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{{複数の問題 | 出典の明記 = 2024年2月8日 (木) 13:50 (UTC) | 独自研究 = 2024年2月8日 (木) 13:50 (UTC) }} {{Expand English|date=2024年2月}} '''糖新生'''(とうしんせい、gluconeogenesis)とは、[[ヒト]]や動物が、[[グルカゴン]]の分泌をシグナルとして、[[ピルビン酸]]、[[乳酸]]、[[糖原性アミノ酸]]、[[プロピオン酸]]、[[グリセロール]]などの[[糖質]]以外の物質から、[[グルコース]]を生産する手段・経路である。 == 概要 == [[肉食]]に偏っている場合、摂取栄養が[[タンパク質]]と[[脂肪]]に偏り、同じく[[三大栄養素]]のひとつである[[糖分]]の摂取が不足することになる。猫のような肉食動物は、糖新生の酵素活性が低く、タンパク質から分解されて得られた糖原性アミノ酸を糖新生に使わずにエネルギーとして利用している。犬のような雑食性動物やヒトのような雑食性の霊長類は、糖新生の酵素活性が高く、タンパク質から分解されて得られた[[糖原性アミノ酸]]から糖新生を行って体内で必要な糖分を生成している。<ref>{{cite journal|author=T. WASHIZU, A. TANAKA, T. SAKO, M. WASHIZU, T. ARAI|title=Comparison of the activities of enzymes related to glycolysis and gluconeogenesis in the liver of dogs and cats|journal=Research in Veterinary Science|volume=67|issue=2|year=1999|pages=205–206|doi=10.1053/rvsc.1998.0305}}</ref>。 [[反芻動物]]の場合は、[[セルロース]]を分解するバクテリアが胃の中で糖を[[揮発性脂肪酸]]にしてしまうので[[プロピオン酸]]からの糖新生は特に重要な代謝である。 ヒトの場合は、タンパク質摂取量が十分なら糖質を摂取しなくても血糖を維持可能であるが、外部からの糖の供給が長期的に断たれるとケトン体が生成される。正常な人ではインスリンの分泌が適切に調節されて血糖値が低くなりすぎないように保たれ、ケトン体はエネルギー源として利用されるため、ケトアシドーシスは起こらない。 1分子のグルコースを新生するのに、[[アデノシン三リン酸|ATP]]を6分子必要とする。ほとんどは[[肝臓]]の細胞で、一部は[[腎臓]]で行われる。 ほとんどの細胞では、グルコースの取り込みと[[異化 (生物学)|異化]]に関わる唯一の酵素である[[グルコース-6-ホスファターゼ]]の発現が欠如しているために、遊離のグルコースを生成することができない。グルコース-6-ホスファターゼを有する[[肝細胞]]と、激しい飢餓条件の下での小腸と腎臓のみが、糖新生反応に従って生成した[[グルコース-6-リン酸]]のリン酸基を外して遊離のグルコースを生成し、血管中に遊離のグルコースを放出することが可能である。なお、グルコースが細胞に取り込まれると直ちに[[リン酸化]]が起こりグルコース-6-リン酸が生成されるのは、グルコースが[[細胞膜]]を超えて拡散してしまうのを防ぐためである。リン酸化により[[電荷]]が導入されるので、グルコース-6-リン酸は容易に細胞膜を通過することができない。 糖新生が急激に起こったため[[高血糖]]をもたらす現象を[[ソモジー効果]]という。1850年代に、[[フランス]]の[[生理学者]]、[[クロード・ベルナール]]により明らかにされた。また、絶食を行うと糖不足を補うため[[筋肉]]が分解されて糖新生が起こり<ref>{{Cite web |url=http://www.med.kyushu-u.ac.jp/intmed3/4dm/dms4.html |title=糖尿病シラバス |access-date=2013-04-26 |publisher=九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学(第三内科) 糖尿病研究室 |archive-url=https://web.archive.org/web/20130426200120/https://www.med.kyushu-u.ac.jp/intmed3/4dm/dms4.html |archive-date=2013-04-26}}</ref>、筋肉が減少することにより新陳代謝が減少する。 長期の絶食時は1日を通じた[[呼吸商]]の平均値が約0.7に収束し、飢餓状態でも一定の糖新生が行われているにもかかわらず尿中窒素排泄量が極端に減少する。この事から、糖新生によって作られるグルコースは熱量基準で見た場合はほぼ脂質由来であり、アミノ酸は重要な基質ではあるものの消費量は少ないと現在では考えられているが、全体のサイクルは不明な点が多い。 == 糖新生の経路 == 反応は、ほぼ[[解糖系]]の逆反応に沿って進むが、[[不可逆反応]]もあるので、全体の反応としては解糖系の逆行ではない。不可逆反応については別の方法で起こす。以下にその反応を示す<ref>"レーニンジャーの新生化学[上]第4版"(2006)、監修:山科郁男、発行:廣川書店</ref>。 {{For2|可逆反応|解糖系}} ===[[ピルビン酸]] → [[ホスホエノールピルビン酸]]=== [[クエン酸回路]]を経由させることで反応を進めている。この反応は4つの段階を踏み、はじめの2段階は[[ミトコンドリア]]で、後は[[細胞質]]で行われる。ミトコンドリア内では[[ピルビン酸カルボキシラーゼ]]がピルビン酸に作用して[[オキサロ酢酸]]となりクエン酸回路の中間体となる。