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量子渦
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'''量子渦'''(りょうしうず、{{lang-en-short|quantum vortex}})とは、[[超流動]]や[[超伝導]]において現れる[[位相欠陥]]である。 量子渦の存在は、1940年代後半、[[超流動ヘリウム]]に関して[[ラルス・オンサーガー]]によって初めて予言された<ref> {{cite journal | last=Onsager |first=L. | authorlink=ラルス・オンサーガー | year=1949 | title=Statistical hydrodynamics | journal=Il Nuovo Cimento Series 9 | volume=6 |issue=2 |pages=279-287 | doi=10.1007/BF02780991 }}</ref>。オンサーガーは量子渦の存在が超流動の[[循環 (流体力学)|循環]]を記述することを指摘し、超流動[[相転移]]が渦の励起を引き起こすことを予想した。オンサーガーによるこれらの考えは、1955年に[[リチャード・P・ファインマン]]によってさらに拡張され<ref> {{cite journal | last=Feynman |first=R. P. | authorlink=リチャード・P・ファインマン | year=1955 | title=Application of quantum mechanics to liquid helium | journal=Progress in Low Temperature Physics | volume=1 |issue= |pages=17–53 | doi=10.1016/S0079-6417(08)60077-3 }}</ref>、1957年には[[アレクセイ・アブリコソフ]]によって、[[第二種超伝導体]]の相転移を説明するため用いられた<ref> {{cite journal | last=Abrikosov |first=A. A. | authorlink=アレクセイ・アブリコソフ | year=1957 | title=On the Magnetic properties of superconductors of the second group | journal=Sov. Phys. JETP | volume=5 |issue= |pages=1174-1182 | url=http://www.mn.uio.no/fysikk/english/research/groups/amks/superconductivity/vortex/1957.html }}</ref><ref> {{cite journal | last=Abrikosov |first=A. A. | authorlink=アレクセイ・アブリコソフ | year=1957 | title=On the Magnetic properties of superconductors of the second group | journal=Zh. Eksp. Teor. Fiz. | volume=32 |issue= |pages=1442-1452 }}(in Russian)</ref>。 1950年代後半には、{{仮リンク|ジョー・ビネン|en|Joe Vinen|de|William Frank Vinen}}が超流動ヘリウム4中に振動する[[ワイヤ]]を張ることで、量子渦を実験的に観測することに成功し<ref> {{cite journal | last=Vinen |first=W. F. | year=1958 | title=Detection of Single Quanta of Circulation in Rotating Helium II | journal=[[ネイチャー|Nature]] | volume=181 |issue= |pages=1524-1525 | doi=10.1038/1811524a0 }}</ref><ref> {{cite journal | last=Vinen |first=W. F. | year=1961 | title=The detection of single quanta of circulation in liquid helium II | journal=Proc. R. Soc. Lond. A | volume=260 |issue= |pages=218-236 | doi=10.1098/rspa.1961.0029 }}</ref>、後に、第二種超伝導体や[[冷却原子気体]]の[[ボース=アインシュタイン凝縮]]においても観測されている。 超流動における量子渦は、'''[[循環 (流体力学)|循環]]の[[量子化 (物理学)|量子化]]'''に対応し、超伝導における量子渦は、'''[[磁束]]の量子化'''に対応する。 == 超流動における渦 == [[超流動]]における量子渦は、超流動体内部の常流動部分が成す線として存在し、この線を軸として周囲の超流動体の回転する流れを伴う。