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[[File:Laufwellenreaktor.gif|リンク=https://en.wikipedia.org/wiki/File:Laufwellenreaktor.gif|サムネイル|TWRの数値シミュレーション。赤: [[ウラン]]238([[劣化ウラン]])、薄緑: [[プルトニウム239]]、黒: 核分裂生成物。タイル間の青色の濃度は、中性子密度を示す]] '''進行波炉'''(しんこうはろ、{{lang|en|Traveling Wave Reactors: '''TWR'''}})は、[[原子炉]]の一方式である。 [[第4世代原子炉]]の一つとされる。[[増殖炉]]の一種である。 == 概略 == 現在広く使われている[[加圧水型原子炉]](PWR)や[[沸騰水型原子炉]](BWR)では、燃料に[[濃縮ウラン]]を用いているが、進行波炉はウラン濃縮過程で多く発生する[[廃棄物]]である[[劣化ウラン]]を用いることができる。 核燃料である劣化ウランにて核分裂連鎖反応が開始された後、その反応が波状的に60年以上かけてゆっくりと進行する炉であることから進行波炉と呼ばれている。 最初の理論は[[1958年]]に[[ソビエト連邦|ソ連]]の[[サヴェリー・モイセヴィッチ・ファインバーグ]]が提唱し、[[1996年]]には「水爆の父」[[エドワード・テラー]]が論文を発表していたが実用化に向けた研究は進まなかった。 [[日本]]でも[[東京工業大学]]原子炉工学研究所の[[関本博]]教授が非常によく似た概念である「CANDLE」と呼ばれる方式を研究している<ref>''H. Sekimoto, K. Ryu, and Y. Yoshimura, “CANDLE: The New Burnup Strategy”, [[Nuclear Science and Engineering]], 139, 1–12 (2001)''</ref>以外にはほとんど知られていなかった。 しかし[[2010年]][[3月]]に[[マイクロソフト]]創業者の[[ビル・ゲイツ]]が出資する[[テラパワー]]社と[[東芝]]が共同で技術協力に向けた検討を始めたというニュース<ref>{{cite news |url=http://www.asahi.com/business/update/0323/TKY201003230458.html |title=ゲイツ氏と東芝、原発開発でタッグ? 米企業が協力要請 |newspaper=[[asahi.com]](朝日新聞社) |date=2010-3-24 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20100326011442/http://www.asahi.com/business/update/0323/TKY201003230458.html |archivedate=2010-3-26}}</ref>以降、日本でも知られるようになった。 == 炉の反応方法 == 反応原理は、[[ウラン]]238(劣化ウラン)に1個の中性子を衝突させると、ある割合でウラン239(核分裂性ウラン)が生成され、それが[[β崩壊]]して[[ネプツニウム]]239に変化して、さらにβ崩壊して[[プルトニウム]]239(核分裂性プルトニウム)となる。 その核分裂性のプルトニウム239に中性子が当って核分裂が生じ、その核分裂によって新たに数個の中性子が放出され、生じた中性子は周囲の反射板に当って段々と速度を落した後にウラン238やプルトニウム239に吸収されて次の反応を促し、核分裂反応が連続的に進行する。以上の過程で生成される熱エネルギーを利用するというもの。 :<math>\mathrm{^{238}_{\ 92}U + \,^{1}_{0}n \;\rightarrow\; ^{239}_{\ 92}U \;\rightarrow\; ^{239}_{\ 93}Np + \beta \;\rightarrow\; ^{239}_{\ 94}Pu + \beta}</math> テラパワー社の資料<ref>R. Michal and E. M. Blake, “John Gilleland: On the traveling-wave reactor”, Nuclear News, p. 30–32, September (2009).</ref><ref name="Wald">{{Cite journal | last = Wald | first = M. | title = 10 Emerging Technologies of 2009: Traveling-Wave Reactor | publisher = MIT Technology Review | date = 2009-March/April}}</ref><ref name="Gilleland">{{Cite conference | author = Gilleland, John | title = TerraPower, LLC Nuclear Initiative | publisher = University of California at Berkeley, Spring Colloquium | date = 2009-04-20 | url = http://www.nuc.berkeley.edu/node/1077 | accessdate = 2009-07-31 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20090731023254/http://www.nuc.berkeley.edu/node/1077 |archivedate=2009-7-31}}</ref>に拠れば、[[冷却材]]に[[金属ナトリウム]]を使用する[[高速増殖炉#FBRの形式|プール型]]の炉である。 [[核燃料]]としては[[劣化ウラン]]が用いられる。劣化ウランは核分裂性の[[ウラン235]]の含有率が0.2%程度で、大部分が非核分裂性の[[ウラン238]]であるため通常の原子炉では核燃料として使用されない。 核分裂連鎖反応の開始時には[[濃縮ウラン]]を使用する。一旦連鎖反応が開始された後の通常発電状態、即ち定常状態においては[[中性子]]がウラン238に衝突することで核分裂性の[[プルトニウム|プルトニウム239]]を生み出す。プルトニウムは核分裂しエネルギーと中性子を生み出す。(なお、濃縮ウランは反応開始時のみ必要とされる。) 利用済み(核分裂反応が終了した)領域が増大し、利用可能(核分裂反応が可能な)領域が減少することにより核分裂反応が起こっている領域が徐々に移動(進行)することから、「進行波炉」という名前が付けられている。 == 関連項目 == {{ウィキポータルリンク|原子力}} * [[原子炉]] * [[原子力発電]] * [[原子核分裂]] * [[高速増殖炉]] == 注釈 == <div class="references-small"><references /></div> ==外部リンク== * [https://web.archive.org/web/20100331022648/http://www.nuc.berkeley.edu/files/TerraPowerGilleland.pdf テラパワーによる進行波炉の説明スライド](PDF)(archive) * [http://www.uxc.com/smr/Library%5CDesign%20Specific/TWR/Other%20Documents/Introducing%20TWRs.pdf 進行波炉関連の年表 (PDF)] * [http://www.nr.titech.ac.jp/Japanese/Laboratory/Data/hsekimot.html 東京工業大学原子炉工学研究所関本研究室] {{原子炉}} {{DEFAULTSORT:しんこうはろ}} [[Category:原子炉の形式]]
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