離散フーリエ変換のソースを表示

{{混同|密度汎関数理論|x1=物性理論におけるDFT}}{{脚注の不足|date=2022年12月}}
{{読み仮名|'''離散フーリエ変換'''|りさんフーリエへんかん|{{lang-en-short|discrete Fourier transform}}, '''DFT'''}}は有限長の[[離散時間信号]]を[[フーリエ変換]]様に[[周波数領域]]へ変換する操作である<ref name=":0">{{Ilq|離散フーリエ変換（DFT: Discrete Fourier Transform）は，有限長の離散信号（数列）に対して定義されるフーリエ解析手法}}{{Harv|菊池|2009|p=2}}</ref>。

== 概要 ==
離散フーリエ変換（以下、DFT）は有限長の[[離散時間信号]]を[[フーリエ変換]]様に[[周波数領域]]へ変換する操作である<ref name=":0" />（⇒ [[#定義]]）。[[応用数学]]から[[信号処理]]まで、幅広く応用される（⇒ [[#応用]]）。

DFTは（[[計算機]]上で）[[高速フーリエ変換]]を使って高速に計算できる。

== 定義 ==
<math>k \in \left \{ 0, 1, \cdots, N-1 \right \}</math> を離散変数とし、有限長 <math>N \in \N^1</math> をもつ[[複素関数|複素]][[離散時間信号]] <math>x[n]</math> の'''離散フーリエ変換''' <math>X[k]</math> は次式で定義される<ref name=":0" /><ref name=":1">{{Ilq|N点の数列x[n]に対し，DFT は， <math>X[k] = \sum_{n=0}^{N-1} x[n] {W_N}^{kn}, \quad k = 0, 1, \cdots, N-1</math> と定義される ... ただし，<math>W_N = e^{-j \frac{2\pi}{N}} </math> である．}}{{Harv|菊池|2009|p=2}}</ref>：

:<math>X[k] = \sum_{n=0}^{N-1} x[n] \, e^{-i \omega_k n}, \quad \omega_k = \frac{2 \pi k}{N}
</math>

<math>\omega_k</math> は[[正規化角周波数]]と呼ばれ<ref>{{Ilq|1=正規化角周波数 <math>\omega_k = 2 \pi k / N</math>}}p.26 より引用。{{Citation|ref=harv|title=ディジタル信号処理|last=半塲|first=滋|year=2018|url=http://dsl4.eee.u-ryukyu.ac.jp/DOCS/DSP/p05.pdf|publisher=琉球大学|chapter=第5回 離散フーリエ変換}}</ref>、<math>X[k]</math> は[[周波数スペクトル]]とも呼ばれる。

=== 連続時間信号に対する定義 ===
<math>t \in \R^1</math> を連続変数、<math>N \in \N^1</math> を任意定数とし、無限長の[[複素関数|複素]][[連続時間信号]] <math>f(x)</math> の'''離散フーリエ変換''' <math>F(t)</math> は次式で定義される：
:<math>F(t)= \sum_{x=0}^{N-1} f(x) \exp\left(-i\frac{2 \pi t x}{N} \right)</math>
この定義においてDFTは複素関数 <math>f(x)</math> を複素関数 <math>F(t)</math> に写す写像と理解される。{<math>x = 0,\dots,N-1</math>}は'''標本点'''と呼ばれる。また、この変換を <math>\mathcal{F}_N</math> という記号で表し、{{Indent|<math>F = \mathcal{F}_N(f)</math>}}
のように略記することが多い。

なお、この定義は1つめの定義において <math>x[n]</math> を <math>f(n)</math> で置き換えた（=有限長の離散時間信号を無限長の連続時間信号で置き換えた）ものである。この置き換えは[[総和]] <math>\Sigma

</math> の部分で <math>f(n)</math> から離散的に <math>N</math> 個の値を取り出している（=その場で <math>x[n]</math> を作っている）ため成立する。

以下では、[[フーリエ変換]]やサンプリングとの関係を説明するために、2つめの定義で説明している箇所がある。

== 表記 ==
DFTの定義は別の表記法で表現されることもある。

=== 回転因子 ===
{{読み仮名|'''回転因子'''|かいてんいんし|{{lang-en-short|[[w::Twiddle factor|twiddle factor]]}}}}は定数 <math>N \in \Z^+</math> で特徴づけられる[[複素指数]]定数 <math>e^{- i 2\pi / N}</math> である<ref name=":1" />。 <math>W</math> あるいは <math>W_N</math> で略記される。

