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{{出典の明記|date=2012年9月16日 (日) 10:22 (UTC)}} [[ファイル:Centrifuge with samples rotating slowly.jpg|サムネイル|作動中の卓上型遠心機。装置の穴に脱着可能な沈殿管をセットする。]] '''遠心分離'''(えんしんぶんり、{{Lang-en-short|centrifugation}})とは、ある試料に対して強大な[[遠心力]]をかけることにより、その試料を構成する[[成分]]([[分散系|分散質]])を[[分離]]または分画する[[方法]]である。 [[懸濁液]]や[[乳液]]などは、[[ろ過]]や[[抽出]]操作では分離することが困難であるが、遠心分離では通常なら分離困難な試料に対しても有効にはたらく場合が多い。その原理は、高速回転により試料に強大な[[遠心加速度|加速度]]を加えると、[[密度]]差がわずかであっても遠心力が各分散質を異なる相に分離するように働くためである。遠心分離に使用する機械を'''遠心機'''という。 19世紀から開発され、現代的なものは[[テオドール・スヴェドベリ]]により1920-1930年にかけて開発された<ref name=hayashi>{{cite|和書 |author=林茂雄 |title=移動現象論入門 |publisher=東洋書店 |year=2007 |isbn=978-4-88595-691-1 |page=385}}</ref>。 == 密度勾配遠心法 == {{Main|等密度遠心法}} [[生化学]]では、[[塩化セシウム]]など[[式量]]の大きい塩の溶液を試料と混合して[[超遠心機]](後述)にかけることによって、試料の粒子をその重さにしたがって分離する'''密度勾配遠心法'''(みつどこうばいえんしんほう)が利用される。これは、溶液に長時間にわたり超遠心を施すことにより生じる密度勾配を利用し、試料中の粒子がその重さに応じて層を成して分離する現象を利用して、高分子の分離や[[平均分子量]]を推測する手法である。また、血球細胞の分離の際にもショ糖溶液などを用いて行われる。その際には細胞が損傷を受けないように超遠心機ではなく、通常の遠心機によって分離される。 == 遠心機の構造 == 遠心分離に使用される装置を'''遠心機'''(えんしんき、[[:en:centrifuge|centrifuge]])と呼び、筐体とその内部の回転子とで構成される。手回し式のギアで回転させるものから、電動モーターで高速回転させるものまで存在する。 遠心機の能力は発生する遠心力をG([[重力加速度]])で計測した値で示され、数千Gまでかけられるものを'''遠心機'''、数万G以上をかけられるものを'''超遠心機''' ([[:en:ultracentrifuge|ultracentrifuge]]) と呼んで区別される。 回転子は用途によって様々な形状のものが存在する。試料容器は'''沈殿管'''(ちんでんかん)と呼ばれるが、[[試験管]]、[[スピッツ管]]、[[ディープウエルプレート]]、[[マイクロチューブ]]などの様々な形状の容器があり、アダプターの交換でそれらの容器に対応できるようになっているものが多い。 回転速度によって遠心力の働く方向が変化するため、管の向きが常に遠心力に対して鉛直に保たれるように、アダプターが振り子式の支点で回転子に保持されているものが多いが、管の角度が常に一定になっているものもある。 回転子の重量配分に偏りがある状態で高速回転させると大きな振動が発生し、最悪の場合には遠心機が破壊される恐れもあるので、サンプルは重量配分に偏りが無いようにセットされなければならない。 超遠心機では、様々な部位の摩擦による発熱が無視できないため、生化学用の超遠心機にはサンプルを冷却する仕組みが備えられたものもあり、これは'''冷却遠心機'''と呼ばれる。場合によっては回転子の周囲を減圧することで、空気の[[断熱過程|断熱圧縮]]による発熱を減らす冷却遠心機も存在する。 == 遠心機の種類 == ; 工業用遠心機 :工業用では[[砂糖]]の精製や、[[乳脂肪]]分を分離するために遠心機が利用されている。また化学工業用には結晶とろ液を分離する為の布張りの遠心機が利用されることもある。 ; ガス遠心分離装置 :[[六フッ化ウラン]]ガスを超遠心機にかけると、[[原子量]]の違いにより同位体濃度に勾配が発生する。遠心機の原理で同位体を分離する装置を'''ガス遠心分離装置'''と呼ぶ。ガス遠心分離装置は[[天然ウラン]]から[[濃縮ウラン]]を製造する[[ウラン濃縮]]工場でも使用されており、[[核兵器]]の製造にも使用できることから、[[核拡散防止条約|核拡散防止]]のために輸出入が制限されることがある。 :超遠心機の発生する数十万Gであっても、[[同位体]]の濃度勾配は極めてわずかであるため、高濃度側と低濃度側のガスをそれぞれ別の遠心分離装置に導き、多段階で分離を行う。段数を多くすることで、[[同位体]]を高度に濃縮することができる。 ; 遠心エバポレーター :遠心機を減圧すると、遠心力が溶液の突沸を押さえ込むため、試験管やディープウエルプレートなど微少量の溶液サンプルを小容量の容器のまま[[蒸発]]・[[乾固]]させることができる。このような目的で設計された遠心機を'''遠心エバポレーター'''と呼ぶ。 :回転子の構造は超遠心機と同様であるが、筐体が減圧可能になっており、サンプル容器を[[赤外線]]輻射や温風の注入などで加温できるようになっている。 == 理論 == 遠心分離中の分散質の移動速度''v'' は、次で表される<ref name=hayashi/>。 :<math>v = \frac{\Delta\rho V\alpha}{m\beta}</math> ここでΔρは分散質と分散媒の密度差、''V'' は分散質の体積、αは加速度、''m'' は分散質の質量、βは単位質量あたりの摩擦係数である。このことから、遠心分離の効果を表す指標として、次の'''スヴェドベリの''S'' 値'''、または'''[[沈降係数]]'''が定義される。 :<math>S := \frac{v}{\alpha} = \frac{\Delta\rho V}{m\beta} = \frac{m}{6\pi a\mu}\frac{\Delta\rho}{\rho}</math> ただし[[ストークスの式]]を用いており、''a'' は分散質(粒子)の半径である。 この''S'' は時間の[[量の次元|次元]]をもち、10<sup>-13</sup> 秒に等しいと定義される[[スヴェドベリ (単位)|スヴェドベリ]](S)を単位として表される。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} <!-- == 参考文献 == --> == 関連項目 == {{Commonscat|Centrifugation}} * [[グスタフ・ド・ラバル]] * [[粉体分離機]] <!-- == 外部リンク == --> {{Chem-stub}} {{Tech-stub}} {{デフォルトソート:えんしんふんり}} [[Category:分離プロセス]] [[Category:テオドール・スヴェドベリ]]
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