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数学の[[順序集合|順序]]理論の分野において、'''線型連続体'''(せんけいれんぞくたい、[[:en:linear continuum|linear continuum]])とは[[実数直線]]を一般化したものである。ここでの「連続体」という語は[[連続体 (位相空間論)]]とは異なる。 正確には、線型連続体とは、上に[[有界]]な非空[[部分集合]]が[[上限 (数学)|上限]]をもつという意味で“ギャップ”を欠いており、稠密順序づけられた-つまり任意の二元の間に元が存在するような-空でない全順序集合''S'' のことである。 さらに記号的にいうと<br /> : a) ''S'' は[[上限性質]]をもつ。 : b) ''x'' < ''y'' であるような任意の''S''の元''x'',''y'' に対して、''x'' < ''z'' < ''y'' なる''S''の元''z''が存在する。 上限性質とは、いかなる空でない上に有界な部分集合は上限を持つということである。[[順序集合#順序構造と位相構造|順序位相]]が与えられた[[順序集合]]が連結であるか否かを確かめるために使われる点で、線型連続体は特に[[トポロジー]]の分野で重要である。 == 例 == * 通常の順序を入れた[[実数]]の集合'''R'''は典型的な例である。性質b)は自明である。性質a)は[[実数の連続性]]の同値な命題の一つである。 実数の例の他にも * 実数の集合と順序同型な集合たちである。例えば開区間や半開なギャップをもつ開区間である。(上で述べた意味での“ギャップ”は存在しないことに注意せよ。) * [[拡大実数|アフィン拡大実数]]とそれと順序同型な集合たちである。例えば[[:en:unit interval]] * 実数の集合に、無限大のみ(または無限小のみ)を添加した集合、及びそれと順序同型な集合。例えば[[半開区間]]。 * [[長い直線]] * ''I'' × ''I'' (×は[[直積]]を表し、''I'' =[0,1]とする)は[[辞書式順序]]で線型連続体である。性質b)は自明。a)を確かめるには、π<sub>1</sub> : ''I'' × ''I'' → ''I'' ::''π''<sub>1</sub> (''x'', ''y'') = ''x''という写像を考える。この写像は[[射影]]写像として知られる。これは(''I'' × ''I'' 上の積位相に関して)[[連続]]であり、[[全射]]である。 :: さて、''A'' を ''I'' × ''I'' の上に有界な空でない部分集合とするとき、π<sub>1</sub>(''A'' ) を考える。''A'' は上に有界であるからπ<sub>1</sub>(''A'' ) もまた上に有界でなければならない。π<sub>1</sub>(''A'' ) は''I'' の部分集合であるから、π<sub>1</sub>(''A'' ) は上限をもつ(つまり、上限性質をもつ)。''b'' をπ<sub>1</sub>(''A'' ) の上限としよう。 :: もし、''b'' がπ<sub>1</sub>(''A'' )に属するならば、π<sub>1</sub>の全射性より、少なくとも一つの''c''∈ ''I'' に対して、''b'' × ''c'' は''A'' に含まれるから(''b'' × ''I'' )∩''A'' は空ではない。そこで、''b'' × ''I'' は''I'' と同じ[[順序型]]をもつことに注意すれば、ある''c' '' ∈ ''I''が存在して、(''b'' × ''I'' )∩''A'' は、''b'' × '' c' '' という上限をもち、これがまさしく''A'' の上限である。 :: もし、''b'' がπ<sub>1</sub>(''A'' )に属さないならば、''b'' × ''0'' は''A'' の上限である。なぜならば、もし''d'' < ''b'' なる''d'' と、ある''e''∈ ''I'' に対して、''d'' × ''e'' が''A'' の上界であるならば、''d''はπ<sub>1</sub>(''A'' ) の上界に属する''b'' より小さい元になってしまい、''b'' が上限であることに反する。 == 当てはまらない例 == * 有理数の集合は線型連続体ではない。性質b)を満たしても、a)は満たさないからである。 ::<math> \quad A = \{ x\in\mathbb{Q} \mid x<\sqrt{2} \} </math> :という部分集合を考えてみよ。これは、例えば3は''A'' のどの元よりも大きいことから、''A'' は上に有界である。