郊外化のソースを表示

{{複数の問題
| 出典の明記 = 2021-01-16
| 独自研究 = 2021-01-16
}}

[[Image:Suburbia by David Shankbone.jpg|thumb|250px|right|米国[[コロラドスプリングス]]周辺の郊外開発]]

'''郊外化'''（こうがいか、{{Lang-en-short|suburbanization}}）とは、[[都市化]]が進んだ結果、[[都市]]の周辺地域（[[郊外]]）において都市的要素と[[農村]]的要素が混在するようになるまでの変化プロセスのことである{{Sfn|藤塚|2016|p=90}}。

== 概要 ==
{{See also|郊外|準郊外}}

郊外化の原因として、中心都市における超過人口の溢出、所得向上、中心都市の環境悪化、中心都市・郊外間の交通機関の発展、過密化対策の[[都市計画|都市政策]]などが挙げられる{{Sfn|石川|2008|p=2}}。

郊外化により、都市周辺の[[村落]]において、[[人口]]の変化、[[土地利用]]の変化、都市的要素の増大、農村的要素の減少などの変化が発生する{{Sfn|山鹿|1989|p=193}}。郊外化による人口の変化として、人口や[[人口密度]]の増加、[[第二次産業|第二次]]・[[第三次産業]]人口やその割合の増加、[[第一次産業]]人口やその割合の減少などの変化が挙げられる{{Sfn|山鹿|1989|p=193}}。土地利用の変化として、農村的土地利用から都市的土地利用への変化が発生する{{Sfn|山鹿|1989|p=193}}。都市的要素の増大の例として住宅開発や工場移転などが、農村的要素の減少の例として[[農家]]や[[農地]]の減少などが挙げられる{{Sfn|山鹿|1989|p=193}}。

郊外化に際しては、都心の業務地区への通勤交通手段として、高速[[交通]]手段が[[大衆化]]していることが前提条件である。[[19世紀]]後半から[[20世紀]]にかけて[[ウマ|馬]]や馬車に代わり、[[欧米]]や[[日本]]などの一部で、大量輸送が可能で頻繁に運行する[[鉄道]]（[[路面電車]]、[[インターアーバン]]、[[地下鉄]]、[[通勤列車|通勤鉄道]]など）が登場し、鉄道沿線の[[住宅地]]化が進んだ。続いて、[[フォード・モデルT|T型フォード]]に代表される[[大衆車]]が普及し自動車用の[[道路]]が整備されることで、移動は格段に自由になり、通勤鉄道のない都市や鉄道沿線以外でも郊外住宅地が開発された。

== 郊外化の指標 ==
人口の郊外化の指標として、{{Harvtxt|富田|1995}}では増加率法、郊外化率、増加寄与率法、郊外化進展指数が挙げられている{{Sfn|富田|1995|pp=48-52}}。
# 増加率法
#* 時期<math>t_1</math>から<math>t_2</math>までの周辺都市における[[人口増加率]]が中心都市よりも上回るかどうかで、一般に郊外化が進行下の場合、周辺都市のほうが中心都市よりも人口増加率が高くなる{{Sfn|富田|1995|p=48}}。
# 郊外化率
#* 時期<math>t_1</math>から<math>t_2</math>までの周辺地域の人口増加率から中心都市の人口増加率を減じた値を使用する方法で、{{harvtxt|Frey and Speare|1988}}により提唱された{{Sfn|富田|1995|p=49}}。
# 増加寄与率法
#* 時期<math>t_1</math>から<math>t_2</math>までの大都市圏全体の人口増加量のうち中心都市と周辺都市の増加寄与率を使用する方法で、郊外化が進行している場合は、周辺地域の増加寄与率が時期<math>t_1</math>における大都市圏全体における周辺地域の人口の割合よりも高くなる{{Sfn|富田|1995|p=50}}。
# 郊外化進展指数
#* 郊外化進展指数とは、<math>t_2</math>における周辺地域の人口の割合と<math>t_1</math>における周辺地域の人口の割合の差のことである{{Sfn|富田|1995|pp=51-52}}。大都市圏全体の人口における周辺地域の人口の割合の変化に着目する方法で、郊外化が進展している場合はこの値が正となる{{Sfn|富田|1995|pp=51-52}}。

