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{{出典の明記|date=2020年8月23日 (日) 04:01 (UTC)}} '''配列表記'''(はいれつひょうき、Array Notation)は、[[:en:Jonathan Bowers]]が[[2002年]]に考案した[[巨大数]]の表記法の一つである。[[クヌースの矢印表記]]の拡張によるが、クヌースの矢印表記はおろか、[[コンウェイのチェーン表記]]やその拡張表記([[コンウェイのチェーン表記#ピーター・ハーフォードによる拡張|ピーター・ハーフォードによる拡張チェーン表記]]・[[回転矢印表記]])よりも効率的に数の大きさを爆発させることができるため、海外の巨大数論者の間ではチェーン表記レベルを超える巨大数の表記法の主流となっている。 配列表記では、波括弧の中に数字をコンマで区切り入れていく。すなわち、<math>\{a,b,c,...\}</math>という形式である。 == 定義 == 配列表記の規則は次の通りである。 * 1つ組の場合は<math>\{a\}=a</math>、2つ組の場合は<math>\{a,b\}=a^b</math>となる。 * 最後の数字が1の時はこれを落とせる。<math>\{a,b,c,...,y,z,1\}=\{a,b,c,...,y,z\}</math> * 2番目の数字が1の時はそれ以降を全て落とせる。<math>\{a,1,b,c,...,y,z\}=\{a\}=a</math> ここまではチェーン表記と同じだが、ここからが異なり、これが効率良く爆発させることができる要因となっている。 * 3番目の数字が1の時であるが、チェーン表記のようにそれ以降を全て落とすのではなく、式で表すと次のようになる。 ** <math>\{a,b,1,...(n\text{個 の 1})...,1,c,...,y,z\}= \{a,a,...(n+1\text{個 の }a)...,a,\{a,b-1,1,...(n\text{個 の 1})...,1,c,...,y,z\},c-1,...,y,z\}</math> ** つまり、2番目の要素は先頭の要素に置き換わり、3番目以降に連続する1のうち最も右側のもの以外は全て先頭の要素に置き換わり、その最も右側のものは元の配列表記の2番目の要素を1引いた配列に置き換わり、その次の要素の値が1減るという、複雑な規則で変形する。 ** これは4番目以降の数字を減らす唯一のルールである。 * 上のいずれでもない時、次のように変形する。 ** <math>\{a,b,c,...,y,z\}=\{a,\{a,b-1,c,...,y,z\},c-1,...,y,z\}</math> つまり、2番目の要素に元の配列の2番目の要素を1引いた配列を入れ、3番目の要素から1を引く。 ** チェーン表記が右側から変形していくのに対し、こちらは左側から変形していく。 ** なお、4番目以降の数字が1の時も、こちらの変形を適用する。 == 性質 == 3つ組の配列表記は、3つ組チェーンと一致し、したがってクヌースの矢印表記とも一致するという性質がある。すなわち式で書くと<math>\{a,b,c\}=a\rightarrow b \rightarrow c=a \uparrow^cb</math>となる。 4つ組以上の配列表記によって巨大数を記述する場合は、先頭の要素は3以上とする必要がある。なぜなら、先頭が1であれば、その値は1となり、4つ組以上の配列表記で先頭の要素が2であれば、その値は2番目の要素が1でない限り必ず4になってしまうからである。後者の詳細は次の通りである: {2,b,c,d,…,z} ={2,{2,b-1,c,d,…, z},c-1,d,…,z} =… ={2,X,1,d,…,z} (Xはある数) ={2,2,{2,X-1,1,d,…,z},d-1,…,z} ={2,2,Y,d-1,…,z} (内側の配列をYと置く) ={2,{2,1,Y,d-1,…,z},Y-1,d-1,…,z} ={2,2,Y-1,d-1,…,z} ={2,2,Y-2,d-1,…,z} ={2,2,1,d-1,…,z} ={2,2,1,1,…,z} ={2,2,1,1,…,1} ={2,2} =4 つまり、3番目の要素が1まで落ちた直後に2番目の要素が2になってしまい、そうすると3番目の要素が減っても値が変わらないため3番目の要素が1にまで落ちる。更に4番目、5番目の要素と1まで落ちていき、最終的には4となる。 非拡張配列表記では、数の大きさを評価するための重要度は、最も重要なのが変数の数であり、その次に重要なのが最も右側の変数の値で、左側に行くほど重要度が下がっていく。 非拡張配列表記は、[[アッカーマン関数#多変数アッカーマン関数|多変数アッカーマン関数]]と同じくらいの強さである。配列表記と多変数アッカーマン関数の間の近似関係、及びその両者の特徴の比較については[[アッカーマン関数#多変数アッカーマン関数]]を参照。 この配列表記にも拡張表記が考案されており、その最終形態には2種類あり、1つは[[BEAF]](ただし[[2021年]]現在、定義が数学的に意味を持つように定式化されているのは[[テトレーション配列]]まで)、もう1つは[[クリス・バード (数学者)|クリス・バード]]が開発した[[バードの配列表記]]と呼ばれるものである。 この配列表記は[[急増加関数]]で<math>\{x,...,x\}\approx f_{\omega^{\omega}}(x)</math>と近似できる。 == チェーン表記との比較 == 4つ組の配列表記による巨大数は、[[コンウェイのチェーン表記]]レベルの巨大数となり、5つ組の配列表記による巨大数は、[[コンウェイのチェーン表記#ピーター・ハーフォードによる拡張|ピーター・ハーフォードによる拡張チェーン表記]](あるいは[[回転矢印表記]])レベルの巨大数となり、6つ組以上になるとそのレベルを超える。 === 4つ組配列表記と非拡張チェーン表記 === * a→a→(b-1)→2<{a,b,1,2}<≒a→a→b→2 ** {a,b,1,2}とa→a→b→2の両者は矢印表記の段重ねの形にすると、a↑↑…↑↑aのb段重ねの形になるところは同じだが、末端は配列表記だとaとなるのに対し、チェーン表記だとa<sup>a</sup>となる。 a→b→c→2については、配列表記で次の近似・大小関係が成り立つ。 * {a,c,1,2}<≒a→b→c→2<≒{a<sup>b</sup>,c,1,2} 次に{a,b,2,2}とa→b→c→3であるが、配列表記では最後の2が3になるのではなく、3番目の1が2になることによってチェーンの…→3相当となる。 * a→a→(b-1)→3<{a,b,2,2}<≒a→a→b→3 * {a,c,2,2}<≒a→b→c→3<≒{a<sup>b</sup>,c,2,2} {a,b,c,2}のcを増やすことは、a→a→b→cのcを増やすことに相当する。 * a→a→(b-1)→(c+1)<{a,b,c,2}<≒a→a→b→(c+1) * {a,c,d-1,2}<≒a→b→c→d<≒{a<sup>b</sup>,c,d-1,2} そして、4つ組配列表記の末尾の数が、チェーンの長さに対応する。 * {a,b,1,3}<≒a→a→a→b→2 * {a,b,c,3}<≒a→a→a→b→(c+1) * {a,b,c,d}<≒a→a→…(d+2変数)…→a→b→(c+1) === 5つ組配列表記と拡張チェーン系表記 === ここでは、ピーター・ハーフォードによる拡張チェーン表記を示す。回転矢印表記との比較については[[回転矢印表記#他表記との比較]]を参照。 * {a,a,a-1,b-1}<≒a→<sub>2</sub>b * {a,b,1,1,2}<≒a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>2 * {a,b,2,1,2}<≒a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>3 * {a,b,c,1,2}<≒a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>(c+1) * {a,b,1,2,2}<≒a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>2 * {a,b,2,2,2}<≒a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>3 * {a,b,c,2,2}<≒a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>(c+1) * {a,b,1,3,2}<≒a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>2 * {a,b,c,3,2}<≒a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>(c+1) * {a,b,c,d,2}<≒a→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>…(d+2変数)…→<sub>2</sub>a→<sub>2</sub>b→<sub>2</sub>(c+1) * {a,a,a-1,b-1,2}<≒a→<sub>3</sub>b * {a,b,1,1,3}<≒a→<sub>3</sub>b→<sub>3</sub>2 * {a,b,c,d,e}<≒a→<sub>e</sub>a→<sub>e</sub>…(d+2変数)…→<sub>e</sub>a→<sub>e</sub>b→<sub>e</sub>(c+1) == 巨大数の近似の例 == この表記法では、巨大数の近似の例は次のようになる。 * [[グラハム数]]≒{4,65,1,2} * コンウェイのテトラトリ(チェーン表記で3→3→3→3)≒{27,3,2,2} * ふぃっしゅ数バージョン1≒{4,64,1,1,2} * ふぃっしゅ数バージョン2≒{3,3,1,1,64} * {3,3,2,2,1,2}<[[回転矢印表記#旧バード数|旧バード数]]<{4,3,2,2,1,2} また非拡張配列表記で定義され、名前が付けられた数としては、[[グラハム数を超える巨大数の一覧|テトラトリ、スーパーテット、ジェネラル、ペンタトリ、スーパーペント、ヘキサトリ、クワドリーゴル、イテラル]]などがある。 == 関連項目 == * [[巨大数]] * [[クヌースの矢印表記]] * [[アッカーマン関数#多変数アッカーマン関数|多変数アッカーマン関数]] * [[BEAF]] * [[バードの配列表記]] {{巨大数}} {{DEFAULTSORT:はいれつひようき}} [[Category:巨大数]] [[Category:数学に関する記事]]
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