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[[ファイル:Iron-pentacarbonyl-3D-balls.png|thumb|right|250px|[[鉄ペンタカルボニル]]<br />5個の CO 配位子が鉄原子と結合している。]] '''金属カルボニル'''(きんぞくカルボニル、{{lang-en-short|metal carbonyl}})は、[[一酸化炭素]]を[[配位子]]にもつ[[遷移金属]][[錯体]]である。これには[[ニッケルカルボニル]] Ni(CO)<sub>4</sub> のようなホモレプティックな(CO 配位子のみを含む)錯体があるが、一般的には金属カルボニルは Re(CO)<sub>3</sub>([[2,2'-ビピリジン|2,2'-bipyridine]])Cl のように複数の配位子をもつ。 一酸化炭素は[[ヒドロホルミル化]]のような多くの[[化合物]]の合成における重要な原料であり、金属カルボニル[[触媒]]はその利用において中心的な位置を占める。[[ヘモグロビン]]と結合して{{仮リンク|カルボキシヘモグロビン|en|Carboxyhemoglobin}}を与え、ヘモグロビンを酸素と結合できなくさせる性質のため、金属カルボニルは有毒である<ref name="Elsch">Elschenbroich, C. ”Organometallics” (2006) Wiley-VCH: Weinheim. ISBN 3-527-29390-6</ref>。 == 構造と性質 == [[ファイル:Carbon-monoxide-HOMO-phase-3D-balls.svg|thumb|right|150px|CO の [[HOMO/LUMO|HOMO]] である<br />σ[[結合性]] [[分子軌道|MO]]]] [[ファイル:Carbon-monoxide-LUMO-phase-3D-balls.png|thumb|right|150px|CO の [[HOMO/LUMO|LUMO]] である<br />π<sup>*</sup>[[反結合性軌道|反結合性MO]]]] 金属カルボニルは一般的に水に溶けにくい。 : [[ファイル:Synergic.svg]] 一酸化炭素はπ<sup>*</sup>[[逆供与結合]]で遷移金属と結合する。結合は3つの要素をもち、部分的な[[三重結合]]性を与える。[[σ結合]]は金属の s, p, d 軌道からなる[[混成軌道]]と、C 上の[[孤立電子対]]との重なりによって生じる。1対の[[π結合]]はC から突き出た1対のπ<sup>*</sup>反結合性軌道と、金属の満たされた[[d軌道]]との重なりによって生じる。後者のπ結合は金属がd電子をもっており、比較的低い[[酸化数|酸化状態]] (<+2) にあることを必要とする。逆供与結合は遊離一酸化炭素と比較して C-O 結合を弱める働きをする。M-CO 結合の多重結合性のため、この[[結合長]]は< 1.8 [[オングストローム|Å]]と、金属-[[アルキル]]結合と比較して0.2 Åほど短い。 === クラスターの結合モデル === カルボニル配位子は、金属カルボニルの化学における結合モデルの範囲に関与している<ref name=Elsch/><ref>P. J. Dyson and J. S. McIndoe, Transition Metal Carbonyl Cluster Chemistry, Gordon & Breach: Amsterdam (2000). ISBN 9056992899.</ref>。最も多いのは上記のような末端 CO である。しかし、しばしば CO は2つ (μ<sub>2</sub>) または3つ (μ<sub>3</sub>) の金属間を[[架橋]]する。C と O がそれぞれ金属に結合しているようなモデル (μ<sub>3</sub>-η<sup>2</sup>) はそれほど一般的ではない。 : [[ファイル:CObondingmodes2.png]] 複数の金属中心からのπ逆供与により増加したπ結合は、結果として C-O 結合をさらに弱めることになる。 == 特徴 == {| class="wikitable" style="float:right" ! カルボニル化合物 || ν<sub>CO</sub> (cm<sup>-1</sup>)<!--the solvent = ?--> |- |<chem>CO</chem> || 2143 |- |<chem>Ti(CO)6^{-2}</chem>||1748 |- |<chem>V(CO)6^{-1}</chem>||1859 |- |<chem>Cr(CO)6</chem>||2000 |- |<chem>Mn(CO)6^{+}</chem>||2100 |- |<chem>Fe(CO)6^{2+}</chem>||2204 |- |<chem>Fe(CO)5</chem> |2022, 2000 |} 金属カルボニルを特徴づけるために最も重要な技術は[[赤外分光法]]である。CO 伸縮振動 (ν<sub>CO</sub>) は CO ガス中で2143 cm<sup>-1</sup>である。