DBmのソースを表示

{{lowercase|title=dBm}}
{{otheruses|単位|その他|DBM}}
[[File:Relationship between dBu and dBm.svg|thumb|dBu（電圧源）とdBm（600Ω抵抗によって熱として消費される電力）の関係を示す概略図]]
'''dBm'''または'''デシベルミリワット'''（dBmW）は、[[電力]]を1[[ミリワット]](mW)を基準値とする[[デシベル]](dB)の値で表した[[単位]]である。電波や光ファイバーなどで信号の強さを表すのに用いられる。dBmで表すことで、非常に大きな値から非常に小さな値までを、以下のように少ない桁数の数字で簡便に表すことができる。
* 1&nbsp;nW = -60&nbsp;dBm
* 1&nbsp;&micro;W = -30&nbsp;dBm
* 1&nbsp;mW = 0&nbsp;dBm
* 1&nbsp;W = 30&nbsp;dBm
* 1&nbsp;kW = 60&nbsp;dBm

これに対し、1ワット(W)を基準値としたものが[[デシベルワット|dBW]]であり、その値は、dBmで表した時よりも30小さくなる。

==単位の換算==
0&nbsp;dBmの電力レベルは1&nbsp;mWの電力に相当する。出力レベルの10&nbsp;dB（dBmまたはdbW）の増加は、電力が10倍になったことを意味し、3&nbsp;dBの増加は、電力が約2倍になったことを意味する。すなわち、3&nbsp;dBmは約2&nbsp;mWである。逆に、3&nbsp;dBの減少は、電力が約半分になったことを意味する。すなわち、−3&nbsp;dBmは約0.5&nbsp;mWに相当する。

電力''P''（単位:mW）と電力レベル''x''（単位：dBm）の換算は、以下のようになる。

:<math>\begin{align}
 x &= 10 \log_{10} \frac{P}{ 1 \mathrm{mW}}
\end{align}</math>
''P''の単位をワットにすると、以下のようになる
:<math>\begin{align}
 x &= 30+10 \log_{10} \frac{P}{ 1 \mathrm{W}}
\end{align}</math>

:<math>\begin{align}
 P &= 1 \text{mW} \cdot 10^{\frac{x}{10}}\\
 P &= 1 \text{W} \cdot 10^{ \frac{ x-30 }{10} }
\end{align}</math>

