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{{出典の明記|date=2021年11月}} {{物理量 | 名称 = | 英語 = electromotive force | 画像 = | 記号 =''E'' | 次元 =[[質量|M]] [[長さ|L]]{{sup|2}} [[時間|T]]{{sup-|3}} [[電流|I]]{{sup-|1}} | 階 =スカラー | SI =[[ボルト (単位)|ボルト]] (V) | CGS = | MTS = | FPS = | MKSG = | CGSG = | FPSG = <!-- | プランク =[[プランク電圧]] --> | 原子 = }} '''起電力'''(きでんりょく、{{lang-en|electromotive force}}、略: EMF)とは、[[電流]]の駆動力のこと。または、電流を生じさせる[[電位]]の差([[電圧]])のこと。単位は電圧と同じ[[ボルト (単位)|ボルト]] (Volt, V) を用いる。起電力を生み出す原因には、[[電磁誘導]]によるもの([[発電機]])、[[熱電効果]]([[ゼーベック効果]])によるもの([[熱電対]])、[[光電効果]]([[光起電力効果]])によるもの([[太陽電池]])、[[電気化学|化学反応]]によるもの([[電池#化学電池|化学電池]])などがある。 <!-- これらのうち、本項では化学反応によるもの、すなわち化学電池の起電力について主に記述する。 --> == 化学電池の起電力 == [[電池#化学電池|化学電池]](電気化学セル)の起電力は、[[電気化学]]的[[化学平衡|平衡]]状態における[[電極]]の電位差である。「[[電流]]が0の時の電極間の[[電位]]差([[開回路電圧]])」と説明されることもあるが厳密には異なる。電極上では電気化学平衡が成り立っていないにもかかわらず、電極間を流れる電流が 0 となることがあり(1つの電極上で複数の電気化学反応が起こっている場合など。[[混成電位]]という)、このような場合は、起電力と開回路電圧は異なる。 電位差を測定する方向や電池反応の表現方法に任意性が存在するため起電力の符号について混乱があったが、[[1953年]]に[[ストックホルム]]で開かれた[[国際純正および応用化学連合|IUPAC]]の会議において、起電力の符号の決め方について勧告<ref>[[#Christiansen|Christiansen]] (1960) p.5517.</ref>が出された('''ストックホルム規約'''と呼ばれることがある)。 === 起電力の定義 === 次のような[[電池図式]]で表される電池を考える。 :<math>\rm{T \mid M_1 \mid S \mid M_2 \mid T^\prime}</math> ここで、M<sub>1</sub>, M<sub>2</sub> は[[電気伝導体]]の電極を、S は[[イオン (化学)|イオン]]伝導体([[電解質]])の溶液を、両端の T, T′ は端子を表すとする。 この電池の内部において正電荷を左から右(T → T′の方向)へ移動させるときに、電極 M<sub>1</sub> 上では :<math>\mathrm{R(M_1) \longrightarrow O(M_1) + }n\mathrm{e^-(T)}</math>([[酸化]]反応) 電極 M<sub>2</sub> 上では :<math>\mathrm{O^\prime(M_2) + }n\mathrm{e^-(T^\prime) \longrightarrow R^\prime(M_2)}</math>([[還元]]反応) すなわち、電池全体では、 :<math>\mathrm{R(M_1) + O^\prime(M_2) + }n\mathrm{e^-(T^\prime) \longrightarrow O(M_1) + R^\prime(M_2) + }n\mathrm{e^-(T)}</math> の反応が進行すると約束する(電池図式において'''左側の電極は[[アノード]]'''、'''右側の電極は[[カソード]]'''を表す)。 この反応が電気化学的平衡になっている時の、左側の端子 T に対する右側の端子 T′ の電位差が起電力である。 このときの起電力 ''E'' は :<math>E = -\frac{(\mu^\mathrm{T^{\prime}}_\mathrm{e^-} - \mu^\mathrm{T}_\mathrm{e^-})}{F} = -\frac{(\mu^\mathrm{M1}_\mathrm{O} +\mu^\mathrm{M2}_\mathrm{R^\prime})-(\mu^\mathrm{M1}_\mathrm{R} +\mu^\mathrm{M2}_\mathrm{O^\prime})}{nF}</math> で表すことができる。 ここで、''μ'' <sup>x</sup><sub>y</sub> は相 x における反応種 y の[[電気化学ポテンシャル]]、''n'' は反応電子数、''F'' は[[ファラデー定数]]を表す。 一般に、反応の[[ギブスエネルギー]]変化が Δ''G'' で表されるとき、起電力 ''E'' は、 :<math>E = \frac{-\Delta G}{n{\mathrm F}}</math> となる。 このように、起電力は形式的に決定される。普通、電池の場合は起電力の値が正となるように電池図式・化学反応式を記述する。電池の反応式を逆に記述すれば起電力の符号も逆になる。 === 起電力と電極電位 === {{Main|標準電極電位}} 電池のそれぞれの電極の片方についてのみ注目して、それを'''[[半電池]]''' (half-cell) または'''単極''' (single electrode) と呼ぶ。上の例ではそれぞれ :<math>\rm{M_1 \mid S}~,~~\rm{S \mid M_2}</math> が半電池となる。(半電池を2つ組み合わせて電池になる。) ここで、次の例のような、ある特別な構成の電池の起電力について考える。 :<math>\rm{T \mid \mathrm{Pt, H_2}(P_{\mathrm{H_2}}=P^0) \mid \mathrm{H^+}(a_{\mathrm{H^+}}=1) \parallel S \mid M \mid T^\prime}</math> この電池の左側の半電池は、[[基準電極]]と呼ばれる電極のひとつであり、[[標準水素電極]]と言う。 基準電極を左側に置いた電池の起電力を、右側の電極の'''平衡電極電位''' (equilibrium electrode potential) または簡単に'''平衡電位'''と言う。特に、電極反応にかかわる物質の[[活量]]が全て1である場合の平衡電極電位を特に'''[[標準電極電位]]''' (standard electrode potential) という。 === 標準電極電位を用いた起電力の求め方 === 電極電位を用いることによって起電力を求めることも出来る。具体的には、電池図式の右側の電極電位から左側の電極電位を引くことによる。 例として、[[ダニエル電池]]と呼ばれる[[亜鉛]]と[[銅]]でつくった電池の標準状態での起電力を考える。 標準状態のダニエル電池の電池図式は :<math>\mathrm{Cu \mid Zn \mid ZnSO_4(aq}, a_{\mathrm{Zn^{2+}}} = 1 \mathrm{)\parallel CuSO_4(aq}, a_{\mathrm{Cu^{2+}}}=1)\mathrm{ \mid Cu}</math> で表すことが出来る。(左端のCuはZn電極につながる端子である。右端のCu電極は端子も兼ねている。) 電池の左側(アノード)は :<math>\mathrm{Zn \longrightarrow Zn^{2+} + 2e^-} \qquad E^0(\rm{Zn^{2+}}\mid\rm{Zn})=-0.763V\mathrm{(vs~SHE)}</math> 電池の右側(カソード)は :<math>\mathrm{Cu^{2+} + 2e^- \longrightarrow Cu} \qquad E^0(\rm{Cu^{2+}}\mid\rm{Cu})=+0.340V\mathrm{(vs~SHE)}</math> である。よってこの電池図式で表される電池の標準状態における起電力''E<sup>0</sup>''は、 :<math>E^0 = E^0(\rm{Cu^{2+}}\mid\rm{Cu}) - E^0(\rm{Zn^{2+}}\mid\rm{Zn})=(+0.340)-(-0.763) \approxeq 1.10 \mathrm{V}</math> と計算される。 {{節スタブ}} == 化学電池以外の起電力 == === 誘導起電力 === [[電磁誘導]]による起電力で、[[ファラデーの電磁誘導の法則]]より、1つの回路に生じる誘導起電力の大きさはその回路を貫く磁界の変化の割合に比例するもので、[[発電機]]に利用されている。 === 熱起電力 === [[ゼーベック効果]]により、異なる物体に温度差があると発生する起電力で、[[熱電対]](温度センサ)に利用される。 === 光起電力 === [[光起電力効果]]により、[[半導体]]の[[pn接合]]部などに[[光]]が照射されたとき発生する起電力で、[[太陽電池]]や[[フォトダイオード]](光センサ)に利用される。 ==電気回路における起電力== [[キルヒホッフの法則 (電気回路)]]より、任意の閉路の起電力の総和と[[電圧降下]]の総和は等しい。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} === 出典 === {{Reflist}} ==参考文献== *{{Cite journal |author=J. A. Christiansen |title=Manual of Physico-Chemical Symbols and Terminology |journal=J. Am. Chem. Soc. |volume=82 |year=1960 |ref=Christiansen}} == 関連項目 == * [[電磁誘導]] - [[発電機]] * [[熱電効果]] - [[ゼーベック効果]] - [[熱電対]] * [[光電効果]] - [[光起電力効果]] - [[太陽電池]] * [[電気化学]] - [[電池]] * [[標準電極電位]] * [[基準電極]] * [[ボルタ電池]] * [[ダニエル電池]] * [[電源]] - [[電圧源]] - [[電流源]] * [[電圧の比較]] {{chem-stub}} {{physics-stub}} {{電磁気学}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:きてんりよく}} [[Category:電気化学]] [[Category:電池]] [[Category:電気理論]]
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