回転因子 <math>W_N</math> は定数 <math>N \in \Z^+</math> で特徴づけられる、[[複素数の絶対値|絶対値]] <math>1</math>、[[複素数の偏角|偏角]] <math>2\pi / N, (0 \leq \text{arg} \leq 2\pi)</math> の複素指数定数である。絶対値が <math>1</math> であるため、<math>W_N</math> の実数乗はこの複素指数を[[複素平面]]上で回転することと解釈できる。そのため実数変数（例: <math>n</math>）で[[累乗]]すれば <math>W_N</math> が周波数を規定する回転の信号を表現でき（例: <math>y(n) = {W_N}^n
</math>）、それを実数定数（例: <math>k</math>）で累乗すれば <math>k</math> 倍の周波数をもった信号を表現できる（例: <math>y_k(n) = {W_N}^{kn}

</math>）。

回転因子を用いて DFT の定義は以下の式でも表現される<ref name=":1" />：
:<math>X[k] = \sum_{n=0}^{N-1} x[n] \, {W_N}^{kn}

</math>

== 性質 ==
離散フーリエ変換は[[フーリエ変換]]に類似した変換であるので、[[フーリエ変換#フーリエ変換の性質|フーリエ変換]]と類似した性質を持つ。

=== 完全性 ===
離散フーリエ変換においては、有限個の'''標本点'''しか使わないため、ある関数を離散フーリエ変換し、それを逆変換した場合に、'''標本点'''以外で元の関数と一致するとは限らない。

すなわち、複素関数ｆに対して、
:<math>F(t)= \sum_{x=0}^{N-1} f(x) \exp\left(-i\frac{2 \pi t x}{N}\right)</math>
により離散フーリエ変換を行い、それを逆変換したものをgとすると
:<math>f(x)=g(x) \quad x = 0,\dots,N-1</math>
は言えるが、その他の点で<math>f(x)=g(x)</math>が言えるとは限らない。これを'''高周波の問題'''、あるいは'''[[折り返し雑音|エイリアシング(aliasing)]]'''という。

=== 選点直交性 ===
<math>h(t,x)=\exp(i2\pi t x/N)</math> は[[内積]]
:<math>(f,g)=\sum_{n=0}^{N-1} {f(n)}^{*} g(n) </math>
に関し、<math>t,t'</math>が整数のとき[[直交関数系|直交]]基底である。
:<math>(h(t,x),h(t',x))=\sum_{n=0}^{N-1}
\exp \left(-i2\pi\frac{tn}{N}\right)
\exp \left(i2\pi\frac{t'n}{N}\right)
=N~\delta_{tt'}</math>

<math>\delta_{tt'}</math>は[[クロネッカーのデルタ]]

===畳み込み定理と相互相関定理===

二つの（一般には複素数値の）関数<math>f(x)</math> と <math>g(x)</math> の畳み込み<math>f*g</math>は次のように定義される。

:<math>(f*g)(x) = \sum_{n=0}^{N-1} f(n) g(x-n)</math>

ただし、<math>f</math>と<math>g</math>は次のような周期性を持つとする。

:<math>\begin{align}
f(x+N)&=f(x) \\
g(x+N)&=g(x)
\end{align}</math>

周期関数の畳み込みを離散フーリエ変換したものは、それぞれの離散フーリエ変換の積になる([[畳み込み定理]])。
つまり
:<math>\mathcal{F}_N(f*g)=\mathcal{F}_N(f)\mathcal{F}_N(g)</math>

畳み込み和を直接定義式を用いて計算すると ''O''(''N''&sup2;) の[[計算複雑性理論|計算量]]が掛かる。しかし、上式より一旦 DFT をしてから掛算をして、そして IDFT で戻す方法もある。DFT の高速アルゴリズムである [[高速フーリエ変換|FFT]] を介してこのように計算すると ''O''(''N''&nbsp;log&nbsp;''N'') の計算量で済む。

また、二つの（一般には複素数値の）関数<math>f(x)</math>と<math>g(x)</math>の[[相互相関]]<math>f\star g</math>は以下のように定義される。

