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自発核分裂
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{{出典の明記|date=2011年6月}} '''自発核分裂'''(じはつかくぶんれつ、{{lang-en-short|spontaneous fission}}、SF)とは[[質量数]]が非常に大きな[[同位体]]に特徴的に見られる[[放射性崩壊]]の一種である。自発核分裂は理論的には質量が100[[原子質量単位|Da]]程度([[ルテニウム]]付近)を超えるどのような[[原子核]]にも起こりうるが、エネルギー的に実際に自発核分裂が可能なのは[[原子量]]が約230Da([[トリウム]]付近)以上の原子に限られる。 [[ウラン]]とトリウムの場合、自発核分裂は起きないわけではないが放射性崩壊のモードの主たる過程ではなく、これらの元素を含む試料の[[放射能]]を測る際に崩壊の分岐比を正確に考える必要があるような場合を除いて、通常は無視される。自発核分裂が起こる条件は以下の式で近似的に与えられる。 :<math>\hbox{Z}^2/\hbox{A}\ge 45.</math> ここで Z は[[原子番号]]、A は質量数である。 式の表すように、自発核分裂の[[半減期#崩壊が分岐する場合について|部分半減期]]は陽子数Zが増大すると急激に減少する<ref>『理化学辞典第5版』、岩波書店、1998、項目『自発核分裂』より。</ref>。例えば陽子数92のウランでは自発核分裂の部分半減期が10<sup>16</sup>年になるのに対して、陽子数100のフェルミウムでは部分半減期は1年前後である。このように、自発核分裂が最も起こりやすい元素は[[ラザホージウム]]のような[[超アクチノイド元素]]である。 自発核分裂はその名の通り[[原子核分裂]]反応と全く同じ物理過程であるが、[[中性子]]やその他の粒子による衝撃を受けることなく分裂が始まる点が通常の核分裂と異なっている。[[陽子]]が多く中性子があまり多くない核種では陽子同士に働く[[クーロン力]]の影響で原子核全体が不安定な状態にある。このような原子核が[[量子力学]]的な[[トンネル効果|揺らぎ]]によって自発的に核分裂を引き起こす過程が自発核分裂である。 自発核分裂では他の全ての核分裂反応と同様に中性子が放出される。そのため、[[臨界量]]以上の[[核分裂性物質]]が存在する場合には自発核分裂が核分裂の[[連鎖反応 (核分裂)|連鎖反応]]を引き起こしうる。また、自発核分裂が崩壊モードの中で無視できない確率で起こる[[放射性同位元素]]は[[中性子線]]源として用いられる。この目的では[[カリホルニウム]]252([[半減期]]2.645年、自発核分裂分岐比 3.09%)がしばしば用いられている。このような線源から放出される中性子線は、航空貨物に隠された爆発物の検査や建設業界での土壌の水分含有量の測定、サイロに貯蔵された物資の湿度の測定、その他様々な用途に使われている。 自発核分裂による分裂性原子核自身の数の減少が無視できる範囲では、ベクレルが一定となるため自発核分裂は平均値が等しい指数到着であり、[[ポアソン分布|ポアソン過程]]と見なすことができる。すなわち、非常に短い時間尺度では、自発核分裂の確率は着目する時間の長さに比例する。 ウランを含む[[鉱物]]では、ウラン238の自発核分裂によって生じた分裂後の原子核が[[結晶構造]]の中に反跳した飛跡を残す。これらの飛跡はフィッション・トラックと呼ばれ、[[フィッション・トラック法]]と呼ばれる[[放射年代測定]]に利用される。 [[超重元素]]の探索において、ある元素を合成したと認められる基準は、当該原子核群の少なくとも一部が既知の原子核に崩壊することとされている。それらが全て自発核分裂してしまった場合は、その原子核を合成したとはみなされない。 == 自発核分裂の確率 == 主な核種の自発核分裂の確率を以下に挙げる。 * <sup>235</sup>U : 5.60 × 10<sup>-3</sup> 回/s-kg * <sup>238</sup>U : 6.93 回/s-kg * <sup>239</sup>Pu : 7.01 回/s-kg * <sup>240</sup>Pu : 489,000 回/s-kg(約 1,000,000 中性子/s-kg) [[プルトニウム]]239の原子核は生成過程で中性子を1個余計に吸収する傾向があるため、実際のプルトニウム239には常にある量のプルトニウム240が含まれている。プルトニウム240は自発核分裂の確率が高いため、プルトニウムの利用に際しては好ましくない混入物質とされている。兵器級プルトニウムではプルトニウム240の含有量は7%以下とされている。 [[ガンバレル型]]の[[原子爆弾]]では、分割した核物質を合体させて臨界量にするために要する臨界挿入時間 (critical insertion time) に約1ミリ秒かかり、この時間内に起こる自発核分裂の確率は十分に小さくなければならない。そのため、ガンバレル方式の原爆に用いられる核物質としてはウラン235のみが適している。 == 参考文献 == <references /> == 関連項目 == * [[原子核分裂]] {{核反応}} {{放射線}} {{DEFAULTSORT:しはつかくふんれつ}} [[Category:原子力]] [[Category:原子核物理学]]
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