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'''計算格子'''<ref>{{cite|和書 |title=コンピュータによる[[流体力学]] |author=Joel H. Ferziger |author2=Milovan Perić |translator=小林敏雄、谷口伸行、坪倉誠 |publisher=[[シュプリンガー・フェアラーク東京]] |year=2003 |isbn=4-431-70842-1}}</ref>({{lang-en-short|computational mesh/grid}})または単に'''格子'''<ref name="minemura">{{cite|和書 |author=峯村吉泰 |title=JAVAによる流体・熱流動の数値シミュレーション |publisher=[[森北出版]] |year=2001 |isbn=4-627-91751-1 |page=40}}</ref>とは、[[数値解析]]における離散化のために用いられる、解析領域(2次元または3次元の幾何形状)を有限個に分割した部分領域のことである。[[構造力学|構造解析]]分野では'''要素'''とも言う<ref name=kishi>{{cite|和書 |author=岸正彦 |title=図解入門よくわかる最新有限要素法の基本と仕組み |publisher=秀和システム |year=2010 |isbn=978-4-7980-2673-2 |pages=12, 30-35}}</ref>。 計算領域を格子に分けることを'''格子生成'''({{lang-en-short|mesh generation}})または'''格子分割'''と言う。 各計算格子は番号付けにより識別され、その[[グラフ理論|幾何学的形状]]は節点(nodes)の座標値により規定される。また、節点には要素節点番号と呼ばれる要素内での節点の番号を付ける。 == 分類と生成法 == ; [[構造格子]]: 序列を持っている格子<ref name=fujii>{{cite|和書 |title=流体力学の数値計算法 |author=藤井孝藏 |publisher=東京大学出版会 |year=1994 |isbn=4-13-062802-X |page=11}}</ref>。格子数が座標軸の各方向に変化せず、領域を直方体状に分割する<ref name="minemura"/>。 ;*[[マップドメッシュ]] ;* 偏微分方程式を用いる方法:ある種の偏微分方程式を解くことで生成する方法がある。さらに楕円型、双曲型、放物型に分類される。 ;* 代数方程式を解いて生成する方法 ;* 境界適合格子:配置の仕方(トポロジーと呼ばれる)によってO型、C型、H型、L型に分類される。 ; {{仮リンク|非構造格子|en|Unstructured grid}} ;*[[ドロネー図|デローニ分割]] ;*[[四分木]]、[[八分木]]、[[kd木]] ;*[[アドバンシングフロント法]] == 構造解析分野における分類 == [[構造力学|構造解析]]においては、格子(要素)は構造物のモデル化手法によって以下のものなどが使い分けられる<ref name=kishi/>。 ; 線要素:[[トラス構造]]や[[ラーメン構造]]のような骨組み構造に適用される。要素特性として[[物性値]]のほかに断面積や[[断面2次モーメント]]、[[断面係数]]などを持つ。 ; 面要素:シェル要素({{en|shell element}})とも言う。板厚の10倍以上の広がりがある、あるいは板厚の5倍以上の曲げ半径を持つの場合に、その構造物は[[板]]であるとみなされ、面要素が用いられる。要素特性として物性値のほかに厚さの情報を持つ。 ; 体要素:ソリッド要素({{en|solid element}})とも言う。3次元形状(4面体や6面体)を持つ要素。要素特性には材料の物性値のみが必要となる。 == 有限要素法における分類 == [[有限要素法]]においては、要素の頂点にのみ節点を持つ'''1次要素'''と、要素の辺の中点にも節点を持つ'''2次要素'''に分類され、[[要素内補間]]の方法が異なる。<ref>{{cite|和書|author=遠田治正|title=CAEのための材料力学|publisher=日刊工業新聞社|year=2015|isbn=978-4-526-07374-8|pages=166-183}}</ref> ===三角形1次要素=== 三角形1次要素は3つの節点(添え字1, 2, 3)を持つ2次元の要素で、要素内の点 (''x'' , ''y'' ) の値δは節点の値δ<sub>1</sub> , δ<sub>2</sub> , δ<sub>3</sub> から次式で求められる。 :<math>\begin{align}\delta=\frac{1}{2\Delta}[ \{(x_2y_3-x_3y_2)+(y_2-y_3)x+(x_3-x_2)y\}\delta_1&\\ +\{(x_3y_1-x_1y_3)+(y_3-y_1)x+(x_1-x_3)y\}\delta_2&\\ +\{(x_1y_2-x_2y_1)+(y_1-y_2)x+(x_2-x_1)y\}\delta_3&] \end{align}</math> ここで ''x<sub>i</sub>'' , ''y<sub>i</sub>'' は各節点の座標で、 :<math>\Delta:=\frac{1}{2}\left|\begin{matrix}1&x_1&y_1\\1&x_2&y_2\\1&x_3&y_3\end{matrix}\right|</math> は三角形の面積である。 ===四角形1次要素=== 4つの節点(添え字1-4)をもつx-y平面上の2次元の四角形要素は、次の写像関数(形状関数)を用いてξ-η平面上の正方形に変換されて考察される。 :<math>\begin{align} x&=\frac{(1+\xi)(1+\eta)}{4}x_1 + \frac{(1-\xi)(1+\eta)}{4}x_2 + \frac{(1-\xi)(1-\eta)}{4}x_3 + \frac{(1+\xi)(1-\eta)}{4}x_4,\\ y&=\frac{(1+\xi)(1+\eta)}{4}y_1 + \frac{(1-\xi)(1+\eta)}{4}y_2 + \frac{(1-\xi)(1-\eta)}{4}y_3 + \frac{(1+\xi)(1-\eta)}{4}y_4\end{align}</math> この座標変換を用いて、要素内の座標 (ξ, η) の点の値δは節点の値δ<sub>''i''</sub> (''i'' = 1-4) から次式で求められる。 :<math>\delta=\frac{(1+\xi)(1+\eta)}{4}\delta_1 + \frac{(1-\xi)(1+\eta)}{4}\delta_2 + \frac{(1-\xi)(1-\eta)}{4}\delta_3 + \frac{(1+\xi)(1-\eta)}{4}\delta_4</math> この例のように、座標変換の式と要素内の値を求める式が同じように表される要素は'''アイソパラメトリック要素'''と呼ばれる。 ===三角形2次要素=== <!--説明用イラスト希望-->三角形2次要素は三角形の頂点(添え字1, 2, 3)に加え、各辺上にも節点(添え字4, 5, 6)をもつアイソパラメトリック要素である。辺の形状として直線だけでなく曲線(放物線)が許されるようになるため、1次要素より精度の高い要素とされる。 各節点をξ-η平面上に座標変換して(ξ<sub>1</sub>, η<sub>1</sub>) = (1, 1), (ξ<sub>2</sub>, η<sub>2</sub>) = (-1, 1), (ξ<sub>3</sub>, η<sub>3</sub>) = (1, -1), (ξ<sub>4</sub>, η<sub>4</sub>) = (0, 1), (ξ<sub>5</sub>, η<sub>5</sub>) = (0, 0), (ξ<sub>6</sub>, η<sub>6</sub>) = (1, 0) としたとき、要素内の座標 (ξ, η) の点の値δはξ, ηの2次式で表され :<math>\begin{align}\delta=&\frac{(\xi+\eta)(\xi+\eta-1)}{2}\delta_1 + \frac{\xi(\xi-1)}{2}\delta_2 + \frac{\eta(\eta-1)}{2}\delta_3\\ &+ (1-\xi)(\xi+\eta)\delta_4 + (1-\xi)(1-\eta)\delta_5 + (1-\eta)(\xi+\eta)\delta_6\end{align}</math> となる。 ===四角形2次要素=== 四角形2次要素も頂点に加え辺上にも節点をもつアイソパラメトリック要素で、座標変換後の節点座標を(ξ<sub>1</sub>, η<sub>1</sub>) = (1, 1), (ξ<sub>2</sub>, η<sub>2</sub>) = (-1, 1), (ξ<sub>3</sub>, η<sub>3</sub>) = (-1, -1), (ξ<sub>4</sub>, η<sub>4</sub>) = (1, -1), (ξ<sub>5</sub>, η<sub>5</sub>) = (0, 1), (ξ<sub>6</sub>, η<sub>6</sub>) = (-1, 0), (ξ<sub>7</sub>, η<sub>7</sub>) = (0, -1), (ξ<sub>8</sub>, η<sub>8</sub>) = (1, 0) としたとき、要素内の座標 (ξ, η) の点の値δは :<math>\begin{align}\delta=&\frac{(1+\xi)(1+\eta)(\xi+\eta-1)}{4}\delta_1 + \frac{(1-\xi)(1+\eta)(-\xi+\eta-1)}{4}\delta_2\\ &+ \frac{(1-\xi)(1-\eta)(-\xi-\eta-1)}{4}\delta_3 + \frac{(1+\xi)(1-\eta)(\xi-\eta-1)}{4}\delta_4\\ &+ \frac{(1-\xi^2)(1+\eta)}{2}\delta_5 + \frac{(1-\xi)(1-\eta^2)}{2}\delta_6\\ &+ \frac{(1-\xi^2)(1-\eta)}{2}\delta_7 + \frac{(1+\xi)(1-\eta^2)}{2}\delta_8\end{align}</math> となる。 