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超対称性理論
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'''超対称性理論'''(ちょうたいしょうせいりろん)とは、理論の[[ボース粒子]]と[[フェルミ粒子]]に対して、それぞれ対応するフェルミ粒子とボース粒子([[超対称性粒子]])が存在すると考える[[理論]]、[[仮説]]のこと。[[ボース粒子]]と[[フェルミ粒子]]を入れ替える数学的変換を超対称変換と呼び、特に[[ゲージ粒子]]に対しても超対称性粒子を考える理論の事を[[ゲージ理論|超対称ゲージ理論]]と呼ぶ。また、[[超対称性]]を考えた[[標準模型]]や[[重力]]理論([[一般相対性理論|一般相対論]])は、それぞれ[[標準模型|超対称標準模型]]、[[超重力理論]]と呼ばれる。[[超弦理論]]も超対称性理論の一種である。 もし[[超対称性]]が自然界で近似としてではなく実現されているならば、現在までに知られている各素粒子に、その対となる同質量の[[超対称粒子]]が存在する。すなわち、素粒子の数が既知のものから倍増するはずである。しかしながら、現在、[[超対称粒子]]はひとつも実験的に発見されていない<ref>『素粒子物理』 戸塚洋二著 岩波書店 ISBN 978-4000067478 </ref>。2008年に稼動予定の[[大型ハドロン衝突型加速器|LHC]]実験計画は、この[[超対称粒子]]の発見を目的のひとつとして推進されている。 == 超対称性変換 == [[ローレンツ変換|ローレンツ不変性]]とは言うなれば4次元ベクトルの回転対称性に相当する対称性:SO(3,1)である。超対称変換は、これをより一般的化した対称性として[[並進対称性|並進不変性]]を加えた[[ポアンカレ群|ポアンカレ対称性]]に基づく代数として理解できる。超対称変換の演算子を<math>Q_\alpha</math>とすると、その代数は {{Indent|<math>\{Q_\alpha,(Q_\beta){}^\dagger\}=P_\mu \gamma^\mu_{\alpha\dot\beta}</math>}} と書ける。ここで、<math>P_\mu</math> は<math>x^\mu</math>方向への並進を生成する変換で、<math>\gamma</math>は[[ガンマ行列]]である。 平たく言えば、超対称性変換をあるボソンに対して二回続けて行うと、単にもとのボゾンに戻るだけではなく、時空のどちらかの方向へすこし動くことになる。 == 歴史 == [[中間子]]および[[バリオン]]に関する超対称性は、[[ハドロン物理学]]において[[宮沢弘成]]によって1966年に初めて提唱された。しかし、このときはあまり注目されなかった<ref>{{Cite journal |author=H. Miyazawa |year=1966 |title=Baryon Number Changing Currents |journal=Prog. Theor. Phys. |volume=36 |pages=1266–1276 |doi=10.1143/PTP.36.1266 |issue=6 }}</ref><ref>{{Cite journal |author=H. Miyazawa |year=1968 |title=Spinor Currents and Symmetries of Baryons and Mesons |journal=Phys. Rev. |volume=170 |issue=5 |pages=1586–1590 |doi=10.1103/PhysRev.170.1586 }}</ref><ref>[[Michio Kaku]], ''Quantum Field Theory'', ISBN 0-19-509158-2, pg 663.</ref><ref>[[Peter Freund]], ''Introduction to Supersymmetry'', ISBN 0-521-35675-X, pages 26-27, 138.</ref>。[[時空]]および基本的な[[場]]についての根本的に新しい種類の対称性として、1970年代初頭、J. L. Gervaisと[[崎田文二]](1971年)、Yu. A. GolfandとE.P. Likhtman(1971年)、D.V. VolkovとV.P. Akulov(1972年)および[[:en:Julius Wess|J. Wess]]と[[:en:Bruno Zumino|B. Zumino]](1974年)らが独立に超対称性の概念を発見した。これは、[[ボース粒子]]と[[フェルミ粒子]]、そして時空とミクロな世界の内部対称性を統一し、異なる量子力学的な性質の素粒子間の関係を確立するものであった。 [[:en:Pierre Ramond|Pierre Ramond]]、[[:en:John H. Schwarz|John H. Schwarz]]および[[:en:Andre Neveu|Andre Neveu]]による[[弦理論]]の初期のバージョンにおいて、超対称性は1971年に初めて導入された。この超対称性の数学的構造は、後に物理学の他の領域に対して成功裏に適用された。初めにWess、Zuminoと[[アブドゥッサラーム]]、彼らの同僚の研究者たちによって[[素粒子物理学]]へ、そして後に、[[量子力学]]から[[統計力学]]までさまざまな分野において適用された。今日に至るまで、提案された多くの物理学理論の不可欠な要素であり続けている。 標準模型における現実的な超対称性の最初のバージョンは、1981年に[[ハワード・ジョージ]]および[[:en:Savas Dimopoulos|Savas Dimopoulos]]によって提唱され、[[:en:Minimal Supersymmetric Standard Model|MSSM]]と呼ばれた。これは、[[階層性問題]]を解決し100 GeVから1 TeVの質量を持つ超対称性パートナーを予測するために提唱された。 2009年の時点では、超対称性が自然の対称性であるという確たる実験的な証拠は見つかっていない。2010年に、[[CERN]]の[[大型ハドロン衝突型加速器|大型ハドロン衝突器]]([[大型ハドロン衝突型加速器|LHC]])が世界最大の高エネルギー衝突を実施し、超対称性粒子の探索を行っている。 == 懐疑論 == 超対称性理論は現在のところ机上の計算から数学的に導き出される事象の域を出ていない。