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{{DISPLAYTITLE:''C''<sub>0</sub>半群}} [[数学]]、特に[[関数解析学]]の分野における'''''C''<sub>0</sub>-半群'''(''C''<sub>0</sub>-はんぐん、{{Lang-en-short|''C''<sub>0</sub>-semigroup}})あるいは'''強連続1パラメータ半群'''とは、[[指数関数]]のひとつの一般化である。線型のスカラー定数を係数とする[[常微分方程式]]の解が[[指数関数]]で与えるように、[[バナッハ空間]]における線型の定数係数常微分方程式の解は、[[強連続半群]]によって与えられる。そのような[[バナッハ空間]]における微分方程式は、例えば{{仮リンク|遅延微分方程式|en|delay differential equation|de|Retardierte Differentialgleichung|es|Ecuaciones diferenciales con retardo}}や[[偏微分方程式]]の分野において現れる。 正式には、[[強連続半群]]とは、[[強作用素位相]]において連続なバナッハ空間 ''X'' 上の半群 ('''R'''<sub>+</sub>,+) の表現である。したがって、厳密に言うと、[[強連続半群]]は[[半群]]ではなく、むしろ非常に特殊な[[半群]]の連続的な表現と言える。 {{main|強連続半群}} ==定義== [[バナッハ空間]] <math>X</math> 上の'''強連続半群'''とは、次の性質を満たすような写像<math> T : \mathbb{R}_+ \to L(X) </math>のことである: # <math> T(0) = I </math>, (<math>X</math> 上の[[恒等写像|恒等作用素]]) # <math>\forall t,s \ge 0 : \ T(t + s) = T(t) T(s)</math> # <math>\forall x_0 \in X: \ \|T(t) x_0 - x_0\| \to 0</math>, as <math>t\downarrow 0</math>. 初めの二つの公理は代数的なもので、<math>T</math> が半群 (<math>\mathbb{R}_+,+</math>) の表現であることを意味している。最後の公理は位相的なものであり、写像 <math>T</math> が[[強作用素位相]]において[[連続 (数学)|連続]]であることを意味している。 ==簡単な例== ''A'' を[[バナッハ空間]] ''X'' 上の[[有界作用素]]とする。このとき、 :<math>T(t)={\rm e}^{tA}:=\sum_{k=0}^\infty\frac{A^k}{k!}t^k</math> は強連続半群(実際には、{{仮リンク|作用素の位相|label=一様作用素位相|en|Operator topologies}}においても連続)である。逆に、任意の一様連続半群には必ず上の形に書けるような[[有界線型作用素]] ''A'' が存在する<ref name="Engeland">Engel and Nagel Theorem I.3.7</ref>。特に、''X'' が有限次元のバナッハ空間であるなら、任意の強連続半群には必ず上の形に書けるような[[線型作用素]] ''A'' が存在する<ref>Engel and Nagel Theorem I.2.9</ref>。 ==無限小生成作用素== 強連続半群 ''T'' の'''無限小生成作用素''' ''A'' は : <math> A\,x = \lim_{t\downarrow0} \frac1t\,(T(t)- I)\,x </math> によって定義される(右辺の極限が存在する場合)。''A'' の定義域 ''D''(''A'') は、そのような極限が存在するような ''x∈X'' からなる集合である。''D''(''A'') は線型部分空間で、''A'' はその定義域上で線型である<ref>Partington (2004) page 23</ref>。''A'' は必ずしも[[有界作用素|有界]]ではないが、[[閉作用素|閉]]であり、またその定義域は ''X'' において[[稠密集合|稠密]]である<ref>Partington (2004) page 24</ref>。 生成作用素 ''A'' を備える強連続半群 ''T'' は、しばしば記号 ''e<sup>tA</sup>'' を用いて表される。この記法は、[[行列指数関数]]や、[[汎函数計算]](例えば、[[スペクトル定理]])を通して定義される作用素の関数に対する記法と適合する。 ==抽象的コーシー問題== 次のような抽象的[[コーシー問題]]を考える: :<math>u'(t)=Au(t),~~~u(0)=x.</math> ここで ''A'' は[[バナッハ空間]] ''X'' 上の[[閉作用素]]とし、''x∈X'' とする。この問題の解には、次のような二つの概念がある: * 連続的微分可能な関数 ''u:[0,∞)→X'' で、すべての ''t'' ≥ 0 に対して ''u''(''t'') ∈ ''D''(''A'') を満たし、かつ与えられた初期条件を満たすものは、上のコーシー問題の'''古典解'''と呼ばれる。 * 連続関数 ''u'':[0,∞) → ''X'' で :<math>\int_0^t u(s)\,ds\in D(A)\text{ and }A \int_0^t u(s)\,ds=u(t)-x </math> を満たすようなものは、上のコーシー問題の'''軟解'''と呼ばれる。 