== 各国での事例 ==
{{出典の明記| date = 2021-01-16| section = 1}}

=== 日本 ===
[[明治]]末期から[[昭和]]初期にかけて、[[田園都市]]構想の影響を受けた民間の[[鉄道事業者|鉄道会社]]（[[私鉄]]）が、[[環境]]に優れた郊外に[[持家派|持ち家]]を取得し、[[電気鉄道]]（[[電車]]）で[[都心]]に[[通勤]]するという[[ライフスタイル]]を提案した。各社は[[東京]]や[[大阪]]の都心部から郊外への[[鉄道路線]]を建設し、その沿線で[[住宅地]]などの[[沿線開発|開発]]を行った。

[[関西]]における[[阪急電鉄]]による開発が先駆的なもので、阪急電鉄沿線の[[芦屋市|芦屋]]などがその典型である。それに影響を受け、[[関東]]でも[[田園都市 (企業)|田園都市]]（後の[[東急電鉄]]）<ref name="多摩川誌">[http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/tama/04siraberu/tama_tosyo/tamagawashi/parts/text/084321.htm 多摩川誌｜建設省関東地方建設局京浜工事事務所｜昭和61年3月29日発行]</ref>により、東急沿線の[[洗足田園都市]]<ref name="多摩川誌"/>開発が進められた。

[[第二次世界大戦]]後は、持ち家政策が進められた[[高度成長期]]に[[三大都市圏]]などでの鉄道沿線の[[スプロール現象|スプロール]]が進み、[[ドーナツ化現象]]と呼ばれる郊外化が生じた。日本の場合、主な通勤手段が[[自家用自動車]]ではなく鉄道である点が特徴的であったが、次第に[[高速道路]]や[[バイパス道路]]が整備され、自動車通勤・自動車での買い物も一般的になった。全国での道路建設により、これまで郊外化にあまり縁の無かった地方も急速に郊外化し、住宅や商業地が薄く広く郊外に建設されていった。

=== アメリカ合衆国 ===
[[アメリカ合衆国]]では、[[1950年代]]、自動車普及に伴う郊外化が加速した。[[第二次世界大戦]]から[[復員]]し結婚した若い人々は家族と住める広い住宅地を欲し、郊外での広々とした住宅開発、[[自家用自動車]]の普及、自動車専用道路の整備がこうしたニーズに応えた。アメリカ型郊外生活は、都市に大量の労働者を抱える世界の大都市に波及し、郊外住宅地や高速道路が多くの国の大都市に作られた。

アメリカでは住宅の郊外化に続いて、商業・業務の郊外化も起きている。大勢の自家用車が集まりやすいインターチェンジ周辺に大型の[[ショッピングモール]]が出現し、やがて工場だけでなく企業のオフィスも、土地・建物の賃料が安く自動車通勤のできる郊外に移転した。通信技術やIT、配送サービスの進化や普及は、都心から離れた場所でのビジネスを容易にしたため、アメリカの企業本社の郊外立地は増えていった。

[[1990年代]]以降、[[ブーンバーブ]]と呼ばれる高い成長を遂げた大型郊外都市や、[[エッジ・シティ]]と呼ばれる都市外郭の高速道路沿いに薄く広く展開した業務中心地が、[[アメリカ合衆国西海岸|西海岸]]や[[アメリカ合衆国南部|南部]]、[[アメリカ合衆国中西部|中西部]]などの都市圏に出現した。またこれと並行して、住宅がさらに郊外のほぼ農村と言える地帯にまで進出している。