金属カルボニルにおける ν<sub>CO</sub> バンドは、M-CO 間のπ結合の強さと逆に相関する。 これらの[[振動数]]に加えて、ν<sub>CO</sub> バンドの数は錯体の構造を推定する際に有用である。Cr(CO)<sub>6</sub> のような[[八面体形]]錯体は、1本のみの赤外吸収バンドを与える。より対称性が低い錯体のスペクトルはより複雑になる。例えば Fe<sub>2</sub>(CO)<sub>9</sub> は、2082, 2019, 1829 cm<sup>-1</sup>の位置で赤外吸収バンドを示す。 カルボニルクラスターにおいて、ν<sub>CO</sub> バンドは CO の配位幾何構造のよい手掛かりである。架橋 (μ<sub>2</sub>) CO の ν<sub>CO</sub> バンドは通常、末端 CO のものと比較して100-200 cm<sup>-1</sup>低波数側にシフトする。面冠 (μ<sub>3</sub>) CO の ν<sub>CO</sub> バンドはさらに低波数側に現れる。ロジウムカルボニルクラスターの代表的な値は以下の通りである<ref>{{cite journal | author = A.D. Allian, Y. Wang, M. Saeys, G.M. Kuramshina, M. Garland | title = The combination of deconvolution and density functional theory for the mid-infrared vibrational spectra of stable and unstable rhodium carbonyl clusters | journal = Vibrational Spectroscopy | volume = 41 | year = 2006 | pages = 101–111 | doi = 10.1016/j.vibspec.2006.01.013 }}</ref>。 {| class="wikitable" |- ! ロジウムカルボニル ! ν<sub>CO</sub>, µ<sub>1</sub> (cm<sup>-1</sup>) ! ν<sub>CO</sub>, µ<sub>2</sub> (cm<sup>-1</sup>) ! ν<sub>CO</sub>, µ<sub>3</sub> (cm<sup>-1</sup>) |- | <chem>Rh2(CO)8</chem> | 2060, 2084 | 1846, 1862 | |- | <chem>Rh4(CO)12</chem> | 2044, 2070, 2074 | 1886 | |- | <chem>Rh6(CO)16</chem> | 2045, 2075 | | 1819 |} == 合成 == ニッケルカルボニルと鉄ペンタカルボニルは金属を一酸化炭素で処理することによって得られるが、大部分の金属カルボニルは直接合成されない。他のホモレプティックな金属カルボニルは、通常[[オートクレーブ]]中の高圧一酸化炭素のもとで、金属塩または金属酸化物を“還元カルボニル化”することによって得られる。 : <chem>Re2O7\ + 17CO -> Re2(CO)10\ + 7CO2</chem> これらのホモレプティックカルボニルは合成されたのちに、長い[[置換反応]]と[[酸化還元反応]]を経る。 [[ルテニウム]]、[[オスミウム]]、[[ロジウム]]、[[イリジウム]]の混合配位子カルボニルは、しばしば[[ジメチルホルムアミド]] (DMF) や[[2-メトキシエタノール]]のような[[溶媒]]中で CO を除去することによって得られる。代表例には、熱 DMF 溶液中の[[塩化イリジウム(III)]]と[[トリフェニルホスフィン]]との反応による [[Vaska錯体|IrCl(CO)(PPh<sub>3</sub>)<sub>2</sub>]] の合成がある。 == 自然における発生 == [[ヒドロゲナーゼ]][[酵素]]は鉄と結合した CO を含む。この CO は[[水素]]との結合を促進させる、低い酸化状態を安定化させていると考えられている<ref>Bioorganometallics: Biomolecules, Labeling, Medicine; Jaouen, G., Ed. Wiley-VCH: Weinheim, 2006.3-527-30990-X.</ref>。痕跡量の金属カルボニルが、これらの形成環境に矛盾しない還元性環境の埋立地で計測された<ref>{{cite journal | author = Feldmann, J. | title = Determination of Ni(CO)<sub>4</sub>, Fe(CO)<sub>5</sub>, Mo(CO)<sub>6</sub>, and W(CO)<sub>6</sub> in sewage gas by using cryotrapping gas chromatography inductively coupled plasma mass spectrometry | journal = [[Journal of Environmental Monitoring]] | year = 1999 | volume = 1 | pages = 33–37 | doi = 10.1039/a807277i}}</ref>。 == 化合物 == 大部分の金属カルボニル錯体は複数の配位子をもっている。例として、歴史的に重要な [[Vaska錯体|IrCl(CO)(P(C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>)<sub>3</sub>)<sub>2</sub>]] や、[[アンチノック剤]]である [[トリカルボニルメチルシクロペンタジエニルマンガン|(CH<sub>3</sub>C<sub>5</sub>H<sub>4</sub>)Mn(CO)<sub>3</sub>]] がある。これらの混合配位子錯体の多くの親化合物は、[[化学式]]が [M(CO)<sub>n</sub>]<sup>z</sup> と表される二元カルボニル化合物である。これらの多くは市販されている。多くの金属カルボニルの化学式は[[18電子則]]から推測することができる。 === 電気的中性な二元金属カルボニル === * 4個の価電子をもつ[[第4族元素]]の金属カルボニルは珍しいが、Ti(CO)<sub>7</sub> の置換誘導体が知られている。 * 5個の価電子をもつ[[第5族元素]]の金属カルボニルは [[バナジウムカルボニル|V(CO)<sub>6</sub>]] がよく知られているが、V<sub>2</sub>(CO)<sub>12</sub> のような M-M 結合をもつ種の形成は、[[立体化学]]的な影響によって妨げられるため知られていない。 * 6個の価電子をもつ[[第6族元素]]の金属カルボニルには [[クロムヘキサカルボニル|Cr<sub></sub>(CO)<sub>6</sub>]]、[[ヘキサカルボニルモリブデン|Mo<sub></sub>(CO)<sub>6</sub>]]、[[タングステンヘキサカルボニル|W<sub></sub>(CO)<sub>6</sub>]] (6 + 2x6 = 18 電子) などがある。ヘキサカルボニル[[シーボーギウム]](Sg<sub></sub>(CO)<sub>6</sub>)は[[2014年]]に初めて合成に成功し、他の第6族元素のカルボニル錯体と似た性質であることが判明した<ref>[http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140919_1/ 106番元素シーボーギウム(Sg)のカルボニル錯体の合成に成功]、[[理化学研究所]]、2014年9月19日、2018年12月23日閲覧</ref>。 * 7個の価電子をもつ[[第7族元素]]の金属カルボニルには[[二量体]]である [[デカカルボニル二マンガン|Mn<sub>2</sub>(CO)<sub>10</sub>]]、Tc<sub>2</sub>(CO)<sub>10</sub>、Re<sub>2</sub>(CO)<sub>10</sub> (7 + 1 + 2x5 = 18 電子) などがある。 * 8個の価電子をもつ[[第8族元素]]の金属カルボニルには [[鉄ペンタカルボニル|Fe(CO)<sub>5</sub>]]、Ru(CO)<sub>5</sub>、Os<sub></sub>(CO)<sub>5</sub> (8 + 2x5 = 18 電子) などがある。後ろ2つは不安定で、[[ドデカカルボニル三ルテニウム|Ru<sub>3</sub>(CO)<sub>12</sub>]]、[[ドデカカルボニル三オスミウム|Os<sub>3</sub>(CO)<sub>12</sub>]] を与えるために脱カルボニル化する傾向がある。鉄の他の主要な金属カルボニルには [[ドデカカルボニル三鉄|Fe<sub>3</sub>(CO)<sub>12</sub>]] 、[[ノナカルボニル二鉄|Fe<sub>2</sub>(CO)<sub>9</sub>]] がある。 * 9個の価電子をもつ[[第9族元素]]の金属カルボニルは二量体 M<sub>2</sub>(CO)<sub>8</sub> をつくる。実際、コバルトオクタカルボニルが唯一安定な単量体である。しかし[[四量体]]はよく知られている:Co<sub>4</sub>(CO)<sub>12</sub>、[[ドデカカルボニル四ロジウム|Rh<sub>4</sub>(CO)<sub>12</sub>]]、[[ヘキサデカカルボニル六ロジウム|Rh<sub>6</sub>(CO)<sub>16</sub>]]、[[ドデカカルボニル四イリジウム|Ir<sub>4</sub>(CO)<sub>12</sub>]] (9 + 3 + 2x3 = 18 電子) 大部分の18電子の金属カルボニルと違い、[[オクタカルボニル二コバルト|Co<sub>2</sub>(CO)<sub>8</sub>]] は酸素に敏感である。 * 10個の価電子をもつ[[第10族元素]]の金属カルボニルには [[ニッケルカルボニル|Ni(CO)<sub>4</sub>]] (10 + 2x4 = 18 電子) がある。奇妙なことに Pd(CO)<sub>4</sub> と Pt(CO)<sub>4</sub> は安定ではない。 === アニオン性二元金属カルボニル === * [[第4族元素]]の金属カルボニルのジアニオンは中性の第6族カルボニルに類似している:[Ti(CO)<sub>6</sub>]<sup>2-</sup><ref>{{cite journal | author = Ellis, J. E. | title = Metal Carbonyl Anions: from [Fe(CO)<sub>4</sub>]<sup>2-</sup> to [Hf(CO)<sub>6</sub>]<sup>2-</sup> and Beyond | journal = [[Organometallics]] | year = 2003 | volume = 22 | pages = 3322–3338 | doi =10.1021/om030105l}}</ref> * [[第5族元素]]の金属カルボニルのモノアニオンも中性の第6族カルボニルに類似している:[V(CO)<sub>6</sub>]<sup>-</sup> * [[第7族元素]]の金属カルボニルのモノアニオンは中性の第8族カルボニルに類似している:[M(CO)<sub>5</sub>]<sup>-</sup> (M = Mn, Tc, Re) * [[第8族元素]]の金属カルボニルのジアニオンは中性の第10族カルボニルに類似している:[[テトラカルボニル鉄酸二ナトリウム|[M(CO)<sub>4</sub>]<sup>2-</sup> (M = Fe, Ru, Os)]] 縮合したものも知られている。 * [[第9族元素]]の金属カルボニルのモノアニオンは中性の第10族カルボニルに類似している:[Co(CO)<sub>4</sub>]<sup>-</sup> は最も研究されている化合物である。 Ni、Pd、Pt の大きなアニオン性クラスターもよく知られている。 === カチオン性二元金属カルボニル === * [[第7族元素]]の金属カルボニルのモノカチオンは中性の第6族カルボニルに類似している:[M(CO)<sub>6</sub>]<sup>+</sup> (M = Mn, Tc, Re) * [[第8族元素]]の金属カルボニルのジカチオンも中性の第6族カルボニルに類似している:[M(CO)<sub>6</sub>]<sup>2+</sup> (M = Fe, Ru, Os)<ref>{{cite journal | author = Finze, M.; Bernhardt, E.; Willner, H.; Lehmann, C. W.; Aubke, F. | title = Homoleptic, σ-Bonded Octahedral Superelectrophilic Metal Carbonyl Cations of Iron(II), Ruthenium(II), and Osmium(II). Part 2: Syntheses and Characterizations of [M(CO)<sub>6</sub>][BF<sub>4</sub>]<sub>2</sub> (M = Fe, Ru, Os) | journal = [[Inorg. Chem.]] | year = 2005 | volume = 44 | pages = 4206–4214 | doi = 10.1021/ic0482483 | pmid = 15934749 | issue = 12}}</ref> === 金属カルボニル水素化物 === {| class="wikitable" align=right |- ! 金属カルボニル水素化物 ! pK<sub>a</sub> |- | [[テトラカルボニルヒドリドコバルト|HCo(CO)<sub>4</sub>]] | "strong" |- | HCo(CO)<sub>3</sub>(P(OPh)<sub>3</sub>) | 5.0 |- | HCo(CO)<sub>3</sub>(PPh<sub>3</sub>) | 7.0 |- | [[ペンタカルボニルヒドリドマンガン|HMn(CO)<sub>5</sub>]] | 7.1 |- | [[テトラカルボニルジヒドリド鉄|H<sub>2</sub>Fe(CO)<sub>4</sub>]] | 4.4, 14 |- | [HCo([[ジメチルグリオキシム|dmgH]])<sub>2</sub>PBu<sub>3</sub> | 10.5 |} 金属カルボニルは、負の酸化状態の錯体を形成するという点で特徴的である。これには上述のアニオンも含まれる。これらのアニオンは、対応する金属カルボニル水素化物を与えるために[[プロトン化]]されることができる。中性の金属カルボニル水素化物はしばしば揮発性で、強酸性である<ref>{{cite journal | last = Pearson | first = Ralph G. | year = 1995 | title = The Transition-Metal-Hydrogen Bond | journal = [[Chem. Rev.]] | volume = 95 | pages = 41 | doi = 10.1021/cr00065a002}}</ref>。 == 関連する化合物 == 多くの配位子が金属カルボニルに類似したホモレプティック錯体や、混合配位子錯体を形成することが知られている。 === ニトロシル錯体 === [[ニトロシル錯体]]ではホモレプティック錯体は知られていないが、主な配位子として [[一酸化窒素|NO]] を含むものは非常に多い。NO は CO と比較してより強いアクセプターであり、[[イソシアニド]]はよいドナーである。よく知られたニトロシルカルボニルには CoNO(CO)<sub>3</sub> や Fe(NO)<sub>2</sub>(CO)<sub>2</sub> がある<ref>Hayton, T. W.; Legzdins, P. and Sharp, W. B., "Coordination and Organometallic Chemistry of Metal-NO Complexes", Chemical Reviews, 2002, volume 102, 935-991.{{DOI|10.1021/cr000074t}}</ref>。 === チオカルボニル錯体 === CS を含んだ錯体は知られているが、まれである<ref>Petz, W., "40 years of transition-metal thiocarbonyl chemistry and the related CSe and CTe compounds", Coordination Chemistry Reviews, 2008, 252, 1689-1733.{{DOI|10.1016/j.ccr.2007.12.011}}.</ref><ref>{{cite journal | author = Hill, A. F.; Wilton-Ely, J. D. E. T. | title = Chlorothiocarbonyl-bis(triphenylphosphine) iridium(I) [IrCl(CS)(PPh<sub>3</sub>)<sub>2</sub>] | journal = [[Inorg. Synth.]] | year = 2002 | volume = 33 | pages = 244–245| doi = 10.1002/0471224502.ch4}}</ref>。このような錯体の希少性は、1つには[[一硫化炭素]]が不安定であるという事実に起因している。そのためチオカルボニル錯体の合成には、[[テトラカルボニル鉄酸二ナトリウム]]と[[チオホスゲン]]との反応のように、より複雑な合成ルートを必要とする。 : <chem>Na2Fe(CO)4\ + CSCl2 -> Fe(CO)4CS\ + 2NaCl</chem> CSe と CTe の錯体は非常にまれである。 === ホスフィン錯体 === すべての金属カルボニルは[[有機リン化合物]]配位子によって置換される。例えば、Fe(CO)<sub>5-x</sub>(PR<sub>3</sub>)<sub>x</sub> は x = 1, 2, 3 で様々なホスフィン配位子を含むものがよく知られている。[[三フッ化リン|PF<sub>3</sub>]] も同様に振る舞うが、二元金属カルボニルのホモレプティック[[アナログ (化学)|アナログ]]を容易に形成するため、より注目に値する。例えば、揮発性の安定な錯体 Fe(PF<sub>3</sub>)<sub>5</sub> と Co<sub>2</sub>(PF<sub>3</sub>)<sub>8</sub> は、それぞれ Fe(CO)<sub>5</sub> と Co<sub>2</sub>(CO)<sub>8</sub>(非架橋)の CO のないアナログに相当する。 === イソシアニド錯体 === [[イソシアニド]]も金属カルボニルに関連した広範囲にわたる錯体をつくる。代表的なイソシアニド配位子には、[[イソシアン化メチル|MeNC]] と [[tert-ブチルイソシアニド|Me<sub>3</sub>CNC]] がある。特殊な例は CF<sub>3</sub>NC で、不安定な分子が、金属カルボニルに対応して振る舞う安定な錯体を形成する。 == 歴史 == [[ルードウィッヒ・モンド]]は1880年代にニッケルカルボニルを発見した。それは後に、最初の金属カルボニル水素化物 H<sub>2</sub>Fe(CO)<sub>4</sub>、最初の金属カルボニルハライド Fe(CO)<sub>4</sub>I<sub>2</sub> を発見した[[ヴァルター・ヒーバー]]による多くのアナログの合成に至った。ヒーバーは最初の金属クラスターである Fe<sub>3</sub>(CO)<sub>12</sub> における中心金属数という概念も確立した。金属触媒を用いるカルボニル化による経済的利益は、[[レッペ反応]]や[[ヒドロホルミル化]]のように地域の成長につながった。 == 出典 == {{Reflist}} == 関連項目 == {{commonscat|Metal carbonyls}} * [[有機金属化学]] * [[金属カルボニルクラスター]] {{DEFAULTSORT:きんそくかるほにる}} [[Category:カルボニル錯体|*]] [[Category:有機金属化学]] [[Category:化学の分野]]
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