{{Indent|<math>h(x)=(f\star g)(x)= \sum_{n=0}^{N-1}f(n)g(x+n)</math>}}
<math>f,g</math>が上記の周期性を持てば、
{{Indent|<math>(\mathcal{F}_Nh)(u)=(\mathcal{F}_N(f\star g))(u)=\mathcal{F}_N(f)(-u)\mathcal{F}_N(g)(u)</math>}}
さらに<math>f</math>の関数値が実数であれば、<math>\mathcal{F}_N(f)(-u)=\overline{\mathcal{F}_N(f)(u)}</math>となる．ここで上線をつけた<math>\bar{z}</math>は<math>z</math>の複素共役を表す。

=== 実数値関数の離散フーリエ変換 ===

応用上は、実数値関数を対象とすることが多いが、<math>f</math>が実数値関数であるときには、
{{Indent|<math>(\mathcal{F}_Nf)(-t)=\overline{(\mathcal{F}_Nf)(t)}</math>}}
(<math>\bar{z}</math>は<math>z</math>の[[複素共役]])。そのため出力<math>(\mathcal{F}_Nf)(t)</math>の半分(<math>t>0</math>)で全ての情報を持っていることになる。

== 逆離散フーリエ変換 ==
{{読み仮名|'''逆離散フーリエ変換'''|ぎゃくりさんフーリエへんかん|{{lang-en-short|inverse discrete Fourier transform}}, '''IDFT'''}}は次で定義される：
:<math>f(x) = \frac{1}{N} \sum_{t=0}^{N-1} F(t) \exp\left(i\frac{2\pi x t}{N} \right)</math>

正規化係数（DFT は 1, IDFT は 1/''N''）や指数の符号は単なる慣習的なものであり、上式とは異なる式を扱うことがある。DFT と IDFT の差について、それぞれの正規化係数を掛けると 1 / ''N'' になることと、指数の符号が異符号であるということがだけが重要であり、根本的には同一の変換作用素と考えられる。DFT と IDFT の正規化係数を両方とも <math>1/\sqrt{N}</math> にすると、両方とも[[ユニタリ作用素]]（ユニタリ変換）になる。理論的にはユニタリ作用素にするのが好ましいが、実用上数値計算を行うときは上式のように正規化係数を1つにまとめて、スケーリングを一度に行うことが多い。

== 2次元での変換 ==
デジタル[[画像処理]]では[[2次元]]変換が画像の周波数成分を解析するのに使われる。

変換は以下のように定義される。

:<math>F(u, v) = \sum_{x=0}^{M-1} \sum_{y=0}^{N-1} f(x,y) e^{- 2 \pi i \left(\frac{u x}{M} +\frac{v y}{N} \right) }</math>

そして逆変換は次のようになる。

:<math>f(x, y) = \frac{1}{M N} \sum_{u=0}^{M-1} \sum_{v=0}^{N-1} F(u, v) e^{2 \pi i \left(\frac{u x}{M} +\frac{v y}{N} \right) }</math>

但し
*<math>f(x, y)</math>は2次元[[信号 (情報理論)|信号]](例えば[[画像]])であり、''f''の''x''列''y''行成分のことである。
*<math>F(u, v)</math>は<math>f(x, y)</math>の2次元[[周波数]][[スペクトラム]]である。ここで''u''は''x''成分の周波数、''v''は''y''成分の周波数である。

2次元DFT は[[行列]]を用いて簡単に記述できる。

{{Indent|<math>F = W f^T W</math>}}

ここで
*<math>F = \begin{bmatrix}
F(0, 0) & F(1, 0) & \ldots & F(M-1, 0) \\
F(0, 1) & F(1, 1) & \ldots & F(M-1, 1) \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
F(0, N-1) & F(1, N-1) & \ldots & F(M-1, N-1)
\end{bmatrix}</math>
*<math>W = \begin{bmatrix}
\omega_n^{0 \cdot 0} & \omega_n^{0 \cdot 1} & \ldots & \omega_n^{0 \cdot (N-1)} \\
\omega_n^{1 \cdot 0} & \omega_n^{1 \cdot 1} & \ldots & \omega_n^{1 \cdot (N-1)} \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
\omega_n^{(N-1) \cdot 0} & \omega_n^{(N-1) \cdot 1} & \ldots & \omega_n^{(N-1) \cdot (N-1)} \\
\end{bmatrix}</math> (注:これはユニタリ行列)
*<math>f = \begin{bmatrix}
f(0, 0) & f(1, 0) & \ldots & f(M-1, 0) \\
f(0, 1) & f(1, 1) & \ldots & f(M-1, 1) \\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
f(0, N-1) & f(1, N-1) & \ldots & f(M-1, N-1)
\end{bmatrix}</math>