渦の太さは流体の種類によって異なり、渦芯の太さはヘリウム4において10<sup>−10</sup> [[メートル|m]](1 [[オングストローム|Å]])、ヘリウム3において10<sup>−7</sup> mの[[オーダー (物理学)|オーダー]]である。超流動ヘリウム4における量子渦は比較的単純な構造をしており、渦の中心は[[秩序変数]]の[[特異点]]として表せる。 超流動の性質は、系の秩序変数である巨視的[[波動関数]]によって与えられる[[位相]]から決定される。[[速度]]場は位相 φ の[[勾配 (ベクトル解析)|勾配]]∇φに比例する。 :<math>\boldsymbol{v}_s= \frac{\hbar}{m} \nabla \phi</math> ここで、<math>\hbar</math>は[[換算プランク定数]]、m は超流動として流れるヘリウム原子といった粒子の質量、∇ は[[ナブラ]]である。超流動の速度場が決まれば、流体中で、ある閉曲線に沿った[[循環 (流体力学)|循環]]が定義できる。閉曲線に囲まれた領域が[[単連結]]であるかぎり、[[ストークスの定理]]と<math>\nabla \times \boldsymbol{v}_s \propto \nabla \times (\nabla\phi) = \vec{0}</math> から、循環は常にゼロである。このため、超流動流れはもっぱら渦を持たない[[ポテンシャル流]]とみなされる。一方で、単連結でない、すなわち曲面の中に超流動体の存在しない小領域がある場合は、閉曲線Cに沿った循環 :<math>\oint_{C} \boldsymbol{v}_s \cdot\,d \boldsymbol{l} = \frac{\hbar}{m}\oint_{C}\nabla\phi\cdot\,d\boldsymbol{l} = \frac{\hbar}{m}\Delta\phi</math> はゼロにならない。ここで、Δφ は閉曲線に沿って一周したときの波動関数の位相である。波動関数は閉曲線に沿って一周したとき同値で整合するから、とりうる位相は 2 π の整数倍(Δφ = 2π''n'')となる。ここで、''n'' は任意の整数である。 このように、超流動状態における循環は、 :<math>\oint_{C} \boldsymbol{v}_s \cdot\,d\boldsymbol{l} = \frac{2\pi\hbar}{m}n</math> と量子化される。このときの量子化の単位 <math>2\pi\hbar/m = h/m</math> は、'''循環量子'''(quantum of circulation)と呼ばれる。実際には、n ≧ 2 の渦の生成は n=1 の渦の生成と比べてエネルギー的に不安定であり、実際の超流動体では、渦線1つだけ囲む閉曲線に対して n=1 の循環のみが存在する。 == 超伝導における渦 == [[超伝導]]の性質の一つである[[マイスナー効果]]は、超伝導体内部から[[磁場]]が排除される現象である。印加磁場が[[臨界磁場]]を超えると、磁場の侵入を許すと同時に超伝導状態は破れる。特に、[[第二種超伝導体]]においては、超伝導が局所的に破れて、常伝導部分による量子渦の格子状に生じ、その常伝導部分に[[磁束]]が通ることでエネルギー的に安定となる。このときに磁束の量子化が顕著である。 閉曲面 S の上での、磁束は :<math>\Phi = \int_S\boldsymbol{B}\cdot\boldsymbol{\hat{n}}\,dS = \oint_{\partial S}\boldsymbol{A}\cdot d\boldsymbol{l}</math> と書ける。ここで、<math>\boldsymbol{B} = \nabla\times \boldsymbol{A}</math> は[[磁束密度]]、<math>\boldsymbol{A}</math> は[[電磁ポテンシャル|ベクトルポテンシャル]]、<math>\boldsymbol{\hat{n}}</math> は面積要素Sに対する[[法線ベクトル]]であり、2つ目の等式は[[ストークスの定理|ストークス定理]]の適用である。上式について <math>\boldsymbol{A}</math> を超伝導電流密度 <math>\boldsymbol{j}_s = -\frac{n_se_s^2}{m}\boldsymbol{A} - \frac{n_se_s\hbar}{m}\boldsymbol{\nabla}\phi</math> をもって書き換えると、 :<math>\Phi =-\frac{m_s}{n_s e_s^2}\oint_{\partial S}\boldsymbol{j}_s\cdot d\boldsymbol{l} +\frac{\hbar}{e_s}\oint_{\partial S}\boldsymbol{\nabla}\phi\cdot d\boldsymbol{l}</math> となる。ここで、n<sub>s</sub>、m<sub>s</sub>、e<sub>s</sub>は、それぞれ、超伝導のキャリア(通常は[[クーパー対]])の数密度、質量、電荷であり、∇φ は巨視的波動関数の位相の勾配である。もし、領域Sが十分大きく、第1項が無視できるとき、波動関数の可能な位相差は 2π の整数倍(Δφ=2π''n'')となるから、磁束は :<math>\Phi = \frac{\hbar}{e_s}\oint_{\partial S}\boldsymbol{\nabla}\phi\cdot d\boldsymbol{l} = \frac{\hbar}{e_s}\Delta\phi = \frac{2\pi\hbar}{e_s}n </math> と量子化される。 