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'''高血糖'''(こうけっとう、{{Lang-en-short|hyperglycemia}})とは、[[血糖値]]が高い'''[[状態]]'''<ref>{{Cite web |title=高血糖 |url=https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-025.html#:~:text=%E9%AB%98%E8%A1%80%E7%B3%96%EF%BC%88%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%91%E3%81%A3%E3%81%A8%E3%81%86%EF%BC%89,%E9%AB%98%E8%A1%80%E7%B3%96%E3%82%92%E3%81%BE%E3%81%AD%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 |website=e-ヘルスネット 情報提供 |access-date=2025-02-09 |language=ja}}</ref>。主に[[糖尿病]]([[:en:Diabetes_mellitus|Diabetes mellitus]])の症状であり、 英語「[[:en:Hyperglycemia|hyperglycemia]]」「High Blood Sugar<ref>{{Cite web |title=Hyperglycemia: Symptoms, Causes, and Treatments |url=https://www.yalemedicine.org/conditions/hyperglycemia-symptoms-causes-treatments |website=Yale Medicine |access-date=2025-02-09 |language=en}}</ref>」やドイツ語「[[:de:Hyperglykämie|Hyperglykämie]]」などから分かるように[[病名]]ではない。 日本語における糖尿病(Diabetes mellitus)を「'''高血糖症'''」「'''慢性高血糖症'''」「'''高血糖症候群'''」のどれかに呼び替えようという意見はある<ref name=":0">{{Cite web |title=「ダイアベティス」か「高血糖症」か 糖尿病の言い換えを考える:朝日新聞 |url=https://www.asahi.com/articles/ASR9Z3330R9ZTIPE001.html |website=朝日新聞 |date=2023-10-02 |access-date=2025-02-09 |language=ja}}</ref>。高血糖とは、通常[[血糖値]]が10mmol/L(180mg/dL)以上からとされるが、15-20mmol/L(270-360mg/dL)あるいは15.2-32.6mmol/Lまで顕著な症状を示さないこともある。しかし125mg/dL以上の状態が慢性的に続くと臓器障害を生じうる。英語の hyperglycemia の語源は、ギリシア語で''hyper-'' 過度に、''-glyc-'' 甘い、''-emia'' 血液の状態、である。 == 高血糖状態を引き起こす原因 == === 糖尿病 === 空腹時においても持続する高血糖状態を'''慢性高血糖状態'''といい、これは最も一般的には[[糖尿病]]によって引き起こされる<ref>{{Cite web |title=1型糖尿病|一般の皆様へ|日本内分泌学会 |url=https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=90 |website=www.j-endo.jp |access-date=2025-02-09}}</ref>。また逆に慢性高血糖状態は糖尿病の診断基準のひとつになっている。間欠性高血糖状態は前糖尿病期にみられることがある。はっきりした原因がないのに高血糖状態の急性症状が現れた場合は、進行性糖尿病、もしくは糖尿病の素因を示している可能性がある。 糖尿病における高血糖状態は、糖尿病のタイプと進行度に応じて、通常、[[インスリン]]濃度低下、および細胞レベルでのインスリン耐性によって引き起こされる。インスリン濃度低下、およびインスリン耐性により、体内のグルコースから[[グリコーゲン]](主に肝臓に貯蔵されるデンプン様のエネルギー源)への転換が抑制され、その結果、血液中の過剰なグルコースの除去が困難、または不可能になる。糖毒性を生じない通常のグルコース濃度では、任意の時点での血液中の全グルコース量は、20~30分間体内にエネルギーを補給するのにぎりぎり十分な量であり、体内調節機能によってグルコース濃度が精密に維持されなければならない。