以上は2次元要素の例であるが、3次元要素には四面体、五面体(プリズムおよびピラミッドに分類される)、六面体があり、それぞれ1次要素と2次要素がある。 == 良い格子分布の条件 == 計算格子に関して望まれる性質は * 数値計算の結果の信頼性が高いこと * 数値計算が安定に行われること * 格子の無駄が少ないこと であり、そのために以下のことに留意することが必要である<ref name=fujii/>。 ; 直交性: 計算格子に流入する流束は格子に垂直な面を評価するため、流束ベクトルと直交しない格子面は誤差の増加を生じうる。格子と流れ方向の関係のことはアライメントと呼ばれる<ref>{{cite|和書 |editor=空気調和・衛生工学会 |author= |title=CFDガイドブック |edition= |publisher=オーム社 |year=2017 |isbn=978-4-274-22153-8 |page=12}}</ref>。 ; 隣接する格子間隔の比: 隣り合う格子の大きさの比は1にできるだけ近いことが精度の維持に有効である。たとえば3つの格子点を用いて2階微分の中心差分を行うと :: <math> \frac{d^2f}{dx^2} = \frac{2}{\Delta x_j+\Delta x_{j+1}}\left(\frac{f_{j+1}-f_j}{\Delta x_{j+1}}-\frac{f_j-f_{j-1}}{\Delta x_j}\right)+\frac{1}{3}(\Delta x_{j+1}-\Delta x_j)f_{xxx}+\cdots</math> :から、隣り合う格子の幅Δ''x'' <sub>''j''</sub> , Δ''x'' <sub>''j'' + 1</sub> が等しくない場合には、2次精度が維持できない。一般には格子間隔の比は1.5程度以下に抑えることが望ましいと言われている。 ; 境界層: 流体解析の場合、物体近傍には[[境界層]]が形成され、これを十分に解像することが必要である。層流境界層では境界層厚さ :: <math>\delta ~ \frac{5.0}{\sqrt{Re}}</math> :の1/50以下に最小格子幅を設定する。乱流境界層の場合は、乱流モデルにもよるが、たとえば無次元の壁面からの距離 ''y''<sup>+</sup> を用いた目安が利用される。 == 参考文献 == {{reflist}} == 関連文献 == * José E. Castillo (Ed.): ''Mathematical Aspects of Numerical Grid Generation'', SIAM, ISBN 0-89871-267-X (1991). * 谷口健男:「FEMのための要素自動分割: デローニー三角分割法の利用」、森北出版、978-4-62791400-1 (1992年9月)。 * Joe F.Thompson (著), 小国 力 (翻訳), 河村 哲也 (翻訳):「数値格子生成の基礎と応用」、丸善出版、ISBN 978-4-62104000-3 (1994年9月). * 桑原邦郎・河村哲也(編著):「流体計算と差分法」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-23105-2 (2005年2月28日)。※ 第3章「一般座標と格子生成法」 * 谷口健男、森脇清明:「3次元FEMのための自動要素分割法」、森北出版、ISBN 978-4-62791891-7 (2006年12月22日)。 == 関連項目 == * [[スタッガード格子]] * [[メッシュフリー法]] * [[解適合格子法]] {{Applied-math-stub}} {{Physics-stub}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:けいさんこうし}} [[Category:物理数学]] [[Category:数値解析]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:平面充填]]
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