=== 大韓民国 ===
[[大韓民国]]では、[[軍事境界線 (朝鮮半島)|軍事境界線]]などにより開発があまり進まなかった[[ソウル]]北郊にまで、[[1990年代]]後半からニュータウンの開発が進み、マンションなどが建てられている。それに伴い、それまで[[非電化]][[ローカル線]]がほとんどであった北郊方面の[[韓国鉄道公社|KORAIL]]各線も[[鉄道の電化|電化]][[複線]]化され、その多くが[[首都圏電鉄]]に組み込まれた。一戸建て住宅よりも高層マンションによる住宅開発が多いことが特徴的である。

== 郊外化の問題 ==
{{複数の問題| 出典の明記 = 2021-01-16| 独自研究 = 2021-01-16| section = 1}}
{{要出典範囲|郊外化は日本のみならず、多くの国で[[都市問題]]となっている。|date=2021-01-16}}

郊外化により、都市周辺の農村や森林、水辺空間が住宅開発やモール開発のため破壊される。

郊外に都市活動が広がることにより、道路、上下水道、公共サービスを整備しなければならない面積が増え、自治体の負担が増える。

移動距離が伸びることで、移動に時間やエネルギーを多く使う。

郊外化に伴い、自家用車の利用者が増え、石油資源の枯渇、地球温暖化の進行が懸念される。

郊外から中心都市への移動が増えるため、公共交通機関の混雑や道路渋滞などが発生する{{Sfn|藤塚|2016|p=90}}。

郊外化による[[生活圏]]の広がり、地域コミュニティの希薄化により、[[郊外型犯罪]]の発生が懸念される。

産業の郊外化に伴い、雇用が郊外に流出する。

子供、[[貧困]]者、お年寄りや障害者など、自動車を運転できない[[交通弱者]]にとって不便である。→[[買い物難民]]、[[医療難民]]。

郊外化が進んだ現在、中心市街地の空洞化（[[シャッター通り]]）のほか、様々な問題点が郊外化に関して提起されている。逆に大規模店舗の業者側からは、中心市街地の努力不足や、政府・自治体による郊外での過大な道路開発や公的施設移転など、郊外に偏った公共工事が問題であると反駁されている。

そうした中で、日本では[[2000年]]代以降、[[大都市圏]]の地価下落などを反映し、大きな都市では郊外化とは逆の[[都心回帰]]が発生している。またいくつかの地方においては、郊外の整備費用を減らすため、また徒歩や自転車でも移動しやすく[[交通弱者]]の生活しやすい街にするために都市機能を中心部に再集積させる「[[コンパクトシティ]]」への動きもある。{{See also|中心市街地#中心市街地活性化}}

一方で郊外化が終焉したわけではなく、[[2007年]]（[[平成]]19年）現在においては、[[首都圏 (日本)|首都圏]]では旺盛な住宅事情を反映して、[[首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス|つくばエクスプレス]]（首都圏新都市鉄道）や[[東日本旅客鉄道|JR]][[武蔵野線]]、[[東武電鉄|東武]][[東武野田線|野田線]]の沿線などを中心に、現在でも郊外型開発が続いている。また、[[京阪神|関西圏]]でも[[大阪モノレール]]や[[近畿日本鉄道|近鉄]][[近鉄けいはんな線|けいはんな線]]沿線などで宅地開発が進み、住宅事情の改善に貢献している。一方で、[[流山おおたかの森駅]]開業に伴い市野谷の森が伐採されるなど都市近郊の貴重な緑地が破壊され、新線開業に伴う過大な都市開発が自治体の財政状況に影響を与えるなどの社会問題が発生しており、移動距離の増加に伴って使用するエネルギーの増加も懸念される。

== 利点と問題点 ==
=== 利点 ===
オフィスの賃料が安く、中心市街地の機能移転後の維持・管理にかかる費用を削減できる<ref>[https://tbgu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=179&file_id=22&file_no=2 総合政策論集　第8巻 05] ([[PDF]]) [[東北文化学園大学]]機関リポジトリ</ref>。

郊外への人の流失によって[[コンパクトシティ]]化が進み地方再生につながる<ref name="久留米工大">{{Cite web|和書|title=コンパクトシティとは？新しい街づくりの事例から見るコンパクトシティのメリット|url=https://www.kurume-it.ac.jp/future/compact-city|website=[[久留米工業大学]] 工学の今とこれから|date=2018-08-04|accessdate=2021-06-23|language=ja}}</ref>。