しかし、有理数の上限を持たない。 * 通常の順序の非負整数の集合は線型連続体でない。性質a)は満足する。(''A'' を非負整数の部分集合とすると、これは上に有界である。''A'' は有限であるから最大元が存在する。その最大元が上限である。)その一方で、性質b)は満足しない。実際、5も6も非負整数である。しかし、5と6の間に非負整数は存在しないことから、稠密ではない。 * 通常の順序での0以外の実数の集合 ::<math> A = (-\infty ,0 )\cup (0,\infty) </math> :は線型連続体でない。性質b)は自明に満たす。しかし、''B'' を負の実数の集合 ::<math> B = (-\infty ,0 ) </math> :とすると、''B'' は''A'' の部分集合であり、上に有界である(例えば1は''B'' の上界である)。しかし、''B'' には上限が存在しない。ただし、0は''A'' の元ではないことから''B'' の上界でないことに注意せよ。 * <math>Z_-</math>を負の整数の集合、''A'' を<math>A = (0,5)\cup (5,\infty)</math>として、''S'' を ::<math>S = Z_- \cup A</math> :としよう。そのとき、''S'' はa)もb)も満たさない。その証明は上記と同様である。 == 位相的性質 == 線型連続体は[[順序集合]]論の研究において重要であるが、トポロジーの分野においての応用が存在する。実際、順序集合が線型連続体であるとき、かつそのときに限り、順序位相の入った順序集合が連結であることを証明しよう(“であるとき、かつそのときに限り”に注意せよ)。一つを暗に証明し、もう一つは練習としておこう。参考文献ではその証明が書かれている<ref>Munkres, James (2000). Topology, 2nd ed., Prentice Hall. p 153-154.</ref>。 ; 定理 ''X'' を順序位相の入った順序集合とする。そのとき、''X'' が連結であれば''X'' は線型連続体である。 ; 証明 x<yなる''X'' の元x,yをとる。x<z<yなる''X'' の元zが存在しないと仮定し、次の集合を考える。 ::<math> A=(-\infty,y) , B=(x,\infty) </math> これらの集合は * [[素集合|交わらない]](disjointである)。 ::(a∈Bであれば、x<aかつa<yは仮定より起こり得ないことから、a∈Aであればa<y である。) * 非空である(xはAの元であり、yはBの元である)。 * (順序位相において)開集合である。 * その和集合は''X'' である。 これは''X'' が連結であることに反する。よって、''X'' はb)を満たす。 次に上限性質を持つことを証明しよう。Cを''X'' の上に有界な部分集合で上限を持たないとし、DをbをCの上界として(b,+∞)の形のすべての半直線(open ray)の和であるとする。 そうすると、Dは * (開集合の和集合であるから)[[開集合|開]]である * [[閉集合|閉]]である * 非空である を満たす。このDとその補集合はX上の分離(separation([[:en:Separated sets|en]]))を形成する。これはXが連結であることに反する。よって、上限性質を満たす。 === 定理の適用 === # 順序集合<math>A = (-\infty ,0 )\cup (0,\infty)</math>は線型連続体でないので、これは非連結である。 # 上で証明した定理を適用すると、'''R''' が連結であるということが従う。そして'''R''' のいかなる区間(や半直線)も、また連結である。 # 整数の集合は線型連続体でないから連結ではありえない。 # 順序位相において順序集合が線型連続体であったならば、それは必ず連結である。この集合のどの区間も線型連続体であることから、連結な集合からなる基をもつのでこの空間は局所連結であることが従う。 # 位相空間の興味深い例としては、[[長い直線]]を見よ。 == 関連項目 == == 参考文献 == Munkres, James (1999). Topology, 2nd ed., Prentice Hall. ISBN 0-13-181629-2. == 脚注 == <references /> {{デフォルトソート:せんけいれんぞくたい}} [[Category:位相空間]] [[Category:数学に関する記事]]
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