[[2013年]]に「発見」が報告され[[2018年]]7月にも[[大型ハドロン衝突型加速器#実験グループ|ATLASやCMS]]の実験により[[ボトムクオーク]]への崩壊が確認された[[ヒッグス粒子]]<ref>{{cite press release |title=Long-sought decay of Higgs boson observed |date=28 Aug 2018 |url=http://press.cern/press-releases/2018/08/long-sought-decay-higgs-boson-observed |website=Media and Press relations |publisher=CERN |access-date=2018-08-30}}</ref><ref name="ATLAS-20180828">{{cite press release |author=Atlas Collaboration |title=ATLAS observes elusive Higgs boson decay to a pair of bottom quarks |url=https://atlas.cern/updates/press-statement/observation-higgs-boson-decay-pair-bottom-quarks |date=August 28, 2018 |website=Atlas |publisher=CERN |accessdate=August 28, 2018 }}</ref><ref>{{cite web |author=CMS Collaboration |date=August 2018 |url=http://cms.cern/higgs-observed-decaying-b-quarks |title=Observation of Higgs boson decay to bottom quarks |website=CMS |access-date=2018-08-30}}<br />{{cite web |author=CMS Collaboration |date=24 Aug 2018 |url=https://cds.cern.ch/record/2636067 |title=Observation of Higgs boson decay to bottom quarks |website=CERN Document Server |publisher=CERN |access-date=2018-08-30}}<br />{{Cite journal |author=CMS Collaboration |date=24 Aug 2018 |title=Observation of Higgs boson decay to bottom quarks |journal= Physical Review Letters|volume=121 |issue=12 |pages=121801 |arxiv=1808.08242 |doi=10.1103/PhysRevLett.121.121801 }}</ref>の質量は、およそ125GeV<ref>{{Cite journal|<!--last1=ATLAS--> |<!--last2=CMS--> |authorlink1=ATLAS experiment|authorlink2=Compact Muon Solenoid|arxiv=1503.07589 |title= Combined Measurement of the Higgs Boson Mass in pp Collisions at √s=7 and 8 TeV with the ATLAS and CMS Experiments|journal=Physical Review Letters |volume=114 |issue=19 |pages=191803 |date=14 May 2015 |doi=10.1103/PhysRevLett.114.191803 |pmid=26024162 |bibcode=2015PhRvL.114s1803A }}</ref> であり、SUSYの破れはそのエネルギー領域で起こり超対称性粒子が現れてくるべきである。だがこれまで超対称性粒子はひとつも発見されていない。信頼できる理論としては未成熟な状態が続いており<ref>{{Cite web|和書|url = http://www.nikkei-science.com/201408_034.html |title = 崖っぷちの超対称性理論 |publisher = 日経サイエンス | accessdate = 2016-10-06 }}</ref><ref>{{Cite web|和書|url = https://www.afpbb.com/articles/-/3055710 |title = 標準理論裏付ける新証拠、「超対称性」に新たな痛手 LHC |publisher = afpbb.com | accessdate = 2016-10-06 }}</ref>、そのためSUSYへの懐疑論が徐々に素粒子物理学者の間で高まってきている<ref name=wired25aug2014S>[http://www.wired.com/2014/08/multiverse/ Radical New Theory Could Kill the Multiverse Hypothesis] N. Wolchover, Quanta Magazine, Science, Wired, 25 August 2014</ref>。 CERNが掲載した最新の論文(2021)では、「超対称性粒子が、いかなる条件でも全く観察されなかった」ことを改めて報告した。<ref>{{Cite web|url=https://arxiv.org/pdf/2010.14293.pdf|title=Search for squarks and gluinos in final states with jets and missing transverse momentum using 139 fb−1 of √ 𝒔 =13 TeV 𝒑 𝒑 collision data with the ATLAS detector|accessdate=2021/01/18|publisher=arxiv}}</ref> 仮にヒッグス粒子の超対称パートナーである「[[ヒグシーノ]]」が暗黒物質である場合、LHCの探索実験の死角に入りやすいとしている。<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/ILC/pdf/siryo2401-4.pdf |title=250 GeV ILC の物理の意義 |access-date=2023-04-15 |publisher=高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所}}</ref> 九州大学理学部の奥村健一特任助教は、発見されない理由が超対称性の破れによってSUSY粒子が重い質量領域にあるためであると仮説を立てている。<ref>{{Cite web|和書|title=超対称性粒子の質量の持つ新しい性質 {{!}} 九州大学 理学研究院 理学府 理学部 |url=https://www.sci.kyushu-u.ac.jp/koho/qrinews/qrinews_191115.html |website=www.sci.kyushu-u.ac.jp |date=2019-11-15 |access-date=2023-09-18 |language=ja}}</ref> == 関連文献 == * 佐古彰史:「超対称性ゲージ理論と幾何学:非摂動論的アプローチ」、日本評論社、ISBN 978-4-535-78468-0 (2007年9月15日). == 関連項目 == *[[超対称性]] *[[超対称大統一理論]] *[[超重力理論]] *[[大型ハドロン衝突型加速器|LHC]] *[[超弦理論]] *[[標準模型]] == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} <references/> {{DEFAULTSORT:ちようたいしようせいりろん}} [[Category:超対称性理論|*]] [[category:統一場理論]] {{Physics-stub}}
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