===行列の表記による変形===

2次元DFT を[[行列]]計算によって以下のように変形できる。

#<math>F(u, v) = \sum_{x=0}^{M-1} \sum_{y=0}^{N-1} f(x,y) e^{ -2 \pi i ( \frac{u x}{M} + \frac{v y}{N} ) }</math>
#<math>F(u, v) = \sum_{x=0}^{M-1} \left[ \sum_{y=0}^{N-1} f(x,y) e^{ -2 \pi i \frac{v y}{N} } \right] e^{ -2 \pi i \frac{u x}{M} }</math>
#<math>F(u, v) = \sum_{x=0}^{M-1} \underbrace{ \left[ \sum_{y=0}^{N-1} f(x,y) e^{ -2 \pi i \frac{v y}{N} } \right] }_{ \mathcal{F}_y f(x, y) } e^{ -2 \pi i \frac{u x}{M} } </math>
#<math>F_v = W f</math>
#<math>F(u, v) = \sum_{x=0}^{M-1} F_v(x, v) e^{- 2 \pi i \frac{u x}{M} }</math>
#<math>F = W F_v^{T}</math>
#<math>F = W f^T W</math>

以下上式の 1 - 7 を解説すると、
# 2次元DFTの定義
# 式1から ''e''<sup>-2&pi;''iux''/''M''</sup> を内側&sigma;から出した
# 内側の&sigma;は、信号<math>f(x, y)</math>の''y''の次元(<math>\mathcal{F}_y\{f(x, y)\}</math>と書いた行)の1次元DFTであることを示している
# 式3で示した、<math>\mathcal{F}_y\{f(x, y)\}</math>の行列表現
# 式3の注目箇所を<math>F_v(x, v)</math>で書き変えた - <math>F_v(x, v)</math>は<math>f(x, y)</math>の''x''行目の行の''v''番目の周波数。<math>f(x, y)</math>の1次元DFTの行を集めたものが''F''<sub>''v''</sub>である。
# 式4の1次元DFTの行列表現と同様に、''F''<sub>''v''</sub><sup>T</sup>を使って式5を表現した
# 式4を式6に代入した結果。ここで''W''は[[対称行列]]であるので''W''=''W''<sup>T</sup>とした。

<math>F_v</math>の行は<math>f(x, y)</math>の''x''行目の行を1次元DFTしたものである。ゆえに<math>F_v</math>は<math>f(x, y)</math>の各行の1次元DFTした結果の行ベクトルを集めたものになる。''F''=''WF''<sub>''v''</sub><sup>T</sup>における、''F''<sub>''v''</sub><sup>T</sup>を後から掛ける作用素は<math>F_v</math>の列の1次元DFTしたものと同じと考えて良い。

つまり、2次元DFT（2次元フーリエ変換も同様だが）は<math>f(x, y)</math>を、各行ごとに1次元DFTし、その結果をさらに各列ごとに1次元DFTする事と等価である。ここで、1次元DFTの計算は[[高速フーリエ変換|FFT]]の[[アルゴリズム]]で高速に計算できる。そのため実用上は2次元DFTも、2次元FFTとして計算される。

== 他の変換との関係 ==

=== 一般化 ===
離散フーリエ変換が持つ多くの性質は、<math>\omega_{N} = e^{\frac{i2\pi}{N}}</math> が1の原始N乗根(primitive root)であることのみに依存している。そのため、単位元の原始N乗根 <math>\omega_N</math> が存在するならば、複素数以外の環や体においても同様に離散フーリエ変換を定義することができる。[[離散フーリエ変換 (一般)]]を参照のこと。