{{Main|仕事率の比較}}
{| class="wikitable"
! 電力レベル !! 電力 !! 備考
|-
| 80 dBm || 100&nbsp;kW || [[放送区域|サービスエリア]]が50km程度の[[FMラジオ]]局の[[実効輻射電力|送信出力]]
|-
| 60 dBm || 1&nbsp;kW = 1,000 W || [[電子レンジ]]の素子の放射出力
|- 
| 55 dBm || ~300 W || Kuバンド[[静止衛星]]の1チャンネルの送信出力
|- 
| 50 dBm || 100 W || [[黒体放射|人体から放出される熱放射]]の合計。31.5 THz（9.5 &micro;m）にピークがある。
一般的な[[アマチュア無線]]の[[短波]]無線機の最大送信出力
|- 
| 40 dBm || 10 W || 一般的な[[電力線搬送通信]](PLC)の送信出力
|-
| 37 dBm || 5 W || 一般的なアマチュア無線の[[超短波|VHF]]/[[極超短波|UHF]]携帯無線機の最大送信出力
|-
| 36 dBm || 4 W || 多くの国における[[市民バンド]]無線局（27&nbsp;MHz帯）の最大送信出力
|-
| 33 dBm || 2 W || [[Universal Mobile Telecommunications System|UMTS]]/[[3G]]携帯電話（出力クラス1）の最大送信出力
GSM850/900携帯電話の最大送信出力
|-
| 30 dBm || 1 W = 1,000&nbsp;[[ミリワット|mW]] || DCS・GSMの1800/1900&nbsp;MHz帯携帯電話
|-
| 29 dBm || 794&nbsp;mW ||
|-
| 28 dBm || 631&nbsp;mW ||
|-
| 27 dBm || 500&nbsp;mW || 一般的な[[携帯電話]]の送信出力
UMTS/3G携帯電話（出力クラス2）の最大送信出力
|-
| 26 dBm || 400&nbsp;mW || 
|-
| 25 dBm || 316&nbsp;mW || 
|-
| 24 dBm || 251&nbsp;mW || UMTS/3G携帯電話（出力クラス3）の最大送信出力
1880–1900&nbsp;MHz [[DECT]]（250&nbsp;mW/チャンネル幅1728&nbsp;kHz）
[[IEEE 802.11j]]の[[実効輻射電力|実効等方輻射電力]](EIRP)
|-
| 23 dBm || 200&nbsp;mW || [[IEEE 802.11n]]・[[IEEE 802.11a]]・[[IEEE 802.11h]]の[[実効輻射電力|実効等方輻射電力]](EIRP)
|-
| 22 dBm || 158&nbsp;mW ||
|-
| 21 dBm || 125&nbsp;mW || UMTS/3G携帯電話（出力クラス4）の最大送信出力
|-
| 20 dBm || 100&nbsp;mW || IEEE 802.11b/gの[[実効輻射電力|実効等方輻射電力]](EIRP)
[[Bluetooth]] クラス 1（到達距離 100&nbsp;m）
|-
| 19 dBm || 79&nbsp;mW || 
|-
| 18 dBm || 63&nbsp;mW || 
|-
| 17 dBm || 50&nbsp;mW || 
|-
| 15 dBm || 32&nbsp;mW || 一般的なノートPCの[[無線LAN]]の送信出力
|-
| 10 dBm || 10&nbsp;mW ||
|-
| 7 dBm || 5.0&nbsp;mW || AM受信機の[[自動利得制御]](AGC)回路をテストするのに必要な電力レベル
|-
| 6 dBm || 4.0&nbsp;mW ||
|-
| 5 dBm || 3.2&nbsp;mW ||
|-
| 4 dBm || 2.5&nbsp;mW || Bluetooth クラス 2（到達距離 10&nbsp;m）
|-
| 3 dBm || 2.0&nbsp;mW || 
|-
| 2 dBm || 1.6&nbsp;mW ||
|-
| 1 dBm || 1.3&nbsp;mW ||
|-
| 0 dBm || 1.0&nbsp;mW = 1,000&nbsp;µW || Bluetooth クラス 3（到達距離 1&nbsp;m）
|-
| −1 dBm || 794&nbsp;µW ||
|-
| −3 dBm || 501&nbsp;µW ||
|-
| −5 dBm || 316&nbsp;µW ||
|-
| −10 dBm || 100&nbsp;µW || 
|-
| −20 dBm || 10&nbsp;µW ||
|-
| −30 dBm || 1.0&nbsp;µW = 1,000&nbsp;[[ナノワット|nW]] ||  
|-
| −40 dBm || 100&nbsp;[[ナノワット|nW]] ||
|-
| −50 dBm || 10&nbsp;nW ||
|-
| −60 dBm || 1.0&nbsp;nW = 1,000 [[ピコワット|pW]] || [[地球]]は[[等級 (天文)|視等級]]+3.5の[[恒星]]から1平方メートルあたり1ナノワットを受け取る<ref>[http://webhome.cs.uvic.ca/~pearson/files/radiant_flux.html Radiant Flux of a Magnitude +3.5 Star]</ref>。
|-
| −70 dBm || 100 [[ピコワット|pW]] || 
|-
| −73 dBm || 50.12 pW || 一般的な短波無線機の{{仮リンク|Sメーター|en|S meter}}における"S9"の信号の強さ
|-
| −80 dBm || 10 pW || 
|-
| −100 dBm || 0.1 pW || 
|-
| −111 dBm || 0.008 pW = 8 [[フェムトワット|fW]] || 商用[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]の単一チャネル単一帯域(2&nbsp;MHz)の[[熱雑音]]
|-
| −127.5 dBm || 0.178 fW = 178 [[アトワット|aW]] || [[GPS衛星]]の単一チャネルの受信電力
|-
| −174 dBm || 0.004 aW = 4 [[ゼプトワット|zW]]|| [[室温]]（20&nbsp;[[セルシウス度|°C]]）における1&nbsp;Hz帯域の熱雑音
|-
| −192.5 dBm || 0.056 [[ゼプトワット|zW]] = 56 [[ヨクトワット|yW]] || 宇宙空間（4[[ケルビン]]）における1&nbsp;Hz帯域の熱雑音
|-
| −∞ dBm || 0 W || 出力ゼロは、dBmで表現しようとすると[[無限|負の無限大]]となる。
|}

