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{{子記事|マグニチュード}}
'''表面波マグニチュード'''（{{lang-en-short|Surface wave magnitude}}, '''M<sub>s</sub>'''）は、[[地震波#表面波|表面波]]から計測する[[地震]]のエネルギー量を表す指標値（[[マグニチュード]]）である。

1946年に[[ベノー・グーテンベルグ]]は[[ローカル・マグニチュード]]（リヒター・スケール）を基礎にして表面波の振幅・周期と[[震央距離]]（角度）からマグニチュードを計測する表面波マグニチュードの原型を定義した<ref name="Gutenberg 1945" />。その後、1962年にヴィット・カールニクは汎用化した表面波マグニチュードの評価式を定義し<ref name="karnik1962" />、1967年に{{仮リンク|国際地震学及び地球内部物理学連合|de|International Association of Seismology and Physics of the Earth’s Interior|label=IASPEI}}はマグニチュードの標準的な計測法として推奨した<ref name="IASPEI" />。

表面波マグニチュードはローカル・マグニチュードの特性・評価値を踏襲しており、表面波マグニチュードとローカル・マグニチュードはほぼ同等のマグニチュード値を計測する。

== 歴史 ==
[[ファイル:Beno Gutenberg.jpg|thumb|表面波マグニチュードの原型を発案したベノー・グーテンベルグ]]
[[チャールズ・リヒター]]が1935年に地震が発生させるエネルギー量を基準にした指標値であるローカル・マグニチュード（リヒター・スケール）を定義してから、マグニチュードと[[地震波#表面波|表面波]]の関係が研究されている。ローカル・マグニチュードは地震計の測定した振幅と震央から測定地点までの距離からマグニチュードの値を決定しており、そこに直接的には表面波は関わっていなかった。1936年にベノー・グーテンベルグとチャールズ・リヒターはローカル・マグニチュードを用いる条件を補足し、地震計が計測する表面波の周期が約20秒であること、震央と測定地点の角度が20°以上であることを付与し、それらの条件から大きく逸脱している場合はローカル・マグニチュードで算出した値は適切ではないとした。また、震央と測定地点の角度が20°以上であれば、地震が発生させる表面波の振幅と周期が変数を伴わない一次方程式の関係にあると述べた。

[[ベノー・グーテンベルグ]]は1945年に、表面波の周期から表面波の振幅が算出できることに着目し、マグニチュードが表面波の振幅と[[震央距離]]（角度）から測定できると述べた<ref name="Gutenberg 1945">{{Citation |first1= B. |last1= Gutenberg |first2=  |last2= |date= January 01, 1945 |title= Observational constraints on the fracture energy of subduction zone earthquakes |journal= Bulletin of the Seismological Society of America |volume= 35 |issue= 1 |pages= 3-12 |doi= |url= https://pubs.geoscienceworld.org/ssa/bssa/article-abstract/35/1/3/101145 |bibcode=}}</ref>。この時、マグニチュードの特性・指標値はローカル・マグニチュードを踏襲し、計測式を地震計・観測地点特有の補正を含む[[対数スケール]]で定義し、計測値をローカル・マグニチュードの近似値にするために定数の和・積で補正した。この計測式を用いる条件として、表面波の周期が約20秒であること、震央距離が20°以上であることとした。{{仮リンク|ヴィット・カールニク|de|Vít Kárník}}は1962年にベノー・グーテンベルグの計測式を改善して表面波マグニチュードの計測式を定義した<ref name="karnik1962">{{Citation |first1= Vít |last1= Kárník |first2=  |last2= |date= March 1962 |title= Standardization of the earthquake magnitude scale |journal= Studia Geophysica et Geodaetica |volume= 6 |issue= 1 |pages= 41–48 |doi= |url= https://link.springer.com/article/10.1007/BF02590040 |bibcode=}}</ref>。計測式を用いる条件として、震央距離が20°から160°の範囲であること、震央の深さが50km以内であることとした。{{仮リンク|国際地震学及び地球内部物理学連合|de|International Association of Seismology and Physics of the Earth’s Interior|label=IASPEI}}は1967年に震央の深さが50km以内の浅い地震のマグニチュードを計測する標準的な手法として、ヴィット・カールニクの定義した計測式および表面波マグニチュードを推奨することを合意した<ref name="IASPEI">{{cite web| first=J.R.| last=Kayal|url=https://www.researchgate.net/publication/255605189_EARTHQUAKE_MAGNITUDE_INTENSITY_ENERGY_POWER_LAW_RELATIONS_AND_SOURCE_MECHANISM|title=EARTHQUAKE MAGNITUDE, INTENSITY, ENERGY, 
POWER LAW RELATIONS AND SOURCE MECHANISM| page=3|publisher=USGS|accessdate=2018-06-07}}</ref>。

