都市システムのソースを表示

'''都市システム'''（としシステム、{{lang-en|urban system|links=no}}）とは、関連性を持つ複数の[[都市]]の集合のことである{{Sfn|森川|1990|p=62}}。これらの都市において、ある都市での事象（経済活動、産業など）は他の都市に影響を及ぼしていく{{Sfn|森川|1990|p=62}}。

都市システムを考察するときは都市を点として扱い、都市は[[グラフ理論]]における[[頂点 (グラフ理論)|ノード]]に、都市間の関係性はリンクとして表現される{{Sfn|村山|1994|p=397}}。都市システム研究では、都市群（ノード）に着目した研究{{Refnest|group=注釈|大きく分布パターンの考察、都市規模分布の考察、都市次元の考察に分けられる{{Sfn|村山|1994|pp=398-403}}。}}と、都市間関係（リンク）に着目した研究{{Refnest|group=注釈|大きく、都市間流動と結節・機能構造の考察、企業における都市間結合の考察、イノベーションの拡散、経済変動の都市間伝播に分けられる{{Sfn|村山|1994|pp=403-410}}。}}がある{{Sfn|村山|1994|p=398}}。

== 分析方法 ==
都市システムの分析方法の例として、[[順位・規模法則]]や[[中心地理論]]を挙げることができる{{Sfn|村山|1997|pp=73-83}}。

=== 順位・規模法則 ===
[[File:Relation between cities' population and cities' rank.png|thumb|都市の人口と都市の順位の関係を示した[[両対数グラフ]]。]]
{{Main|順位・規模法則}}
'''順位・規模法則'''（{{en|rank-size rule}}）は、都市の順位と人口規模が反比例の関係をとる法則のことであり、<math>P_r</math>を順位<math>r</math>の都市の人口、<math>r</math>を当該都市の人口規模順位、<math>q</math>を定数、<math>P_1</math>を最大都市の人口としたとき、

<math>P_r = \frac{P_1}{r^q}</math>

という関係式が成立する{{Sfn|村山|1997|p=74}}。この法則は[[先進国]]で[[都市化]]が進行している場合に成立しやすい{{Sfn|村山|1997|p=75}}。

一方、小規模な国や、都市化の全国的な進行が完了していない国においては、最大都市の人口が2番目の都市と比較して大きくなり[[プライメイトシティ]]がみられるほか、都市の順位と人口規模の関係がプライメイトパターンとなる{{Sfn|村山|1997|pp=75-76}}。概して地域内での流通、他国との貿易が発展するほどプライメイトパターンから順位・規模パターンへ変化する{{Sfn|村山|1997|p=76}}。ただし[[オーストラリア]]では人口が最大規模の都市が複数あることから、ポリーナリィパターンが見られる{{Sfn|村山|1997|p=76}}。

=== 中心地理論 ===
[[File:Christaller's central place theory animation.gif|thumb|クリスタラーの中心地理論における、それぞれの中心地の階層]]
{{Main|中心地理論}}
'''中心地理論'''（{{en|central place theory}}）は[[ヴァルター・クリスタラー]]により提唱された、都市の数や規模と分布の関係性についての理論である{{Sfn|村山|1997|p=78}}。この理論は都市の一要素としての中心地の考察のほか、中心地の階層性についても検討しており、都市システムの研究のうえで重視されている{{Sfn|森川|1990|p=81}}。

中心地に立地する施設を周辺住民が利用することで、中心地に人々が集まり、当該地域は中心地としての機能を持つようになる{{Sfn|村山|1997|p=79}}。中心地には複数の規模があり、中心地の機能が及ぶ周辺地域が広い場合は高次の中心地とよび、狭い場合は低次の中心地とよばれる{{Sfn|村山|1997|pp=79-80}}。

== スケール ==
都市システムを考察するときは、取り扱う都市群のスケールを自由に設定できる{{Sfn|村山|1997|p=71}}。例えば、{{仮リンク|ラリー・ボーン|en|Larry Bourne}}は都市システムとして、国家的都市システム、地域的都市システム、{{仮リンク|日常的都市システム|en|Daily urban system}}の3つを提示した{{Sfn|村山|1997|pp=71-73}}。

'''国家的都市システム'''（{{en|national urban system}}）は、大都市同士の都市群システムのことであり、経済的刺激や情報伝達などによって都市群が結合している{{Sfn|村山|1997|p=72}}。例えば、日本全国を単位とした国家的都市システムを考えることができる{{Sfn|手塚|1991|p=162}}。なお[[森川洋]]は国家的都市システムが、都市システムの中でも一体性が強いものとみなし、研究対象としての重要度の高さを指摘している{{Sfn|森川|1990|p=68}}。

'''地域的都市システム'''（{{en|regional urban system}}）は、大都市と周辺都市との都市群システムのことであり、交通・通信・医療などによって都市群が結合している{{Sfn|村山|1997|p=72}}。地域的都市システムは国家的都市システムの一部（サブシステム）であり{{Sfn|村山|1997|p=72}}、例えば、日本では[[都道府県]]や地方ブロックを単位とした地域的都市システムを考えることができる{{Sfn|森川|1990|pp=67-68}}。

'''日常的都市システム'''（{{en|daily urban system}}）は、都市と[[都市圏]]から構成され{{Sfn|森川|1990|p=64}}、都市に居住する住民の生活圏内の地域システムのことであり{{Sfn|手塚|1991|p=162}}、通勤・通学や買い物などの人々の移動が行われている{{Sfn|村山|1997|p=73}}。ここでは都市を面的に考察することとなる{{Sfn|手塚|1991|pp=162-163}}。

ボーンの分類のほかに、'''国際的都市システム'''（{{en|international urban system}}）を考えることも可能である{{Sfn|森川|1990|p=63}}。国際的都市システムは、異なる国の都市を結びつける、世界規模の都市システムである{{Sfn|森川|1990|p=69}}。

== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{Reflist|group=注釈}}
=== 出典 ===
{{Reflist|3}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=森川洋|authorlink=森川洋|year=1990|title=都市化と都市システム|publisher=大明堂|isbn=4-470-55037-X|ref={{SfnRef|森川|1990}}}}
* {{Cite book|和書|author1=中村和郎|authorlink1=中村和郎|author2=手塚章|author3=石井英也|year=1991|title=地域と景観|series=地理学講座|publisher=古今書院|isbn=4-7722-1230-2|ref={{sfnRef|手塚|1991}}}}
* {{Cite journal|和書|author=[[村山祐司]]|year=1994|title=都市群システムの研究の成果と課題|journal=人文地理|volume=46|issue=4|pages=44-65|url=https://doi.org/10.4200/jjhg1948.46.396|ref={{SfnRef|村山|1994}}}}
* {{Cite book|和書|author=村山祐司|year=1997|chapter=都市システム|pages=71-94|editor1-first=伸夫|editor1-last=高橋|editor1-link=高橋伸夫 (地理学者)|editor2-first=峰明|editor2-last=菅野|editor2-link=菅野峰明|editor3-first=祐司|editor3-last=村山|editor3-link=村山祐司|editor4-first=悟|editor4-last=伊藤|title=新しい都市地理学|publisher=東洋書林|isbn=4-88721-302-6|ref={{SfnRef|村山|1997}}}}

{{都市}}
{{都市計画}}

{{デフォルトソート:とししすてむ}}
[[Category:都市地理学]]
[[Category:システム]]