自転と公転の同期のソースを表示
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自転と公転の同期
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'''自転と公転の同期'''(じてんと こうてんの どうき)とは、互いの[[重力]]に引かれて[[重心|共通重心]]の周りを[[公転]]している2つの[[天体]]の、一方または両方が、常に相手に同じ面を向けて[[回転]]する[[現象]]をいう。すなわち、[[自転]]周期と公転周期が等しくなっている現象である。 {{Anchors|tidal locking|gravitational locking|同期自転|潮汐ロック|潮汐固定}}このような状態を示す他の[[日本語]]表現としては、自転の同期で説明する「'''同期自転'''」、この現象によって起こる[[潮汐]]の固定で説明する「'''潮汐ロック'''」「'''潮汐固定'''」がある。 身近な実例は[[地球]]の[[衛星]]である。[[月]]は自転周期と公転周期が同じ(約27.32日)になっているので、常に地球に同じ面を向けている。 == 同期自転の原因 == [[ファイル:Co-rotation.png|400x400ピクセル|自転角速度が公転角速度に対して卓越している場合(左)と同期自転状態(右)。黄矢印は衛星の自転を表す。2つの潮汐バルジ(B<sub>F</sub>とB<sub>N</sub>)にかかる重力には差があり、それによって生じるトルクは黄矢印の回転を打ち消す方向に働く。|サムネイル]] このような同期は2つの天体の距離が比較的近く、相手の天体が及ぼす[[潮汐力]]が強い場合に起こる。こういった同期現象は[[惑星]]や衛星に限らず、公転運動する固体状の天体において一般的に起こり得る現象である。 互いに重力で引き合う2つの天体には、それぞれ相手の天体から潮汐力が働く。この潮汐力は、2天体を結ぶ軸の方向では天体を引き伸ばし、この軸に垂直な方向では天体を圧縮する向きに作用する。天体がある程度以上の質量を持つと、[[自己重力]]が十分に強くなり、[[静水圧平衡#天体物理学|静水圧平衡]]の状態となるため、ほぼ球形をしている。しかし、このような潮汐力が働くと、天体は2天体の軸方向に力が加わってわずかに伸びた[[楕円体]]となり、引き伸ばす力に由来する膨らみ(潮汐バルジ)を生じる。 ここで、例として惑星-衛星系を考え、両天体の公転運動に合わせて回転する座標系に乗り、潮汐力による衛星の変形の効果によって衛星が同期自転する様子を見てみる。 衛星の2つの潮汐バルジは、その自転周期と公転周期の差に応じて、惑星とを結ぶ軸上から若干ずれたところにある。これは、衛星の[[粘性率|粘性]]に応じて潮汐力による変形応答が遅延するためである。ここで、2つの潮汐バルジ部の質量が惑星から受ける重力を考えると、これらの合力は、潮汐バルジが惑星とを結ぶ軸への移動を起こすような[[トルク]]となる(潮汐トルク)。この潮汐トルクは、衛星の自転周期と公転周期の差を縮めるように働き、衛星はついに同期自転状態に落ち着く。 これと同様のことは、惑星にも起こりうる。衛星からの潮汐力の効果で惑星が変形し、惑星には、衛星に同じ面を向けるようなトルクが生じている。<br> == 同期自転の例 == [[火星]]の[[フォボス (衛星)|フォボス]]・[[ダイモス (衛星)|ダイモス]]や[[木星]]の[[ガリレオ衛星]]を始め、[[太陽系]]の惑星にあるほとんど全ての衛星は自転と公転とが同期している。また、惑星と衛星との距離が近く、両者の質量の差があまり大きくない場合には、衛星からの潮汐力によって惑星の自転周期も衛星の公転周期・自転周期と同期し、両者とも完全に相手に同じ面を向けたままの状態になる場合も考えられる。[[準惑星]]の[[冥王星]]とその衛星[[カロン (衛星)|カロン]]とはそのような同期の例である。[[地球]]と[[月]]とは現在、月のみ自転と公転が同期した状態にあるが、月との相互作用に起因する潮汐トルクによって地球の自転速度は徐々に遅くなっており、遠い将来には月の公転周期と同期するところまで遅くなって安定すると考えられる。 [[連星|近接連星系]]の多くも互いの星の自転と公転が同期していると考えられている。 {{Anchors|HotJupiter|HJ}}[[太陽系外惑星]]のうち、[[ホット・ジュピター]]と呼ばれるような軌道半径が小さい惑星は自転と公転が同期していると考えられる。{{Anchors|M-type}}また、太陽よりも質量の小さい[[赤色矮星|M型主系列星]]の周りを回っているハビタブル惑星(生命が存在する可能性のある惑星)は、[[ハビタブルゾーン]]が恒星の近くに存在するために惑星が同期自転していると考えられている。{{Anchors|TRAPPIST-1}}[[地球型惑星]]が7つも連なっていることで知られる[[TRAPPIST-1|トラピスト1]]惑星系は、恒星に近い所を公転していることが分かっており、潮汐ロックが起きている可能性が高い<ref name="Engadget_20170814">{{Cite web|和書|url=https://japanese.engadget.com/2017/08/14/trappist-1/ |archiveurl=https://web.archive.org/web/20170817111319/http://japanese.engadget.com:80/2017/08/14/trappist-1/|archivedate=2017-08-17|url-status=dead|url-status-date=2022-05-01|title=TRAPPIST-1の惑星系は太陽系よりも古いと判明。