面 (幾何学)のソースを表示

[[初等幾何学]]における'''面'''（めん、{{lang-en-short|''face''}}）は、立体図形の[[境界 (位相空間論)|境界]]を成す二次元の図形を言う<ref>{{cite book | title = [[Merriam-Webster's Collegiate Dictionary]] | edition = 11th | publisher = [[Merriam-Webster]] | location = Springfield, MA | year = 2004}}</ref>。平坦な面によって完全に囲まれた三次元図形を[[多面体]]と呼ぶ。

より一般に、多面体やより高次元の[[ポリトープ|超多面体]]に関して、任意の次元の一般の超多面体の任意の次元の要素を機械的に表す用語としても「面」が用いられる{{sfn|Matoušek|2002|p={{google books quote|id=0N5RVe5lKQUC|pg=PA86|86}}|loc= 5.3 Faces of a Convex Polytope}}。

== 多角形面 ==
[[初等幾何学]]における'''面'''は[[多面体]]の境界を成す（中身の詰まった）[[多角形]]を言う{{sfn|Matoušek|2002|p={{google books quote|id=0N5RVe5lKQUC|pg=PA86|86}}|loc= 5.3 Faces of a Convex Polytope}}{{sfn|Cromwell|1999|p={{google books quote|id=OJowej1QWpoC|pg=PA13|13}}}}。別名として、多面体（またはそれ以外の立体）の'''側面''' (''side'') や[[平面充填]]（平面分割）の'''充填多角形''' (''tile'') などが挙げられる。

例えば、[[立方体]]を囲む六つの[[正方形]]のどの一つも、この立方体の面である。場合によってはより広く[[多胞体]]（四次元超多面体）の二次元要素を表すのに「面」が用いられる。この意味では、例えば[[正八胞体]]は24個の正方形面を持ち、それは何れも8個の[[立方体]]胞の何れか二つの交面になっている。

{| class="wikitable" style="margin: 1ex auto; text-align: center; vertical-align: top;"
|+ [[シュレーフリ記号]]に応じた正図形の例とその面の数
|-
![[正多面体]]
!正[[星型多面体]]
! {{ill2|正多角形充填|en|Regular tiling}}
! 正双曲型充填
! {{ill2|凸正多胞体|en|Convex regular polychoron}}
|-
! {4,3}
! {5/2,5}
! {4,4}
! {4,5}
! {4,3,3}
|- 
|[[Image:hexahedron.png|100px]]<br />[[立方体]]は各頂点に三つの正方形面が接続する
|[[File:Small stellated dodecahedron.png|100px]]<br />[[小星型十二面体]]は各頂点に五つの[[五芒星]]面が接続する
|[[Image:Tile 4,4.svg|100px]]<br />ユークリッド平面の{{ill2|正方形充填|en|square tiling}}は各頂点に四つの正方形面が接続する
|[[File:H2-5-4-primal.svg|100px]]<br />{{ill2|五位正方形充填|en|Order-5 square tiling}}は各頂点に五つの正方形面が接続する
|[[File:Hypercube.svg|100px]]<br />[[正八胞体]]は各辺に三つの正方形面が接続する
|}

何らかの図形の面とはなっていないほかの多角形にも、多面体や平面充填に対して重要なものが存在する。そのようなものとして、[[ペトリー多角形]]、{{ill2|頂点形状|en|vertex figure}}や{{ill2|琢刻|en|faceting|label=琢刻多角形}}（多面体の同一面上にない共面頂点によって形作られる平面多角形）などがある。

任意の[[凸多面体]]の境界面は[[オイラー標数]] <math diplay="inline">V - E + F = 2</math> を持つ。ここに {{mvar|V}} は頂点数、{{mvar|E}} は辺数、{{mvar|F}} は面数であり、右辺の 2 は0次元[[ベッチ数]] 1 と2次元ベッチ数 1 の和、または多面体自身の数 1 と空集合の数 1 の和である。この等式は[[オイラー]]の[[多面体]]公式と呼ばれる。したがって、面の数は辺数から頂点数を引いたものより {{math|2}} だけ多い。例えば、[[立方体]]は 8 頂点、12 辺を持つから面数は 6 である。

== その他の面 ==
[[円柱 (数学)|円柱]]、[[円錐]]など多面体以外の[[立体図形]]は平坦でない面や多角形でない面 (surface) を持ち得る。そのようなものとして、[[底 (初等幾何学)|底面]]または上面 (base or top)、{{ill2|側面 (物体)|en|Lateral surface|label=側面}} (lateral surface) などが挙げられる。