地方都市リノベーション事業により、建造物の建て替えの際に、都市機能を集約させ効率化を図ることが可能<ref name="久留米工大"/>。

=== 問題点 ===
都市の郊外化による自動車利用の助長により、環境への負荷が増大する<ref name="土木計画学">{{Cite web|和書|title=土木計画学研究・論文集|url=https://www.jstage.jst.go.jp/browse/journalip1984/15/0/_contents/-char/ja|website=www.jstage.jst.go.jp|accessdate=2021-06-23|language=ja}}</ref>。

郊外化に伴う郊外施設の発展により、中心市街地への人口流入数が減少する<ref name="土木計画学"/>。

中心市街地の衰退により集積していた都市機能が分散し、社会基盤設備の動作の効率が悪化する<ref name="土木計画学"/>。

中心市街地の人口減少により、人々の交流機会が減少する<ref name="土木計画学2">{{Cite web|和書|title=土木計画学研究・論文集|url=https://www.jstage.jst.go.jp/browse/journalip1984/19/0/_contents/-char/ja|website=www.jstage.jst.go.jp|accessdate=2021-06-23|language=ja}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|author=Frey, W. H.|author2=Speare, A. Jr.|year=1988|title=Regional and Metropolitan Growth and Decline in the United States|publisher=Russell Sage Foundation|ref={{SfnRef|Frey and Speare|1988}}}}
* {{Cite book|和書|author=石川雄一<!--既存独立記事とは別人-->|year=2008|title=郊外からみた都市圏空間 郊外化・多核化のゆくえ|publisher=海青社|isbn=978-4-86099-247-7|ref={{SfnRef|石川|2008}}}}
* {{Cite book|和書|author=富田和暁|authorlink=富田和暁|year=1995|title=大都市圏の構造的変容|publisher=古今書院|isbn=4-7722-1844-0|ref={{SfnRef|富田|1995}}}}
* {{Cite book|和書|author=藤塚吉浩|authorlink=藤塚吉浩|year=2016|chapter=郊外化・スプロール|pages=90-91|editor1=藤塚吉浩|editor2=高柳長直|editor2-link=高柳長直 編|title=図説 日本の都市問題|publisher=古今書院|isbn=978-4-7722-4197-7|ref={{SfnRef|藤塚|2016}}}}
* {{Cite book|和書|author=山鹿誠次|authorlink=山鹿誠次|year=1989|chapter=郊外化|page=193|editor=日本地誌研究所 編|title=地理学辞典 改訂版|publisher=二宮書店|isbn=4-8176-0088-8|ref={{SfnRef|山鹿|1989}}}}
* 高見淳史 [https://www.jstage.jst.go.jp/browse/journalip1984/15/0/_contents/-char/ja 土木計画学研究・論文集/15巻]抄録。1998年217-255頁
* 鈴木敏幸、武藤真一、小川敬一 [https://www.jstage.jst.go.jp/browse/journalip1984/19/0/_contents/-char/ja 土木計画学研究・論文集/19巻] 2002年195－201頁
* 佐藤英人 [https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjhg/55/4/_contents/-char/en 人文地理ジャーナル/53巻] 2002年第4号
* 稲雄次 [https://tbgu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=179&file_id=22&file_no=2 総合政策論集] 2009年65‐71頁
* [[久留米工業大学]] [https://www.kurume-it.ac.jp/future/compact-city コンパクトシティとは？新しい街づくりの事例から見るコンパクトシティのメリット]

== 関連項目 ==
* [[スプロール現象]] / [[ドーナツ化現象]]
* [[モータリゼーション]]
* [[ロードサイド店舗]] / [[ファスト風土化]]
* [[コンパクトシティ]] / [[都心回帰]]
* [[ジェントリフィケーション]]
* [[持続可能な開発]]

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[[Category:都市計画]]
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[[Category:都市地理学]]
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