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[[ファイル:aer.lingus.a320-200.ei-cva.planform.arp.jpg|thumb|right|250px|A と B の間隔が翼幅([[エアバスA320]])]] '''翼幅'''(よくふく、{{lang-en-short|wingspan, span}})は、[[固定翼機|固定翼航空機]]左端と右端との距離のこと。例えば[[ボーイング777]]はおよそ60 mの翼幅を持つ。 '''翼長'''(よくちょう)ともいう。また「翼幅」は日常語では「よくはば」と読まれる場合もある。英語のまま'''スパン'''あるいは'''ウィングスパン'''と呼ばれることもある。 [[鳥類用語|鳥類学]]では、「翼幅」という用語は用いずに'''翼開長'''または'''翼開張'''({{lang-en-short|wing span}})といい、'''翼長'''(よくちょう)({{lang-en-short|wing length}})は'''翼角'''(手首の関節)から最長の'''初列風切'''の先端までの長さを指す。 == 定義 == 航空機の翼幅は、常に翼の両端間の直線距離で計測され、[[後退翼]]機でもそれは変わらない。また、[[回転翼機]]の場合は[[翼#回転翼|ローター]]ブレード1枚の長さをいう。 翼幅の半分のことを'''ハーフスパン''' (half span, half-span) と呼ぶこともある。<!--翼幅の半分ではなく、翼一枚のみの長さのこともハーフスパンと呼ぶこともあるが、wing length あるいは half wing length と呼んで明確に区別することもある。--> == 飛行力学上の意味 == 翼に発生する空気力学的な力([[揚力]] ''L'' と[[抗力]] ''D'')の大きさは、[[翼面積]] ''S'' に比例する。 :<math>L = \frac{1}{2} \, \rho_{\infty} \, {U_{\infty}}^2 \, S \, C_L</math> :<math>D = \frac{1}{2} \, \rho_{\infty} \, {U_{\infty}}^2 \, S \, C_D</math> ただし、ρ<sub>∞</sub> は空気密度、''U<sub>∞</sub>'' は飛行速度、''C<sub>L</sub>'', ''C<sub>D</sub>'' はそれぞれ揚力係数と抗力係数。 定常つりあい飛行をするためには、空気力の鉛直上向き成分(上昇・下降していなければ、揚力そのもの)と[[重力]]とがつりあっている必要がある。したがって、他の条件(空気密度・飛行速度・空気力の係数)が同じなら、ある重量の飛翔体が飛ぶためにはある一定の翼面積が必要となる。翼が横に長ければ、翼の前後方向の長さ(翼弦長)は小さくていい。あるいは、翼幅が小さければ、同じ面積にするためには翼弦長は大きくなければならない。 翼幅と平均翼弦長との比、あるいは翼幅の二乗を翼面積で割った値を翼の[[アスペクト比 (航空工学)|アスペクト比]]と呼ぶ。翼幅を ''b'', 平均翼弦長を ''c<sub>m</sub>'', 翼面積を ''S'' とすると、アスペクト比 ''A''R は :<math>A\mathrm{R} = \frac{b^2}{S} = \frac{b^2}{b \cdot c_m} = \frac{b}{c_m}</math> とあらわされる。 他の条件が同じならば、翼幅が大きく、アスペクト比が大きい飛翔体のほうが、[[翼端渦]]の影響が小さくなり[[誘導抗力]]が減少するため、飛行に必要なエネルギーが小さくてすみ、効率的である。しかし、翼の長さは材料と構造の強度によって制限される。また、翼幅が大きいと飛翔体の前後軸まわりの[[慣性モーメント]]が大きくなるため、素早い横転(ロール)ができず、機動性が低下する。そのため、[[戦闘機]]や[[曲技飛行]]機、また[[猛禽類]]のような鳥類では、機動性を増すために、短めの翼幅であることが多い。一方で、長距離あるいは長時間にわたる効率的な飛行を主眼とする[[旅客機]]や[[輸送機]]・[[貨物機]]、高高度[[偵察機]]、あるいは[[渡り鳥]]や[[海鳥]]などでは、アスペクト比の大きな細長い翼を備えることが多い。動力を備えない[[滑空機]](グライダー)や、人間の脚力を動力とする[[人力飛行機]]もアスペクト比が大きい。鳥類の場合、飛行状態によって翼をたたみ、翼幅(アスペクト比)をある程度変えることも可能である<ref>{{Cite journal |first=Vance A. |last=Tucker |title=Gliding Birds: The Effect of Variable Wing Span |journal=J. Exp. Biol. |volume=133 |year=1987 |publisher=Company of Biologists |pages=pp. 33-58 |url=http://jeb.biologists.org/cgi/content/abstract/133/1/33 }}</ref>。また、猛禽類のように機動性を重視した鳥の場合、風切羽が[[ウィングレット]]のような役割を果たしていることがある<ref>{{Cite journal |first=Vance A. |last=Tucker |title=GLIDING BIRDS: REDUCTION OF INDUCED DRAG BY WING TIP SLOTS BETWEEN THE PRIMARY FEATHERS |journal=J. Exp. Biol. |volume=180 |issue=1 |year=1993 |publisher=Company of Biologists |pages=pp. 285-310 |url=http://jeb.biologists.org/cgi/content/abstract/180/1/285 }}</ref>。 == スポーツにおける「翼幅」 == [[バスケットボール]]においては、プレーヤーの指先から指先までの距離を(英語のまま)「[[ウィングスパン]]」と呼ぶ。これは[[ボクシング]]でいうところの「[[リーチ]]」に相当するものである。 == 翼幅の記録 == === 最大記録 === *'''航空機''': {{仮リンク|スケールド・コンポジッツ ストラトローンチ|en|Scaled Composites Stratolaunch}} - {{Convert|385|ft|m|abbr=on|disp=flip}}<ref name="aw20111220">{{Cite news |last=Mecham |first=Michael |author2=Frank Morring, Jr. |title=Allen Places Big Bet On Air Launches |url=http://www.aviationweek.com/aw/generic/story.jsp?channel=space&id=news/awst/2011/12/19/AW_12_19_2011_p26-406657.xml&headline=Allen%20Places%20Big%20Bet%20On%20Air%20Launches&prev=10 |accessdate=2011-12-23 |newspaper=Aviation Week |date=2011-12-20 |quote=''Dynetics has been under contract to {{仮リンク|Vulcan Inc.|en|Vulcan Inc.|label=Vulcan}} for almost a year and has some 40 employees on the project so far. SpaceX joined more recently, and the overall team is still working through details of how to progress toward its 2016 first launch.''}}</ref><ref name="wa20111213">{{Cite news |last=Paur |first=Jason |title=Microsoft Billionaire Paul Allen Launches New Space Venture |url=http://www.wired.com/autopia/2011/12/rutan-allen-musk-team-up-for-orbit |accessdate=201-11-14 |newspaper=Wired |date=2011-12-13 |archiveurl=https://webcitation.org/63vo4NRsr?url=http://www.wired.com/autopia/2011/12/rutan-allen-musk-team-up-for-orbit |archivedate=2011年12月14日 |location=New York |deadurldate=2017年9月}}</ref> *'''コウモリ''': [[ジャワオオコウモリ]]([[:en:Large Flying Fox]]) - 2 m<ref>{{cite web |url=http://www.seaworld.org/animal-info/Animal-Bytes/animalia/eumetazoa/coelomates/deuterostomes/chordata/craniata/mammalia/chiroptera/bats.htm |title=Bats|publisher=Sea World|accessdate=2007-06-23}}</ref> *'''鳥類(現存種)''': [[ワタリアホウドリ]] - 3.63m *'''鳥類(絶滅種)''': アルゲンタヴィス・マグニフィセンス([[:en:Argentavis]]) - 8.3 m *'''爬虫類''': [[ケツァルコアトルス]](翼竜) - 15 m(18 m?)<ref>{{cite web |url=http://www.nzherald.co.nz/section/2/story.cfm?c_id=2&ObjectID=10344848 |title=Flying dinosaur biggest airborne animal |publisher=New Zealand Herald|accessdate=2007-06-23}}</ref> *'''昆虫類(現存種)''': [[ナンベイオオヤガ]](蛾) - 280 mm<ref>{{cite web |url=http://ufbir.ifas.ufl.edu/chap32.htm |title=Largest Lepidopteran Wing Span |publisher=University of Florida Book of Insect Records|accessdate=2007-06-23}}</ref> *'''昆虫類(絶滅種): '''メガネウラ(トンボ)‐750mm === 最小記録 === *'''航空機(複葉機)''': [[バンブルビー II]]([[:en:Bumble Bee II]]) - 1.68 m(5 ft 6 in)<ref>[http://members.cox.net/robinstarr/ The World's Smallest Piloted Airplane The BUMBLE BEE II]</ref> *'''航空機(ジェット機)''': [[ビード BD-5]]([[:en:Bede BD-5]]) - 4.27 m(14 ft) *'''コウモリ''': [[キティブタバナコウモリ]] - 16 cm *'''鳥類''': [[マメハチドリ]] - 6.5 cm *'''昆虫類''': タンザニア寄生バチ([[:en:Parasitic wasp|en:Tanzanian parasitic wasp]]) - 0.2 mm == 参考文献 == *{{Cite book|和書 |author=東昭 |year=1993 |title=流体力学 |publisher=朝倉書店 |isbn=4-254-23623-9 }} == 脚注 == <references/> == 関連項目 == {{Wikidata property}} * [[可変翼]] {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:よくふく}} [[Category:航空工学]]
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