この機能が低下しグルコースが正常値を超えると、高血糖状態が生じる。 [[グルコース]]はその[[アルデヒド基]]の反応性の高さから[[タンパク質]]を修飾する作用([[メイラード反応]]参照)があり、グルコースによる修飾は主に細胞外のタンパク質に対して生じる。細胞内に入ったグルコースはすぐに解糖系により代謝されてしまう。インスリンによる血糖の制御ができず生体が高濃度のグルコースにさらされるとタンパク質修飾のために糖毒性が生じ、これが長く続くと[[糖尿病合併症]]とされる微小血管障害によって生じる[[糖尿病性神経障害]]、[[糖尿病性網膜症]]、[[糖尿病性腎症]]などを発症する<ref>http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/aging/doc3/doc3-03-5.html 生体分子に起こる加齢変化 05-異常たんぱく質はなぜ増えるのか?</ref>。 === 薬剤性 === 高血糖状態のリスクを増大させる薬剤には、[[βブロッカー]]、[[アドレナリン]]、[[サイアザイド]]([[利尿剤]])、[[コルチコステロイド]]、[[ナイアシン]]、[[ペンタミジン]]、[[プロテアーゼ阻害薬]]、[[L-アスパラギナーゼ]]<ref>{{cite journal |author=Cetin M, Yetgin S, Kara A, ''et al.'' |title=Hyperglycemia, ketoacidosis and other complications of L-asparaginase in children with acute lymphoblastic leukemia |journal=J Med |volume=25 |issue=3-4 |pages=219–29 |year=1994 |pmid=7996065}}</ref>、一部の[[向精神薬]]<ref>{{cite journal |author=Luna B, Feinglos MN |title=Drug-induced hyperglycemia |journal=JAMA |volume=286 |issue=16 |pages=1945–8 |year=2001 |pmid=11667913 | doi = 10.1001/jama.286.16.1945}}</ref>などがある。[[アンフェタミン]]など[[覚醒剤]]の一時的な投与は高血糖状態を引き起こすのに対し、慢性的な使用は[[低血糖症]]を引き起こす。 === 急性疾患との併発 === [[脳卒中]]や[[心筋梗塞]]のような急性疾患を発症する患者は、糖尿病と診断されていなくても、高い比率で高血糖症状態を進行させていることがある。この場合の高血糖状態は良性ではないこと、また、急性疾患に併発する高血糖状態は、脳卒中や心筋梗塞後の死のリスクの高さと関連することが、ヒトおよび動物を使った試験で示唆されている<ref>{{cite journal |author=Capes SE, Hunt D, Malmberg K, Pathak P, Gerstein HC |title=Stress hyperglycemia and prognosis of stroke in nondiabetic and diabetic patients: a systematic overview |journal=Stroke |volume=32 |issue=10 |pages=2426–32 |year=2001 |pmid=11588337 |doi=10.1161/hs1001.096194}}</ref>。 糖尿病がなく、血漿グルコース値が120 mg/dLを超えているときは、[[敗血症]]が疑われる。 === 生理的反応 === 高血糖症状態は感染時や炎症時に自然に起きる。身体にストレスがかかると、内因性の[[カテコールアミン]]が放出され、他の要因ともあいまって、血中グルコース濃度を上昇させるように働く。上昇の程度は個人によって、また炎症反応の種類によって異なる。よって初めて高血糖状態を示した患者に先在する疾患がある場合は、糖尿病の診断には慎重でなければならない。空腹時血漿グルコース値、任意時血漿グルコース値、食後2時間血漿グルコース値の測定など詳細な検査が必要とされる。 == 検査値と定義 == グルコース値は以下のいずれかの単位に従って測定する。 # 1デシリットルあたりのミリグラム数(mg/dL)。アメリカ、日本、フランス、エジプト、コロンビアなどで用いられる。 # 1リットルあたりのミリモル数(mmol/L)。1デシリットルあたりのミリグラム数(mg/dL)を18で割っても得られる。式は、<math>\rm{ mmol/L = mg/dL \div 18}</math> 科学雑誌では mmol/L の使用に移行しつつある。