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{{出典の明記|date=2022-05-26 11:29 (UTC)}} [[ファイル:CNO Cycle.svg|right|thumb|CNOサイクルの模式図]] '''CNOサイクル''' (CNO cycle) とは[[恒星]]内部で[[水素]]が[[ヘリウム]]に変換される[[核融合]]反応過程の一種である。[[陽子-陽子連鎖反応]]が[[太陽]]程度かそれ以下の小質量星のエネルギー源であるのに対して、CNOサイクルは太陽より質量の大きな恒星での主なエネルギー生成過程である。 CNOサイクルの理論は[[1937年]]から[[1939年]]にかけて、[[ハンス・ベーテ]]と[[カール・フリードリヒ・フォン・ヴァイツゼッカー]]によって提唱された。ベーテはこの功績によって[[1967年]]の[[ノーベル物理学賞]]を受賞した。CNOサイクルの名前は、この反応過程に[[炭素]](C)・[[窒素]](N)・[[酸素]](O)の原子核が関わるところに由来する。 恒星内部での水素燃焼には陽子-陽子連鎖反応とCNOサイクルの両方が働いているが、CNOサイクルは大質量星のエネルギー生成過程に大きく寄与している。太陽内部でCNOサイクルによって生み出されるエネルギーは全体の約1.6%に過ぎない。 CNOサイクルは温度が約1,400万-3,000万[[ケルビン|K]]の環境で稼動する。さらに、サイクル反応が回り始めるための「種」として[[炭素12|<sup>12</sup>C]]や[[酸素16|<sup>16</sup>O]]といった原子核がある程度存在する必要がある。現在考えられている[[宇宙の元素合成|元素合成]]理論では、[[ビッグバン]]元素合成で炭素や酸素はほとんど生成されないと考えられるため、宇宙誕生後の第1世代([[星の種族|種族]]III)の恒星の内部ではCNOサイクルによるエネルギー生成は起こらなかったと考えられる。このような星の内部では[[トリプルアルファ反応]]によってヘリウムから炭素が合成された。やがてこれらの星が[[超新星]]爆発によって炭素を[[星間物質]]として供給したため、そこから生まれた第2世代以後の恒星では炭素原子核が最初から恒星内に含まれており、CNOサイクルの触媒として働くようになっている。 == CNO-1 サイクル == CNOサイクルの場合も陽子-陽子連鎖反応と同様に、4個の水素[[原子核]]が1個のヘリウム原子核に変換される。CNOサイクルの反応経路は以下の通りである。表中の「平均寿命」は各反応が進行する平均的な時間尺度を示す。 {| class="wikitable" |+ 反応経路 ! colspan="4" | 反応 ! 平均寿命 |- | style="border-style:none" | <chem>^{12}C\ + {}^1H</chem> | style="border-style:none" | <chem>-></chem> | style="border-style:none" | <chem>^{13}N\ + \gamma</chem> | style="border-style:none" | +1.95 M[[電子ボルト|eV]] | style="border-style:none solid" | 1.3 × 10{{sup|7}} 年 |- | style="border-style:none" | <chem>^{13}N</chem> | style="border-style:none" | <chem>-></chem> | style="border-style:none" | <chem>^{13}C\ + \mathit{e}^+\ + \nu_{\mathit{e}}</chem> | style="border-style:none" | +1.37 MeV | style="border-style:none solid" | 7 分 |- | style="border-style:none" | <chem>^{13}C\ + {}^1H</chem> | style="border-style:none" | <chem>-></chem> | style="border-style:none" | <chem>^{14}N\ + \gamma</chem> | style="border-style:none" | +7.54 MeV | style="border-style:none solid" | 2.7 × 10{{sup|6}} 年 |- | style="border-style:none" | <chem>^{14}N\ + {}^1H</chem> | style="border-style:none" | <chem>-></chem> | style="border-style:none" | <chem>^{15}O\ + \gamma</chem> | style="border-style:none" | +7.35 MeV | style="border-style:none solid" | 3.2 × 10{{sup|8}} 年 |- | style="border-style:none" | <chem>^{15}O</chem> | style="border-style:none" | <chem>-></chem> | style="border-style:none" | <chem>^{15}N\ + \mathit{e}^+\ + \nu_{\mathit{e}}</chem> | style="border-style:none" | +1.86 MeV | style="border-style:none solid" | 82 秒 |- | style="border-style:none" | <chem>^{15}N\ + {}^1H</chem> | style="border-style:none" | <chem>-></chem> | style="border-style:none" | <chem>^{12}C\ + {}^4He</chem> | style="border-style:none" | +4.96 MeV | style="border-style:none solid" | 1.12 × 10{{sup|5}} 年 |} 最後の反応で作られた <sup>12</sup>C が再び水素と融合することで、全体がサイクル反応となる。 この過程では <sup>12</sup>C, <sup>13</sup>C, <sup>14</sup>N, <sup>15</sup>N が水素と融合する反応が本質的であることから、CNサイクルと呼ばれる場合もある。途中で生成される <sup>13</sup>N と <sup>15</sup>O は不安定な[[核種]]で、短時間で[[ベータ崩壊]]して[[陽電子]]と[[電子ニュートリノ]]を放出する。 このサイクルで行なわれる正味の反応は、4個の水素原子核([[陽子]])が融合して1個のヘリウム原子核([[アルファ粒子]])と2個の陽電子、2個のニュートリノに変換され、エネルギーが[[ガンマ線]]として放射されるというものである。反応過程に現れる炭素・酸素・窒素原子核は反応の[[触媒]]として働き、サイクル中で再生産される。 == CNO-2 サイクル == 上記の反応の最後で <sup>15</sup>N と水素が融合する際に、約0.04%の確率で <sup>12</sup>C と <sup>4</sup>He ではなく <sup>16</sup>O とガンマ線光子が作られる場合がある。この場合にはサイクルが分岐し、以下の反応経路をとる。 {| |<chem>^{15}N\ + {}^1H</chem>||<chem>-></chem>||<chem>^{16}O\ + \gamma</chem> |- |<chem>^{16}O\ + {}^1H</chem>||<chem>-></chem>||<chem>^{17}F\ + \gamma</chem> |- |<chem>^{17}F</chem> ||<chem>-></chem>||<chem>^{17}O\ + \mathit{e}^+\ + \nu_{\mathit{e}}</chem> |- |<chem>^{17}O\ + {}^1H</chem>||<chem>-></chem>||<chem>^{14}N\ + {}^4He</chem> |} CNO-1 サイクルでの炭素・窒素・酸素と同じく、この CNO-2 サイクルで生成される[[フッ素]]原子核も単に触媒として働き、サイクル反応が定常状態にある場合には恒星内に溜まることはない。 == エネルギー生成 == CNOサイクルでは1サイクルごとに約25MeVのエネルギーが生成される。CNOサイクルの1サイクルが完結するまでの時間は約 3.8 × 10<sup>8</sup> 年で、陽子-陽子連鎖反応の時間尺度(約10<sup>9</sup>年)よりも短い。このため、CNO サイクルを主なエネルギー源とする大質量星では単位時間当たりのエネルギー生成率が小質量星よりも大きい。 また、CNOサイクルは温度に非常に敏感な反応である。CNOサイクルのエネルギー生成率は温度の15乗に比例する。従って温度が5%上昇するとエネルギーの放出は約2.08倍に増加する。 == 関連項目 == * [[トリプルアルファ反応]] * [[陽子-陽子連鎖反応]] {{核反応}} {{DEFAULTSORT:CNOさいくる}} [[Category:恒星物理学]] [[Category:核融合]] [[Category:天文学に関する記事]]
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