1999年から中国での地震規模によるカテゴライズのため[[中華人民共和国国家標準]]（GB 17740-1999）として採用されていたが<ref>{{cite web | publisher=General Administration of Quality Supervision, Inspection, and Quarantine of P.R.C. | author=XU Shaokui, LU Yuanzhong, GUO Lucan, CHEN Shanpei, XU Zhonghuai, XIAO Chengye, FENG Yijun (许绍燮、陆远忠、郭履灿、陈培善、许忠淮、肖承邺、冯义钧) | url=http://www.dccdnc.ac.cn/html/zcfg/gfxwj1.jsp | title=Specifications on Seismic Magnitudes (地震震级的规定) | date=1999-04-26 | accessdate=2008-09-14 | language=Chinese}}</ref>、2017年により正確なマグニチュード値でカテゴライズするために国家基準を更新して[[モーメント・マグニチュード]]が代わりに採用されている<ref>{{cite web | publisher=柳州市地震局 | author= | url=http://www.lzdz.gov.cn/zhyf/kzsf/201712/t20171219_1059246.htm | title=《地震震级的规定》国家标准发布 | date=2017-12-19 | accessdate=2018-06-04 }}</ref>。

== 定義 ==
表面波マグニチュードは式

:<math>M_s = \log\left(\frac{A}{T}\right)_{\text{max}} + 1.66\cdot\log\Delta + 3.3</math>

で[[マグニチュード]]の値を定義する<ref name="karnik1962" />。<math>A</math>は表面波変位（µm）、<math>T</math>は表面波周期（秒）、<math>\Delta</math>は震央距離（角度）である。定数は先行して定義されたローカル・マグニチュードと値を合わせるための補正値である。表面波マグニチュードで計測したマグニチュードはM<sub>s</sub>で標記される<ref name="usgs-terms">{{cite web|url=https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/terms.php|title=Technical Terms used on Event Pages|publisher=USGS|accessdate=2018-06-07}}</ref>。

== 特性 ==
表面波マグニチュードはローカル・マグニチュードの特性・評価値を踏襲しており、地震のエネルギー量の増加に対して[[対数スケール]]で値を増加させる。そのため、ある地震のマグニチュードを表面波マグニチュードとローカル・マグニチュードで計測すると、ほぼ同等の値が得られる。

表面波マグニチュードは、ローカル・マグニチュードと異なり観測地点毎の補正値を必要としないが、ローカル・マグニチュードと同様に規模の大きい地震でマグニチュード値が収束する傾向にある。そのため、速報的なマグニチュードの報告には使われるが、[[巨大地震]]などで改めて的確なマグニチュードを報告する際にはモーメント・マグニチュードが使われる<ref>{{cite web|url=https://www.usgs.gov/faqs/whywhen-does-usgs-update-magnitude-earthquake?qt-news_science_products=0#qt-news_science_products|title=Why/When does the USGS update the magnitude of an earthquake?|publisher=USGS|accessdate=2018-06-07}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.usgs.gov/faqs/moment-magnitude-richter-scale-what-are-different-magnitude-scales-and-why-are-there-so-many|title=Moment magnitude, Richter scale - what are the different magnitude scales, and why are there so many?|publisher=USGS|accessdate=2018-06-07}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

{{Earthquake}}
{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:ひようめんはまくにちゆうと}}
[[Category:地震学]]
[[Category:災害スケール]]