オキサロ酢酸はそのままでは[[ミトコンドリア]]の内膜を通過できないので、ミトコンドリアから[[細胞質]]へのホスホエノールピルビン酸の輸送は、リンゴ酸/ホスホエノールピルビン酸[[リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル|シャトル]]によって調停される。 そして、オキサロ酢酸がミトコンドリアから出るためにリンゴ酸デヒドロゲナーゼによって[[リンゴ酸]]に還元され、リンゴ酸としてミトコンドリア内膜を通過する。ミトコンドリア外の細胞質で再びリンゴ酸デヒドロゲナーゼによってオキサロ酢酸に酸化され、最終的には[[ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ]](PEPCK)によって[[ホスホエノールピルビン酸]]に変換される。全体的にこの反応の[[ギブズエネルギー]]の総和は⊿G'°=0.9 kj/molである。 *(ミトコンドリア内) '''段階1:ピルビン酸+[[炭酸|HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>]]+[[アデノシン三リン酸|ATP]] → [[オキサロ酢酸]]+ADP+[[リン酸|Pi]]''' :[[ピルビン酸カルボキシラーゼ]]により進む。 '''段階2:オキサロ酢酸+[[NADH]]+H<sup>+</sup><math>\rightleftharpoons </math> [[リンゴ酸|L-リンゴ酸]]+NAD''' :[[リンゴ酸デヒドロゲナーゼ]]により進む。 *(リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより[[リンゴ酸]]としてミトコンドリア内膜、外膜を通過し[[細胞質]]に到達) '''段階3:L-リンゴ酸+NAD <math>\rightleftharpoons </math> オキサロ酢酸+NADH+H<sup>+</sup>''' :この反応もリンゴ酸デヒドロゲナーゼにより進む。 '''段階4:オキサロ酢酸+[[グアノシン三リン酸|GTP]] → [[ホスホエノールピルビン酸]]+GDP+CO<sub>2</sub>''' :[[ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ]](phosphoenolpyruvate carboxykinase)により進む。 ===[[フルクトース-1,6-ビスリン酸]] → [[フルクトース-6-リン酸]]=== 解糖系ではこれの逆反応を[[ホスホフルクトキナーゼ]]により行っているが、これは不可逆的なので[[フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ]](fructose-1,6-bisphosphatase)が用いられている。また、[[マグネシウム|Mg<sup>2+</sup>]]も必要である。この酵素は、フルクトース-1,6-ビスリン酸のC-1位のリン酸基を[[加水分解]]する。 :フルクトース-1,6-ビスリン酸+H<sub>2</sub>O → フルクトース-6-リン酸+Pi (⊿G'°=-16.3 kj/mol) ===グルコース-6-リン酸 → グルコース=== [[グルコース-6-ホスファターゼ]]により進む。解糖系の逆反応ならばATPが生成するが、この反応ではATPは生成しない。グルコース-6-ホスファターゼはグルコース-6-リン酸を[[リン酸エステル]]として単なる加水分解を促進する。 :グルコース-6-リン酸+H<sub>2</sub>O → グルコース+Pi (⊿G'°=-13.8 kj/mol) ===[[プロピオン酸]] → [[ホスホエノールピルビン酸]]=== プロピオン酸からは以下の経路を経て糖新生が行われる。この反応の前半部分は奇数鎖脂肪酸の[[β酸化]]から発生したプロピオン酸の代謝経路を辿る<ref>[http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/gluconeo.htm 糖新生] 講義資料のページ</ref>{{信頼性要検証|date=2012年11月}}。 [[プロピオン酸]] → [[プロピオニルCoA]] → S-[[メチルマロニルCoA]] → R-メチルマロニル-CoA → [[スクシニルCoA]] → [[コハク酸]] → [[フマル酸]] → [[リンゴ酸]] → [[オキサロ酢酸]] → [[ホスホエノールピルビン酸]] === グリセロール === グリセロールは、肝臓で[[グリセロール3-リン酸]]、ついで[[ジヒドロキシアセトンリン酸]]となり、糖新生経路へ入る。 == 糖新生の調節 == 糖新生はインスリンにより抑制、グルカゴンにより亢進するが、健常人ではインスリンが多量に分泌されても糖新生はあまり抑制されない(肝グリコーゲンの分解はほぼ完全に止まる)<ref>The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 104, Issue 7, July 2019, Pages 2842–2850, https://doi.org/10.1210/jc.2018-02304</ref>。 タンパク質摂取時はインスリンとグルカゴンが同時に分泌されるが、糖新生は大幅に活性化する。 インスリンが枯渇している1型糖尿病患者の場合は、少量のインスリン注入によって糖新生が大きく抑制されたという報告がある。 ==脚注== <references/> == 関連項目 == * [[解糖系]] * [[無益回路]] * [[コリ回路]] * [[血糖値]] {{解糖系の酵素}} {{代謝}} {{DEFAULTSORT:とうしんせい}} {{Biosci-stub}} [[Category:代謝]] [[Category:代謝経路]] [[Category:肝臓学]] [[Category:低炭水化物ダイエット]]
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