り分けにも、輝線の等価幅が用いられる{{R|astro-dic_elg}}。中でも[[ライマンα輝線銀河|ライマンα輝線銀河]](LAEs)では、[[ライマンα線|Lyα輝線]]の等価幅が、銀河における星形成の[[初期質量関数]]や[[金属量]]の効果的な指標として、よく使われている{{R|dw10}}。 == 脚注 == === 注釈 === {{Reflist |group="注" |refs= }} === 出典 === {{Reflist |colwidth=30em |refs= <ref name="jstage">{{Citation |title=学術用語集 天文学編(増訂版) |url=https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201306009367166785 }}</ref> <ref name="astro-dic_ew">{{Cite web|和書|url=https://astro-dic.jp/equivalent-width/ |title=等価幅 |date=2018-08-16 |website=天文学辞典 |publisher=公益社団法人 [[日本天文学会]] |accessdate=2021-05-28 }}</ref> <ref name="suzuki">{{Cite book |和書 |last=鈴木 |first=敬信 |authorlink=鈴木敬信 |title=改訂・増補 天文学辞典 |page=487 |date=1991-09-10 |publisher=[[地人書館]] |isbn=4-8052-0393-5 }}</ref> <ref name="sp08">{{Citation |last1=Stetson |first1=Peter B. |last2=Pancino |first2=Elena |date=2008-12 |title=DAOSPEC: An Automatic Code for Measuring Equivalent Widths in High-Resolution Stellar Spectra |journal=Publications of the Astronomical Society of the Pacific |volume=120 |issue=874 |pages=1332-1354 |doi=10.1086/596126 |bibcode=2008PASP..120.1332S }}</ref> <ref name="oxford">{{Cite web |url=https://www.oxfordreference.com/view/10.1093/oi/authority.20110803095756206 |title=equivalent width |website=Oxford Reference |publisher=[[オックスフォード大学出版局|Oxford University Press]] |accessdate=2021-05-28 }}</ref> <ref name="kato99">{{Citation |和書 |last=加藤 |first=賢一 |date=1999 |title=恒星スペクトル線の解析方法 —線強度の測定と成長曲線法— |journal=[[大阪市立科学館]]研究報告 |volume=9 |pages=9-38 }}</ref> <ref name="kl12">{{Citation |last1=Kang |first1=Wonseok |last2=Lee |first2=Sang-Gak |date=2012-10 |title=Tool for Automatic Measurement of Equivalent width (TAME) |journal=[[王立天文学会月報|Monthly Notices of the Royal Astronomical Society]] |volume=425 |issue=4 |pages=3162-3171 |doi=10.1111/j.1365-2966.2012.21613.x |bibcode=2012MNRAS.425.3162K }}</ref> <ref name="riffel08">{{Citation |author=Riffel, R.; et al. |date=2008-08 |title=The stellar populations of starburst galaxies through near-infrared spectroscopy |journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society |volume=388 |issue=2 |pages=803-814 |doi=10.1111/j.1365-2966.2008.13440.x |bibcode=2008MNRAS.388..803R }}</ref> <ref name="kogure08">{{Citation |和書 |last=小暮 |first=智一 |date=2008-06 |title=輝線星研究の最近の動向 6. 晩期型前主系列星(T Tau型星) |journal=天文月報 |volume=101 |issue=6 |pages=334-343 |url=https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2008_101_6/101_334.pdf |format=PDF }}</ref> <ref name="astro-dic_elg">{{Cite web|和書|url=https://astro-dic.jp/emission-line-galaxy/ |title=輝線銀河 |date=2018-04-12 |website=天文学辞典 |publisher=公益社団法人 日本天文学会 |accessdate=2021-05-28 }}</ref> <ref name="dw10">{{Citation |last1=Dijkstra |first1=Mark |last2=Westra |first2=Eduard |date=2010-02 |title = Star formation indicators and line equivalent width in Lya galaxies |journal= Monthly Notices of the Royal Astronomical Society |volume=401 |issue=4 |pages=2343-2348 |doi=10.1111/j.1365-2966.2009.15859.x |bibcode=2010MNRAS.401.2343D }}</ref> }} == 参考文献 == * {{Cite book |和書 |others=[[野本憲一]]・[[定金晃三]]・[[佐藤勝彦 (物理学者)|佐藤勝彦]] 編 |title=恒星 |series=シリーズ現代の天文学7 |date=2009-07-25 |publisher=[[日本評論社]] |isbn=978-4-535-60727-9 |ref={{SfnRef|シリーズ現代の天文学7|2009}} }} * {{Cite book |和書 |others=家 正則・岩室史英・[[舞原俊憲]]・水本好彦・吉田道利 編 |title=宇宙の観測I —光・赤外天文学 |series=シリーズ現代の天文学15 |date=2007-07-20 |publisher=日本評論社 |isbn=978-4-535-60727-9 |ref={{SfnRef|シリーズ現代の天文学15|2007}} }} == 関連項目 == * [[フォークト関数]] * [[アルブレヒト・ウンゼルト]] * [[プラニメータ]] == 外部リンク == * {{Cite web |url=http://astronomy.swin.edu.au/cms/astro/cosmos/E/Equivalent+Width |title=Equivalent Width |website=Cosmos - The SAO Encyclopedia of Astronomy |publisher=[[スウィンバーン工科大学|Swinburne University of Technology]] |accessdate=2021-05-28 }} * {{Cite journal|和書|title=等質量連星の等価幅の差分を用いた組成差の導出 |author=加藤則行 |journal=Stars and Galaxies |volume=2 |pages=2 |year=2020 |doi=10.32231/starsandgalaxies.2.0_2 |url=https://doi.org/10.32231/starsandgalaxies.2.0_2 |ref=harv}} {{DEFAULTSORT:とうかはは}} [[Category:分光学]] [[Category:観測天文学]] [[Category:化学]] [[Category:科学的方法]] [[Category:宇宙化学]] [[Category:天文学に関する記事]]
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