== 高次元の「面」==
{| class="wikitable" style="text-align: center; float: right; margin-left: 1em;"
|+ {{mvar|n}}-次元超多面体の面
! 次元 !! 英語 !! 日本語
|-
! &minus;1
| &empty; || ([[空集合]])
|-
! 0 
| vertex || [[頂点]]
|-
! 1
| edge || [[辺]]
|-
! 2
| face || 面
|-
! 3
| cell || [[胞]]
|-
! ⋮
| ⋮ || ⋮
|-
!  ''k''
| ''k''-face || ''k''-次元面
|-
! ⋮
| ⋮ || ⋮
|-
! ''n'' − 3
| peak || ピーク
|-
! ''n'' − 2
| ridge || リッジ
|-
! ''n'' − 1
| facet || ファセット
|-
! {{mvar|n}}
| body || (全体集合)
|}

高次元幾何学において、[[超多面体]]の面とは、その任意の次元の要素を言う{{sfn|Matoušek|2002|p={{google books quote|id=0N5RVe5lKQUC|pg=PA86|86}}|loc= 5.3 Faces of a Convex Polytope}}{{sfn|Grünbaum|2003|p={{google books quote|id=ISHO86XJ1CsC|pg=PA17|17}}}}{{sfn|Ziegler|1995|loc=Definition 2.1|p={{google books quote|id=xd25TXSSUcgC|pg=PA51|51}}}}。{{mvar|k}} 次元の面を {{mvar|k}}-次元面 ({{mvar|k}}-face) と呼ぶ。通常の多面体の多角形面は、二次元面である。超多面体の面全体の成す集合には超多面体自身と空集合が含まれ、一貫性のため空集合の「次元」は {{math|&minus;1}} が与えられる。任意の {{mvar|n}}-次元超多面体に対し、その面集合は {{math|−1 ≤ ''k'' ≤ ''n''}} なる任意の {{mvar|k}} に対する {{mvar|k}}-次元面のすべてからなる。

この意味で例えば、[[立方体]]の面集合は、空集合、頂点（零次元面）、辺（一次元面）、正方形面（二次元面）と立方体自身（三次元面）からなる。

四次元の[[多胞体]]の面は以下のように分類できる:
* 四次元面: 多胞体自身
* 三次元面: [[多面体]]{{ill2|胞 (幾何学)|en|cell (geometry)|label=胞}}
* 二次元面: [[多角形]]面
* 一次元面: [[辺]]
* 零次元面: [[頂点]]
* {{math|(&minus;1)}}-次元面: 空集合

{{ill2|多面体的組合せ論|en|polyhedral combinatorics}}のような一部の分野では、超多面体（ポリトープ）は定義により凸である。この場合は厳密に、ポリトープ {{mvar|P}} の面とは {{mvar|P}} と 任意の{{ill2|半空間|label=閉半空間|en|Half-space (geometry)}}でその境界が {{mvar|P}} の内部と交わらないものとの交わりを言う{{efn|{{harvtxt|Matoušek|2002}} および {{harvtxt|Ziegler|1995}} はやや異なるが同値な定義を採用している。それは {{mvar|P}} の内部と交わらない超平面または全空間と {{mvar|P}} との交わりを考えるものである。}}。この定義から、ポリトープの面全体の成す集合がポリトープ自身と空集合を持つことが従う{{sfn|Grünbaum|2003|p={{google books quote|id=ISHO86XJ1CsC|pg=PA17|17}}}}{{sfn|Ziegler|1995|loc=Definition 2.1|p={{google books quote|id=xd25TXSSUcgC|pg=PA51|51}}}}。

{{ill2|抽象超多面体|en|abstract polytope}}論や{{ill2|星型超多面体|en|star polytope}}論などほかの分野では、超多面体の凸性は前提としない。抽象論においてもやはり、面全体の成す集合には超多面体自身（全体集合）と空集合を含める。

=== 胞あるいは三次元面 ===
{{main|{{ill2|胞 (幾何学)|wikidata|Q2733626}}}}
四次元の多胞体、三次元の空間充填（ハニカム）あるいはそれらの高次元版において、その三次元面となる[[多面体]]要素を'''胞'''（ほう、{{lang-en-short|''cell''}}; 胞体）と呼ぶ。特に多胞体および空間充填の{{ill2|ファセット (幾何学)|en|Facet (geometry)|label=ファセット}}は胞になる。

{| class="wikitable" style="margin: 1ex auto; text-align: center; vertical-align: top;"
|+ [[シュレーフリ記号]]に応じた正図形の例とその胞の数
|-
!colspan=2| 多胞体
!colspan=2| ハニカム
|- 
! {4,3,3}
! {5,3,3}
! {4,3,4}
! {5,3,4}
|- 
| [[file:Hypercube.svg|120px]]<br />[[正八胞体]]は各辺に三つの[[立方体]]胞が接続する
| [[file:Schlegel wireframe 120-cell.png|120px]]<br />[[正百二十胞体]]は各辺に三つの[[十二面体]]胞が接続する
| [[file:Partial cubic honeycomb.png|120px]]<br />{{ill2|立方体空間充填|en|cubic honeycomb}}（三次元ユークリッド空間を埋め尽くす立方体分割）は各辺に四つの立方体胞が接続する。
| [[file:Hyperbolic orthogonal dodecahedral honeycomb.png|120px]]<br />{{ill2|四位十二面体空間充填|en|order-4 dodecahedral honeycomb}}（三次元双曲空間を埋め尽くす十二面体分割）は各辺に四つの正十二面体胞が接続する
|}