== 例 ==

表中で、

<math>W=e^{-i\frac{2\pi}{N}}</math>

{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="0" style="margin: 0 0 1em 1em; border-color:#ccc; text-align:center;"
|-
! 時間領域
! 周波数領域
! 備考
|-
!<math>f(x)=\frac{1}{N}\sum_{k=0}^{N-1}F(k)W^{-kx}</math>
!<math>F(t)=\sum_{n=0}^{N-1}f(n) W^{tn}</math>
!IDFT,DFTのWを使った定義
|-
!<math>f(x)</math>
!<math>F(t)</math>
!定義
|-
!<math>g(x)</math>
!<math>G(t)</math>
!定義
|-
!<math>af(x)+bg(x)</math>
!<math>aF(t)+bG(t)</math>
!線形性
|-
!<math>f(x){e^{i\frac{2\pi{mx}}{N}}}</math>
!<math>F(t-m)</math>
!時間軸変調、周波数軸移動
|-
!<math>f(x-a)</math>
!<math>W^{at}F(t)</math>
!時間軸移動（正）
|-
!<math>f(x+a)</math>
!<math>W^{-at}F(t)</math>
!時間軸移動（負）
|-
!<math>\sum_{m=0}^{N-1}f(m)g(x-m)</math>
!<math>F(t)G(t)</math>
!時間軸畳み込み、周波数軸積
|-
!<math>f(x)g(x)</math>
!<math>{\frac{1}{N}}\sum_{m=0}^{N-1}F(m)G(t-m)</math>
!時間軸積、周波数軸畳み込み
|-
!<math>\overline{f(x)}</math>
!<math>\overline{F(N-t)}</math>
!時間軸共役、周波数軸反転
|-
!<math>\overline{f(N-x)}</math>
!<math>\overline{F(t)}</math>
!時間軸反転、周波数軸共役
|-
!<math>Re(f(x))</math>
!<math>\frac{1}{2}(F(t)+\overline{F(N-t)})</math>
!時間軸実部、周波数軸偶関数
|-
!<math>Im(f(x))</math>
!<math>\frac{1}{2i}(F(t)-\overline{F(N-t)})</math>
!時間軸虚部、周波数軸奇関数
|-
!<math>\frac{1}{2}(f(x)+\overline{f(N-x)})</math>
!<math>Re(F(t))</math>
!時間軸偶関数、周波数軸実部
|-
!<math>\frac{1}{2i}(f(x)-\overline{f(N-x)})</math>
!<math>Im(F(t))</math>
!時間軸奇関数、周波数軸虚部
|-
!<math>a^x\,</math>
!<math>\frac{1-a^N{W}^{tx}}{1-{a}W^t}</math>
!べき乗
|}

== 応用 ==
DFTは多くの広い分野で利用されている。ここでは、その中の一部を示しているだけに過ぎない。これらの応用は[[高速フーリエ変換]](FFT)とその逆変換(IFFT)で高速に計算できることを前提としていて、定義通りにDFTを計算しているのではない。

=== 信号解析 ===
[[信号 (情報理論)|信号]]''x''(''t'')を解析するのに使われる。ここで''t''は時間で[0,''T'']の範囲をとるものとする。例えば、[[音声|音声信号]]の場合は、''x''(''t'')は時刻''t''での空気の圧力を表現することになる。

この信号は''N''個の等間隔の点で[[標本化]]されて、''x''<sub>0</sub>, ''x''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ... , ''x''<sub>''N''-1</sub> の実数列になる。但し標本化の間隔を &Delta;''x''(=''T''/''N'') とすると ''x''<sub>''k''</sub>=''x''(''k''&nbsp;&Delta;''x'') である。これのDFTである ''f''<sub>0</sub>, ..., ''f''<sub>''N''&minus;1</sub> をFFTで計算できる。ただし[[標本化定理]]からこれの半分(''N''が偶数とすると、''f''<sub>''N''/2 + 1</sub>, ..., ''f''<sub>''N''&minus;1</sub>)は冗長であるので捨てるか無視する。

DFT から得られる |''f''<sub>k</sub>|/''N'' は信号の[[周波数]] ''j''/''T'' 成分の[[振幅]]の半分の値であり、振幅スペクトルと呼ばれる。また、この[[複素数の偏角|偏角]]である arg(''f''<sub>''j''</sub>) はこの周波数成分の[[位相]]を表す。また、|''f''<sub>k</sub>|<sup>2</sup>は[[パワースペクトル]]と呼ばれ、この周波数成分の[[エネルギー]]を表している。

''f''<sub>''k''</sub>は信号''x''(''t'')の[[フーリエ級数]]の係数に相当するものと考えることができる。そのために、無限に広がるフーリエ級数計算を、有限のサンプル点に対しての DFT を使って近似するという形になる。連続信号の場合はこれを[[スペクトル推定]](spectral estimation)と呼び、色々な推定法がある。(例えば、DFT が有限サンプル点を扱うことに起因する[[スペクトル漏れ]]の弊害を少しでも和らげるために[[窓関数|窓関数(窓)]])を使うことがよく行われる。)