生命には厳しい環境も、存在可能性は否定せず |author=谷口宗敬 |date=2017-08-14 |work=公式ウェブサイト |publisher=[[Engadget]]日本版 |quote=至近距離にあるTRAPPIST-1の潮汐力によって自転と公転が同期してしまっていても、常に昼間の暑い側から、常に夜になっている寒い側に大気が対流することで、ちょうどよい環境のエリアが存在することも考えられます。 |accessdate=2019-07-04 }}</ref>。[[大気]]の存在が確認されている惑星もあり、そのような惑星では主星となる恒星の光を常に受け続ける面とその反対側の面の間で[[移流]]による大気と[[気温]]の平準化が起きている可能性もある{{r|Engadget_20170814}}。ハビタブルゾーン内の惑星が潮汐固定されるという状況は質量が太陽の0.5-0.7倍よりも小さい主星の場合一般的に発生すると考えられている<ref name="Lec15">{{cite journal |author=Leconte et al. |year=2015 |bibcode=2015Sci...347..632L |journal=Science |volume=347 |pages=632}}</ref>。この質量の範囲はすべての[[M型主系列星]]と一部の[[K型主系列星]]に対応する。 {{Anchors|Tau}}変わった例では、[[1997年]]に[[うしかい座タウ星|うしかい座τ星]]に発見された系外惑星は、通常とは逆に恒星の自転周期が惑星の公転周期で強制され、同期しているらしいことが分かっている<ref>[http://www.space.com/scienceastronomy/050523_star_tide.html Role Reversal: Planet Controls a Star]</ref>。 == 自転と公転の共鳴 == 自転と公転の同期は、自転と公転の「1:1共鳴」と見なすことができ、[[軌道共鳴]]と類似した数学上の取り扱いが可能である。様々な整数比の軌道共鳴(平均運動共鳴)が存在するのと同様に、自転と公転の共鳴も他の整数比に拡張して考えることができる。よく知られているのは、[[水星]]の自転と公転が[[角速度]]にして3:2の関係にあるという事実である。この現象は、同期自転と本質的に同じメカニズムによって引き起こされている。 水星が、同期自転ではなくこのような共鳴した自転をしている原因は、その[[軌道離心率]]の高さ(e = 0.206)に求めることができる。天体が完全に真円の軌道(e = 0)で公転しているとき、同期自転(1:1共鳴)のみが、自転と公転の安定な共鳴関係になる。しかし軌道が楕円軌道になると、同期自転以外も安定である可能性が生じ、特に3:2の共鳴が強くなってくる。軌道離心率が小さいときに3:2共鳴について考えた場合、共鳴の強さを示す[[共鳴幅]]の値は、1:1共鳴(同期)を1とした相対値で、<math>\sqrt{7e/2}</math> と表せる{{r|Malhotra 1998}}。ここで <math>e</math> は軌道離心率を表す。すなわち軌道離心率が低い場合は同期自転が安定だが、離心率が高くなると3:2自転の方が安定になる。この式に、水星の離心率(約0.2)を当てはめると、3:2共鳴は1:1共鳴の0.84倍の共鳴幅を持つことになる。これは、3:2共鳴より1:1の共鳴の方がやや強いものの、その共鳴幅に大きな差はなく、水星は同期自転と3:2共鳴自転の双方の状態を取りうることを示している。なお、1:1と3:2以外の比率では、共鳴幅はさらに小さい値にしかならない<ref name="Malhotra 1998">{{cite paper | author=Malhotra, R. | year=1998 | title= Orbital Resonances and Chaos in the Solar System | journal=Solar System Formation and Evolution: ASP Conference Series | volume=149 | bibcode=1998ASPC..149...37M|pages=p.37}}</ref>。 == 出典 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 関連項目 == * [[潮汐力]] * [[月]] * [[軌道共鳴]] == 外部リンク == * [http://imagine.gsfc.nasa.gov/docs/ask_astro/answers/980519a.html The Moon's revolution and rotation period] [[Category:天体力学|してんとこうてんのとうき]]
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