=== {{vanc|ファセット|刻面}} ===
{{main|{{ill2|ファセット (幾何学)|en|facet (geometry)}}}}
高次元の[[超多面体]]または超空間充填に対して、その{{nowrap|余次元 {{math|1}}}} の面を'''ファセット''' (''facet'') と呼ぶ。すなわち、{{mvar|n}}-次元多面体のファセットは、その {{math|(''n'' - 1)}}-次元面を言う{{sfnm|Matoušek|2002|1p=87|Grünbaum|2003|2p=27|Ziegler|1995|3p=17}}。任意の超多面体はそのファセットによって囲まれる。

例えば:
* [[線分]]のファセットは、その零次元面である[[頂点]]を言う。
* [[多角形]]のファセットは、その一次元面である[[辺]]を言う。
* [[多面体]]または{{ill2|一様平面充填|en|uniform tiling}}のファセットは、その二次元面である面を言う。
* [[多胞体]]または{{ill2|凸一様空間充填|en|convex uniform honeycomb}}（三次元ハニカム）のファセットは、その三次元面である[[胞 (幾何学)|胞]]を言う。
* {{ill2|五次元超多面体|en|5-polytope}}または四次元ハニカムのファセットは、その四次元面を言う。

=== {{vanc|リッジ|稜}} ===
{{main|{{ill2|リッジ (幾何学)|en|Ridge (geometry)}}}}
超多面体および超空間充填の{{nowrap|余次元 {{math|2}}}} の面は、リッジ（稜、''ridge''）または劣ファセット (''subfacet'') という{{sfnm|Matoušek|2002|1p=87|Ziegler|1995|2p=71}}。すなわち {{mvar|n}}-次元多面体のリッジは、その {{math|(''n'' - 2)}}-次元面を言う。超多面体または超空間充填のリッジは、ちょうど二つのファセットに含まれる面になる。

例えば:
* [[多角形]]または直線充填のリッジは、その零次元面である[[頂点]]を言う。
* [[多面体]]または一様平面充填のリッジは、その一次元面である[[辺]]を言う。
* [[多胞体]]または凸一様空間充填のリッジは、その二次元面である面を言う。
* 五次元超多面体または四次元ハニカムのリッジは、その三次元面である[[胞 (幾何学)|胞]]を言う。

=== {{vanc|ピーク|鋒}} ===
{{main|{{ill2|ピーク (幾何学)|en|Peak (geometry)}}}}
超多面体および超空間充填の{{nowrap|余次元 {{math|3}}}} の面は、ピーク（鋒、''peak''）と言う。すなわち {{mvar|n}}-次元多面体のピークは、その {{math|(''n'' - 3)}}-次元面を言う。正超多面体または正超空間充填において、ピークはファセットおよびリッジの回転軸を含む。

例えば:
* [[多面体]]または一様平面充填のピークは、その零次元面である[[頂点]]を言う。
* [[多胞体]]または凸一様空間充填のピークは、その一次元面である[[辺]]を言う。
* 五次元超多面体または四次元ハニカムのピークは、その二次元面である面を言う。

== 注 ==
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist|20em}}

== 参考文献 ==
* {{citation|title=Lectures in Discrete Geometry|url= {{google books|id=0N5RVe5lKQUC|plainurl=1}}|volume=212|series=[[Graduate Texts in Mathematics]]|publisher=Springer|year=2002|authorlink=Jiří Matoušek (mathematician)|first=Jiří|last=Matoušek|ref=harv}}
* {{citation|title=Polyhedra|first=Peter R.|last=Cromwell|publisher=Cambridge University Press|year=1999|url= {{google books|id=OJowej1QWpoC|plainurl=1}}}}
* {{citation|title=Convex Polytopes|first=Branko|last=Grünbaum|authorlink=Branko Grünbaum|url={{google books|id=ISHO86XJ1CsC|plainurl=1}}|volume=221|edition=2nd|series=Graduate Texts in Mathematics|publisher=Springer|year=2003}}.
* {{citation|first=Günter M.|last=Ziegler|authorlink=Günter M. Ziegler|title=Lectures on Polytopes|url= {{google books|id=xd25TXSSUcgC|plainurl=1}}|volume=152|series=Graduate Texts in Mathematics|publisher=Springer|year=1995}}

== 外部リンク ==
*{{mathworld |urlname=Face |title=Face}}
*{{mathworld |urlname=Facet |title=Facet}}
*{{mathworld |urlname=Side |title=Side}}

{{DEFAULTSORT:めん}}
[[Category:初等幾何学]]
[[Category:多胞体]]
[[Category:多角形]]
[[Category:数学に関する記事]]