=== データ圧縮 ===
[[信号処理]]の分野では[[周波数領域]]（フーリエ変換）で処理をすることも少なくない。例えば、画像の[[非可逆圧縮]]や音声圧縮技術などでは離散フーリエ変換の考えが用いられている。信号に対して DFT (実装上では[[高速フーリエ変換|FFT]]) を行い、人間が知覚しづらい周波数成分の情報を取り除くことで、正味の情報量を削減（圧縮）する。最も単純な方法では、IDFTの際にその取り除いた周波数情報（フーリエ係数）を0にすることにより、通常のIDFTを実現する。実装の単純化（計算の効率化）のために、実数演算のみで可能な[[離散コサイン変換]]を使って2次元情報を圧縮した例が[[JPEG]]である。

=== 大きな数の掛け算の計算 ===
{{main|[[ショーンハーゲ・ストラッセン法]]|en:Fürer's algorithm}}
大きな数や[[多項式]]の{{仮リンク|乗算アルゴリズム|en|Multiplication algorithm}}において、DFTを使う高速なアルゴリズムとして1971年に[[ショーンハーゲ・ストラッセン法]]が発見された。数字や多項式の係数の列を[[畳み込み]]演算の対象の[[ベクトル]]{{要曖昧さ回避|date=2021年7月}}と見なす。するとそれぞれのベクトルの DFT を造り、その結果同士のベクトルを要素ごとに乗算した新たなベクトルを作り、それを逆変換することにより掛算の計算結果が得られる（つまり[[畳み込み定理]]を使う）。2007年に理論上はショーンハーゲ・ストラッセン法よりも高速なアルゴリズム（[[:en:Fürer's algorithm]]）が発見された。

== 別な定義 ==
離散フーリエ変換　<math>F_n=\dfrac{1}{N} \sum^{N-1}_{k=0}f_k e^{-i \dfrac{2n \pi}{N}k}</math>

離散フーリエ逆変換　<math>f_k=\sum^{N-1}_{n=0} F_n e^{i \dfrac{2n \pi}{N} k}</math>とするところもある（図解雑学　フーリエ変換）。

これは、フーリエ変換を<math>F(\omega)=\int^{\infty}_{-\infty} f(x) e^{-i \omega x}dx</math>、フーリエ逆変換を<math>f(x)=\dfrac{1}{2 \pi} \int^{\infty}_{-\infty} F(\omega) e^{i \omega x} d\omega</math>としたときの式である。

==脚注==
{{脚注ヘルプ}}
{{Notelist2}}

=== 出典 ===
{{Reflist}}

==参考文献==
* E. O. Brigham, ''The Fast Fourier Transform and Its Applications'' (Prentice-Hall, Englewood Cliffs, NJ, 1988).
* A. V. Oppenheim, R. W. Schafer, and J. R. Buck, ''Discrete-Time Signal Processing'' (Prentice-Hall, 1999).
* S. W. Smith, [http://www.dspguide.com/pdfbook.htm The Scientist and Engineer's Guide to Digital Signal Processing], (California Technical Publishing, San Diego, 2nd edition, 1999)
* W. L. Briggs and van E. Henson: ''The DFT - An Owner's Manual for the Discrete Fourier Transform'' (SIAM, 1995).

* A. V. Oppenheim, R. W. Schafer, 伊達玄訳, ''ディジタル信号処理'' (コロナ社, 1978).
* {{Citation|和書|title=知識の森|last=菊池|first=久和|year=2009|url=https://www.ieice-hbkb.org/files/ad_base/view_pdf.html?p=/files/01/01gun_09hen_06m.pdf|publisher=電子情報通信学会|pages=1-20|chapter=1群-9編-6章 変換・解析技術}}

==関連項目==
* [[高速フーリエ変換]](FFT)
* [[フーリエ級数]]
* [[フーリエ変換]]
* [[離散時間フーリエ変換]]
* [[Z変換]]
* [[直交関数系]]

{{デジタル信号処理}}

{{DEFAULTSORT:りさんふうりえへんかん}}
[[Category:フーリエ解析]]
[[Category:数値解析]]
[[Category:信号処理]]
[[Category:ユニタリ作用素]]
[[Category:ジョゼフ・フーリエ]]
[[Category:数学のエポニム]]
[[Category:数学に関する記事]]