クーパー対の電荷 e<sub>s</sub> を電子の電荷 e に直すと、量子化の単位は <math>2\pi\hbar/e_s = h/e_s = h/2e</math> となる。これは、'''[[磁束#磁束の量子化|磁束量子]]'''(magnetic flux quantum)と呼ばれ、およそ 2.068×10<sup>-15</sup> [[ウェーバ|Wb]] という値が知られている<ref> {{cite web |url = http://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?flxquhs2e |title = magnetic flux quantum - 2010 CODATA recommended values |accessdate = 2013-02-04}}</ref>。 === アブリコソフ-ボルテックス === 超伝導体分野で現れる量子渦は特に'''アブリコソフ-ボルテックス'''(Abrikosov vortex)と呼ばれる。アブリコソフボルテックスは[[第二種超伝導体]]において、超伝導体を[[磁束#磁束の量子化|磁束量子]]が貫くときに、その周りに生じる超伝導電流の[[渦]]である。[[アレクセイ・アブリコソフ]]によって1957年に予測された。<ref>Abrikosov, A. A. (1957). [http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0022369757900835 The magnetic properties of superconducting alloys]. [[Journal of Physics and Chemistry of Solids]], 2(3), 199-208.</ref> この超伝導電流の渦はその中心が常伝導状態であり、電流はその周囲(超伝導側)を環状に流れている。このサイズは[[ギンツブルグ-ランダウ理論]]より導かれる[[コヒーレンス長]]ξであらわされる。この電流密度は[[磁場侵入長|ロンドンの侵入長]]λ程度の広がりを持ち、[[ロンドン方程式]]に従い、中心から離れるにつれ指数関数的に減少する。 この環状電流が作る磁場は、単体の[[磁束#磁束の量子化|磁束量子]]<math>\Phi_0</math>と等しい。量子論的見地からこれをFluxonと呼ぶこともある。 アブリコソフ格子の一つのボルテックスが、十分遠方に作る磁場は次のように記述される。 :<math> B(r) = \frac{\Phi_0}{2\pi\lambda^2}K_0\left(\frac{r}{\lambda}\right) \approx \sqrt{\frac{\lambda}{r}} \exp\left(-\frac{r}{\lambda}\right), </math> ここで、<math>K_0(z)</math>は0次の[[ベッセル関数]]である。 上記の式より<math>r \to 0</math>の極限で、磁場は<math>B(r)\propto\ln(\lambda/r)</math>となり対数関数的に発散する。実際には<math>r\lesssim\xi</math>に対して磁場は :<math> B(0)\approx \frac{\Phi_0}{2\pi\lambda^2}\ln\kappa, </math> と導かれる。ここで<math> \kappa = \lambda / \xi</math>は[[ギンツブルグ-ランダウ理論#ギンツブルグ-ランダウ方程式|ギンツブルグ-ランダウパラメーター]]として知られる量であり、第二種超伝導体においては<math>\kappa>1/\sqrt{2}</math>と定義される。 アブリコソフ-ボルテックスは第二種超伝導体の中の格子欠損にトラップされる。たとえ初めにアブリコソフ-ボルテックスが無い状態であっても、一度磁場を[[臨界磁場]](<math>H_{c1}</math>)以上に加えれば、磁場は超伝導体の中に'''アブリコソフ-ボルテックス'''を纏って侵入する。それぞれのボルテックスは[[磁束#磁束の量子化|磁束量子]]<math>\Phi_0</math>一つを運ぶことになる。アブリコソフ-ボルテックスは、格子欠損などにトラップされない場合三角格子状に並び、その(磁束量子の)平均密度はほぼ印加磁場と等しい。このとき形成される格子をアブリコソフ格子と呼ぶ。 == 脚注 == {{Reflist}} == 関連項目 == * [[渦]] * [[量子乱流]] * [[ベレジンスキー=コステリッツ=サウレス転移]] * [[ギンツブルグ-ランダウ理論]] * [[第二種超伝導体]] * [[アレクセイ・アブリコソフ]] * [[ピン止め効果]] {{DEFAULTSORT:りようしうす}} [[Category:量子力学]] [[Category:超伝導]] [[Category:相転移]] [[Category:うず]] [[Category:物理定数|しゆんかんりようし]]
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