すべての古典解は、軟解である。軟解が古典解であるための必要十分条件は、それが連続的微分可能であることである<ref>Arendt et. al. Proposition 3.1.2</ref>。 次の定理は、抽象的コーシー問題と強連続半群の関係に関するものである。 '''定理<ref>Arendt et. al. Theorem 3.1.12</ref>''' ''A'' をバナッハ空間 ''X'' 上の閉作用素とする。以下の主張は同値である: # すべての ''x∈X'' に対して、抽象的コーシー問題には唯一つの軟解が存在する。 # 作用素 ''A'' はある強連続半群を生成する。 # ''A'' の[[レゾルベント集合]]は空でなく、すべての ''x'' ∈ ''D''(''A'') に対して、抽象的コーシー問題には唯一つの古典解が存在する。 これらの主張が成立するとき、コーシー問題の解は ''u''(''t'') = ''T''(''t'')''x'' によって与えられる。ただし、''T'' は ''A'' によって生成される強連続半群である。 ==生成定理== コーシー問題と関連して、たいていある[[線型作用素]] ''A'' が与えられたときに、それが強連続半群の生成素となるかどうかという点が問題になる。この問題の答えとなるような定理は、'''生成定理'''と呼ばれる。強連続半群を生成する作用素に関するひとつの完璧な特徴づけは、[[ヒレ-吉田の定理]]によって与えられた。また、より実践的に重要でありながら、確認するのが簡単な条件は[[ルーマー-フィリップスの定理]]によって与えられた。 ==半群の特殊な類== ===一様連続半群=== 強連続半群 ''T'' は、もし ''t'' → ''T''(''t'') が [0, ∞) から ''L''(''X'') への連続写像であるなら、'''一様連続'''であると言われる。 一様連続半群の生成素は、[[有界作用素]]である<ref name="Engeland" />。 ===解析半群=== {{Main|解析半群}} ===縮小半群=== {{Main|縮小半群}} ===微分可能な半群=== 強連続半群 ''T'' は、もし ''T(t<sub>0</sub>)X⊂D(A)''(あるいは、それと同値な条件として、すべての ''t'' ≥ ''t''<sub>0</sub> に対して ''T''(''t'')''X'' ⊂ ''D''(''A''))が成立するようなある ''t''<sub>0</sub> > 0 が存在するなら、'''終局的に微分可能'''と呼ばれる。また、もしすべての ''t'' > 0 に対して ''T''(''t'')''X'' ⊂ ''D''(''A'') が成立するなら'''直ちに微分可能'''と呼ばれる。 すべての解析半群は、直ちに微分可能である。 コーシー問題における、一つの同値な特徴づけは次のようなものである: ''A'' によって生成される強連続半群が終局的に微分可能であるための必要十分条件は、すべての ''x'' ∈ ''X'' に対して抽象的コーシー問題の解 ''u'' が (''t''<sub>1</sub>, ∞) 上で微分可能となるようなある ''t''<sub>1</sub> ≥ 0 が存在することである。もし ''t''<sub>1</sub> をゼロとなるように選ぶことが出来るのであれば、そのような半群は直ちに微分可能となる。 ===コンパクト半群=== 強連続半群 ''T'' は、もし ''T''(''t''<sub>0</sub>) が[[コンパクト作用素]]となるようなある ''t''<sub>0</sub> > 0 が存在するなら、'''終局的にコンパクト'''と呼ばれる(この条件は、すべての ''t'' ≥ ''t''<sub>0</sub> に対して ''T''(''t'') がコンパクトであることと同値である<ref>Engel and Nagel Lemma II.4.22</ref>)。もしすべての ''t'' > 0 に対して ''T''(''t'') がコンパクト作用素であるなら、そのような半群は'''直ちにコンパクト'''であると呼ばれる。 ===ノルム連続半群=== 強連続半群は、もし ''t'' → ''T''(''t'') が (''t''<sub>0</sub>, ∞) から ''L''(''X'') への連続写像となるようなある ''t''<sub>0</sub> ≥ 0 が存在するなら、'''終局的にノルム連続'''であると呼ばれる。もし ''t''<sub>0</sub> をゼロとして選ぶことが出来るなら、そのような半群は'''直ちにノルム連続'''であると呼ばれる。 直ちにノルム連続であるような半群に対して、''t'' → ''T''(''t'') は ''t'' = 0 においては連続とならない可能性があることに注意されたい(もし連続であるなら、その半群は一様連続となる)。 解析半群、(終局的に)微分可能な半群、(終局的に)コンパクトな半群は、すべて終局的にノルム連続な半群である<ref>Engel and Nagel (diagram II.4.26)</ref>。 ==安定性== ===指数安定性=== 半群 ''T'' の'''成長上限'''は、定数 : <math> \omega_0 = \lim_{t\downarrow0} \frac1t \log \| T(t) \| </math> によって定義される。