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{{特殊文字|説明=[[Microsoftコードページ932]]([[はしご高]])}} '''順位・規模法則'''(じゅんい・きぼほうそく、{{lang-en|rank-size rule}})は、[[都市]]の[[人口]]、[[会社]]の規模、[[文章]]内の[[単語]]など様々な分野における[[分析]]によって得られる、順位と規模の間に一定の関係が見られるとする[[経験則]]<ref>Konishi and Nishiyama(2009):2869ページ</ref>。特に都市の人口に関して言及する際、'''都市の順位・規模法則'''と呼ばれる<ref name="nu">高橋ほか(1997):73ページ</ref>。'''順位・規模の法則'''<ref>吉村(1995):37ページ</ref>、'''ランク・サイズルール'''<ref>吉村・山根(2004):7ページ</ref>ともいう。 本記事においては、都市の順位・規模法則について扱う。 == 概要 == ある地域内に存在する都市について、地域内で人口第2位の都市の人口は人口第1位の都市の人口の半分、第3位の都市の人口は第1位の都市の<math>\frac{1}{3}</math><ref name="nu"/>、すなわち、第n位(nは[[自然数]])の都市の人口は第1位の都市の<math>\frac{1}{n}</math>となるという法則である<ref>杉浦ほか(2005):142ページ</ref>。[[1913年]]に[[ドイツ]]の[[地理学者]]アウエルバッハ(Auerbach, F.)によって発見され、[[1949年]]に[[アメリカ合衆国]]の[[言語学者]][[ジョージ・キングズリー・ジップ]]が明確に規定した<ref>高橋ほか(1997):73 - 74ページ</ref>。数式で表せば、以下のようになる<ref name="nu2">高橋ほか(1997):74ページ</ref>。 <math>P_r=\frac{P_1}{r^q}</math>・・・(1) ここで<math>P_r</math>は第r位の都市の人口(<math>P_r</math> >0, rは自然数)、<math>P_1</math>は第1位の都市の人口<ref name="nu2"/>、qはパレート係数と呼ばれる順位の規模弾力性を表す定数である<ref>吉村(1995):38ページ</ref>。(1)の両辺に[[自然対数]]をとると <math>\log P_r=\log P_1-q\ \log r</math> ここで、<math>\log P_r=y, \log P_1=a, \ \log r=x</math>(aは定数、x, yは変数)とおけば '''''y=-qx+a'''''が得られる。 すなわち、順位規模法則に従う地域の各都市を[[両対数グラフ]]上にプロットすれば、[[1次関数]]の[[グラフ (関数)|グラフ]]が得られることを意味する<ref name="nu3">高橋ほか(1997):75ページ</ref>。順位・規模法則に完全に一致する国はないが、[[日本]]やアメリカのような[[先進国]]は順位・規模法則に従う場合が多い<ref name="nu3"/>{{#tag:ref|先進国であっても、フランスのように[[中央集権]]の強い国では順位・規模法則が成立しない<ref>高橋ほか(1997):75 - 76ページ</ref>。|group="注"}}。また、一国全体が順位・規模法則に従う場合、その国の中の部分的地域も、順位・規模法則に従う{{#tag:ref|このように、全体と部分が[[相似]]であるものを[[自己相似]]という<ref>杉浦ほか(2005):143ページ</ref>。|group="注"}}ことが可能であることが、[[シミュレーション]]と[[理論]]を用いて明らかになっている<ref>Suzuki(1983):61ページ</ref>。鈴木啓祐はこれを「ジップの順位規模法則の可分解性」と命名した<ref>Suzuki(1983):62ページ</ref>。 == 順位・規模のパターン == [[File:Relation between cities' population and cities' rank.png|thumb|'''都市の人口規模と人口順位の関係'''<br />両対数グラフで示している。]] 世界各国の都市の順位と都市の規模を両対数グラフで示すと、3種類のパターンに分けることができる<ref name="nu5"/>。 #順位・規模パターン(グラフ中の{{Color|#98FB98|■}}[[緑色]]の[[直線]]) #:'''対数正規型'''ともいう<ref name="張(2006):96ページ">張(2006):96ページ</ref>。主に先進国のように高度に都市化が進んでいる国でみられる<ref name="nu3"/>。[[外国]]への[[経済]]依存が低く、[[政体]]は[[連邦制]]である国がこのパターンになりやすい<ref name="nu4">高橋ほか(1997):78ページ</ref>。 #プライメイトパターン(グラフ中の{{Color|#FF0000|■}}[[赤色]]の[[曲線]]) #:'''首位都市型'''ともいう<ref name="張(2006):96ページ"/>。主に人口が少なく[[面積]]の小さい国に見られるが、例外的にフランスはこのパターンを示す<ref name="nu5">高橋ほか(1997):76ページ</ref>。外国への[[経済]]依存が高く、経済への[[政府]]の介入の多い国がこのパターンになりやすい<ref name="nu4"/>。経済発展の過程で次第に順位・規模法則パターンに移行していく<ref name="nu4"/>。 #ポリーナリィパターン(グラフ中の{{Color|#0000CD|■}}[[青色]]の曲線) #:複数の都市がほぼ同規模で上位を占め、下位の都市が順位・規模法則パターンを示す<ref name="nu5"/>。[[オーストラリア]]などに見られる<ref name="nu5"/>。 === プライマシィ指数 === '''プライマシィ指数'''(Index of primacy、'''首位性指数''')は、[[プライメイトシティ]](首位都市)の首位性(プライマシィ、primacy)を測定する指標である<ref name="nu5"/><ref name="張(2006):96ページ"/>。この値が高いほど首位性が高い、すなわちプライメイトパターンに近いと言える<ref name="nu5"/>。プライマシィ指数は第1位の都市の人口を第2位の都市の人口で割って算出する<ref name="nu5"/>。例えばフランスの場合、[[パリ]]大都市圏の人口が931.9万人、第2位の[[リヨン]]大都市圏の人口が126.2万人(いずれも1990年現在)である<ref name="nu3"/>から、プライマシィ指数Iは、I=931.9/126.2≒7.384となる。日本の場合、[[関東大都市圏]]の人口が37,273,866人、第2位の[[近畿大都市圏]]の人口が19,302,746人(いずれも2015年10月1日現在、[[国勢調査]])であるから、プライマシィ指数Iは、I=37273866/19302746≒1.931となる。[[発展途上国]]、とくに[[ラテンアメリカ]]諸国は高い値を示す<ref name="nu5"/>。 首位性が高い(プライマシィ指数が高い)ことは、国全体の[[規模の経済]]・[[集積の経済]]の恩恵を受けることができるとする肯定的見解と、[[生活水準]]の不均衡や[[農村]]の退廃をもたらすとする否定的見解の両方がある<ref name="nu4"/>。 == 適用例 == 順位・規模法則をさまざまな地域に適用しようとする試みが多くの研究者によってなされている。ここでは一例を示す。 * [[日本]]への適用 - 吉村(1995)は日本の全[[市町村]]と全[[市]]、流通経済圏としてのエリアの3種類のデータ群に順位規模法則の適用を試みた<ref name="y1">吉村(1995):38 - 41ページ</ref>。全市町村では1000位から2800位までの間{{#tag:ref|調査時点の日本の市町村数は3245あった<ref>吉村(1995):40ページ</ref>。|group="注"}}で順位・規模法則が成立、全市では不成立、エリアでは緩い基準を使えば成立することが分かった<ref name="y1"/>。 * [[中華人民共和国|中国]]への適用 - 張(2006)は中国の東部を[[北京市|北京]]・[[天津市|天津]]地域、[[上海市|上海]]を含む[[長江デルタ]]地域、[[広州市|広州]]を含む[[珠江デルタ]]地域の3つに分け、それぞれに順位・規模法則の適用を試みた<ref>張(2006):95ページ</ref>。この結果、古い都市の多い北京・天津地域は順位・規模法則パターン、上海への集中が著しい長江デルタ地域はプライメイトパターン、外資系企業の投資により都市成長が進む珠江デルタ地域はプライメイトパターンと順位・規模法則パターンの中間形態を示した<ref>張(2006):96 - 101ページ</ref>。 * [[日本]]の[[テーマパーク]]への適用 - 角本(2008)は都市の人口をテーマパークの年間入場者数、都市の順位を年間入場者数の順位に置き換えて、[[1994年]]から[[2004年]]までのデータを1年ごとに順位・規模法則へ適用しようとした<ref>角本(2008):6ページ</ref>。角本が使用したデータは[[社団法人]][[日本観光協会]]が発行する『数字で見る観光』であり、そこには[[東北サファリパーク]]・[[東京ディズニーランド]]・[[志摩スペイン村]]・[[ユニバーサル・スタジオ・ジャパン|ユニバーサルスタジオジャパン]]・[[シーガイア]]など20のテーマパークが掲載されていた<ref>角本(2008):5ページ</ref>。この結果、各年とも順位・規模法則に従うことが示された<ref>角本(2008):6 - 15ページ</ref>。 <gallery mode="packed-hover" heights="400"> Rank-Size Rule in Japan 1920-1980.svg|日本における順位・規模法則の変遷(対数グラフ)。<br>1920年は順位・規模パターンであったが、1980年には首位パターンとなっている。 </gallery> == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} === 注釈 === {{Notelist2}} === 出典 === {{Reflist|25em}} == 参考文献 == * 角本伸晃(2008)"テーマパーク入場者数の規模分布"[[愛知大学]]経営総合科学研究科ディスカッション・ペーパー・シリーズ.08-01:23pp. * 張 長平(2006)"中国東部地域における都市の順位規模に関する実証分析"国際地域学研究([[東洋大学]][[国際地域学部]]) * 杉浦章介・松原彰子・武山政直・髙木勇夫『人文地理学―その主題と課題―』[[慶應義塾大学出版会]]、2005年4月20日、389pp. ISBN 4-7664-1132-3 * [[高橋伸夫 (地理学者)|高橋伸夫]]・[[菅野峰明]]・[[村山祐司]]・伊藤悟『新しい都市地理学』[[東洋書林]]、1997年9月17日、237pp. ISBN 4-88721-302-6 * 吉村 弘(1995)"都市の順位・規模の法則について―1990年の日本の場合―"地域経済研究([[広島大学]][[経済学部]]附属地域経済システム研究センター).6:37-42. * 吉村 弘・山根 薫(2004)"日本における都市の階層性と空間構造―「規模」と「距離」による都市間構造分析―"地域経済研究(広島大学経済学部附属地域経済システム研究センター).15:3-13. * Yoko Konishi and Yoshihiko Nishiyama(2009)"Hypothesis testing in rank-size rule regression"Mathematics and Computers in Simulation(International Congress on Modelling and Simulation).79(9):2869-2878. * Suzuki Keisuke(1983)"Decomposability and Composability of the Zipf's Rank-size Rule"流通經濟大學論集([[流通経済大学]]).17(3):33-62. == 関連項目 == * [[都市地理学]] * [[ジップの法則]] * [[パレートの法則]] * [[フラクタル]] * [[自己組織化]] == 外部リンク == * [http://www.linz.jp/worldpop/jp07/310.html 十大都市人口による総人口推計理論と推計モデル] * [http://www.clb.mita.keio.ac.jp/econ/takeyama/field/juni.html 順位規模法則<曲線>] {{都市}} {{都市計画}} {{デフォルトソート:しゆんいきほほうそく}} [[Category:都市地理学]] [[Category:経済学の法則]] [[Category:統計学の法則]] [[Category:人口]] [[Category:フラクタル]]
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