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'''集塵装置'''(しゅうじんそうち、{{Lang-en-short|Dust collector}})は、[[大気汚染]]の防止や[[有価物]]の回収<ref>[http://www.ngk.co.jp/product/industrial/dustcollector/valuable_resource.html 有価物回収セラレックシステム]([[日本ガイシ]])</ref>{{リンク切れ|date=2021年10月}}を目的として、排気中の[[煤]]や[[粉塵]]などの粒子を[[気体]]から[[分離工学|分離]]する装置である。クリーンルーム中での異物除去にも使用され、'''集塵機'''と称することもある。 == 原理 == 粒子の気体からの分離は、粒子が気体と異なる[[運動 (物理学)|運動]]をすることにより生じる。集塵技術は、この運動差を大きくすることを基本とする<ref>『はじめての集じん技術』p18</ref>。 # 気流と直交方向に生じる、[[重力]]や[[遠心力]]、[[静電気]]による[[クーロンの法則|クーロン力]]などの外力。 # 気流の通り道に障害物が存在すると、これを避ける気流の動きに粒子は追随できず、障害物に衝突したりランダムに拡散する。 # 粒子の直径と同程度の孔径をもつ隔壁を設けると、孔径より大きな粒子は物理的に遮断される。 == 集塵装置の分類 == 重力、遠心力、静電気力など外力を働かせる「流通式」、流路に[[ルーバー]]や[[エアフィルタ]]などの障害物を設ける「障害物式」に大別できる<ref name="ujiden">[http://www.ujiden-net.co.jp/technical/technical_b10.html 技術情報>>集塵]([[宇治電化学工業]])</ref>が、障害物式のうちバグフィルタやセラミックフィルタなどを用いるものを「隔壁式」とする考え方もある<ref>『はじめての集じん技術』p49</ref>。これらのうち、産業用としては流通式の一種の電気集塵機と、隔壁式のバグフィルタが多く使われている。 === 流通式 === * '''重力式集塵装置''' [[ファイル:Settling_chamber.jpg|right|180px]] 水平に設けられた重力式集塵装置では、粒子は気流とともに水平方向へ動くとともに、重力により垂直方向の動きも持つ。直径数十[[マイクロメートル|μm]]程度の比較的大きい粒子、低い流速での処理に向く。1000℃程度までの高温の気体にも対応し、[[圧力損失]]は小さい。単独で用いられることはまれで、より精密な集塵の前処理や、分級に用いられることが多い<ref name="kanaoka38">『はじめての集じん技術』p38-40</ref>。 * '''遠心力式集塵装置''' [[ファイル:SCyclone.jpg|right|120px]] サイクロン式[[粉体分離器]]が代表的である。上部が円筒形、下部が円錐形の構造で、気流は内壁に沿ってらせん状に降下し、下端に達すると反転して中心部を上昇し、上端より排出される。粒子は遠心力により内壁に接触して、重力により下端の捕集箱に集まる。重力式より細かい数μm程度の粒子も除去でき、可動部がなく、設置や維持管理が安価であること、高圧・高温での使用が可能である特徴がある<ref>『はじめての集じん技術』p53</ref>。入口の流速が遅いと粒子が入口に堆積する。逆に早すぎると、圧力損失が高まり、捕集箱から粒子が再飛散する。サイクロンを同じ形状のまま大型化すると集塵効率が低下するため、大量の気流の処理には、装置の単純な大型化ではなく小型のサイクロンを複数並列したマルチサイクロンで対処される<ref>『はじめての集じん技術』p61</ref>。 * '''電気集塵機''' [[ファイル:Electrostatic_precipitator.svg|right|180px]] [[ファイル:Inside of the electrostatic precipitator.jpg|thumb|180px|[[ハニカム構造]]の電気集塵機の内部]] 電荷を帯びた粒子は、[[電位]]差のある[[電場]]では[[クーロンの法則]]に基づき、自らと異なる極性を持つ電極に引き寄せられる。電気集塵機はこの原理を応用したもので、もっとも単純な一段式平板型を例にとると、[[接地]]され平行に置かれた2枚の板状の集塵極の間に針状の放電極が設置される。放電極は、大容量の気流を処理する場合は通常は負極性とされる。粒子は放電極からの[[コロナ放電]]により負に[[帯電]]し、放電極から遠ざかり集塵極に引き寄せられる。こうして集塵極に付着することにより気流から粒子が除かれるが、集塵極に水膜を形成して再飛散を防止する湿式電気集塵機も採用されている。気流の妨げとなるものは放電極のみであるので圧力損失は小さく、高[[電圧]]を用いるものの[[電流]]は小さいため消費電力は大きくない<ref>『はじめての集じん技術』p62-63</ref>。しかし、爆発性気体や、粒子が可燃性を持つ場合には電気集塵機は適さない<ref name="kanaoka38"/>。[[火力発電]]の分野でも広く使われ、[[炭素]]分の多い[[重油]]灰と、[[二酸化ケイ素]]や[[酸化アルミニウム]]、[[酸化鉄]]を主成分とした[[石炭]]灰([[フライアッシュ]])とでは[[電気抵抗]]が異なるため、それぞれに見合った[[電圧]]で運転される。[[硫黄]]分の高い燃料を使用する場合には、硫黄を核とした塊状のアシッドスマットの発生<ref>『はじめての集じん技術』p73</ref>や[[硫酸ミスト]]による機器・煙道の腐蝕を抑制するため[[アンモニア]]が注入される。これにより硫酸ミストは[[硫酸アンモニウム]]となり、電気集塵機で除去可能になる<ref>[https://www.mhi-ms.co.jp/products/atmosphere/heavycrudeoil/contents/dry_type.html 乾式対応システム(アンモニア注入システム・乾式電気集じん装置)]([[三菱重工メカトロシステムズ]])</ref>。 === 障害物式 === 気流の流路に障害物を設ける慣性力式集塵装置、エアフィルタや粒子充填層を通す深層ろ過式集塵装置、液体により粒子を捕集する湿式集塵装置に大別できる。 * '''慣性力集塵装置''' [[ファイル:Baffle chambers2.svg|right|180px]] 粒子を障害物に衝突させる衝突式慣性力集塵装置と、整流板などにより気流を急激に方向転換させることにより粒子を分離する反転式慣性力集塵装置に区分できる。いずれも障害物の形状が複雑であるほど集塵率は向上するが、圧力損失が大きくなり、付着した粒子の除去が困難になる欠点が生じる。重力式や遠心力式同様、他の高性能な集塵装置の前処理として導入されることが多い<ref>『はじめての集じん技術』p87-88</ref>。 * '''深層ろ過式集塵装置''' 比較的低濃度の粉塵処理に用いられるが、[[HEPA]]フィルタや[[ULPA]]フィルタは[[半導体]]製造工程の[[クリーンルーム]]や[[手術室]]など高度な清浄度が要求される環境にも用いられる。材質は[[ガラス繊維]]、[[セルロース]]、[[ナイロン]]などが一般的である。バグフィルタなどと異なり「払い落し」は行われず、圧力損失が初期値の2~3倍になると寿命として交換される<ref>『はじめての集じん技術』p101-102</ref>。粒子充填層フィルタは砂やセラミック粒をろ材として用いたもので、捕集性能は限定的であるものの摩耗性の粒子や高温の気体にも対応可能である<ref>『はじめての集じん技術』p105</ref>。 * '''湿式集塵装置''' {{Main|湿式洗浄塔}} === 隔壁式 === [[ファイル:Bag_filter.jpg|thumb|right|180px|バグフィルター]] 多数設置した、[[布]]または[[不織布]]製の袋状のフィルター(バグフィルタ)に粒子を含む気流を通して[[ろ過]]する方法が代表的である<ref>『はじめての集じん技術』p111</ref>。フィルターの材質は[[木綿]]、[[ナイロン]]、[[ポリテトラフルオロエチレン|テフロン]]、[[ガラス繊維]]などがあるが、高温の排気に対しては[[セラミックス|セラミック]]フィルターが用いられる。0.01μm程度の微粒子も除去でき、集塵率は99%と高い。フィルター自体による捕集より、堆積した粒子による捕集効果が大きいが、圧力損失が大きくなるため、一定の時間間隔もしくは圧力損失が設定値に達したら、堆積した粒子を払い落す必要がある。払い落しには、機械で振動を与える方法や、[[圧縮空気]]を[[パルス]]状に吹き付ける方法などがある。[[セメント]]や[[カーボンブラック]]の製造、[[製鉄]]、[[非鉄金属]]の[[製錬]]現場では[[耐熱性|耐熱]]・[[耐酸性]]に優れるが[[可撓性]]の弱いガラス繊維が多く使われているため、ろ過方向と逆向きに大気を流入させる方法が採られる<ref>『はじめての集じん技術』p122-125</ref>。[[粉塵爆発]]防止のため、重力式やサイクロン式集塵装置で前処理を行って粉塵濃度を下げたり、[[炭酸カルシウム]]など不活性粉末の混入、[[電気伝導|導電性]]繊維を織り込んだ[[帯電]]防止ろ材の使用などの方法が採られるが、[[マグネシウム]]の[[金属粉|粉末]]や[[アルミニウム粉末]]はバグフィルタでの安全な処理が困難であるため、湿式集塵装置で処理される<ref>『はじめての集じん技術』p145-149</ref>。 == 集塵率 == 粒子径の分布を加味しない総合集塵率''E''は、集塵装置入口の粒子流量''S<sub>i</sub>''、出口の粒子流量''S<sub>o</sub>''から、下記の式で表される。''S<sub>c</sub>''は、集塵装置で除去した粒子の量である<ref>『はじめての集じん技術』p24-25</ref>。 : <math>\mathit{E} = 1-\dfrac{S_o}{S_i} = \dfrac{S_c}{S_i}</math> 粒子流量''S''とガス流量''Q''、ガス中の粒子濃度''C''には''S''=''QC''の関係にあることから、集塵装置途中の気体の漏れや外気の流入がないことを前提として、入口の粒子濃度''C<sub>i</sub>''、出口の粒子濃度''C<sub>o</sub>''を基に : <math>\mathit{E} = 1-\dfrac{C_o}{C_i}</math> でも求められる。 粒子径''d<sub>p</sub>''に対する部分集塵率''ΔE(d<sub>p</sub>)''は、下記の式で表される。 : <math>\Delta \mathit{E}(d_p) = 1-\dfrac{C_o(d_p)}{C_i(d_p)}</math> == 関連項目 == * [[排気ガス処理]] * [[煙道ガス]] * [[エアフィルタ]] * [[粉体分離器]] * [[湿式洗浄塔]] * [[空気清浄機]] * [[掃除機]] * [[粉体工学]] == 参考文献 == * {{Cite book|和書 |author = 金岡千嘉男・牧野尚夫 |date = 2013-01-31 |title = はじめての集じん技術 基礎から応用まで |publisher = [[日刊工業新聞社]] |isbn = 978-4-526-07011-2 }} == 脚注 == {{Commonscat|Dust collectors}} {{Reflist}} {{大気汚染}} {{Tech-stub}} {{デフォルトソート:しゆうしんそうち}} [[Category:大気汚染]] [[Category:環境技術]] [[Category:分離工学]]
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