長岡係数のソースを表示

'''長岡係数'''（ながおかけいすう、{{lang-en|Nagaoka coefficient}}）とは、無限長[[ソレノイド]]の[[インダクタンス]]を求める公式により、有限長ソレノイドのインダクタンスを求められるようにした係数であり、[[長岡半太郎]]によって提唱された。

無限長ソレノイドでは、[[アンペールの法則]]から、[[巻線]]の外側では[[磁場]]は恒等的に 0 、内側ではソレノイドの長さ方向に平行な成分のみで一定値を取るが、有限長ソレノイドでは、両端付近の巻線の影響や、磁性体の両端付近に現れる[[磁荷]]によって、巻線の外側でも磁場は 0 ではなくなり、内側でもソレノイドの長さ方向に平行な成分以外の成分が現れる。

コイルの半径に比較してソレノイドの長さが十分長い場合は、無限長ソレノイドの場合と磁場の分布は同じと仮定して計算しても、インダクタンスの計算値は良い近似値を与えるが、そうとは言えない場合の補正値が長岡係数である。

== 長岡係数を用いた有限長ソレノイドのインダクタンスの計算式 ==

:<math>L=K_N \frac{\mu \pi r^2 N^2 }{\ell}</math>

ここで、<math>L\,\!</math> [H] はインダクタンス、<math>K_N\,\!</math> は長岡係数 、<math>\mu \,\!</math> は磁性体の[[透磁率]]、<math>r\,\!</math> [m] はソレノイドの半径、<math>l\,\!</math> [m] はソレノイドの軸方向の長さ、<math>N\,\!</math> はソレノイドの全巻線数である。<math>K_N\,\!</math> = 1.0 の場合が無限長ソレノイドに対応する。

== 長岡係数を求める公式 ==
長岡係数 <math>K_N\,\!</math> は，次の式で求められる。

:<math>K_N = \frac{4}{3 \pi \sqrt{1- k^2}} \left(\frac{1- k^2}{k^2} K(k)- \frac{1-2 k^2}{k^2} E(k)-k \right)\,\!</math>

ただし、<math>k\,\!</math> は、

:<math>\frac{2r}{l} = \frac{k}{\sqrt{1- k^2}}\,\!</math>

で表される。

さらに、<math>K(k)\,\!</math> および <math>E(k)\,\!</math> はそれぞれ、<math>k\,\!</math> についての[[楕円積分#第一種完全楕円積分|第一種完全楕円積分]]および[[楕円積分#第二種完全楕円積分|第二種完全楕円積分]]である。

== 長岡係数の例 ==
{| class="wikitable"
|+ 代表的な長岡係数の値
! 2r/l || 長岡係数 || || 2r/l || 長岡係数
|-
| 0.0 
| colspan="4" | 1.000 (無限長ソレノイド)
|-
| 0.1 || 0.959 || || 1.0 || 0.688
|-
| 0.2 || 0.920 || || 1.2 || 0.648
|-
| 0.3 || 0.884 || || 1.5 || 0.595
|-
| 0.4 || 0.850 || || 2.0 || 0.526
|-
| 0.5 || 0.818 || || 3.0 || 0.429
|-
| 0.6 || 0.789 || || 4.0 || 0.356
|-
| 0.7 || 0.761 || || 6.0 || 0.285
|-
| 0.8 || 0.735 || || 8.0 || 0.237
|-
| 0.9 || 0.711 || || 10.0 || 0.203
|}
<ref name="日本ユニバーサル電気">{{Cite web|和書
| url = http://jpuni.co.jp/coil/kobore/contents/coil_kantan_sekei.htm
| title = ソレノイドの簡易設計 (長岡係数表あり)
| website = 日本ユニバーサル電気株式会社
| accessdate = 2020-09-30
}}</ref>


== 関連項目 ==
* [[コイル]]
* [[インダクタンス]]
* [[楕円積分]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{Cite journal|
|last=Nagaoka
|first=Hantaro
|authorlink=長岡半太郎
|date=1909-08-15
|title=The Inductance Coefficients of Solenoids
|journal=The Journal of the College of Science （東京帝国大学紀要 理科）
|volume=Vol. XXVII
|pages=Article 6, pp. 1-33
|publisher=College of Science, Imperial University
|location=Tokyo, Japan
|issn=<!-- ISSN -->
|doi=<!-- デジタルオブジェクト識別子 -->
|id=<!-- ISSN 1111-2220、{{PMID|15128012}} 等 -->
|url=http://g3ynh.info/zdocs/refs/Nagaoka1909.pdf
|format=PDF
|accessdate=2016-08-12
|quote=
}} …… 長岡係数を発表した論文。{{En icon}}

== 外部リンク ==
<!-- リンク切れ 
* [http://www.g3ynh.info/zdocs/refs/Nagaoka1909/index.html#31 長岡係数表] …… 上記論文に記載されている長岡係数表のオリジナル
-->
{{DEFAULTSORT:なかおかけいすう}}
[[Category:物理量]]
[[Category:電磁気学]]
[[Category:電気理論]]
[[Category:電気回路]]
[[Category:無線工学]]
[[Category:無次元数]]
[[Category:物理学のエポニム]]