当面のところ mmol/L を優先単位とし、かっこ内に mg/dL を併記する雑誌もある<ref>[http://www.faqs.org/faqs/diabetes/faq/part1/section-9.html What are mg/dl and mmol/l? How to convert?]</ref>。 対応表<ref>[http://www.faqs.org/faqs/diabetes/faq/part1/section-9.html Mg/dL to mmol/L Conversions]</ref> {| class="wikitable" text-align:center" ! mg/dL !! mmol/L |- |72 ||4 |- |90 || 5 |- |108 || 6 |- |126 || 7 |- |144 || 8 |- |180 || 10 |- |270 || 15 |- |288 || 16 |- |360 || 20 |- |396 || 22 |- |594 || 33 |} グルコース値は、食前、食後、また一日の各時間によっても変化する。正常値の定義は医師によって異なるが、一般には、大多数の人(空腹時成人)の正常値はおおよそ 80〜110 mg/dL もしくは 4〜6 mmol/L である。継続して126 mg/dL もしくは 7 mmol/L 以上の患者は一般に高血糖症であるとみなされ、 70 mg/dL もしくは 4 mmol/L 以下の患者は[[低血糖|低血糖状態]]であると考えられる。[[空腹]]時成人では、血漿グルコース値が 126 mg/dL もしくは 7 mmol/L を超えないようにしなければならない。[[血糖]]値が高い状態が続くと、血管および血管を通じて血液を供給する臓器を傷害し、糖尿病の合併症を引き起こすことがある。 慢性高血糖状態は [[HbA1c]] 検査によって診断する。急性高血糖状態の定義は研究によって異なるが、8〜15 mmol/L 程度である<ref>{{cite journal |author=Giugliano D, Marfella R, Coppola L, ''et al.'' |title=Vascular effects of acute hyperglycemia in humans are reversed by L-arginine. Evidence for reduced availability of nitric oxide during hyperglycemia |journal=Circulation |volume=95 |issue=7 |pages=1783–90 |year=1997 |pmid=9107164}}</ref>。 == 合併症 == 一時的な高血糖状態は、良性で無症候性のことが多く、血中グルコース濃度が相当の期間正常値を大きく超えていても、恒久的な影響や症状を示さないことがある。しかし、慢性高血糖状態では、正常値よりやや高い程度でも、多年にわたり、腎障害、神経損傷、心筋損傷、[[糖尿病性網膜症]]など、さまざまな重篤な合併症を併発する。 慢性高血糖状態の原因として圧倒的に多いのは糖尿病である。糖尿病の治療目標は、長期にわたる重篤な合併症の発症を防ぐために、血糖値をできるだけ正常値に近づけることである。 急性高血糖状態でグルコース値が極めて高いときは、緊急治療の対象となる。[[糖尿病性ケトアシドーシス]]など、重篤な合併症を短期間で引き起こすことがある。インスリン依存型糖尿病を放置していた患者にもっとも多くみられる。 == 症状 == 急性・慢性高血糖状態と関連し、以下の各症状がみられることがある。はじめの3つは高血糖状態の古典的三徴である。 * [[大食症]] * [[煩渇多飲]] * [[多尿症]] * かすみ目 * [[疲労]] (眠気) * 体重減少 * [[外傷]](切り傷、すり傷など)の治りが悪い * [[口腔乾燥症]] * 乾燥肌、[[皮膚]]のかゆみ * [[勃起不全]] (男性) * [[感染症]]の多発 - 膣[[カンジダ]]症、鼠蹊部発疹、スイマーズイヤー(外耳[[緑膿菌]]感染症)など * [[クスマウル呼吸]] * [[不整脈]] * [[昏迷]] * [[昏睡]] 他の症状がなく頻繁な空腹のみがみられるときも、血糖値が低すぎることを示している場合がある。これは、糖尿病患者への[[経口血糖降下薬]]やインスリンの投与が食事量に対して多すぎる場合におきる。投与によって血糖値が正常値以下になると空腹を訴えることが多くなり、このときの空腹感は通常の場合 1型糖尿病、特に若年性のものと比べればさほど顕著ではないが、経口血糖降下薬の処方が困難になることがある。 煩渇多飲や多尿症は、血中グルコース濃度が上昇した結果腎臓から過剰にグルコースが排泄され([[尿糖]])、浸透圧利尿が生じたときに起こる。 [[糖尿病性ケトアシドーシス]]の症状には次のようなものがある。 * [[ケトアシドーシス]] * 意識レベルの低下、混濁 * [[尿糖]]や浸透圧利尿による脱水症状 * 急な空腹感、口渇感 * 呼気に果物のような甘いにおいがする * うつ、不安を伴う認知機能障害<ref>{{cite journal |author=Pais I, Hallschmid M, Jauch-Chara K, ''et al.'' |title=Mood and cognitive functions during acute euglycaemia and mild hyperglycaemia in type 2 diabetic patients |journal=Exp. Clin. Endocrinol. Diabetes |volume=115 |issue=1 |pages=42–6 |year=2007 |pmid=17286234 |doi=10.1055/s-2007-957348}}</ref><ref>{{cite journal |author=Sommerfield AJ, Deary IJ, Frier BM |title=Acute hyperglycemia alters mood state and impairs cognitive performance in people with type 2 diabetes |journal=Diabetes Care |volume=27 |issue=10 |pages=2335–40 |year=2004 |pmid=15451897| doi = 10.2337/diacare.27.10.2335}}</ref> == 予防法・対処法 == 高血糖の予防法は 1日3食規則正しく糖質控えめ、野菜から先に、よく噛むこおである<ref>{{Cite web |title=高血糖の予防法 {{!}} 糖尿病サイト |url=https://www.club-dm.jp/know/basic/hyperglycemia_03.html |website=www.club-dm.jp |access-date=2025-02-09 |language=ja}}</ref>。 既に高血糖状態である際には、原因となる[[基礎疾患]]を除去することが必要になる。たとえば、原因の基礎疾患が糖尿病であるならば、糖尿病の治療をするということになる。夏の糖尿病患者に起こりやすい'''急性高血糖'''は多くの場合、医師の指導の下で[[インスリン]]の自己注射によって治療が可能である。[[ペクチン]]は小腸からは吸収されないが食後の血糖値の上昇を抑える効果がある<ref>[https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shokumotsu-seni.html 「食物繊維の働きと1日の摂取量」]。[[長寿科学振興財団]]。2023年。</ref><ref>{{Citation|title=特集 真夏の診察室 夏に悪化しやすい症状・疾患とその予防・管理 夏の急性高血糖問題と予防的管理-糖尿病をコントロールして「夏」を安全に乗り切るために|last=小比賀|first=美香子|date=2020-07-10|url=https://doi.org/10.11477/mf.1402227081|doi=10.11477/mf.1402227081|access-date=2025-02-09}}</ref>。 == 関連項目 == * [[低血糖症|低血糖状態]]-糖尿病らが服用する血糖値を下げる薬の服用で起こることがある。 * [[糖尿病]]-インスリンが十分に働かないために、血液中を流れる糖が増えてしまっている病気、慢性高血糖症<ref name=":0" /> * [[糖尿病性昏睡]]-糖尿病の急性合併症 * [[異性化糖]] -ぶどう糖と果糖が混合した液状の糖 ==出典== {{reflist|2}} == 外部リンク == *[http://www.diabetes.org/type-1-diabetes/hyperglycemia.jsp Hyperglycemia information] - アメリカ糖尿病学会(American Diabetes Association)のページ *[http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/007228.htm Hyperglycemia in infants] - MedlinePlus {{血液検査}} {{DEFAULTSORT:こうけつとうしよう}} [[Category:内分泌学]] [[Category:糖尿病]]
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