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過塩素酸
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{{Chembox | ImageFileL1 = Perchloric-acid-2D-dimensions.png | ImageSizeL1 = 120px | ImageFileR1 = Perchloric-acid-3D-vdW.png | ImageSizeR1 = 140px | IUPACName = 過塩素酸 | Section1 = {{Chembox Identifiers | SMILES = OCl(=O)(=O)=O | CASNo = 7601-90-3 | RTECS = SC7500000 }} | Section2 = {{Chembox Properties | H=1|Cl=1|O=4 | Appearance = 無色の液体 | Density = 1.768 g cm<sup>-3</sup> (22 {{℃}}) | Solubility = 任意に混和 | BoilingPt = 203 {{℃}}(共沸)<ref name="Merck">Merck Index 13th ed., 7232.</ref> | MeltingPt = 19 {{℃}}/11 mmHg<ref name="Merck">Merck Index 13th ed., 7232.</ref> | pKa = -8.6 (-9.9) }} | Section4 = {{Chembox Thermochemistry | DeltaHf = -40.58 kJ mol<sup>-1</sup><ref name=parker>D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)</ref> | DeltaHc = | Entropy = 188.4 J mol<sup>-1</sup>K<sup>-1</sup> | HeatCapacity = }} | Section7 = {{Chembox Hazards | EUClass = 酸化性 ('''O''')<br />腐食性 ('''C''') | NFPA-H = 3 | NFPA-F = 0 | NFPA-R = 3 | NFPA-O = OX | RPhrases = {{R-phrases|5|8|35}} | SPhrases = {{S-phrases|1/2|23|26|36|45}} }} }} '''過塩素酸'''(かえんそさん、{{lang-en-short|perchloric acid}})とは、[[塩素]]の[[オキソ酸]]の一種で、[[化学式]] {{chem|HClO|4}} と表される[[過ハロゲン酸]]。水に溶けやすい無色の液体。[[酸化数]]7価の塩素に、[[ヒドロキシ基]](-OH)1個と[[オキソ基]](=O)3個が結びついた構造を持つ。 [[塩素酸]]より酸素が1個多く、名称に「過/per」と付いているものの[[分子]]内に -O-O- 結合はなく本来の塩素原子の最高酸化状態であり[[過酸]]ではない。 == 概要 == [[硫酸]]、[[硝酸]]などと同様に[[強酸]]であり、本来は酸素原子の[[誘起効果]]により非常に強い酸であるが、希薄[[水溶液]]中では[[水平化効果]]により[[塩酸]]および硝酸などと[[電離度]]に著しい差は認められない。過塩素酸は日本の[[消防法]]第2条第7項及び別表第一第6類1号により[[危険物第6類]](酸化性液体)に指定されている。 == 製法 == [[七酸化二塩素]]と[[水]]が反応して生成する。 : <chem>Cl2O7\ + H2O -> 2 HClO4</chem> また[[過塩素酸カリウム]]に[[濃硫酸]]を加え、減圧蒸留すると得られる。 : <chem>KClO4\ + H2SO4 -> HClO4\ + KHSO4</chem> [[塩酸]]の[[電解]][[酸化]]によっても水溶液として得られる。 : <chem>Cl^-(aq)\ + 4 H2O(l) -> ClO4^-(aq)\ + 8 H^+(aq)\ + 8 \mathit{e}^-</chem> == 化学的性質 == 塩素の[[オキソ酸]]としては最も安定で、唯一、純粋な酸を単離することが可能であるが、不安定で加熱および[[有機物]]との接触により爆発しやすく、室温で3〜4日の放置であっても過塩素酸一水和物と七酸化二塩素に[[不均化]]する<ref> FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年</ref>。 : <chem>3 HClO4 -> H3OClO4\ + Cl2O7</chem> 純粋な酸は水に激しく発熱して溶解し、その[[溶解熱]]は88.75kJ mol<sup>-1</sup>と非常に大きい<ref name=parker />。 過塩素酸の第一[[水和]][[エンタルピー]]変化および溶解エンタルピー変化は以下の通りである。 : <chem>HClO4(l)\ + H2O(l) \rightleftarrows\ HClO4 \cdot H2O(s)\ ,\ \Delta \mathit{H} ^\circ</chem><math>\rm = -55.80 kJ\ mol^{-1}</math> : <chem>HClO4(l) \rightleftarrows\ H^+(aq)\ + ClO4^-(aq)\ </chem><math>,\ \Delta \mathit{H} ^\circ = -88.75 kJ\ mol^{-1}</math> 過塩素酸一水和物 (<chem>HClO4 \cdot H2O</chem>) は融点50 {{℃}}の[[イオン結晶]]であり、[[オキソニウムイオン]]と過塩素酸イオンからなる (<chem>H3O^+ \cdot ClO4^-</chem>)。 === 水溶液の性質 === [[水溶液]]は安定であり60 % (d=1.54g cm<sup>-3</sup>, 9.2 [[濃度#物質量/体積(モル濃度)|mol dm<sup>-3</sup>]]) あるいは70 % (d=1.67g cm<sup>-3</sup>, 11.6mol dm<sup>-3</sup>) 水溶液も市販されている。[[ラマンスペクトル]]により70 %程度の濃度までは完全に[[電離]]していることが示され<ref name=kagakudaijiten>化学大辞典編集委員会 『化学大辞典』 共立出版、1993年</ref>、電離状態の過塩素酸イオン ({{chem|ClO|4|-}}) は安定であるといえる。また72.5 %の水溶液は[[共沸]]混合物となり、203 {{℃}}で沸騰する。 過塩素酸水溶液は希硫酸と類似の性質を示し、室温では[[相転移#物理学的性質|不揮発性]]であり、希薄な水溶液でも放置により濃縮され、衣服に付いたまま放置すると穴があく点などは希硫酸と同様である。 70 %程度以下の水溶液は[[酸化]]作用をほとんど持たず[[イオン化傾向]]が水素より大きな[[金属]]と反応し水素を発生させるが、過塩素酸はほとんど還元されない。70 %以上の過塩素酸と[[発煙硝酸]]の混合物は強い酸化作用を示し、[[分析化学]]において有機物の酸化分解に用いられる<ref name=kagakudaijiten />。 水溶液中における[[酸解離定数]]は直接測定することが不可能であるが、非水溶媒中における幾つかの酸の酸解離定数を水溶液中のものと比較することにより推定されている<ref name=Charlot>シャロー 『溶液内の化学反応と平衡』 藤永太一郎、佐藤昌憲訳、丸善、1975年</ref>。 : <chem>HClO4(aq)\ + H2O(l) \rightleftarrows H3O^+(aq)\ + ClO4^-(aq)</chem>, {{pKa}} = -8.6 or -9.9 === 非水溶媒中の酸解離平衡 === 非水溶媒中の酸解離定数 {{pKa}} は、2.1([[アセトニトリル]])、1.3([[炭酸プロピレン]])、2.1([[ニトロメタン]])、0.4([[ジメチルスルホキシド]])、3.3([[ピリジン]])、4.9([[酢酸]])であり、[[N,N-ジメチルホルムアミド]]および[[N-メチルピロリドン]]中では強酸として挙動する。これらの解離定数は[[トリフルオロメタンスルホン酸]]とほぼ同程度か、やや強い程度である<ref>『改訂4版化学便覧基礎編Ⅱ 無機化合物水溶液のモル伝導率』 日本化学会、1993年</ref>。 == 過塩素酸イオン == <div style="float:right">[[File:Perchlorate-2D-dimensions.png|130px]]</div><div style="float:right">[[File:Perchlorate-3D-vdW.png|100px]]</div> '''過塩素酸イオン'''(かえんそさんいおん、{{lang-en-short|perchlorate}}、{{chem|ClO|4|-}})は過塩素酸の電離により生成する1価の[[陰イオン]]である。過塩素酸塩結晶中にも存在し、[[四面体形分子構造|正四面体形構造]]をとり Cl-O 間結合距離は[[過塩素酸ナトリウム]][[結晶]]中で142.0-143.1 pmであり、類似構造の[[硫酸イオン]] (149 pm) と比較して短く、より[[二重結合]]性が強いと考えられていた(形式的な結合次数は1.75)。