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{{参照方法|date=2015-03-26}} {{フレーバー}} '''超電荷'''(ちょうでんか、{{lang|en|hypercharge}})は、[[素粒子]]の[[強い相互作用]]に関係する[[量子数]]である。なお、物理学者は日本語訳の「超電荷」では呼ぶことはほとんどなく、英語名のまま「ハイパーチャージ」と呼ぶ。 == 概要 == 超電荷は[[ハドロン]]の[[SU(3)]]モデルに関係する[[量子数]]である。SU(3)モデルは[[アイソスピン]]の[[SU(2)]]モデルを拡張する概念である。 ハドロンがまだ内部構造を持たない素粒子だと思われていた時代に、アイソスピンによって[[核子]]や[[パイ中間子]]は1つの多重項にまとめられたが、実験から[[K中間子]]や[[ラムダ粒子]]などの新たなハドロンが発見されて既存の電荷とアイソスピンだけでは分類できなくなった。そこで新たな粒子を分類する量子数として超電荷が提唱された。 [[電弱相互作用]]において類似する役割を持つ[[弱超電荷]]との混同に注意が必要である。超電荷の概念は、[[アイソスピン]]および[[フレーバー (素粒子)|フレーバー]]を単一の[[チャージ (物理学)|チャージ]]に組み合わせ、統一する。また、ハドロンの SU(3) モデルは[[量子色力学]]で[[カラーチャージ|カラー]]を入れ替える SU(3){{sub|c}} とは異なる変換である。 == 定義 == 核子やパイ中間子では、[[電荷]] {{mvar|Q}} は、アイソスピン {{math|''I''{{sub|3}}}} と[[質量数|核子数]] {{mvar|N}} により、 {{Indent| <math>Q = I_3 + \frac{N}{2}</math> }} と表されていた。これを[[K中間子]]や[[ラムダ粒子]]に拡張する上で、核子数 {{mvar|N}} から {{Indent| <math>Q = I_3 + \frac{Y}{2}</math> }} と置き換えたものが超電荷 {{mvar|Y}} である<ref name="maki">[[#maki|『大学院素粒子物理1』]]3章 標準模型(牧二郎)§3.1 クォーク模型</ref>。 <!--超電荷は {{Indent| <math> Q = I_3 + Y</math> }} の関係に縮約されることもある。--> 同一のアイソスピン多重項にまとめられる粒子に対して、電荷は異なる値をとるが、超電荷は同一の値をとる。アイソスピン {{mvar|n}}-重項に対して[[跡 (線型代数学)|トレース]]を取れば、アイソスピンはトレースレスなので {{Indent| <math>\operatorname{tr}Q =\operatorname{tr}I_3 +\frac{1}{2} \operatorname{tr} Y =\frac{n}{2} Y</math> }} {{Indent| <math>Y =\frac{2}{n} \operatorname{tr}Q</math> }} となる。したがって、超電荷は {{mvar|n}}-重項にまとめられる粒子の平均の電荷の2倍となる。 == 他の量子数との関係 == {{main|中野・西島・ゲルマンの法則}} [[中野・西島・ゲルマンの法則]]において[[バリオン数]] {{math|''N''{{sub|B}}}} と[[ストレンジネス]] {{mvar|S}} により {{Indent| <math>Q = I_3 + \frac{1}{2}(N_\text{B}+S)</math> }} と表される<ref name="maki"/>。 従って、超電荷は {{Indent| <math>Y = N_\text{B} +S</math> }} となる。 [[弱い相互作用]]が関わらない反応ではバリオン数とストレンジネスはそれぞれに保存し、超電荷も保存する。 後に[[チャーム (量子数)|チャーム]] {{mvar|C}}、[[ボトムネス]] {{mvar|B}}、[[トップネス]] {{mvar|T}} が発見され、 [[中野・西島・ゲルマンの法則]]が {{Indent| <math>Q = I_3 + \frac{1}{2}(N_\text{B}+S+C+B+T)</math> }} と修正されるに従い、超電荷も {{Indent| <math>Y = N_\text{B}+S+C+B+T</math> }} と修正される。 超電荷が保存するということは[[フレーバー (素粒子)|フレーバー]]が保存することを示唆する。強い相互作用の下では超電荷を保存するが、弱い相互作用の下では保存しない。 == SU(3) モデル == アイソスピンのSU(2)モデルは核子の[[陽子]]と[[中性子]]を同種粒子の異なる状態とみなし、 {{Indent| <math>\psi = \begin{pmatrix} p \\ n \\ \end{pmatrix}</math> }} とした。 実験で新たな粒子が発見されるに従い、ストレンジネスという概念が導入され、 SU(2)×U(1)<sub>S</sub> という形になった。 これを含む群として提唱されたものがハドロンのSU(3)モデルである。 このSU(3)は、核子の二重項にラムダ粒子を加えた {{Indent| <math>\psi = \begin{pmatrix} p \\ n \\ \Lambda \\ \end{pmatrix}</math> }} の三重項とした内部空間での回転の為す群である。 [[クォークモデル]]によると、陽子はuud、中性子はudd、ラムダ粒子はudsであり、この三重項はクォークの {{Indent| <math>\psi \sim \begin{pmatrix} u \\ d \\ s \\ \end{pmatrix}</math> }} を再現したものと解釈される。 パイ中間子やK中間子はクォークと反クォークを合わせたものであり、SU(3)の表現の知識から[[随伴表現]] (八重項)に対応し、3個のパイ中間子と4個のK中間子、そして1個の[[イータ中間子]]で八重項を形成する。 なお、陽子や中性子、ラムダ粒子も、実際は[[シグマ粒子]]、[[グザイ粒子]]とともにSU(3)の下で八重項を形成しており、その一部を取り出した形となっている。 SU(3)[[w:weight diagram|ウェイトダイアグラム]]は、二つの量子数、アイソスピンの z-成分 {{mvar|I{{sub|z}}}} および超電荷 {{mvar|Y}}([[ストレンジネス]] {{mvar|S}}、[[チャーム (量子数)|チャーム]] {{mvar|C}}、[[ボトムネス]] {{mvar|B}}、[[トップネス]] {{mvar|T}}、および[[バリオン数]] {{math|''N''{{sub|B}}}} の和)を参照する二次元座標である。{{See|:en:Hypercharge#SU(3) model in relation to hypercharge}} == 計算の具体例 == * [[陽子]]の電荷は''Q'' = +1であり、[[中性子]]の電荷は''Q'' = 0である。(すなわち、[[核子]]の平均電荷は+1/2である。)これらのバリオン数は''B'' = +1、フレーバーは''S'' = ''C'' = ''B''′ = ''T'' = 0であることから、超電荷はともに''Y'' = 1である。中野・西島・ゲルマンの法則から、陽子のアイソスピンは''I''<sub>3</sub> = +1/2、中性子のアイソスピンは''I''<sub>3</sub> = −1/2であることが分かる。 * [[クォーク]]についても同様にアイソスピンおよび超電荷を計算できる。電荷''Q'' = +2/3、アイソスピン''I''<sub>3</sub> = +1/2、およびバリオン数''B'' = 1/3である[[アップクォーク]]の超電荷は''Y'' = 1/3であることが推定できる。(バリオンを構成するには3つのクォークが必要なため、クォークのバリオン数は1/3である。) * 電荷''Q'' = −1/3、バリオン数''B'' = 1/3、[[ストレンジネス]]''S'' = −1の[[ストレンジクォーク]]の超電荷は''Y'' = −2/3であり、アイソスピン''I''<sub>3</sub> = 0が推定される。これは、ストレンジクォークはそれ自身の一重項を作ることを意味する。[[チャームクォーク]]、[[ボトムクォーク]]および[[トップクォーク]]も同様だが、[[アップクォーク|アップ]]および[[ダウンクォーク]]はアイソスピン二重項を構成する。 == 超電荷の実用性 == 超電荷は、''"[[w:particle zoo|粒子の動物園]]"''における粒子の集団を組織し、それらの観測に基づいた[[保存則]]を開発するために、1960年代に発展した概念である。[[クォークモデル]]の登場によって、(標準模型の六つのクォークのうちアップ、ダウンおよびストレンジクォークだけを考慮した場合)超電荷''Y''は[[アップクォーク|アップ]] (''n''<sub>u</sub>) 、[[ダウンクォーク|ダウン]] (''n''<sub>d</sub>)、および[[ストレンジクォーク]] (''n''<sub>s</sub>)の数の組合わせで、以下のように表せることが明らかとなった: :<math> Y = {1 \over 3} (n_u + n_d - 2 n_s).</math> 現在は、[[ハドロン]]の相互作用を記述する場合、量子数の超電荷を計算するよりも、相互作用する[[バリオン]]および[[中間子]]を構成する個々のクォークをたどる[[ファインマンダイアグラム]]を描くようになってきている。しかしながら、[[弱超電荷]]は[[電弱相互作用]]のさまざまな理論において実用的に使うことができる。 == 脚注 == <references /> == 関連項目 == * [[標準模型]] == 参考文献 == * {{cite book | author=Henry Semat, John R. Albright | title=Introduction to atomic and nuclear physics | publisher=Chapman and Hall | year=1984 | isbn=0-412-15670-9}} * {{Cite book | 和書 |title= 大学院素粒子物理1 |author= [[南部陽一郎]]、[[牧二郎]]、他 |publisher= [[講談社]] |year= 1997 |isbn= 4-06-153224-3 |ref= maki }} {{DEFAULTSORT:ちようてんか}} [[Category:素粒子物理学]] [[Category:標準模型]] [[Category:量子数]]
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