信号密度（単位面積あたりの電力）は、受信電力に波長の自乗を掛け、 4{{pi}} で割ることで求められる（{{仮リンク|自由空間伝搬損失|en|Free-space path loss}}を参照）。

特定の分野では回路が一定の[[インピーダンス]]で整合されていることがある。高周波回路では 50&nbsp;Ω, 75&nbsp;Ωなどで整合されている<ref>{{cite book|last=Carr|first=Joseph|title=RF Components and Circuits|year=2002|publisher=Newnes|isbn=978-0750648448|pages=45–46}}</ref>。また古典的な業務用音響機器では 600&nbsp;Ωで整合されていた<ref>{{cite book|last=Bigelow|first=Stephen|title=Understanding Telephone Electronics|publisher=Newnes|isbn=978-0750671750|pages=16}}</ref>。この場合、電圧を計測すれば電力がわかる。 50&nbsp;Ωでは約 0.224&nbsp;V, 75&nbsp;Ωでは約 0.274&nbsp;V, 600&nbsp;Ωでは約 0.775&nbsp;V が 0&nbsp;dBm (= 1&nbsp;mW) に相当する。ただし 0&nbsp;dBm はあくまで電力のことなので、インピーダンスが変わればこの関係は崩れる。業務用音響機器は後に 600&nbsp;Ωで整合されなくなったため、上記の約 0.775&nbsp;V のことを 0&nbsp;dBu と呼ぶようになった。

dBmは[[国際単位系]](SI)の一部ではないため、国際単位系に準拠した文書や体系での使用は推奨されない。対応するSI単位はワットである。ただし、2つの数字の単なる比である[[デシベル]]（dB）ならば、使用可能である<ref>[http://physics.nist.gov/cuu/pdf/sp811.pdf Thompson and Taylor 2008, Guide for the Use of the International System of Units (SI), NIST Special Publication SP811]</ref>。

dBm単位での表現は、通常、光学的な出力や電力の測定に使用され、他の種類の仕事率（熱など）では使用されない。[[仕事率の比較]]には、電気的・光学的な仕事率以外の例が含まれている。

dBmが業界標準として最初に提案された<ref name=srh>{{cite book|last=Davis|first=Gary|title=The Sound Reinforcement Handbook|year=1988|publisher=Yamaha|isbn=0881889008|pages=22}}</ref>のは、"A New Standard Volume Indicator and Reference Level"（新しい標準音量指数と参照レベル）という論文である<ref>{{cite journal|last=Chinn|first=H.A.|author2=D.K. Gannett |author3=R.M. Moris|title=A New Standard Volume Indicator and Reference Level|journal=Proceedings of the Institute of Radio Engineers|date=January 1940|volume=28|issue=1|pages=1–17|doi=10.1109/JRPROC.1940.228815|url=http://www.aes.org/aeshc/pdf/chinn_a-new-svi.pdf}}</ref>。

== 関連項目 ==
*[[仕事率の比較]]
*[[デシベルワット]]
*[[デシベル]]

== 出典 ==
{{FS1037C MS188}}
{{reflist}}

== 外部リンク ==
*[http://www.sengpielaudio.com/calculator-volt.htm The dBm calculator for impedance matching]
*[http://cgi.www.telestrian.co.uk/cgi-bin/www.telestrian.co.uk/dBm.pl Convert dBm to watts]
<!-- {{Decibel}} -->

[[Category:仕事率の単位]]
[[Category:対数スケールの単位]]