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{{confuse|零空間}} [[線型代数学]]における'''零ベクトル空間'''(れいベクトルくうかん、ゼロベクトルくうかん、{{lang-en-short|''zero-vector space''}}, {{lang-de-short|''Nullvektorraum''}})あるいは短く'''零空間'''(ゼロくうかん、{{lang-en-short|''zero space''}}, {{lang-de-short|''Nullraum''}})は[[零ベクトル]]ただ一つだけからなる[[ベクトル空間]] {{math|{{mset|0}}}} を言う。零ベクトル空間は[[同型を除いて]]唯一の[[次元 (線型代数学)|次元]]が [[零次元| {{math|0}}]] のベクトル空間で、その[[基底 (線型代数学)|基底]]は[[空集合]]である。任意のベクトル空間が、その最小の[[部分空間]]として零ベクトル空間を持つ。[[ベクトル空間の直和]]や[[ベクトル空間の直積]]をベクトル空間の間の[[二項演算|演算]]と見なすとき、零ベクトル空間はそれら演算の[[単位元]]となる。[[圏論]]的には、零ベクトル空間は与えられた[[可換体|体]]上の[[ベクトル空間の圏]]における[[零対象]]となる({{ill2|零対象 (代数学)|en|zero pbject (algebra)}} も参照)。 == 定義 == '''零ベクトル空間''' {{math|({{mset|0}}, +, ⋅)}} は、与えられた[[可換体|体]] {{mvar|K}} 上の[[ベクトル空間]]であって、これはただ一つの元 {{math|0}} からなる集合 {{math|{{mset|0}}}} に、ただ一つの[[ベクトルの加法|加法]] <math display="block">0 + 0 = 0</math> と可能なただ一種類の[[スカラー倍]] <math display="block">\alpha \cdot 0 = 0\qquad(\forall\alpha \in K)</math> を備えたものと述べられる。ゆえにただ一つの元 {{math|0}} は[[加法単位元]]であり、[[零ベクトル]]と呼ばれる。 == 性質 == === ベクトル空間の公理を満たすこと === 零ベクトル空間は[[ベクトル空間]]の公理を満足する: * {{math|({{mset|0}}, +)}} は[[アーベル群]](とくに[[自明群]])を成す。 * スカラー乗法の[[結合法則|結合性]]および加法への[[分配法則|分配性]]が成り立つ。つまり {{math|''α, β'' ∈ ''K''}} として ** <math>\alpha \cdot (\beta \cdot 0) = \alpha \cdot 0 = 0 = (\alpha \cdot \beta) \cdot 0,</math> ** <math>\alpha \cdot (0 + 0) = \alpha \cdot 0 = 0 = 0 + 0 = \alpha \cdot 0 + \alpha \cdot 0,</math> ** <math>(\alpha + \beta) \cdot 0 = 0 = 0 + 0 = \alpha \cdot 0 + \beta \cdot 0.</math> * 単型、つまり {{mvar|K}} の[[乗法単位元]] {{math|1{{sub|''K''}}}} は[[恒等写像]]として作用する: ** <math>1_K \cdot 0 = 0</math> === 基底と次元 === 零ベクトル空間の[[基底 (線型代数学)|基底]]はただ一つ、[[空集合]]である: <math display="block">\langle \emptyset \rangle = \{ 0 \}.</math> 左辺は空集合で[[線型包|張られる部分空間]]を意味する。よって零ベクトル空間の[[次元 (線型代数学)|次元]]は <math display="block">\dim(\{ 0 \}) = | \emptyset | = 0</math> となる。 逆に、与えられた体上の零次元ベクトル空間は必ず零ベクトル空間に[[線型同型|同型]]になる。 === 部分空間としての零空間 === 与えられた体 {{mvar|K}} 上の任意のベクトル空間 {{mvar|V}} をとると、{{mvar|V}} にはベクトルの加法に関する単位元として[[零ベクトル]] {{math|0{{sub|''V''}}}} が一意的に存在する。部分集合 {{math|''U'' {{coloneqq}} {{mset|0{{sub|''V''}}}}}} はベクトルの加法およスカラー乗法に関して[[閉性質|閉じている]]—式で書けば * <math>U \neq \emptyset</math> * <math>0_V + 0_V = 0_V \in U</math> * <math>\alpha \cdot 0_V = 0_V \in U\qquad(\forall\alpha \in K)</math> が成り立つ—から、{{mvar|U}} は {{mvar|V}} の[[部分線型空間|部分空間]]となる。よって {{mvar|U}} はそれ自身零ベクトル空間に同型な一元ベクトル空間を成し、{{mvar|V}} の(部分)零ベクトル空間などと呼ばれる。部分空間は少なくとも一つの元を含まなければならないから、零ベクトル空間は最小の部分空間である。{{math|''U''{{sub|1}}, ''U''{{sub|2}}}} が {{mvar|V}} において互いに[[補空間|補]]な部分空間ならば常に <math display="block">U_1 \cap U_2 = \{ 0_V \}</math> である。 === 直和およびテンソル積 === [[ベクトル空間の直和]](あるいは[[ベクトル空間の直積]])に関して、零ベクトル空間はその単位元である。つまり任意のベクトル空間 {{mvar|V}} に対して <math display="block">\{0\}\oplus V\cong V\cong V\oplus\{0\}\qquad(\{0\}\times V\cong V\cong V\times \{0\}</math> が成り立つ。一方、[[ベクトル空間のテンソル積]]に関しては[[吸収元]](零元)で <math display="block">\{0\}\otimes V\cong\{0\}\cong V\otimes\{0\}</math> が成り立つ。 === 圏論的性質 === {{main|零対象|零射}} 与えられた体 {{mvar|K}} 上のすべての[[ベクトル空間]]を[[対象 (圏論)|対象]]としすべての {{mvar|K}}-[[線型写像]]を[[射 (圏論)|射]]とする[[ベクトル空間の圏|圏]] {{math|'''Vect'''{{sub|''K''}}}} において、零ベクトル空間は[[零対象]]となる。 : 任意のベクトル空間から零ベクトル空間への線型写像はただ一つ存在して、すべてのベクトルが零ベクトルに写される(つまり[[零写像]])。かつ、零ベクトル空間から任意のベクトル空間への線型写像はただ一つ存在して、ただ一つのベクトルが各ベクトル空間内の零ベクトルとして埋め込まれる。 == 関連項目 == * {{ill2|ベクトル空間の例|en|examples of vector spaces}} * {{ill2|零対象 (代数学)|en|Zero object (algebra)}} - [[零環]] / {{ill2|零加群|de|Nullmodul}} * {{ill2|空行列|fr|Matrice vide}} == 参考文献 == * {{citation2|surname1=[[Gilbert Strang]]|title=Lineare Algebra|publisher=Springer|publication-place=Berlin u. a.|year=2003|isbn=3-540-43949-8|language=de }} == 外部リンク == * {{PlanetMath|urlname=ZeroVectorSpace|title=zero vector space}} {{DEFAULTSORT:れいへくとるくうかん}} [[Category:線型代数学]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:ベクトル空間]]
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