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[[数学]]の、特に[[関数解析学]]の分野における'''閉作用素'''(へいさようそ、{{Lang-en|closed operator}})は、[[バナッハ空間]]上の[[線形作用素]]のある重要な類である。[[有界作用素]]よりも一般的であるため、必ずしも[[連続線形作用素|連続]]ではないが、[[スペクトル (関数解析学)|スペクトル]]や(いくつかの仮定の下で)[[汎函数計算|作用素の関数]]を定義出来るという十分に良い性質を備えている。[[導関数]]や[[微分作用素]]の広い類など、多くの重要な線形作用素で有界でないようなものが、閉作用素であるということが分かっている。 <math>X,Y</math> を二つの[[バナッハ空間]]とする。[[線型写像|線形作用素]] :<math>A\colon\mathcal{D}(A)\subset X\to Y</math> が'''閉'''であるとは、<math>x\in X</math> に収束するような <math>\mathcal{D}(A)</math> 内の任意の[[列 (数学)|列]] <math>\{x_n\}_{n\in \mathbb{N}}</math> で <math>Ax_n\to y\in Y</math> ( <math>n\to\infty</math> )であるようなものに対して、<math>x\in\mathcal{D}(A)</math> および <math>Ax = y</math> が成立することを言う。あるいは、<math>A</math> が閉であるとは、その[[グラフ (関数)|グラフ]]が[[バナッハ空間の直和|直和]] <math>X\oplus Y</math> において[[閉集合|閉]]であることを言う。 必ずしも閉でない、与えられたある線形作用素 <math>A</math> に対し、もしその <math>X\oplus Y</math> 内のグラフの閉包がある作用素のグラフとなるのであれば、そのような作用素は <math>A</math> の'''閉包'''と呼ばれ、<math>A</math> は'''可閉'''(closable)と呼ばれる。<math>A</math> の閉包は <math>\overline{A}</math> と表記される。作用素 <math>A</math> が閉包 <math>\overline{A}</math> の <math>\mathcal{D}(A)</math> への制限であることは、すぐに分かる。 可閉作用素 <math>A</math> の'''核'''(core)とは、<math>\mathcal{D}(A)</math> の[[部分集合]] <math>\mathcal{C}</math> で、<math>A</math> の <math>\mathcal{C}</math> への制限の閉包が <math>\overline{A}</math> であるようなもののことを言う。 ==基本的な性質== 次の性質が簡単に確かめられる: *全空間 <math>X</math> 上で定義される閉線形作用素は、有界である。これは[[閉グラフ定理]]と呼ばれる; *もし <math>A</math> が閉であるなら、<math>A-\lambda I</math> も閉である。ここで <math>\lambda</math> はスカラーであり、<math>I</math> は[[恒等写像|恒等作用素]]を表す; *もし <math>A</math> が閉であるなら、その[[核 (線型代数学)|核]](あるいは[[零空間]])は <math>X</math> の閉部分空間である; *もし <math>A</math> が閉かつ[[単射]]であるなら、その[[逆写像|逆]] <math>A^{-1}</math> も閉である; *作用素 <math>A</math> に閉包が存在するための必要十分条件は、<math>\mathcal{D}(A)</math> 内の任意の列のペア <math>\{x_n\}</math> および <math>\{y_n\}</math> で、両方とも <math>x</math> に収束し、<math>\{Ax_n\}</math> および <math>\{Ay_n\}</math> の両方とも収束するようなものに対して、<math>\lim_n Ax_n = \lim_n Ay_n</math> が成立することである。 ==例== 次のような微分作用素 :<math> A f = f'\,</math> を考える。ただしバナッハ空間 ''X''=''Y'' を、[[区間 (数学)|区間]] [''a'', ''b''] 上のすべての[[連続関数]]からなる空間 ''C''[''a'', ''b''] であるとする。その定義域 <math>\mathcal{D}(A)</math> が <math>\mathcal{D}(A)=C^{1}[a, b]</math> であるとした時、''A'' は有界ではないが閉作用素となる。(<math>\mathcal{D}(A)</math> を、不連続な導関数も含むようなすべての微分可能関数からなる集合とすることも出来ることに注意されたい。このとき作用素 ''A'' は閉ではない)。 もし代わりに <math>\mathcal{D}(A)</math> をすべての[[滑らかな関数|無限回微分可能]]関数からなる集合であるとしたら、''A'' はもはや閉ではなく、しかし可閉である。その場合、閉包は <math>C^{1}[a, b]</math> 上定義される ''A'' の拡張となる。 ==関連項目== * [[稠密に定義された作用素]] * [[非有界作用素]] ==参考文献== * {{citation | last = Folland | first = Gerald B.| title=Real Analysis: Modern Techniques and Their Applications | edition=1st | publisher=[[John Wiley & Sons]] | year = 1984 | isbn=978-0-471-80958-6 }} * {{citation| first=Walter|last=Rudin|authorlink=Walter Rudin|title=Functional analysis|publisher=Tata MacGraw-Hill|year=1973}}. * {{planetmath reference|id=6472|title=Proof of closed graph theorem }} {{DEFAULTSORT:へいさようそ}} [[Category:関数解析学]] [[Category:数学に関する記事]]
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