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{{出典の明記|date=2018年1月3日 (水) 06:11 (UTC)}} '''D/L表記法'''(ディーエルひょうきほう)とは、主に[[IUPAC命名法]]に基づいて、[[化合物]]の[[立体配置]]の絶対配置を示す際に使用される表記法である。 [[立体異性体]]の立体配置を明示する方法には、[[CIP順位則]]による[[RS表示法]]が広く用いられている。 しかし、生体由来の[[糖]]や[[アミノ酸]]のような[[キラリティー|キラル]]な[[分子]]については、[[光学異性体]]の表示法である''d''-,''l''-(それぞれ dextro-rotatory=右旋性(+)、levo-rotatory=左旋性(−))のような表記のほうが立体配置をイメージしやすいという場合もある。 そのため、''d''-[[グリセルアルデヒド]] の立体配置を基準として、この立体配置を崩さずにできる化合物を'''D-体'''とし、その[[鏡像異性体]]を'''L-体'''と表記するのが、D/L表記法である。 ここで注意すべき点は、この大文字で書かれるD-,L-の分類は[[旋光性]]による定義ではないため、旋光性をあらわす小文字の''d''-,''l''-とは一致するとは限らないことである。化合物によっては、''d''-体(右旋性)がL-体である場合もあれば、''l''-体(左旋性)がD-体である場合もある。 == 適用法 == === 基本的な原則 === {{Infobox 有機化合物 | name=D-グリセルアルデヒド | 構造式=[[ファイル:D-glyceraldehyde-2D-skeletal.svg|150px|D-グリセルアルデヒド]][[ファイル:D-Glyceraldehyde 2D Fischer.svg|100px|D-グリセルアルデヒドのフィッシャー投影図]] | IUPAC=(''R'')-グリセルアルデヒド(許容慣用名)<br />(''R'')-2,3-ジヒドロキシプロパナール(系統名) | 別名= | 分子式=C<sub>3</sub>H<sub>6</sub>O<sub>3</sub> | 分子量=90.0779 | CAS登録番号=453-17-8 | 形状=無色固体 | 密度= 1.455| 相=固体 | 相対蒸気密度= | 融点= 145| 融点注=(ラセミ体) | 沸点= 140–150| 沸点注=/0.8 mmHg(ラセミ体) | SMILES=OCC(O)C=O | 出典=<!----> }} D/L表記法では、その分子をグリセルアルデヒドに対応させることで名づける。グリセルアルデヒドそのものがキラルであり、2つの光学異性体をD-とL-に呼び分けることができる。右図にD-体のグリセルアルデヒドを示す。L-体は-Hと[[ヒドロキシ基]](-OH)が、または[[アルデヒド]](-COH)とヒドロキシメチル基(-CH<sub>2</sub>OH)が入れ替わったものである。 この表記法によりどちらの光学異性体であるかを一義的に表記できる。ただ、グリセルアルデヒドと良く似た小さな生体由来化合物の場合、この表記が容易であるとは限らない。グリセルアルデヒドは、特定の[[化学反応]]を用いれば、その[[立体配座]](コンフォメーション)を変えることなく、広く用いられるキラル分子を生成することができる。これが、D/L表記法という命名法が用いられる歴史的経緯となった。例えば、[[アミノ酸]](アミノ酸と[[糖類]]はD/L表記法が良く用いられる生体分子の代表例である)の[[アラニン]]は2つの光学異性体を持っており、それらはそれぞれがどちらのグリセルアルデヒド異性体に由来するかによって表記される。なお、[[グリシン]]はグリセルアルデヒドから派生するアミノ酸であるが、キラルではない(アキラルである)ため光学異性体を持たない。対して、アラニンはキラルなのである。 D/L表記法は、旋光性を示す(+)/(−)表記とは関係が無い。つまり、どちらの[[キラリティー|鏡像異性体]](エナンチオマー)が右旋性で、どちらが左旋性であるかは全く表現していない。むしろ、D/L表記法は、その化合物の立体構造が、グリセルアルデヒドのどちらのエナンチオマーの立体構造と関連しているか、を表記しているのである。[[タンパク質]]のなかによく見られる19種あるL-アミノ酸のうち、9つは右旋性であるし([[波長]]589nmにおいて)、D-[[フルクトース]]は“levulose”([[果糖]])の名のとおり、“levorotatory”(左旋性)である。 実は、グリセルアルデヒドの右旋性異性体は D-体である。これは幸運なことであった。というのも、このD/L表記法が確立された時代には、どちらの立体配置が右旋性かを知る方法が無かったからである。もし、この予想が間違っていたとしたら、今日のD/L表記は更に混乱を招くものとなっていたであろう。 === アミノ酸における表記法 === アミノ酸のD/L異性体は、グリセルアルデヒドのアルデヒド基<chem>CHO</chem>を[[カルボキシ基]]<chem>COOH</chem>に置換し、2位の[[ヒドロキシ基]]<chem>OH</chem>を[[アミノ基]]<chem>NH2</chem>に置換すると[[セリン]]になることを踏まえて決定されている<ref name="EJB1984">{{citation|title=Nomenclature and Symbolism for Amino Acids and Peptides|journal=European Journal of Biochemistry|year=1984|volume=138|pages=9-37|publisher=Wiley Online Library|url=https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/j.1432-1033.1984.tb07877.x|accessdate=2022-02-23}}(3AA-3.1節、3AA-3.5節を参照)</ref>。 アミノ酸のD/L異性体の表記法は、"CORN"ルールに基づいて行うことができる。これは、キラル中心である炭素の周りに、 '''CO'''OH, '''R''', '''N'''H<sub>2</sub>およびH(R:各種の炭化水素基) がどのように配置しているかで判断する方法である。[[水素原子]]が奥側(向こう側)になるように見たとき、上記の官能基が炭素の周囲に時計回りに配置していればD-体で、反時計回りに配置していれば、L-体である。(例:L-[[アラニン]]) グリセルアルデヒドを基準とするD/L命名法は混乱を招きやすく、多数の不斉点を持つ化合物には適用しにくい。しかしこの命名法が今でも生き残っている原因はアミノ酸、中でも[[システイン]]にある。現在多く使われるRS表記では、20種類の[[タンパク質を構成するアミノ酸]]のうちシステインだけが命名法の関係上R/Sが逆転してしまう(システイン以外ではRS表記の順位が<chem>NH2</chem> > <chem>COOH</chem> > <chem>R</chem> > <chem>H</chem>になるのに対し、システインは<chem>R=CH2SH</chem>であって[[硫黄]]原子が[[酸素]]原子よりも順位が高いため、<chem>NH2</chem> > <chem>R</chem> > <chem>COOH</chem> > <chem>H</chem>となる<ref name="EJB1984" />)。このため混乱を招くとして、アミノ酸の立体配置表示には今でもD/L表記が主に使われている。 == 出典 == {{Reflist}} == 関連項目 == *[[光学異性体]] *[[立体異性体]] {{biochem-stub}} {{デフォルトソート:DLひようきほう}} [[Category:立体化学]] [[en:Chirality (chemistry)#By configuration: d- and l-]]
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