この数は : <math>\|T(t)\| \leq Me^{\omega t}</math> がすべての ''t'' ≥ 0 に対して成立する定数 ''M'' (≥ 1) が存在するような実数 ''ω'' の下限として与えられることから、そのような呼ばれ方をしている。 次に述べる条件はすべて同値である<ref>Engel and Nagel Section V.1.b</ref>: #すべての ''t'' ≥ 0 に対して <math>\|T(t)\|\leq M{\rm e}^{-\omega t}</math> が成立するような M,ω>0 が存在する。 #成長上限 ''ω''<sub>0</sub> < 0 は負である。 #その半群は[[作用素位相|一様作用素位相]]においてゼロに収束する。すなわち、<math>\lim_{t\to\infty}\|T(t)\|=0</math> となる。 #<math>\|T(t_0)\|<1</math> であるようなある ''t''<sub>0</sub> > 0 が存在する。 #''T''(''t''<sub>1</sub>) の[[スペクトル半径]]が厳密に 1 より小さくなるような ''t''<sub>1</sub> > 0 が存在する。 #すべての ''x∈X'' に対して <math>\int_0^\infty\|T(t)x\|^p\,dt<\infty</math> となるような ''p'' ∈ [1, ∞) が存在する。 #すべての ''p'' ∈ [1, ∞) および ''x'' ∈ ''X'' に対して、<math>\int_0^\infty\|T(t)x\|^p\,dt<\infty </math> が成立する。 これらの同値な条件を満たす半群は、'''指数安定'''あるいは'''一様安定'''であると言われる(関連文献においては、上の初めの三つの条件のうちのいずれかが定義として扱われることが多い)。''L<sup>p</sup>'' の条件が指数安定性と同値であることは、'''ダツコ-ペジーの定理'''として知られる。 ''X'' が[[ヒルベルト空間]]である場合には、生成素の[[レゾルベント作用素]]に関する、次のような別の条件もまた半群の指数安定性と同値となる: 正の実部を持つすべての複素数 ''λ'' は ''A'' のレゾルベント集合に属し、そのレゾルベント作用素は右半平面において一様有界となる。すなわち、(''λI'' − ''A'')<sup>−1</sup> は[[ハーディ空間]] <math>H^\infty(\mathbb{C}_+;L(X))</math> に属する<ref>Engel and Nagel Theorem V.1.11</ref>。これは'''ギアハート-プルスの定理'''と呼ばれる。 作用素 ''A'' の'''スペクトル上限'''は、定数 :<math>s(A):=\sup\{{\rm Re}\lambda:\lambda\in\sigma(A)\}</math> として定義される。ただし、''A'' の[[スペクトル (関数解析学)|スペクトル]] <math>\sigma(A)</math> が空である場合には、''s''(''A'') = −∞ とする。 半群の成長上限とスペクトル上限には、''s(A)≤ω<sub>0</sub>(T)'' という関係がある<ref>Engel and Nagel Proposition IV2.2</ref>。''s''(''A'') < ''ω''<sub>0</sub>(''T'') となるような例もいくつかの文献で見られる<ref>Engel and Nagel Section IV.2.7, Luo et. al. Example 3.6</ref>。もし ''s''(''A'') = ''ω''<sub>0</sub>(''T'') であるなら、''T'' は'''スペクトル決定成長条件'''(spectral determined growth condition)を満たしているといわれる。終局的にノルム連続な半群は、スペクトル決定成長条件を満たしている<ref>Engel and Nagel Corollary 4.3.11</ref>。このことから、それらの半群の指数安定性と同値な条件がまた得られる: *終局的にノルム連続な半群が指数安定であるための必要十分条件は、''s''(''A'') < 0 である。 終局的にコンパクトな半群、終局的に微分可能な半群、解析半群、および一様連続半群は、終局的にノルム連続であるため、スペクトル決定成長条件を満たしている。 ===強安定性=== 強連続半群 {{mvar|T}} は、すべての {{math|''x'' ∈ ''X''}} に対して <math>\lim_{t\to\infty}\|T(t)x\|=0</math> が成立するなら、'''強安定'''あるいは'''漸近安定'''と呼ばれる。 指数安定性は強安定性を意味するが、その逆は、{{mvar|X}} が無限次元である場合には一般的には成り立たない(もし {{mvar|X}} が有限次元であるなら、その逆も成立する)。 次に述べる、強安定性のための十分条件は'''アレンド-バッティ-リュビッヒ-フォンの定理'''と呼ばれる<ref>Arendt and Batty, Lyubich and Phong</ref>: # {{mvar|T}} は有界である。ある {{math|''M'' ≥ 1}} が存在して <math>\|T(t)\|\leq M</math> が成り立つ。 # {{mvar|A}} は虚軸上に{{仮リンク|剰余スペクトル|en|residual spectrum<!-- リダイレクト先の「[[:en:Decomposition of spectrum (functional analysis)]]」は、[[:ja:スペクトル分解 (関数解析学)]] とリンク -->}}を持たない。 # 虚軸上に位置する {{mvar|A}} のスペクトルは可算個である。 であるなら、{{mvar|T}} は強安定である。 もし {{mvar|X}} が回帰的であるなら、これらの条件は次のように簡略化される: もし {{mvar|T}} が有界で、{{mvar|A}} は虚軸上に固有値を持たず、虚軸上の {{mvar|A}} のスペクトルは可算個であるなら、{{mvar|T}} は強安定である。 ==関連項目== * [[ヒレ-吉田の定理]] * [[ルーマー-フィリップスの定理]] * [[解析半群]] * [[縮小半群]] * [[行列指数関数]] * [[強作用素位相|強連続な作用素の族]] ==注釈== {{reflist|2}} ==参考文献== * {{cite book| last1=Hille|first1=E.|last2=Phillips|first2=R. S.|title=Functional Analysis and Semi-Groups|publisher=American Mathematical Society|year=1975|ref=harv}} * {{cite book|first1=R. F.|last1=Curtain|first2=H. J.|last2=Zwart|title=An introduction to infinite dimensional linear systems theory|publisher=Springer Verlag|year=1995|ref=harv}} * {{cite book|first=E. B.|last=Davies|title=One-parameter semigroups|series=L.M.S. monographs|publisher=Academic Press|year=1980|ISBN=0-12-206280-9|ref=harv}} *{{ citation | last1=Engel| first1=Klaus-Jochen| last2=Nagel| first2=Rainer | title=One-parameter semigroups for linear evolution equations | year=2000| publisher=Springer}} *{{ citation | last1=Arendt| first1=Wolfgang| last2=Batty| first2=Charles | last3=Hieber| first3=Matthias| last4=Neubrander| first4=Frank |title=Vector-valued Laplace Transforms and Cauchy Problems | year=2001| publisher=Birkhauser}} *{{ citation | last1=Staffans| first1=Olof| title=Well-posed linear systems | year=2005| publisher=Cambridge University Press}} *{{ citation | last1=Luo| first1=Zheng-Hua| last2=Guo| first2=Bao-Zhu | last3=Morgul| first3=Omer |title=Stability and Stabilization of Infinite Dimensional Systems with Applications | year=1999| publisher=Springer}} *{{ citation | last1=Arendt| first1=Wolfgang| last2=Batty| first2=Charles| title=Tauberian theorems and stability of one-parameter semigroups | year=1988| publisher=Transactions of the American mathematical society}} *{{ citation | last1=Lyubich| first1=Yu| last2=Phong| first2=Vu Quoc| title=Asymptotic stability of linear differential equations in Banach spaces | year=1988| publisher=Studia Mathematica}} *{{ citation | last=Partington | first=Jonathan R. | authorlink=:en:Jonathan Partington | title=Linear operators and linear systems | series=[[ロンドン数学会|London Mathematical Society]] Student Texts | issue=60 | publisher=[[Cambridge University Press]] | isbn=0-521-54619-2 | year=2004 }} {{DEFAULTSORT:C0しいせろはんくん}} [[Category:半群論]] [[Category:関数解析学]] [[Category:数学に関する記事]]
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