このような結合長をもとに、過塩素酸イオンの結合はCl原子が3つのO原子と二重結合を作り、もう一つのOと単結合を作っているという極限構造(の共鳴状態)で書かれることが多い。しかしその一方で、理論計算からは{{chem|Cl|3+}}に4つの{{chem|O|-}}が単結合で結びついているという[[オクテット則]]を満たす描像がもっとも現実の系に近いと示唆されている<ref>L. Suidan, J. K. Badenhoop, E. D. Glendening and F. Weinhold, ''J. Chem. Educ.'', 72, 583 (1995).</ref>。この場合、結合が通常の単結合より短く強い点に関しては、ClとOの電気陰性度の差が大きい事により結合が強く分極していることとそれぞれの原子が電荷を持つ事によりCl-O間にクーロン力によるイオン結合がプラスされていると説明される。近年、理論計算から同様の予想がなされていた[[硫酸]]などにおいても実際にS-O結合が単結合であること、その結合が単結合より短く強いのは分極した単結合におけるクーロン引力によるものであることが実験的に確認され、過塩素酸イオンのCl-O結合が単結合であるという理論的予測が間接的に支持されている。 希薄水溶液中では安定でありほとんど酸化作用を示さないが、潜在的に高い酸化作用をもち、その[[標準酸化還元電位]]は以下の通りである。 : <chem>{ClO4^-(aq)} + {2H^+(aq)} + {2\mathit{e}^-}\ =\ {ClO3^-(aq)} + {H2O(l)}\ ,\ \mathit{E}^\circ\ =</chem><math>1.226 \rm{V}</math> : <chem>{ClO4^-(aq)} + {8H^+(aq)} + {8\mathit{e}^-}\ =\ {Cl^-(aq)} + {4H2O(l)}\ ,\ \mathit{E}^\circ\ =</chem><math>1.388 \rm{V}</math> ただし、[[水素]]、[[硫化水素]]、[[亜硝酸]]および[[ヨウ化水素]]などでは[[還元]]されず、酸性条件で[[チタン]](III)イオン ({{chem|Ti|3+}}) により還元される。 金属イオンに対する[[配位結合]]が弱く[[錯生成定数]]が小さいことから、金属[[アクアイオン]]の研究におけるカウンターイオンとして、また過塩素酸塩は[[イオン強度]]調整用の[[電解質]]として用いられる。 == 過塩素酸塩 == '''過塩素酸塩'''(かえんそさんえん、{{lang-en-short|perchlorate}})は過塩素酸イオン ({{chem|ClO|4|-}}) を含むイオン結晶であり、[[火薬]]、[[爆薬]]にしばしば使用される強力な[[酸化剤]]である。[[炭素]]、[[硫黄]]、有機物および[[金属粉]]などとの混合物は[[摩擦]]、衝撃などにより激しく爆発する。日本の消防法では[[危険物第1類]](酸化性固体)に該当する。 塩素酸塩水溶液の電解酸化および、過塩素酸に金属[[酸化物]]を溶解することにより製造される。 多くのものは吸湿性で水に易溶であるが、[[カリウム]]塩 {{chem|KClO|4}}、[[ルビジウム]]塩 {{chem|RbClO|4}}、[[セシウム]]塩 {{chem|CsClO|4}} および[[テトラアルキルアンモニウム]]塩 {{chem|R|4|NClO|4}} などは水に対する溶解度が比較的小さい(水100 gに対し1-2 g程度)。 主な用途は[[ロケットエンジンの推進剤#固体燃料ロケット|固体ロケットの推進剤]]中の[[酸化剤]]である。[[過塩素酸カリウム]]が最初に用いられるようになり、現在では[[過塩素酸アンモニウム]]が最も重要な塩となっている。[[過塩素酸リチウム]]は重量当たりの酸素量が最も多く、固体推進剤としての利用が調査されているが、実用には至っていない。 * [[過塩素酸アンモニウム]] * [[過塩素酸カリウム]] * {{link-zh|過塩素酸カルシウム|高氯酸钙}} * [[過塩素酸銀]] * [[過塩素酸ナトリウム]] * [[過塩素酸マグネシウム]] == 参考文献 == {{Reflist}} == 関連項目 == * [[次亜塩素酸]] * [[亜塩素酸]] * [[塩素酸]] *[[超酸]] {{水素の化合物}} {{塩素の化合物}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:かえんそさん}} [[Category:過塩素酸塩|*]] [[Category:オキソ酸]] [[Category:第6類危険物]]
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